付き合ってはいないけどカップルのような関係の彼に「ヤりたい」と言われた!?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室51】
✳️今週のお悩み✳️
彼の気持ちが分かりません。以前友達の紹介で知り合って、友人関係にいた男性から最近になってアプローチされています。毎日LINEや電話をしていて、「好きだよ」とも言われ、私にとってはカップルのような関係です。かなり遠くに住んでいるので、夏休みなどに会おうと言われたり、ちょっとエッチな話もされたりします。まだ処女だということも知られてしまいました。この歳で処女は引かれるかな、と思ったら「逆にヤりたい」と露骨に言われました。 でも、「付き合ってる訳じゃないのにそれは無理だよ、私たちって付き合ってるの?」と聞いてみました。すると「俺は好きだよ。カトリーヌはどうしたいの?」と返されてうやむやにされてしまいます。ここで私が付き合いたいって言ったら、軽いと思われてセックスがゴールになりそうで怖いです。それでも、私から勇気を出して告白しなければ進めないのでしょうか。
(カトリーヌ・19歳)
こばなみ:
「逆にヤりたい」。何度も声に出して読みたくなるセリフですね。
宇多丸:
どんだけストレートなんだ!
ある意味潔いですよ。嘘はついてないわけだし。
好意的に解釈すればさ、カトリーヌさんが19歳で処女っていうのを恥ずかしく思ってるっぽいのを、「そんなことないよ! それはむしろプラスなくらいだよ!」とフォローしてあげるつもりでそういう発言になっちゃった……とかも、まぁ考えられない話じゃない。 ちなみに「この歳で処女は引かれるかな」って、まだ19歳でしょ? んなわけねぇだろ!とは言っておきます。
ただ、その後のやりとりが両者ともに激しくかみ合ってないんだよね。 「私たちって付き合ってるの?」という問いに対して、「俺は好きだよ」っていうのは答えになってない。 カトリーヌさんが「うやむやにされて」しまったように感じるのは、その部分なわけだよね。
でもな……、たぶんだけど、彼も困っちゃったんじゃないのかね、「私たちって付き合ってるの?」って質問自体に。 だって、直接会った回数もそんなに多くなさそうだし、その数少ない機会のなかで、キスするでもなんでもいいけど、カップルとしてはっきりした関係まで踏み込んだことがあるわけでも当然なくて、要は今のところは事実上、LINEとか電話でちょっぴりイチャイチャ連絡取り合ってるだけの段階ってことでしょ? それを「付き合ってる」とは言わないと思うよ、普通は!
だから、彼が正面からの回答を避けたのは、そこで「付き合ってはいない」という答えをはっきり出してしまうと、カトリーヌさんの論法上「付き合っていないなら、ヤるわけにはゆかない」ということが確定してしまって、彼としてはこれ以上関係を進展させようがなくなってしまうから、なんではないかと。
そう考えると、その後の彼の「俺は好きだよ」「カトリーヌはどうしたいの?」っていう、一見論点ずらし&質問返し的な言い方も、わかりやすく翻訳すれば「好意があるのはウソではないし、だからこそもっと深い関係になりたいと思っている」「このままだと膠着状態になってしまうから、あなたも自分の気持ちに正直になってくれ」、もっとはっきり言うと「じゃあ、そっちはヤりたくないの?」ってことを聞いてるわけですよ。
それに対して、カトリーヌさん側は相変わらず、なんにせよまずは「付き合う」っていう一種の「契約」をしてからでないと、それもできれば彼側から持ちかけてほしいんだけど……みたいなことを主張してて、やっぱり全然かみ合ってない。 僕個人は、お互いフリー同士で好きだって言うんならいったいなんの問題があるの、さっさとヤるなりなんなりすればいいじゃん!と思いますけど。
こばなみ:
たしかに1回いたしてもいいのかも……!?
宇多丸:
さっき言ったように19歳で処女でも別に恥じることは何もないんだけど、カトリーヌさんの恋愛観が、まだちょっと高校生っぽいっていうか、やや幼い感じがするのも確かだと思うんだよね。
まず、処女だっつってんだから、セックスしたところでカトリーヌさんが「軽い」とは別に思わないだろっていうのもあるし……。
「セックスがゴールになりそうで怖い」っていう懸念は、特にカトリーヌさんの立場なら理解できなくもないし、まぁ実際そういうこともあるんだろうけど、仮に今回そうなっちゃったとしても、それはその彼がその程度のヤツだった、というだけのことじゃんよ。痛い目に遭った経験を、次以降の相手選びに生かしていけばいいだけのことですよ。
それに、それって別に、「ちゃんと付き合う」っていう例の「契約」を交わした後で晴れてヤったのだとしても、相手次第では全然起こり得ることだから! 例えば、一応最悪レベルの予測をしておけば、彼が根本的にウソつきで、実は別個に彼女がちゃんといたとか……、あくまで仮定の話ね! それでいて、そういうリスクをあんまり怖がりすぎてると、いつまでも、誰ともなんにもできなくなっちゃう。
カトリーヌさんは、初めて性的な関係にまで踏み込む相手だからこそ絶対に「失敗したくない」と思ってるんだろうし、それで例えばホントに結婚まで行っちゃって幸せになりました、となる可能性だってもちろんゼロじゃないんだけど……、この段階で残酷なことを言うようですが、初めての相手とそのままずっと上手くいき続ける人なんて、まずいないから!
