見出し画像

お祭り、草取り、神社の掃除etc.引っ越し先の町内会が辛いけど、ローンが30年あり……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室460】


✳️今週のお悩み✳️
家を建てる場所を失敗した感があります。田舎と郊外の中間のようなところに家を建てたのですが、住み始めるとむしろどっぷり田舎寄りで、こんな場所まだあったのかとがっかりする毎日です。

町内会に加入すると、女性は強制で婦人会に入れられて、お祭りで男性や子どもたちが食べる料理を作らないといけません。準備や片付けもあるのでしめて4日間。婦人会なんてたいした仕事ないから大丈夫と言った役員さん(男性)に、これのどこがたいしたことないのかと聞きたくなります。そもそも、炊事は女の仕事とばかりに、女性だけに裏方を強要するのが気持ち悪くて辛いです。お神輿は男性しか担げません。消防団への参加は任意ですが、よくある、お金の使い方にとても問題があるタイプで、最近ようやくそれらが問題提起され始めたようです。他にも、農家じゃないのに農業用ため池の草取り、氏子じゃないのに神社の掃除、年末年始だろうとお構いなしの回覧板、何もかも嫌になります。年間15,000円を超える高額な町内会費も、大半がお祭りに注ぎ込まれていそうで嫌です。

あれこれ自分たちで調べて、町内会の役員をしてた方にまで聞いてもらって、婦人会や消防団はないと言われたから安心して越したのに、あんまりだなぁと思います。救いは、事前に自分たちにできることはやるだけやったと自負できることでしょうか。調べずにここに来ていたら、リサーチ不足だった自分を責めていたと思います。私たち夫婦の地元も似た雰囲気の、田畑が残るのどかな場所ですが、ここまでいつの時代なのかとつっこみたくなるほどではなかったです。

とりあえず、町内会は脱退したいのですが、それにも罪悪感がなんとなくあるし、役員の方に告げたところ、ご近所との関係がどうなっても知りませんよ?と言われて怯んでしまった隙に、もう少しよく考えてーと逃げられてしまいました。ゴミも捨てられなくなると言われましたが、それが法的にどうなのかはさておき、想定内です。きれいさっぱり出ていきたいのは山々ですが、現実論、ローンががっつりあります。売ったところで、次の家の足しにはさほどならないでしょう。夫の定年まではおそらくこの家に住むはずです。夫といえば、会社からの帰宅途中に、町内の高齢者に車ではねられました。軽症ではありましたがまだ通院しています。相手の方は、免許の返納を家族に提案されていたようですが運転を続けていた矢先に、完全に先方の不注意で事故を起こしました。それもまた、ここが不便な田舎故なのかと恨んでしまいます。ですが、あと30年ほど、呪いのような気持ちを抱えながら住むのは辛いので、気の持ちようを伝授していただけたらうれしいです。
(たるみ・40歳・専業主婦・兵庫県)


こんなことって、あるんだね……まずは本当に、御愁傷様ですよ。

田舎暮らしに憧れて、ホントに住んでみたはいいけど、実際にはいいことばかりじゃなかった、的な話って近年よく聞きますけど……たるみさんの場合、事前のリサーチはそれなりにちゃんとしていて、婦人会や消防団もないって言われていたのに!ってことですから、より理不尽度は高いですよね。


騙されたようなもんじゃないですか。
ただ、婦人会なんてたいした仕事じゃないと言った方に何か責任があるわけじゃないので、自己責任ってやつなんでしょうけども……。


あげく、車にはねられるって!
なんか恨みでもあんの?って思っちゃうくらいですよね、これだけ嫌なことが重なると。


どうしたらいいんだろう?
気の持ちようを伝授してくださいということですが。


たるみさん的には、改めて引っ越すという選択肢はもう絶対にない、という感じなんですかね?
だとしたらたしかに、「気の持ちよう」でなんとかするしかない、ということになるのかもしれないけど……ホントにそれでいいのかしら。

とりあえずじゃあ、その「気の持ちよう」方向で、ひとまず考えてみましょうか。
そっち系で最強はもちろん、「ご夫婦ともども、どっぷりその土地に染まりきる」ってことに尽きますよね。
まさしく、郷に入りては郷に従え、という言葉そのままで。
その場に住み続けながら、とりあえず「呪いのような気持ち」を解消することだけを目的にするならば、それはやはり、先にそこに住んでいた人たちのしきたりをまずは受け入れ、同化してしまうのがまぁ、手っ取り早くはある。
その上で、気に入らないことがあるなら内側から変えてゆく、というようなやり方も、たしかにひとつの手ではありますよね。

