「初のリーダーで自信がない……」「管理職に疲弊しそう」リーダーとしての“心構え”を小嶋美代子さんがアドバイス
管理職をやっていくなかで、誰もが胸に抱える大小さまざまなモヤモヤ。一口に「女性管理職」といっても立場や状況は千差万別、正解がひとつではないからこそ、なかなかスッキリ解決なんかしないですよね。
今回は、企業のダイバーシティ経営を支援する株式会社アワシャーレ代表取締役であり女性のキャリアに詳しい小嶋 美代子さんに、F30プロジェクトの取材やアンケートでよく耳にする“女性管理職モヤモヤ”を投げかけました。
Part.1は、「リーダーとしての心構え」について。管理職としての自信はどうやってつける? 責任を抱えながらモチベーションを保つには? みなさんがそれぞれに答えを探すヒントとなりますように。
<あるあるモヤモヤ>
初めてリーダーを任された、どうしよう…
■小嶋さんのアドバイス■
自分が持つ経験やスキルなどを一度“棚卸”してみる
このモヤモヤを抱えるということは、たぶん“スキルや経験に自信のある人がリーダーになる”という考え方が前提にあるんですよね。その考え方を変えると、解決方法が違ってくると思います。
どんな仕事でも、すべてが整ってからスタートする人はいないということを忘れていませんか? 任されたばかりの今は、「そういえばあの時、経験もスキルもなくて、自信がないままリーダーをやったなぁ」という将来から見た思い出を作ろうとしている時なので、やりたい放題やったらいいと思いますよ。逆に、自信過剰な人は揚げ足を取られたり、失敗したりするので、この謙虚さは素晴らしい!
これまでを振り返って、経験やスキルがゼロなのかというと、そんなことはないはず。ここで一度、「自分自身の棚卸」をしてみたらいかがでしょう? 経済的に生産活動ができるような専門性の高い経験やスキルがあるか。直接つながるかどうかはわからないけど、いつも心の支えになってくれた人は誰か。大失敗をした時に自分はどうやって起き上がったのか、など。これまでの仕事生活を振り返るいいチャンスですし、“自分の経験も捨てたものじゃないな”と気がつくのではないかと思います。
これからの時代は「無形資産」を増やしていくことが大切
自分自身の棚卸をする上で、お金や不動産などの「有形資産」よりも、これからの時代は「無形資産」を増やすことが大切です。
リンダ・グラットン(イギリスの組織論学者)の著書「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)」はご存じでしょうか? そこで挙げている「無形資産」には、「生産性資産(仕事に役立つスキルや、知識など)」、「活力資産(健康、友人、愛など)」、「変身資産(人生の途中で新しいステージへの移行を成功させる意思と能力)」の3つがあるんですね。この3つの項目をノートに書き出してみるのです。
特に生産性資産は、稼ぐことに直接使える経験や資格のほかに、自分は持っていないけど資格を持っている友だちがいることもあてはまります。そうやって自分の無形資産を書き出していくと、だいたいの人は「変身資産」が足りていないことに気がつくんです。それこそ「リーダーの経験をする」ということは、5年後の「変身資産」になりますよね。そういう未来も想像しながら、棚卸をしてみることをおすすめします。
<あるあるモヤモヤ>
モチベーション維持のためにできることって?
■小嶋さんのアドバイス■
あえて自ら居心地の悪い場所に身を置いてみる
「やりがいを感じている」なんて素晴らしいじゃないですか。この相談者さんにとって今の職場は居心地がいいのではないかなと思います。だからあえて、たまに自分から居心地の悪いところへ行くことをおすすめします。やりがいを感じている場所だからこそ燃え尽きないように、そこだけに注力しすぎないように自分でブレーキを踏んで、“もうちょっとやれるのに”と思う時間を別のことに使う。“コンフォートゾーンを抜ける”ということですね、これは人間が成熟していく過程で必要なことです。
例えば、駅前でゴミ拾いをしているチームにひとりで入ってみる、とか。「はじめまして」の場所って居心地が悪いですよね、そのコミュニティにどっぷり浸かるかどうかは本人次第ですけど、たまに違う水を飲みに行かないと、今いるところの良さも悪さも分からないですから。そうすることで、弱音を吐ける場所ができたり、“問題じゃなかったな”と思えたり、いろんなことが起きると思いますよ。
弱音を吐かないことで成長できる時期もある
きっと相談者さんは逆のことを聞きたいのでしょうね。ストレスを癒すための質問がしたいのだと思いますけど、意外とそんなにストレスがないんじゃないかな。今、モチベーションが高いのであれば、難しく考えなくていいと思います。
ここ数年のリーダーシップ論の流行りは、謙虚に自分の弱みを共有してチームビルディングを始める「ハンブル・リーダーシップ」です。だからこそ、相談者さんと同じように弱音を吐けないことに悩んでいる人がたくさんいるのかもしれませんね。
ただ、弱いところを見せずにがんばることで、成長する過程もあることは確かです。“絶対に弱音を吐くものか!”と自らを鼓舞して、勉強して、できなかったことができるようになっていく時代もあります。だから、弱音を吐く、吐かない、どちらもいいと思うんですよね。ただ、弱点は隠しても絶対にバレますよ(笑)。
<お話を伺った人>
株式会社アワシャーレ
代表取締役
小嶋 美代子さん