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既婚男性はそんなに簡単に好きでもない相手と関係を持ちたいと思うの?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室200】


✳️今週のお悩み✳️

先日、職場内で不倫関係にあった方と縁を切りました。相手の方は30代後半で妻子持ち、私は家庭環境のこともあって男性が苦手で、さらに理想が高すぎる面倒臭い女子で20代後半にして恋愛経験がまったくありませんでした。彼とはここ最近、共通の趣味があって仲良くなり、連絡先を交換しました。仕事場では挨拶をする程度の関係でしたが、私は転職をするために県外への引越しを間近に控えていたので、最後だからということで食事に行きました(彼はとても面白い人なので実際は、最後にエッチしよう、という誘い方をしてきました……)。 その帰り道、お互いの恋愛観について語っていたらいきなりキスをされました。私は彼のことが気になっていたので、罪悪感はありましたが、関係をスタートさせました。 彼は私のことが好きと言っていたし、会いたいと頻繁に誘ってきました。私は少し彼のことを疑っていたのですが、「エッチ目的だったらもう襲ってる」と言い、イチャイチャだけのデートを数回していました。しかし、エッチをした途端、彼の態度が冷たくなって、仕事が忙しいなどの理由をつけて会ってくれなくなりました。SNSや会社では優しく話してくれるのに、なぜか会いたくないというオーラを感じるようになりました。やっぱりただの遊びだったんだと思い、引越しを機に私から縁を切ろうと伝えました。彼は「ごめんね」としか言いませんでした。宇多丸さんに2つ質問があります。既婚男性はそんなに簡単に好きでもない相手と関係を持ちたいと思うのですか? 彼はエッチ目的で、しかも私ともう物理的に会えなくなるから、ということで計画的犯行に及んだと思いますが、少しも私を好きではなかったのでしょうか? また、私はいわゆるやり捨てをされたのだと思いますが、彼のことが好きだったのと初めての相手だったので、なかなか忘れることができません。どうしたらいいのでしょうか。

(こらそん・28歳・福岡県)


宇多丸:
途中までは、まぁそういうこともあるかもね、くらいの感じで読んでたんだけど……、最後のほうの「計画的犯行に及んだ」って表現で、またなんですぐそういう極端な決めつけに走っちゃうかな、とはちょっと思っちゃいました。
厳密に言えばさ、彼が「本当には」どう思ってたかなんて、どうしたってわからないことなわけだしさ。これは彼に限らず、他者と付き合うって、本質的にはそういうことだから。
まぁ、ひょっとしたらこらそんさんは、「計画的犯行」とか、あえて嫌な方向にデフォルメして彼をとらえることで、ご自分の気持ちにふんぎりをつけようとしてるのかもしれないし、だとしたらその心情はわからないでもないけど……。
でも、少なくともこの相談文を読む限りは、彼がそこまで明白な「やり捨て」目的をもってこらそんさんにアプローチしてたかどうかなんて、判断できる要素はないと思うんですよね。
「妻子持ちなのに」ってことで彼を一方的に悪者にしたいのかもしれないけど、別にそれを隠してたとか、嘘ついてたとかじゃないんでしょ? つまり、こらそんさんだってそれはわかったうえで、デートでのイチャイチャを重ねたり、肉体関係を結んだりしたりしてたわけでしょ? だったら、そこに関してあんまり自分だけが被害者みたいに主張するのは、ちょっとズルくないかなという感じが僕はしちゃいます。
こらそんさんがいくら恋愛経験に乏しいからって、そこはやっぱり、もういい歳した大人同士が、曲がりなりにも合意のうえで及んだ行為なんだからさ。相応の責任は自分で負わないと。
「既婚男性はそんなに簡単に好きでもない相手と関係を持ちたいと思うのですか?」って、そのまんま「独身女性はそんなに簡単に既婚男性と関係を持ちたいと思うのですか?」って返されちゃうよ!
 前にあった、腕枕までしてもらってて「なんでキスしてきたんでしょうか?」じゃねぇよ!って回を思いだしましたよ(笑)。

