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15時以降の近所の子供達の遊び声にイライラ。たまらなくストレスなんです……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室77】


✳️今週のお悩み✳️

うたさん、こんにちは。32歳、既婚者、子供なしです。よくあるファミリータウンの一軒家に住んでいます。昼間は静かで有意義なラジオ人生を楽しんでいる私ですが、15時になると、近所の子供達か帰宅して、家の周りが騒がしくなります。家の前の道路で子供用自転車をガラガラ。悲鳴に近い声で遊ぶ子供達。うちの車に絶対ボールあたってるよね?的なドッチボール遊び。その光景をいつもの日常と捉えて世間話をする親達。私はこの、15時以降の騒音がたまらなくストレスです。仕事で在宅していない日は良いとしても、先日、生理痛による体調不良で昼寝している日には、近所の子供達の遊び声にイライラしてラジオを爆音で流して気持ちを誤魔化しました。我が家はまだ子供の予定は無いですし、近所にはファミリーだけでは無く、老夫婦も住んでいる環境です。子供が居ないのにファミリータウンに住んだ私が間違いですか? ファミリータウンなのだから、子供の声が聞こえる街が健全だと捉えるべきですか? 最近は、家の玄関を開けることすら、一つの勇気にさえなってしまうほど憂鬱です。
(いっちゃん・32歳)


宇多丸:
iPhone女子部の皆様、あけましておめでとうございます~! 
去年のお正月回で、「毎年夫の実家に行くのが面倒」問題やったのがついこないだのことのようだ……、一年経つの早え~な! 
ともあれ今年も引き続き、よろしくお願いいたします~!

こばなみ:
今年もこのコーナー、悩める女子のみなさまのお役に立てればこれ幸い! どうぞ、よろしくお願いしますー!! 
さて宇多丸さん! 2015年一発目のお悩みは、騒音問題ですかね?

宇多丸:
僕も、前に住んでたマンションの向かいが小学校でさ。
うるさくてイライラしている時期、やっぱありましたよ。

特に、ものすご~く朝早くからブラスバンドの練習をしやがるのと、夏のプールで流す音楽。まーそれがうるさいのなんのって。
一回マジで抗議の電話入れたくらいですよ。

なので、いっちゃんさんの苛立ちもちょっとわかります。
そのうえ、「うちの車に絶対ボールあたってるよね?的なドッチボール遊び」を、特に叱りもせず放置している親たち、ってのがまた余計に腹立つもんね。
心中お察しいたします。

こばなみ:
電車内とかであまりにも騒いでる子には、眼に怒りを込めてじーっと見てしまいます。すると親御さんが「見られてるからやめなさい」みたいなこと言っていて、「見られてるから」って、なんか言い方が失礼ですよね……。

宇多丸:
それも腹立つね! 
僕はどっちかっていうと、子どもに直接、同じ目線で言うようにしてますね。
「キミ、静かにしてくれない?」って。
ただ、そういう第三者のたしなめに対して、「まぁ怖い!」的に逆ギレしてくる親もちょいちょいいるとは聞くよね。僕は幸いにも当たったことないけど。

こばなみ:
でも、そういう一部の人のせいで、いい親御さんも悪くみられちゃうのはかわいそう。

宇多丸:
やっぱさ、「Children are our future」なわけだからさ。あいつら、明日の世界の担い手なわけですよ! 
だからこそ、子どもが何か悪さしてたらたしなめたりするのは、社会の一員としての義務だと僕は思うんですけどね。

とは言えいっちゃんさん、ガキどもの騒ぐ声に対抗してラジオを爆音で流すって……、自分から騒音出しちゃうのはまた別問題ですぞ!

こばなみ:
いっそ、住むところを変えるとか?

宇多丸:
そっか。これはそもそも、子ども問題とかいう以前に、「新居リスク問題」なのかもしれないね。
まず一般論として、住む場所を決めるときに、不動産屋さんに案内された時間帯だけで判断すると危険、というのはあるよね。
朝昼晩で全然雰囲気が変わるところもあるからさ。それこそ学校がうるさいかどうかとか。
でも、さっき言ったみたいに超早朝のブラスバンドとか、夏休みのプールとかまではチェックしきれないもんなぁ……。

あと、それこそどんな隣人がいるかとかは、事前に知るにも限界あるもんね。
後からヤバいヤツが隣に越してきちゃうかもしれないわけだし。
つまり、新居を選ぶときのリスクというのは、どうしてもゼロにはできないと。

で、いっちゃんさんの場合、その意味で明らかに今は、周りの環境が肌に合わないところに住んじゃってるわけですよ。
最初からそうだったのか、後からそうなっていったのかはわからないけども。
いずれにしても、たとえば今後いっちゃんさん側がなんらかのかたちで働きかけていけば少しずつでも状況が改善されるとか、そういうレベルの問題ではないですよね、どう考えても。
住んでる連中を丸ごと入れ替えるわけにもいかないし、親たちのしつけに介入するのも限度があるし……、そして、いっちゃんさん自身の病みは、気づけばかなり深くなっちゃってる。

