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【福岡】九州でただ一人の女性杜氏・今村友香さん

日本全国でがんばっている女性を紹介する「のぼり坂47」プロジェクト。今回は、福岡県の若波酒造で杜氏(とうじ)・製造統括として活躍されている、今村友香さんに聞きました。


酒造りの全責任を担う「杜氏」から、蔵造りを行う製造統括の担当へ


私は、日本酒を製造する酒蔵において、製造の全責任を背負う「杜氏(とうじ)」という役についています。
まだまだ女性の日本酒造杜氏は全国に少なく、九州では残念ながら私一人という環境です。

近年は若手の育成にも力を入れるべく新しい杜氏を据え、私自身は「製造統括」という肩書も増えました。若手の育成や蔵の衛生管理の徹底、後世に残すためのマニュアル作成等、酒造りだけでなく蔵創りにも力を入れています。製造期以外は、「清酒専門官能評価者」という公的な利き酒の資格を活かし、さまざまな鑑評会の審査員を務めたり、日本酒の魅力を伝えるべく講演などにお声がけいただいたりしています。

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父親の体調不良をきっかけに、女人禁制の世界へ


今でこそ酒造りを生涯の仕事と思っていますが、蔵に入った当初はそうは思えませんでした。きっかけは、大学卒業の際に父が体調を崩し、稼業(酒蔵)を手伝うよう言われたこと。初めは「家族の犠牲になった……」そんな思いでいっぱいでした。

女人禁制と言われてきた世界であるため、どこに行っても男性ばかり。利き酒の列に並ぶとお互いに遠慮して、私の周りからはさっと人がいなくなる……そんなことばかりでした。

それでも、どんな小さな勉強会にも足繁く通い、‟わからなくて当たり前”の精神で、周りの先輩職人さんたちに聞いて聞いて聞きまくりました。時には頼み込んで別の蔵で修行させてもらったことも。

そうして「本気」であることを感じてもらい、それらの努力が鑑評会での受賞という形になり始めた頃、自然と皆さんに認めてもらえたように思います。

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日本文化の継承を次の世代へ


蔵に入り20年。最初の10年は修行時代と位置づけ、次の10年で自分なりの酒造りをがむしゃらに行ってきました。この先の20年は若手の育成に励み、次の代への日本文化の継承に力を入れていきたいと考えています。

私が蔵に入って10年程たった頃、「右腕が欲しい」と感じ、東京で社会人をしていた弟に蔵に入ってもらいました。しばらくは、弟が経営を、私が造りをと、二本の矢で行っていたのですが、それでも「もっと強固な体制にしたい」と感じ、酒類総合研究所時代の同期生を蔵に呼び寄せました。

「酒類総合研究所」とは、酒類業界の者が拠り所にしている研究機関であり、多くの酒類従事者がここで研修を受けています。数年、自分の蔵で経験を積んでから研究所へ派遣され、数ヶ月研修を受け、そこで学んだ技術を自分の蔵に持ち帰る、といったイメージです。
私は蔵入して2年目に初級コースを、10年目位に上級コースを受講しました。その上級コースで同期生として出会った仲間が、右腕として福岡にやってきてくれました。

現在は皆で酒造りは行いますが、弟は経営、同期生は酒造り、そして私は蔵創りという、それぞれ柱となる役割を決め、今は三本の矢体制で蔵を守っています。

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福岡若波酒造(全員集合)

女性が酒造りに入るため、力やスピードで敵わないところはオリジナルの道具を作ることで補ってきました。そんな風景を見ていたラベリング担当の女性から、「私も酒造りをやってみたい」との申し出があるなど、今は製造メンバーの女性比率も増えてきています。

「女性だから無理だ」と諦めるのではなく、どうやったら補えるのかを考える。そうすることで、女人禁制と言われてきた世界にこそ、まだまだ女性の活躍の場が眠っているように思います。

ただし、そこで女性に必要なことは「覚悟」を決めること。入ったからには、女性だけが優遇されることがあってはならず、性差のない職人の世界で、平等に力を出し合うことが重要なのではないでしょうか。


全国の女性へメッセージ


お仕事もプライベートも、何でも欲ばりに選択できる環境が徐々に整ってきたように思います。
選択と同時に何かを諦めるのではなく、時には周囲に上手に助けてもらいながら、「どうやったら希望が叶うのか」、その術を探し、自らが動き、構築していきましょう。

女人禁制と言われた世界にも、女性の役割はたくさんありました。周囲の理解と自身の覚悟で、無理だと思う環境も変えていくことができます。

★好きな言葉★

「ピンチは何よりのストーリー」

一見困難に思えることこそ、成し遂げた際に何よりのストーリーに転じると思うからです。
それが困難であればあるほど、他の人にはない商品価値であったり、自分史になると実体験から学びました。


大正11年創業の老舗酒造
若波酒造合名会社

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若波酒造合名会社

http://www.wakanami.jp
〒831-0008 福岡県大川市鐘ケ江752
0944−88−1225
sake@wakanami.jp

大正11年創業。九州一の大河「筑後川」の傍に位置します。全国の若手蔵元ベスト8に選出頂き、近年の福岡県酒類鑑評会では全ての銘柄が最高位のトロフィーをいただきました。





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