責めたり嫌味になったり……、怒りにまかせて夫に言い過ぎてしまう自分をなんとかしたい!【ライムスター宇多丸のお悩み相談室289】
✳️今週のお悩み✳️
私は結婚して7年目の夫のことでご相談があります。家庭でのコミュニケーションの取り方がお互いに違い、ついつい言葉数多くなってしまう自分のコントロールがどんどんできなくなってきました。
主人とは普段の夫婦仲は良く、朗らかで裏表のないたわいない話はなんともないのですが、夫婦や家族の話し合いや言い合いになった時に、主人は自分の考えを話すのが苦手で、黙り込んでしまったり、先送りにするところがあります。4歳年下の私からの指摘を受けるのは嫌なようなので、当初は言いたいことを言えず我慢していましたが、気持ちを察してもらえないことにイライラして、雰囲気が悪くなる上に、怒ってる私が本当に話したいことを見失うので、感じたことをできるだけその場で話すように変えました。改善したところもあるのですが、図星を突くと不貞腐れたように「俺が悪かったです」と言って自己完結させて終わらそうとし、その態度に逆上してしまい、主人を責めてしまいます。主人の様なタイプの人に責め立てるのは一番だめだと頭ではわかっていて、主人の気持ちを察して寄り添った物言いをしなければと思うのに、頭に血がのぼると、「なんで私の気持ちを察そうとしないやつの気持ちを察しないといけないんだー」とまた違うところで怒ってしまいます。そうなるとどんどん加速して、責めたり言い過ぎたり、嫌味になっていってしまいます。
主人のことを大事に思っているのに、怒りにまかせて言い過ぎてしまう自分をなんとかしたいです。どうしたら、感情に負けず、円滑で有意義な話し合いが出来るでしょうか?
(にくづめ小僧・31歳・奈良県)
マネージャーおさない:
やばいですよ、これは!
宇多丸:
おっと、離婚歴ありのおさないさん。経験上、これはやばいですか?
マネージャーおさない:
私、8年目で離婚したんですけど、これ全体的にわかるなと思って。
私も普段仲が良かったし、うまくいってたと思ってたし、ライブとか一緒に行ったりしてたんですけど、だがしかし!
なにか揉めたときにこんな感じで。
だから、急に旦那さんが「離婚する」とか言い出すかもしれないなって。
宇多丸:
ただ、にくづめ小僧さんも、こんなことしちゃダメだってわかっているのに、やっちゃう、ってことなんだよね。
旦那さん側は旦那さん側で、なんとかしようがあるのかな?
マネージャーおさない:
こういう人だと思うしかないんじゃないかな。
宇多丸:
旦那さん、考えを表に出すのが不得手というのもあるんだろうけど、僕が想像するに、要は面倒なことをできるだけ避けてゆきたいタイプ、ってことなんじゃないかな。
お恥ずかしい話、僕がまさにそうなもんで……。
とにかく話し合いとかめんどくさいから、すぐ「ワタシが悪うござんした」的な感じで終わらせようとしちゃう、みたいな。
ま、夫婦ってもっとも近いところにいる「他者」なわけだから、こういう人と思うしかないっていうおさないさんのスタンスもひとつの知恵だとは思うけど……、とはいえやっぱり友人知人レベルとは違う、「パートナー」でもあるはずなんだから、なんとかして、ちょっとは歩み寄れないのかね。
そもそも論として、本来はこの内容をそのまんま、旦那さんに直接相談するべき、ではあるはずなんだよね。
揉めちゃうかな?
マネージャーおさない:
揉めないとは思いますけど、何回言っても変わんないだろうと思っちゃうんですよねぇ。
宇多丸:
「こういう話が面倒くさいのはわかるけども、今日だけは我慢して聞いてくれませんか」って、努めておだやか~な切り出し方でもダメかな。
マネージャーおさない:
でも、にくづめ小僧さんも、怒らないで言えないんでしょうね。
宇多丸:
うーん、「いつも怒りすぎてごめんね」って件を、いきなり怒っては話しださないんじゃない?
やっぱ、とりあえずいったんは謝ってくれてる、下手に出てくれてるってだけでも、先方の気持ちのやわらぎかたは、だいぶ違うと思いますけどね。
マネージャーおさない:
私、謝んないよねって言われてたんですよね。
友達とかにはすぐ謝るんですけど、元旦那には絶対謝らなかったですね。
宇多丸:
まさに「謝らない、謝れない女」だったわけだ(笑)。
つまり逆に言えばやっぱり、「まずは謝る」ことの効果はあるってことでもあるよね。
「私も悪いとは思っているの」と伝えるだけで全然違うというか。
あとは、「私が今度こんなふうに怒っちゃってたら、そのときは言って」っていうのはどうですか?