こばなみ:
稀に初めて付き合った彼とゴールインとかってありますけど、ほっとんどないですよね。
宇多丸:
つまり、たいていの人は失敗に失敗を重ねて、前に言った「授業料」をさんざん払って、ようやくひとつの結論にたどりつく……っていうか、そこまでいければ全然ラッキーなほうじゃん!って話なわけで。
できるだけ授業料払わずに、痛みから学ばずに幸せだけゲットしようなんて甘いし、人生の歩み方としてもあまり豊かとは言い難い気がします。
とは言え、わざわざつまんない男と初体験の思い出作る必要もないからね。 とりあえず、彼に対する自分の気持ちを、改めてじっくり見つめ直してみて……、それで「やっぱり、どうしても好きっ!」ってことになるようだったら、ここで思いきって一歩踏み出すのは、僕は全然アリなんじゃないかと思いますね。
こばなみ:
大人になると、「付き合ってる」とか、そういうのハッキリさせないで一緒に過ごしていくパターンって多いですよね?
宇多丸:
確かに。少なくとも「まず最初に付き合う宣言しないとダメ」感みたいのは全然ないよね。
なんとなくお互いの好意は感じ取ってて、二人きりで会う機会が増えて、相性を確かめ合いつつ、よきところでチューしたり、遠からずヤッちゃったりして、それでも互いにテンションが下がらないようなら、さらにどんどん親密な間柄になってゆく……、で、カトリーヌさんのケースとは完全に逆で、そういう「事実上付き合ってる」かたちができた上で、「これって付き合ってる……んだよね?」って確認があったりなかったり。 まぁだいたいそんなもんじゃない? くっついちゃうほうが先で、付き合ってるかどうかは、あくまで事実確認でしかないという。 でもやっぱ、そういう流れのほうが自然だし、実はより多角的に、つまりより慎重に相手との相性を判断してるんじゃないか、とも思うんですよね。
そもそもさ、最初に「好きです! 付き合ってください!」とか言うやつ。あれウソじゃん! だって、ロクに相手のことも知らないうちから、見た目とか表面的な部分で判断して「好き」とか言ってるだけなわけでしょ。 で、いざ「付き合い」始めてみたら、話すらまともに合わない同士だったりさ。そんなやつとセックスしたって楽しいわけねぇよ! だから、むしろリスク高いんじゃないかと思うんだけど、「最初に付き合う宣言しないとダメ」派は。
こばなみ:
付き合う→セックスと順序をふむことが美しくみえるんでしょうね。
宇多丸:
それって要は、擬似的な結婚をしたがっている、はっきり言えば「結婚ごっこ」がしたいってことだよね。
でも、前も言ったように、結婚という制度と自由恋愛って、実はそんなに食い合わせがいいものじゃないからさ。
まして経験値の低い者同士だったら、そう長続きするもんじゃないのも当然の話なんですよ。
それと、これは前からちょっと言いたかったことなんですが、セックスして相性がいいような相手は、たぶん他のもろもろも相性がいい、つまりパートナーに求められる諸条件をすでに結構なレベルでクリアしてる人と言っていいんじゃないか?というのがあって。
相手の気持ちをどこまで汲み取れるか、どこまで踏み込むか。逆にこちらも、他の人には見せないような部分をどこまでさらすことができるか。そして、そのせめぎ合いを、どれだけ自然にリズムとしてシンクロさせてゆけるか……、要はそういう、超高度なコミュニケーションをしているわけでしょ、実は。 プラス、体臭とか肌質とか、生理的にどうにもならない好悪っていうのも当然のように乗り越えてるんだからさ。 そのレベルですんなり「合う」って、やっぱり相当なもんだろうと思うんですよね。 逆にそのレベルで「合わない」と、他のもっと表面的な条件がいくらクリアされてたとしても、結局ツラくなってくるんじゃないかなぁ。
こばなみ:
人格というか、性格というか、自然と出ちゃいますもんね。
宇多丸:
例えば、どれだけルックスがバッチリな男でも、セックスが自分勝手だったら、コイツ一事が万事この調子なんだろうな……って気がしちゃうでしょ?
で、たぶん、実際そうなんだよ!
そんなの絶対すぐイヤになっちゃうと思う。
だから、「まずヤってみよう!」っていうのは、ひとつの方法としてそんなに間違ってない気がします。 あっ、ただし、避妊と病気には、くれぐれも気をつけてね!
【今週のお絵描き】
声に出して読みたくなる「逆にヤりたい」
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2014年7月5日に公開したものを再編集し、掲載しています。