ただ、もちろんその彼も、こらそんさんと一線を越えるところまでの押し具合と、事後の引き潮っぷりのコントラストが、いくらなんでもわかりやすすぎ(笑)というのも、たしかみたいだからねぇ。こらそんさん側にしてみりゃ、結果としてやり逃げされた感が否めないというのも、まぁ無理からぬ話ではある。
これはあくまで僕の想像だけど、あらかじめそうしようと考えてたというよりは、いざこらそんさんとヤるという初期目的を達してみると、途端にもろもろの危険性のほうが気になりだしちゃって……、要は急に怖くなって逃げた、というあたりが真相じゃないかなぁ、おおかた。
だってこの彼、女の人とそこまで遊び慣れてるようには思えないもん。距離の詰めかたにしろ口説き文句にしろ別れ際にしろ……、はっきり言うと、けっこうキモいよこいつ!(笑)
 とは言えね、ぶっちゃけ、一度ヤッた相手とは必ずその後も継続して付き合わなきゃいけない、なんて法も別にないわけで……。
例えば、厳しい現実として、恋い焦がれてた相手なのにいざヤッてみたら意外にピンとこなかった、あるいは向こうがそう感じちゃった、というようなケースだって、余裕であり得るわけでしょ。その場合、どっちが悪い、って問題でもないじゃん。ただ単に、相性が合わなかった、ご縁がなかったというだけで。
じゃあさ、そういうこらそんさんは、この彼と、これからどういう風になってゆきたかったの?
「少しも私を好きではなかったのでしょうか?」っていうけど、じゃあどの程度の「好き」なら許せたのかな。
彼が、現状とは逆に、いったん肉体関係を持ったことでさらにこらそんさんとの不倫関係にズブズブにはまっていって、ついには奥さんと別れます!って言いだして泥沼の離婚劇に……とか、そういう域まで行けば満足だった?
 極論じゃなく、そうなってゆく可能性だってホントにゼロじゃなかったわけだけど。
そして、こらそんさんは、そこまで彼のことが本当に「好き」なの?

こばなみ:
そんなところまでの覚悟はないんじゃないですか。

宇多丸:
もし仮に、本気でそこまで彼のことを好きになっていたんだとしても、彼側が同じようなテンションになってないんじゃ、どうにもなんないことだしね。
立場的に彼のほうが明らかに高いリスクを負っているわけだし、より慎重になるのもまぁ、心情的に理解できなくはないでしょ。まぁ、だったらもっと手前から慎重になっとけよって話でもあるんだけど(笑)。
でも、そこで彼がそそくさと逃げの姿勢に入ったからと言って、最初から好意もなにもまったくなかったってことには、別にならないでしょって思うんですよね。
そもそも「好き」って、いろんな要素をはらんだ感情じゃん。

こばなみ:
ケースバイケースだし、人にもよるし、好きとは何かなんて、ハッキリは決められないですよね。ぐちゃぐちゃですね。

宇多丸:
特に、恋愛の初期段階なんかさ、相手に抱く「好意」のなかに、けっこうな割合で性的な興味や欲望が入ってきちゃうというか、「好き」も「ヤッてみたい」もごっちゃになってて切り離すことができないって、ごくごく普通の、超当たり前の話じゃね?
 その意味で彼が、こらそんさんに性的なもの含む魅力を強く感じてたのは間違いないし、それって全然「好き」のうちじゃないの?って僕は思いますけど。
それを言ったらこらそんさんだって、彼に性的に強く惹かれてたからこそ、相手は妻子ある身とわかっていても、とりあえずは関係を深めてゆきたいと思ったわけでしょ。
最終的にお互いの熱量が一致しなかったのは残念だったというだけで、入り口に「とりあえずヤりたい」という名の「好意」があるのって、いいも悪いも、男も女もない話じゃないかと思うんですけど。
逆にさ、彼が最初から「女房と別れてもいい!」って勢いでこらそんさんに迫ってたとしたら、そっちのが明らかにヤバいやつでしょ(笑)。重いし、勝手にいきなり決めてんじゃねぇよ!って話で。
要は恋愛ってさ、そこまで後先考えてどうこうなるもんでもないでしょ、ってことですよ。

こばなみ:
こらそんさんが20代後半にして、初めての恋愛経験、セックス経験だったというところもあって、合意のうえでヤッたのに、勝ち負けとか善悪みたいに考えちゃって、「やり捨て」されたということにして、完全に彼を悪者にしてしまいたいとか、白黒つけたいといういう気持ちもあるんですかね。

宇多丸:
まぁ、こらそんさんの言う通り、「計画的犯行」だったという可能性だってそりゃゼロではないけどさ。
それにしたって、さっきから言ってるように、お互い合意のうえでコトに及んでいるのに変わりはないわけだし、一度ヤッたらそのまま付き合わなきゃいけないって決まりもないんだから、相手が自分の思い通りになってくれないからと言って、いくら悲しくても、いくら悔しくても、一方的に断罪するのはどうかと思いますけどね。
そういう男と自ら望んでヤッたんだ、という自分の選択の結果を、まずは引き受けないと。
ちょっと思うのは、こらそんさんは、二人の今後の関係について彼と直接話すことはまったくないまま、あくまで自分のなかで彼の気持ちが離れたと判断して、こっちはまだ好きだというのも伝えないまま、別れを告げてるわけじゃん?
 つまり、彼は実際んとこどうしたかったのかとか、こらそんさん側の本格的な好意を知ったらどう応えてくれたのか、もしくはくれなかったのかとか、そういうことを知るための努力、要はコミュニケーションを取るってことだけど、そういうのをいっさいしないまま、ただバッサリ関係を切っちゃっただけだからさ。
そしたら当然、妻子持ちっていうリスクを背負ってる彼側からこれ以上グイグイ迫り直すわけにもいかないんだから、そりゃ「ごめんね」って言って、ただただ引くしかないよね。
ひょーっとしたら、彼にしてみりゃ急に冷たくしたつもりも、会いたくないオーラを出したつもりもなんにもなくて、ただホントに仕事が忙しくて余裕がない時期だっただけなのに……っていうことなのかもしれないよ? 意地悪なこと言うようだけど。
どっちにしろこの彼、あんま器用な人って感じはしないですよね。意外とこらそんさんといい勝負かもよ、くらいの。
ホントのヤリチンって、お相手からまったくクレームが出てこないいわゆる「スムース・オペレーター」タイプか、逆に、どんだけクズ呼ばわりされても屁とも思ってない類いか(笑)、どっちかが多い感じじゃない?

