「会えたらいいですね」と好きな人にLINEをしたら、返信は「ありがとう」とスタンプのみ。これは脈無し?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室54】
✳️今週のお悩み✳️
会いたいと思っている好きな人にLINEしました。その人はスポーツをしていて、また次の試合があるそうなので応援のLINEを送ったのちに、また夏に会えたらいいですね、と送ったのですが…… 、返ってきた返信が、応援した事に対して、ありがとう。というのと、親指を立てたスタンプのみでした。会えたらいいです、というのに対しての言葉の返信はありませんでした。これはもう脈無しということで諦めた方がいいのでしょうか⁇
(まるも・20歳)
こばなみ:
ちょっと待った! 宇多丸さん、今週のお悩み相談に行く前に、先週の記事について読者の方よりご指摘があったので、先に話してもいいですか。
これ、下線部分ですが、私たちはガキっぽい男子がつぶさんをからかったのだと思っていたのですが、「男子にあげた」というのは、クラスの誰かがつぶさんをからかって「野菜を男子にあげた」という意味ではないかと。
宇多丸:
いやこれホント、正直言うと「あげられた」って表現が引っかかってはいたんだよね、なんかちょっと変だな……と。
僕らはなぜか「男子」が主語だとハナから思い込んでしまっていたけど、確かに目的語として読んだほうが意味も通るし、間違いなくそっちが正解でしょう。
相談文を誤読するなんて回答者失格だよ! 深く反省いたします……。
ということでつぶさん、前回分を読まれて、さぞかし戸惑われたことと思います。申し訳ありませんでした!
そして、ご指摘いただいた方、本当にありがとうございます。 こういうの、ものすご~く助かるので、皆さんも何か気づいたことがあったらどんどん教えてくださいね~。
こばなみ:
もし女子が「バカで買いすぎちゃったから食べてー!」とかって、野菜をパスしたのだったら、それっていじわる? にしても、小学生レベルですよね。
宇多丸:
わざわざ「男子に」と書いてるくらいだから、まぁ相手は女子ってことで間違いないでしょう。
しかし面白いもんで、デリカシーがない発言なのに変わりはないとしても、言ったのが同性、しかも異性へのアピール込みとなると、よりはっきりとした悪意のニュアンスが、やはりどうしても感じ取れてしまうよね。
「クラスに馴染めない」っていうのも、要は「同性グループからの微妙な仲間外れ感」の問題なのだとしたら、事態は僕らが思っていたよりちょっとだけ、深刻なのかもしれない。
でも、だとしたらなおさら、本筋の回答自体は元のままでいいのかなと思います。 すなわち、もう17歳なんだし、「クラス」とか、まして「クラスの同性チーム」なんていう狭い単位に囚われることはないよ、と。 外の世界に自分のチャンネルを増やしてゆけばゆくほど、閉じた世界のちまちました嫌がらせなんか、本気でどーでもよく感じられるようになってくるから!
で、相談文にあるような「微妙なこと」ゆえに怒れもしないような、クラス女子からの「悪意、の・ようなもの」への対処法としては、やはり前にあった「ママ友同士のSNSでなにげにハブられてる?」の回を参考にしていただきたいと思います。 例えば、問題の発言の主と、じゃあ本気で仲良くなりたいのか? 実は、よく考えてみりゃ別にそこまで親しくしたくもないような相手なんだったら、悪意かどうかの判別が難しい程度のことは、まさしく「その程度のことだ」と割り切ってスルーしてったほうが絶対に得ですよ。 なんにも気にしてないような顔して、必要だと思えば、前回言ったように何かクラスに貢献するようなお役目でも買って出ればいい。
それでもしつこく微妙なハブりムード出してくる人がいたとしても、これも前回言ったことと結局通じる話だけど、そういう人って、意外と周りの人からもちゃーんと「そういう(残念な)人」って評価されてたりするもんだから。見てる人は見てると思って、胸を張ってればいいんですよ。 いずれにしても、来年は受験やらなんやらで周りの空気もまた全然変わってくるし、そんなに長く続く悩みじゃないはずだからさ! なんとか乗り切ってください!
こばなみ:
というわけで、今週のお悩みに戻りますが……。こ、これは……!?
宇多丸:
脈はないでしょうね(キッパリ)。
こばなみ:
以上で終わり?
宇多丸:
これで変に期待持たせるようなこと言うほうが罪だよ!
向こうもまた会いたいと思ってるなら、「僕もです!」とかなんとか、フツーにがっついてくるよ!
それでも彼はさ、まるもさんのアプローチに対して、「いや、会うのはちょっと……」とか直接的に拒絶はしないで、「応援してくれていることに関しては感謝しています」と、要は、恋愛対象には思えないけど不快に感じてるわけでもないですよ、という風に、できるだけまるもさんを傷つけないように気を遣って返事してるわけじゃん。 この気遣いを無下にしちゃダメ!