でも……繰り返しますが、ホントにそれでいいのかしら。

僕自身の意見を言うならば、30年間……いや、それはローンが払い終わる期間だから、実際にはもっと長い歳月そこで生活してゆくことになるわけだけど、その間じゅう、毎日何かしら嫌だなぁという気持ちを蓄積しながら暮らすしかない、というそのマイナスは、家を転売することで生じる経済的損失とかとは比較しようもない、まさにプライスレスなものなんじゃないの?と思えてならないんですけど。

何億円の豪邸だろうが、心底嫌な人たちと住まなきゃならないなら、そこはやっぱり、地獄でしょ?
お金に換算できることじゃないんですよ、人間関係って。

だから、僕だったら結論はひとつ。さっさと引っ越します。

隣人って、選べないですからね……。
後から越してくる人たちまで含めれば、なんらかのトラブルになってしまう可能性というのは、常に排除できないわけで。
だとしたら、ひとつの場所に固執しすぎないで済むような、ある程度柔軟なスタンスをいつも心がけていたほうがいいんじゃないか、と個人的には考えています。
それって、住むところの話に限らずかもしれないけど。

念のため改めて言っておけば、その町内会のノリとかがいかにも旧態依然とした「悪習」だ、というたるみさんの違和感の方が、もちろんだけども、現代的な良識からすれば、明らかに正しいわけです。
それはもちろんわかるんだけども……とはいえ、その土地に前から住んでいて、ずっとその感じでやってきている人たちにしてみれば、後からやってきた人にいきなりそれを否定してまわられるのは、あまり気分のいいことじゃないだろう、というのも、まぁ理解はできることじゃないですか。

なので……何度も言いますが、たるみさん側は本来いっさい悪くない。
悪くないんだけど、それでも、言っちゃえば敵地のど真ん中でその主張を押し通すなら、日々が戦いとなってしまうことは現状やっぱり、避けえないわけですよ。
それは、ある種のジャスティスではあるかもしれないけど……まぁ、気が休まらない暮らしにはなりますよね、絶対に。


町内会を脱会したら、ゴミも捨てられなくなるとか……これ、脅しじゃないですか?


脅しですよ、そりゃ。
向こうからしたら、極端な言い方をすれは「何、戦争はじめる気?」ってことなんだろうからさ。
それにしてもたしかに、現代日本でその感じって……ほとんどホラーの域ではありますよね。
たるみさんがおっしゃる通り法律どうなってんだ?って話だけど、そこ含めて、怖いよね。

法と言えば、その交通事故に関しては、ちゃんと賠償とか取ってるんですかね?
まさか、「あそこ、おじいちゃんだから仕方ないのよねぇ~……でも、そこまでの怪我じゃなかったんでしょう~? まぁご近所同士、お互い様ってことで! ホラこれ食べて元気出して~!」とかで終わってないよね!?

おそらく、こういう古いコミュニティは、しっかり馴染みさえすれば、なにかと助け合ったりするところもあったりするのかもだけど……裏を返せばやはり、その輪の外側にいる人間に対しては、とことん冷淡になれる、ということでもあるかもしれない。

なんにせよ、たるみさんが外から持ち込んだ現代的正しさに合わせて、その共同体が今すぐ変わる、というようなことは、まぁまずありそうもないわけだから……。
こちらが合わせるか、きついけど戦うか、さっさと立ち去るか。
この三択しか、今のところ現実的にはなさそうなんですよね、やっぱり。


ただ、高齢者も多そうだから、この感じが今のままで30年続くとかはないんじゃないの?とは思いますけど。


たしかに!
30年もいたら、年寄りがどんどんいなくなったりして、コミュニティ側の空気が変わってくる可能性は、なるほどありますね。
てか、たるみさんたちも、そこまで行きゃあ立派な古株だしね(笑)。
問題は、それがいつになるのか、それまで我慢できるのか、その価値は本当にあるのか、ってことですよね。

僕個人はやっぱり、限りある人生の大切な一日一日を、不愉快な場所で、不愉快な人たちに囲まれてただただ削り続けてゆくなんて、どんだけお金もらっても合わないくらいの、圧倒的デメリットでしかないと思うんですけどねぇ。
そういう瞬間を可能な限り減らすためにこそ、いろいろ頑張っている、と言ってもいいくらい。

たとえば僕、前も言ったかもだけど、自宅から駅までの行き帰りの道が、本当に大好きで。
だから毎日ちょっとずつ幸せ。今日も幸せ。


それだけでハッピーですね!