こばなみ:
彼も不倫とか、初めてなんじゃないですか。

宇多丸:
僕もそんな気がする。
だいたいさ、「最後にエッチしよう」とか「エッチ目的だったらもう襲ってる」とか、冗談まじりっていう防衛線を張りながら、しっかりカマかけようとはしてるっていうこのセコい口説きかたが、個人的にはけっこう本気で嫌……、特に、「もう襲ってる」が笑えると思ってるあたりが、僕的にはもうアウトですね。

こばなみ:
冗談っぽく言ってダメだったらはぐらかす、みたいな感じですかね?

宇多丸:
要はこの彼、小心者なんだよね。
前に「男の本性はヤッた後に初めて出ると心得よ!」って言ったけど、今回の彼は、まさに小心な本性が出たから、ビビって逃げ腰になっちゃったわけですよ。
でも、振り返ってみると、口説き文句の時点ですでに、彼の気の小ささはしっかり現れてたんだよね。そこを見抜けなかったのは、おそらく端的にこらそんさんの経験不足ゆえでもあるんだろうからさ。今回は授業料だと思っといたほうがいいんじゃないかな……。
あ、でもいま気づいたけど、「最後にエッチしよう」って、最初から正々堂々やり逃げ宣言してたってことか?(笑)
 まぁなんにせよさ、恋愛関係、性的関係がなかなか思うように進展してくれない、たとえば自分と相手の好意のテンションがまったく一致していない、ような気がしてしまう……とか、別に今回のケースに限った話じゃなくて、誰もが何度となく繰り返している、ただの超普遍的な「人生あるある」の範疇だと思うんですよね。
みんな、今回は良かった、今回はダメだった、っていうのをひとつひとつ積み重ねてるだけなんだし、いまのこらそんさんみたいに、たった一回の経験からなにかすべてを決めつけてかかろうとすること自体、あんま意味ないことなんですよ。ぶっちゃけ、わかったようなこと言うには十年早ぇよ!(笑)
 大切なのは、じゃ、次はどうする?ってことだから。
そこで、さっきから言ってるように、痛い目に遭った経験を、自分が選択した行為の結果として受けとめ、反省し学習するということをちゃんとしないと……、つまり、「既婚男性一般」とか「男性一般」の話に単純化して、手っ取り早く気を楽にしてばかりいたりすると、ここから先もなかなか、こと恋愛に関して成長してくのは難しくなっちゃうんじゃないかな~、というのが僕の意見ですね。
とりあえず、「妻子持ちは守らなきゃなんないものが多いので、最初はいくら調子がよくても結局は臆病になりがち……、当たり前だけど!」っていう超一般論は今回の件から学べたはずだろうけど(笑)。
とは言え、じゃあ世の妻子持ちが全員、今回の彼みたいな反応しか返さないかというと、それはそれでまったくそうとも限らないわけだし。逆に、もっと熱烈に「好き好き!」丸出しで来る人のほうがいいかというと、それはそれでまた厄介さがあったりもするし。
そして、こらそんさん自身も、頭ではわかっていても、やっぱりまた深入りしてはいけないお相手に、それでもどうしようもなく惹かれてしまう、というようなことがいずれあるかもしれない。
でも、 そんなのは全部、「そのときはそのとき」だから!

こばなみ:
このことだけで変に凹むことはないと思いますよ。わたしもダメなのばっかり連発してますけど、転びながらもなんとかやって元気にやってます! あとそのうち、ありゃ小っちゃい男だったなぁ、次いこ次!って思える日が絶対に来ますから!!

宇多丸:
前の恋をどうしたら忘れられるかと言えば、最良の処方箋は無論、「次の恋」に尽きるってことですね。
とりあえず、そこまで「好き」な相手ってわけじゃなくても、さしあたって性的にはアリ、程度の「好き」でいいから、サクッともう一度性経験を持ってみるっていうのも、ひとつの手じゃないですかね。
要は前の彼が、そこまで唯一無二の特別な存在ってわけでもなんでもない、なんならオスとしてはわりとダメめなほうだった、ってことさえ心底納得できればいいわけですから。
とにかく、いまのこらそんさんに一番必要なのは、経験値の積み重ねですよ!



【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2017年7月15日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
こちら
※シングル「世界、西原商会の世界! Part 2 逆featuring CRAZY KEN BAND」が配信中! Victorサイト限定CD盤もリリース!
詳しくは
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。




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