だとしたら僕はこれ、やっぱりさっきこばなみが言った通り、さっさと引っ越しちゃったほうがいい気がしますけどね。
仮に家が賃貸じゃなくて、もう買っちゃってるんだとしても、そこは誰かに貸すとかなんとか、いろんな方法はあるはずでしょ。

いっちゃんさんが悪いわけじゃないとは思うんです。
あえて言えば、住まいを決める前のリサーチ不足ではあったかもしれないけど。
でもそれだって、さっき言ったように絶対リスクをゼロにはできないわけだから。

要はね、人生、自分はいっさい悪くなくても、ババ引くことはあるってことですよ。
なので、悔しいけどここは運が悪かったと思って、とっとと頭を「次」に切り替えたほうがいいんじゃないかなぁ……。
僕も、さっき言った小学校の前んとこから引っ越して大正解だったし。

もっと言えばその前に借りてた部屋なんか、線路の真横だわ上階の生活音は響きまくるわ無理に増築しすぎでどう見ても耐震性とか度外視だわで、いま考えたらよくあんなとこ住めてたよなぁって感じですよ。
とにかく、住まいの件に限らず、「いる場所を変える」以外に解決のしようがない問題ってあるもんでね。

たとえば、あるクラスで集団的なイジメが発覚したとして、いじめたほうを叱ったり罰したりするのは当然としても、いじめられてた子をそのクラスに置いたまま、じゃあ皆さんこれからは改めて仲良くしましょうね、なんていうのは、欺瞞もいいとこでしょ? 表面上は平穏になったとしても、やられたほうにしてみりゃ居心地サイアクなことには変わりないわけでさ。結局一方的に我慢し続ける羽目になっちゃう。
だったらそういう場合、時間の無駄だからそういうバカなやつらがいる場所からは一刻も早く脱出する、っていうのも、ひとつの現実的かつ建設的な解決法だと思うんですよね。
前も言ったけど、「クラス」なんて単位にこだわる意味、まったくないし

そうやって移った先には、まるで違う環境が待ってて、「なんでもっと早くこっちに来なかったんだろ?」ってことになるかもしれない。
ライトなところでは僕の引っ越しの話もそうだし、イジメに関しても学校移ったら全部解決!という例が身近にあったりもしました。
だからね、人生とか世界の理不尽な側面、自分だけではすぐに解決しようもない問題に対しては、時には「逃げるが勝ち!」ってこともありますよ、とは言っておきたいですね。

こばなみ:
逃げるってどうしても悪いイメージがあるけど、そう考えると一概にそうも言えないです宇多丸:
ライムスターの『逃走のファンク』は、まさにそういう、ポジティブな「逃げちまえ!」を歌おうとした曲でございます。

それともうひとつ。
いっちゃんさんがそこまで子どもアレルギーなのは、単純に「好きな子ども」とまだ出会ってないから、ってこともあるんじゃないですかね。
それこそ、引っ越した先で知り合ったお隣の家族の子どもの声は、別に不快じゃない……ってことだってあり得ると思うんですよね。
要は、子どもという存在とつながる回路が、ひとつでもあるかどうか、なんじゃないかと。

こばなみ:
それありますね、私も子どもと関わるのが苦手だったんですけど、姪っ子ができたら前より苦手じゃなくなりましたよ。

宇多丸:
そういうのって「母性に目覚めた」みたいなとこに安易にカテゴライズされがちだけど、それはそれでうるせえよ! 要するに、あんまりよく知らない存在だったのがちょっとだけ身近に感じられるようになった、理解のとっかかりになるようなチャンネルができた、ってことでしょ?

その感じで思い出すのは、ご存じファッションデザイナーのトム・フォードが初めて監督した、『シングルマン』という映画の一場面ですね。僕すごく好きなんですけども。

主人公は、ある理由からずっと他者に心を閉ざして生きてきた人で、当然のように隣の家のガキとかも苦手で、それまでは積極的に関わろうともしてなかったわけですよ。
で、その彼がついに、今日一日を終えたら自殺しようと決意して、家を出るところから話は始まるんですけど。

不思議なもので、もうすぐこの世ともおさらばだと決めた途端、それまで気にもしてなかったような世の中の些細な物事たちが、妙に美しく、愛おしく、輝いて見えだしたりする。
この映画、そこで実際に画面が、極度に色を抑えた感じからパッとカラフルに「色づいていく」作りになっているのがまた面白いんですが……、ともあれたとえば、あれほど苦手に感じていた隣の子どもも、ちょっと話してみれば、実はちゃんと繊細な内面や悩みも持っていたりする、それなりに豊かな存在なんだということに、改めて気づかされたりもするわけです。

ということで、そんな風にいっちゃんさんも、いつか不意に、彼らを理解する回路ができちゃうのかもしれないしさ……。
まぁ、その日のためにも、今はやっぱりいったんその場を退いて、子どもアレルギーを落ち着かせるのが先決なんじゃないですかね。



【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2015年1月3日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
こちら
※シングル「世界、西原商会の世界! Part 2 逆featuring CRAZY KEN BAND」が配信中! Victorサイト限定CD盤もリリース!
詳しくは
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。



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