そう! 歩くだけでガン上がり。
要は、ちょっとでもそう思えるようなところに住んでるってだけのことが、毎日の暮らしの価値を、どれだけ高めてくれることか。

逆に、どんだけ高級な物件に住んでようと、「ここってアイツが住んでるんだよなぁ嫌だなぁ……あ、おはようございます(汗)」みたいなのを毎日繰り返すなんて、なにがなんでも避けたい暮らしそのものですよ!


ネックになってるのはお金ですよね? 


「売ったところで、次の家の足しにはさほどならないでしょう」ってことだけど……嫌なところに居続ける巨大なマイナスにくらべれば安い勉強代だ、みたいに考えることは難しいくらい、厳しいんですかね。
それこそ事故の慰謝料ぶんどって引っ越しに当てるとか、ダメなのかな。


自分だったらどうするかなって思っちゃいました。


どうします?


一応、未来に売ることも考えて買っていますけども……。

たるみさんに今伝えてもあまり解決にならないかもですが……老後も同じところに住むかわからないので、私は買うにしてもあんまり「一生」ってことを考えてないですね。

独身時代に小さいマンションを買ったことがあるんですが、3年くらいで売っちゃいました。楽観視しすぎと言われることもあるので一長一短ですが、なんかあれば売ればいい、長く住まなくたっていいって思っていて。

ただ、もうすぐ引っ越すんですけど、その家でもしトラブルがあったときにそんなフットワーク軽く行動できるかって言うと、それはわからない。ひとりで買ったわけではないですし。

祭りとか婦人会とかはないので、そこは大丈夫だと思いますけど、もし隣人関係とかでなんかあったらどうするだろう……でも毎日家にいるわけではないのでほかのことに没頭したりして、嫌な部分はスルーするようにマインドコントロールしますかね。やってみてどうしても無理だったら、宇多丸さんの言うように引っ越しますかね。


まぁやっぱり、そんな感じだよね。
あとはもう、たるみさんたちが今の状態にどのくらい耐えられるのかと、現実的な懐具合、そのバランス次第、ってことになるのかなぁ……。

あ、ちなみに今ふと思ったんだけど、たるみさんは、その役員さん以外の、とくに同世代以下の住人、できれば女性とかと、このことについて話す機会って、これまであったんですかね?
ひょーっとしたら、同じような不満や疑問をじつは抱えながら、それでもやむなくここで生きている、というような人が、ほかにも意外といらっしゃるかもしれないわけで……もし仮に、そういう不満分子同士で連帯することができたなら、お互いさぞかしホッともするでしょうし、最初の方で言ったように、いずれは現実を内側から変える力になってゆくという可能性も、そうなるとゼロではなくなってくるじゃないですか。
なので、まずはそういう話が通じる人、味方になってくれるような人がいないかどうか、ダメ元でまわりを見回してみるというのも、いまできることとしてはアリじゃないでしょうか。

まぁだいたいそんなところですかね。
僕らの意見が、なにか参考になればいいんだけど。
とにかく改めて、災難でしたね……!


ちょこちょこ調べていたのですが、過去には町内会に強制加入させられたことに対して訴訟を起こし、損害賠償の対象となったケースなどもあるみたいですね。
たるみさん、そういうモードではないと思うので、困りごとを行政機関の窓口よりは気軽に相談できる「行政相談委員オフィシャルウェブサイト」というものをご紹介します。
少しでもお役に立てば、幸いです。

そしてまずはダンナさんの怪我が治ることを祈っております。



【今週のお絵描き】

画・宇多丸



↓↓↓ バックナンバーもチェック! ↓↓↓


【全国書店やAmazonで発売中】
「ライムスター宇多丸のお悩み相談室」、ついに書籍化!! 幻冬舎より発売中!
執拗に、フェアに、意外と優しく、時に興奮しながら、とことん考え答えた人生相談34!
★詳しくはこちら


<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション2」(毎週月曜日から木曜日22:00-23:30の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

※昨年10月からは「アフター6ジャンクション2」に!
ライムスター宇多丸の聴くカルチャー・プログラムは、あなたの"好き"が否定されない、あなたの"好き"が見つかる場所。大人気週刊映画時評「ムービーウォッチメン」は毎週木曜日22時20分頃~にお引越しです。

※ライブ情報はこちら


こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。



最後まで読んでいただきありがとうございます!! 新着記事はX(Twitter)でお知らせしています☞