メンバーが若手ばかり! 面倒を見る余裕がない。こんなとき、どうする? 《部下の育成編-3》
リーダーとして仕事をしていれば、必ずぶつかる
コミュニケーションや人間関係の問題。
相対する人も違えば、状況もさまざまで、
「こうすれば正解」がないのが
難しいところです。
そこで、
リーダーとして働く女性が実際に体験した
コミュニケーションの課題と
それに対するアクションを
ケーススタディとして紹介。
同じような課題を抱える人のヒントになれば、
という思いで届けていきます。
今回は、IT企業でプロジェクトリーダーを担うリナさんが経験した、社歴が浅い部下の育成について。「リーダーになることで、自分の新たな目標や成長するための道筋が持てた」と話す、リナさん。そこに至るまでにはさまざまな葛藤や試行錯誤があったといいます。部下との関係をより良く育みながら、自分自身も成長し続けているその秘訣を伺いました。
右も左も分からない部下……。仕事にやりがいを持ってもらいたいけれど、時間がないなかでのフォローも難しい!
私の仕事は、ITエンジニアといっても開発や設計ではなく、すでにあるプログラムを調整するような、やや特殊な内容です。
所属する部署には100名の社員がいますが、そのうち同様の仕事を担当しているのは私を含めて3名しかいません。さらにチームのメンバーは私以外、1年目と2年目のほぼ新人。社歴が浅い部下のマネジメントをする傍ら、プロジェクトリーダーとして日々の業務に追われる日々を過ごしています。
リーダーになって直面したのが、業務の意図や目的を理解してもらいながら、やりがいを持って仕事を進めてもらうことの難しさです。もちろん与えられた仕事を黙々とこなすのも新入社員時代には大事なことですが、それだけではどうしても行き詰まってしまいます。
というのも、私自身、新卒で入った広告会社で、上司から営業の電話を1日200件かけろと指示をされたことがありました。「この業務、何のためにやるの?」と疑問になりながらひたすら電話をかけるのは、とてもきつかったんです。
そういった自分の経験もあって、意図や目的がわからないまま業務に取り組むことのしんどさは痛いほどわかります。
とはいえ、自分自身も抱える業務があったり打ち合わせが入っていたりすると、フォローし切れないことも。そのまま進めてしまうと、部下にとってよくないだけでなく、きちんと理解させてあげられなかったことを自分も後悔してしまうのですが……。部下は部下で、私の忙しそうな雰囲気を感じ取って聞きたいことを聞けず、お互いにモヤモヤしたまま業務をこなす状態になってしまったこともありました。
コミュニケーションしやすい雰囲気づくりで団結力アップ
そこで、部下が遠慮することなく聞きたいことを聞けるように、毎日30分の質問タイムを設けるようにしました。はっきり時間を区切ることで、モヤモヤをきちんと解消してから業務に取り組んでもらえるようになったし、こちらとしても仕事を進めやすくなり、お互いにとって良い効果がありました。
あと、いつもレスポンスが早い部下の返信が遅れていたら、様子を見に行ったり、「大丈夫?」と声をかけてみたり。ちょっとでも違和感があれば何かしらのアクションをするようにしています。
小さいお菓子を手に「食べますか?」みたいに、ふらっと歩み寄ってみると、「これも聞いていいですか?」と最初はそこまで話すつもりがなかったことまで出てきたりするんです。結構そういうことがコミュニケーションを築いていくうえで大事だったりもするんですよね。
また、「この業務はどこにつながると思う?」「お客さんはどんなことを求めていると思う?」と問いかけながら、できるだけ今やっている作業が何につながるのか想像してもらうようにもしています。
自分なりに試行錯誤しながら、がんばっている最中という感じですね。
メンバーがいることで自分のモチベーションも高まる!
今は昔に比べて転職することがネガティブなことではなくなって、むしろ同じ会社で最後まで勤めあげる方が少数派。そういった時代のなかで、ここでこの経験をしたおかげで、転職活動や新しい会社で有利に働いた、と思ってもらえるくらいに部下が育ってくれたら嬉しいです。
その一環として、最近では週に1回勉強会の時間を作り、具体的な技術を教えるほか、1週間の間に私自身が学んだこと、経験したことをみんなと共有しています。こういった機会は部下のためだけでなく、私のためにもなっています。
自分一人のために学ぼうとすると続かなくなることもあるけれど、学んだことがチームにも活きると思うと、モチベーションが高まるんです。
忙しい合間を縫っていかに勉強の時間を確保するかが難しいところではありますが、人に教えることで自分自身の弱い分野も見つけられるし、無理しているようで楽しんでもいます。
また、チームで仕事をしていなかった頃は、ニッチな分野だけに相談できる人や大変さを分かち合える人がいなくて、自分が倒れたら終わってしまうというプレッシャーも抱えていました。だからこそ今、たとえ若手でも分かち合える仲間がいることのありがたさを実感しています。
私は人に喜んでもらうのが好きなタイプというのもありますが、部下には幸せに生きて欲しいし、新卒時代に私が経験したようなしんどい思いはさせたくないという想いが強くあります。前に立って引っ張っていくようなタイプではないにも関わらずリーダーという立場を引き受けられたのは、そういった想いがあったからです。
リーダーゆえの大変さはありますが、お互いのずっと先の未来を見据えて頑張っています。部下の存在は私の心の支えであり、希望でもあるんです。
イラストレーション:高橋由季