「悩んでいるのは、リーダーシップがある証」 女性リーダー育成の専門家が管理職を楽しむコツを指南!【前編】
ダイバーシティを推し進める社会において、管理職の在り方も多様化しています。では、「わたしらしい管理職」とは? そもそも「リーダーの役割」とは? 企業のダイバーシティ経営を支援する株式会社アワシャーレ代表取締役で、女性のキャリアに詳しい 小嶋美代子さんに、リーダー職を前向きに楽しむための考え方を伺いました。
リーダーに向いているのは“いちばん悩んでいる人”
——F30プロジェクトでは、半径5mにいるミドルマネジメントやリーダー職に就く女性たちの等身大の声をたくさん聞いてきました。そのなかで、これまでの男性社会で培われた、いわゆる引っ張っていくリーダー像とは違うリーダーの在り方が浸透しはじめているように感じます。そもそも管理職やリーダーの定義とは?
リーダーシップ論の多くは戦後に開発されて、1940年代頃までは個人の特性や資質がフォーカスされていました。その次の時代にはリーダーの行動がフォーカスされ、今のベースは、「シチュエーショナル・リーダーシップ」と呼ばれるものになっています。個人の資質や行動だけでなく、組織や人が置かれた状況や条件に応じたリーダーのスタイルです。
さらに、リーダーシップが細かく多様化してきたことにより、「人によってリーダーシップは違う」ということにも、みんなが囚われていると思うんです。例えば、「YES or NO」でチャートを進んでいけば、自分らしいリーダーシップのスタイルにたどり着けると思っている。
——確かに。自分らしいリーダー像を模索している人も多いのかもしれません。
いろいろな在り方があると思いますが、私の中のリーダーの定義は、「チームの中でいちばん悩んでいる人」。裏を返せば、リーダーシップをとらない人は悩んでいないです! 私の部下の中でも“任せたいな”と思う人は、たいがい悩んでいる。みんな悩んでいるんですよ。そこから、自分で答えを見つけていくしかないんですね。
——いちばん悩んでいる人が、リーダー。では、その「リーダーの役割」を小嶋さんはどう考えていますか?
それぞれの状況によって違いますし、いろいろな解釈があると思いますが、私が思うリーダーの役割は、「今やっている仕事がおもしろい」と思えるような体験を、チームのみんなにしてもらうこと。そのための空気を作り、 おもしろいアサインや挑戦の場面を作っていくことだと思っています。
それには自分自身もおもしろいと思っていないと、ですよね。血ヘドを吐きながら「おもしろいと言え~!」とチームに圧をかけても通用しないですよね(笑)。仕事をしていくうえで、みんなが「おもしろ」いと思えていれば、リーダーシップを発揮できていて、リーダーとしての責任が果たせているのかなと思います。
チーム作りの秘訣は、部下の“おもしろポイント”を発見すること
——チームのみんなが「おもしろい」と思えるためにできることは?
その人によって、「おもしろい」と感じる場面や性質が全然違うんですよね。例えば、ルールや計画通りにいくのが「おもしろい」と思う人、スケジュール管理はゆるいけど、とにかく新しいことを数珠つなぎ的にやるのが「おもしろい」と思う人、いろいろなタイプがいます。
その人の“おもしろポイント”は、本人もわかっていないこともあるので、探す過程は結構大変です。だから、普段から雑談していないと引き出せないんですよ。ちょっとしたときに出てくるプライベートの話や休憩時間の会話など、そこは結構大切にしていますね。
——その“おもしろポイント”を引き出すコツはありますか?
短時間で効率よく引き出せるポイントは、ないです(笑)。
例えば、「動物が好き」という部下の話を聞いて、この人には動物に関係する仕事がいいかもと思って、猫の仕事を持ってきたら「いやいや、猫アレルギーなんです。飼っているのはハムスターです」とか(笑)。そういうときは自分の深掘りが足りなかったなと思います。だからといって、動物の話が出たときに「動物の中で何類が好き?」とか、根掘り葉掘り聞くのも違うと思うんですよ。リーダーって悩みますよね(笑)。
何回もキャッチボールして、時には違う場所に投げて失敗して、予備のボールも投げて、いつの間にか誰かが拾ってくれたボールが戻ってきて、とか。何回も成功と失敗を繰り返しながら、相手を理解していくことだと思います。
そうやって試行錯誤しながら、たくさん悩みながらチームのことを理解して、「おもしろい」へ誘導していくのがリーダーの役割であり、醍醐味でもあると思います。
<お話を伺った人>
株式会社アワシャーレ
代表取締役
小嶋 美代子さん
取材:F30プロジェクト 文:依知川 亜希子