「女らしくしていないから生理痛が起こる」と言う母。私が悪いのか……、不安になります。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室235】
✳️今週のお悩み✳️
今悩んでいることは母親との関係です。私は都内に実家暮らしなのですが、昨年の年末に体調を崩してしまい、会社を退職しました。まだ精神的、身体的に回復していないため、自宅で療養中というかたちです。初めは会社を辞めることに厳しく反対されていましたが、体調を崩してからは理解してもらい、基本的には仲が良く、友達の様に身の回りの人間関係や趣味について話し、母からも父や友達についての相談を私にしてきたりなどコミュニケーションは取れている方だと思います。しかし、ひとつの話題になると必ず大喧嘩してしまいます。それは、私は生理痛がかなり酷く、酷い日は1日中寝ていたりということもあるのですが、実家でお腹が痛いと苦しんでいると、「女らしくしていないから生理痛が起こる」と言われます。これは母の信仰している宗教の価値観で、簡単に言うと日頃の行いが身体に現れるという考え方なのですが、お腹が痛くて苦しんでいる時に言われるとかなりキツいです。しかも、生理中は精神的にも不安定になっているためそう言われるとカッとなって強い言葉で言い返してしまい、それがさらに「そういうところを治しなさいと言ってるの」と言われ大喧嘩に発展……ということを毎月繰り返しています。知り合いの人や有名人が女性の病気になったと聞いても同じことを言っているのを聞き、自分がなったら同じことを言われるんだろうなと不安になります。母は今まで生理痛にも女性の病気にもなったことはないので苦しみがわからないのだ、と考えることもできますが、母自身も別の不幸に苛まれたときは自分を戒めています。宗教については私も小さい頃から話を聞かされており、話を聞く限りでは悪徳なものではなさそうなので、私は信仰してはいませんが、信仰は母の自由だと思っているのですが、もしこれから妊娠や出産をする機会があってなにかあったら何を言われるのだろうととても不安です。彼氏や友達に相談すると「そんなことはない」と味方をしてくれますし、その話題だけは仕方ないと割り切るしかないとも思うのですが、やっぱり本当は私が悪いのではないかと母の台詞が頭を過り、不安になります。私は少し気が強いと言われることがあり、自覚もしているので気を付けようとは思うのですが「女らしい」ってなんなのだろうとぼんやりと考えてしまいます。それ以外では上手くやっていると思いますし、すぐに実家を出たいと言うわけではないのですがそういうときの乗り切り方をアドバイスしていただければ幸いです。
(すずめのなみだ・24歳・東京都)
宇多丸:
まずもうはっきりしてるのは、その点に関するお母さんの発言は、言うまでもなく科学的根拠ゼロな上に、倫理的にもかなりひどい部類だってことですよね。
ちょっとでも良識がある人なら確実に眉をひそめるレベル。
すずめのなみださんは、もちろんできる限りお母さんの考えを尊重してあげたいという気持ちからでしょう、「話を聞く限りでは悪徳なものではなさそう」とか言ってあげちゃってますけど、僕はこれ、そうやって相対主義で許容できるような一線を、完全に越えちゃってると思いますよ。 「らしさ」の型に人を押し込めればいいなんていう了見自体ロクなもんじゃないし、ましてそれを理由に現に苦しんでる人自身を責めるなんて、ほとんど「邪悪」と言っていい領域だと思いますけどね。
こばなみ:
性格が生理痛の重さに関係あるなんて聞いたことないですよ。
そんな宗教あるんですね。
宇多丸:
生理の話ですでにこの勢いなんだから、たとえばLGBTとか性同一性障害とかに対してどんな言い方してるのか想像すると、ゾッとするわ。
ということで、「やっぱり本当は私が悪いのでは」なんて考え方だけは絶対にしないでほしいですよね。 当たり前だけど、すずめのなみださんに、そこんとこの責任なんかあるわけないから! 彼氏やお友達のなぐさめのほうが圧倒的に正しいです。
ただまぁ、そこでお母さんにその信仰自体を考え直してもらうとかっていうのも、現実問題難しいんでしょうからね。
すずめのなみださんも、お母さんとは仲がいいだけになかなかお辛いでしょうけど……、その部分に関してはやっぱり、家族と言えども、ときには決して相容れないところが見えてしまうこともある「他者」なんだ、というある種の大前提を、改めて受けとめてゆくしかないでしょうね。
こばなみ:
相当大変だと思いますけど、そこは割り切ったほうがいいってことですよね。
宇多丸:
そこだけはアイツ話通じねー! 人に紹介できねー!って、自分のなかで言わばネタ化して、苦笑まじりでスルーできるくらいになれば、だいぶ楽になるんじゃないかなとは思うけど。
ただ、お母さんがそんな極端な信仰に走ってしまった原因というのは、たしかになにかあるのかもしれないですけどね。 なにかにとても悩んでいるとき、そこに救いを見出した、というような……。 ま、とは言えそういう風に、ある人がある宗教にあるタイミングで救われたという事実があるからと言って、その教えが人生や世界のほかの局面でも普遍的に正しかったりフィットするとは、当然限らないわけですけど。
とにかくその、お母さんなりの苦しみ、みたいな部分に少しでも想像力を働かせてあげられるようなら、家族としてはもう、じゅうぶんじゃないかな?と僕は思います。
すずめのなみださんはたぶん、前にあった「尊敬してたお父さんの思想がアレに思えてきて……」っていう相談と同じく、今まさに親を乗り越えようとしてるんですよ。 このキツさはまさに成長痛!
こばなみ:
今回はかなりひどいですけど、そうやって親であっても合わなくなること、そんな状況を乗り越えていかねばならないことって、これからどんどん増えていきますよね。
すずめのなみださん、ほんとくれぐれも自分を責める必要なんて1ミリもないですから、どうか割り切って進んでいっていただければと思います! ファイト!!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2018年5月12日に公開したものを再編集し、掲載しています。