逆にここでなお食い下がっちゃうのが、僕が前から言ってる「片想い体質」の人の無神経なところなんですよ。 まぁ、まるもさんはもう、半分自分でもわかってるっぽいからまだいいけどさ。
こばなみ:
前にも片想い派の方からの「LINEで飲みに誘った彼からの返信はスタンプだけ……。この後、どうしよう?」という相談もありましたね。
宇多丸:
まぁ、誰かから好意を持たれて嫌な気持ちになる人もあまりいないわけで、そこまでは別にいいんですよ。
ただ、相手側の気持ち含めて、向こうの事情みたいなものに配慮するっていうのは、恋愛とか以前に、人間関係を結んでゆく上で最低限のマナーだと思うんですよね。 ひょっとしたら迷惑かも?くらいは、常に念頭に置いておいたほうがいい。 逆の立場になって考えてみればすぐわかることだと思うんだけどなー。
決して悪い人じゃないんだけど、どうしても恋愛対象とは思えない、みたいな相手から告白めいたアプローチがあったとして、やっぱり最初はなんとか傷つけないように、やんわりかわそうとするんじゃない? でも、相手にはそのメッセージが上手く伝わっていないのか、どんどんアタックが積極的になってくる。 要はコミュニケーションがスムースに取れてないっていうこの時点でもう、こっちからすればさらに、コイツ相手に恋愛なんかマジ論外だわ~ってことになってると思うんだけど……。 で、仕方なくこちらとしては結構はっきりした拒絶の態度を取ったつもりでも、ま~だ全然しつこく食い下がってこられたりしたらさ、このご時世、もうはっきり「怖い!」ってなってきちゃうでしょ。
最初の、好意を持たれること自体はもちろんイヤじゃないけど……、というところで、ちゃんと相手の気持ちや事情を汲み取って、いさぎよく引き返していれば、少なくとも嫌な印象を持たれることはなかったのに!って話ですよ。 いっつも片想いばっかりしてるっていうみなさん、自分はそういうことになっちゃってないですか?
こばなみ:
そもそも片想い体質の気がある私ですが、それはちょっと神棚にあげますけど、たしかに気のない人から無神経に何度も野球観戦の誘いがあって、うげ~って思ったことがありました。
宇多丸:
拒絶のメッセージがちゃんと伝わってなかったんじゃない? ホント、相当はっきり言わないと分からない人ってやっぱいるからね。
こばなみ:
なんかもう連絡するのが嫌で無視しちゃいました。そしたらそれ以来はメールとかこないですけど。ほっ。
宇多丸:
人の気持ちってさ、そもそも前提として、「すれ違うもの」なんですよ。
だからこそ、「コミュニケーション」には価値がある。 普通はすれ違って当たり前のものだからこそ、互いの努力や偶然から、たま~にそれがピタッと一致!というのが尊いし、嬉しいわけでしょ。 恋愛が成就する瞬間なんてのはまさにその最たるものなわけで。 でも同時に、それはずっと安定的に続く状態じゃない、ということも覚悟しておかないといけない。コミュニケーションに「ゴール」はないんですよね。
その意味で、片想い体質の人が心のどこかで信じてる、もしくは信じたいと思っているのであろう、「想いは絶対に伝わる……!」的な幻想が、実際のコミュニケーションではまず、有害に働くんだと思います。
極端な話、女性誌とか見るとさ、ほとんど呪術的というか、とにかく超自然的な方法で「意中のカレを振り向かせる!」的な広告がよく載ってるじゃん。 あれなんかもう、相手の気持ちっていうか、自由意志みたいなものさえ完全に軽んじてるわけだからね! 片想い体質も、こじらせるとそこまでいっちゃう。 しっかし、昔から思うんだけど、仮にホレ薬でもなんでも、「強制的に」自分のことを好きにさせることができる術があったとしてよ、それってホントに「好かれた」ってことになるの? 嬉しいかそれ?って思うんだけどな~。
とにかく、実は自分のことしか考えてないから、どんどん相手本人のことはないがしろになっていく傾向があるわけですよ。
こばなみ:
私、思うんですけど、これってただ単純に彼のファンなんじゃないですか? 彼は大学のアメフトとかラグビーとかのスター選手かなんかで。
宇多丸:
ホントだね。
実際には、どっちかって言うと芸能人とファンの関係に近いような距離感だっていう可能性も、申し訳ないけどゼロとは言い難いものを感じます……。
もちろん、彼はよっぽど素敵な人なんだろうけどさ。 ただ、それは恋愛というより、「憧れ」なのでは?というのはちょっと立ち止まって考えてみてもいいかもしれない。 これも片思い体質の人にありがちなパターンなんで一応聞いときますが……、 彼のこと、本当に知ってる?
こばなみ:
LINEは今やみんながやってる時代ですから、わりと気軽に連絡先も聞けそうですしね。ほかの情報どうなんでしょう……。
宇多丸:
それこそ、彼女がいるかどうか知ってる? 彼に聞いたことある?
たぶん彼には、「選手として活躍している自分を応援してくれる人」はたくさんいるんですよ。
まるもさんからのアプローチのさばき方ひとつ取ってみても、そんな感じはすごくする。
でも、彼だっていつかはなんらかの理由で選手を引退して、言っちゃえば「ただの人」になっていくかもしれないわけでしょ。 当然、現役時代の「ファン」の多くは去っていくでしょう。 それでもなお、まさしくユーミンの『ノーサイド』ばりに、「人々がみんなあなたを忘れても ここにいるわ」っていう、憧れとは次元の違う関係を築いてゆけるかどうか。 彼にそういうお相手がすでにいるのかどうかはわかりませんが、少なくとも今のまるもさんに、そう断言できるほどの根拠は何もないんじゃないかと思うんです。
逆に、自分はあくまで彼の「ファン」なのだ、と自覚できれば、気持ちもだいぶ軽くなるのではないでしょうか? むしろ、一ファンという距離感を保っていればこそ、彼にも必ずあるはずの嫌な面、醜い面などを見ないで済む、都合よくカッコいいところだけを堪能していればいい、という利点もある。 恋愛関係ったっていいことばかりじゃない、むしろめんどくささが付きものなわけですから……。そこまで引き受ける覚悟が自然とできるような誰かが、早く見つかるといいですね!
【今週のお絵描き】
彼のこと、本当に知ってる?
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2014年7月26日に公開したものを再編集し、掲載しています。