それですぐハッと我に返れるかが勝負だけど……。
そこでつい「は~? 私が悪いんですかぁ~?」とかってなっちゃうと元も子もないけど。
マネージャーおさない:
たぶん、にくづめ小僧さんは、図星っぽいことを正論でストレートで投げるから、旦那さんとしては、逃げられないみたいなのはあるんだと思います。
宇多丸:
やっぱ、こっちが正しいときほど相手に逃げ道なくすような怒り方しちゃうのは良くないんだよね。
要は、言うまでもなくこれは勝ち負けの問題じゃなくて、お互いが歩み寄って仲良くする、というのが大目的なんだから、仮に途中でうっかりムカついてバッドバイブス出しちゃったとしても、すぐ謝るなりなんなりしてちょっとでもまた歩を戻していけばいいじゃん、ってことだよね。
ちなみにさ、「感じた事をできるだけその場で話すように変えました」って、これ自体はとてもいい心がけだと思うんだけど、そういう方針転換をしたこと、旦那さんには話したのかな?
ひょっとしたら、自分は改善してるつもりなのにあっちが察してくれないから余計に腹立っちゃう、みたいな独り相撲状態になってはいないかなと。
でもまぁ、ほかの部分では仲いいなら、糸口は摑めるんじゃない?
まったく会話ができないって相手でもないんだし……って、そこまで行ってるようなとこはもう、そりゃ別れるしかないだろうけど。
まずは穏やかな対話の場をもうけて、話し下手な旦那にできるだけリラックスしてもらって、「あ、こっちが一方的に怒られるってわけじゃないんだな」と身構えを解いてもらうところから、って感じですかね。
マネージャーおさない:
たぶん、こういうときって、にくづめ小僧さんのペースになってるんですよ。
で、旦那さんが黙り込んでいることに対してガーッて言って、ペースがますます固定されちゃう。
宇多丸:
旦那からしたら、今日は仕事のことで頭がいっぱいだからやめてほしいのに、みたいなときもあるでしょうしね。
そこで「じゃあいつならいいのよ!」とかってキレちゃったりしたら、彼もまた余計に、なんでもいいからとにかくその場を終わらせたい、というほうに気持ちが行っちゃうでしょうからね。
こばなみ家はどうなんだっけ?
こばなみ:
オットは怒ったりはしないですけど、正論できっかり言ってくるタイプですよ。だから私はもう疲れてるし、面倒くさいので、「もーいーじゃん謝るからさ!」って言ってます。完全に、にくづめ小僧さんの旦那さん側ですよ。
あと、話が長い&繰り返しが多いので「今日は疲れておりますので、明日にしていただけると幸い」とかなんとか言って寝たりします。
宇多丸:
「時間を置く」のはひとつの手だから、いいんじゃないですか?
こばなみ:
宇多丸家は?
宇多丸:
強く怒られるとかはまずないけど、さっき言ったように、僕が面倒な話題を嫌がる傾向はたしかにあって、露骨に「いまその話するの?」って感じを出しちゃってるみたいで。
「だから結局なにも話せなくなる」って悲しげに言われたことはある。そうなるとさすがにこっちも、心底申し訳なくなりますよね。
マネージャーおさない:
じゃあ、これは悲しそうに言えばいいんですか?
宇多丸:
こういうケースに限らず、人情に訴えるのに「悲しそう」はもちろん有効ですよ。
こばなみも、部下に「残念です」って言うって言ってたじゃん。
こばなみ:
そうです、そうです。怒りだと、怖くて閉じ籠るか、または反発するしかなくなると思うから。
宇多丸:
人間関係も、物理法則と同じで、作用反作用ってことですね。
攻撃的に来られたら当然防衛本能が働いちゃうし……、逆に、前も言ったけど、人から優しくされたいなら、こっちから優しくする以外の方法はない!
マネージャーおさない:
身内だと思うからこうなっちゃうんですよね。
宇多丸:
そうそう。近しい仲すぎて他者性を忘れてしまいがち、という問題はきっとあるよね。
なにかミーティング開こうってときにさ、こっちのペースだけで「はい今から集合~! グズグズしないで~!」とか、普通の人間関係だったらありえないわけじゃん?
こばなみ:
嫌だし怖い~! でも、にくづめ小僧さんのところ、そういうことですもんね。
宇多丸:
あとさ、たとえば運動部の話し合いで、コーチがお前のプレーあそこ良くねぇぞとかって言うのは、よりよい成果を挙げるための、あくまで前向きな提案であって、感情的に「怒ってる」わけじゃないはずじゃん。
そこで、思い通りにならないからってイライラして怒鳴ったりするのは、本来の目的を若干見失なってるわけですよ。
ただ、いまのにくづめ小僧さんは、そういう自分の傾向についてすでにかなり自覚的でもあるわけだから、解決まであと一歩のところまでは来てるんじゃないですか?
マネージャーおさない:
早めに話したほうがいいですよ!
宇多丸:
「おまえ謝ったことねぇよな」ってことにならないうちに!
ま、男だってそういう人、むしろ多いかもだからね。
僕こそ気をつけなきゃだよ……。
こばなみ:
私は「ごめんねごめんね」って謝ってさっさと終わらそうとしすぎに注意だな、と思いましたよ……。
とにかく、まずは旦那さんに相談を。
にくづめ小僧家がよき話し合いができるよう、祈っております!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2019年8月3日に公開したものを再編集し、掲載しています。