【宮城】魚を1尾おろせるように! 魚食文化復活を叫ぶ「石巻さかな女子部」
日本全国でがんばっている女性を紹介する「のぼり坂47」プロジェクト。今回は、魚のおろし方をメインに、魚食文化の復活を提唱するために活動している「石巻さかな女子部」の塩坂佳子さんに聞きました。
魚をまるまる1尾、おろすことの提唱やオリジナルメニューの開発で、魚食文化の魅力を伝えたい!
「石巻さかな女子部」は、魚をまるまる1尾購入し、自宅でおろすことで、頭からしっぽまで無駄なくいただく……。そんな魚食生活の楽しさを広く伝える活動をしています。
部員は、地元・石巻や仙台の女性が中心で、数は少ないですが、東京から登録してくれている人もいます。職業も、元パティシエや看護師、エステティシャン、専業主婦など幅広いのが特徴です。
メインのイベントは、部員を集めての「旬のお魚おろし会」。
おろし方や保存法、アラの使い方など、一般的なお料理教室ではなかなか教えてもらえない魚の扱い方を伝授しています。
今まで魚を触ったことがなかった人が「お魚おろし会」に一度参加しただけで、「魚のハードルが下がった」、「家でもやってみようと思う」、「もっとできるようになりたい!」など、魚に対する印象がガラリと変わったと言ってくれることが一番うれしいです。
海の近くに住む石巻の人でも、意外と魚をおろせないという人は多く、魚食文化の魅力を再認識するきっかけになったと実感できる瞬間でもあります。
また、「石巻さかな女子部」では海の幸を使ったオリジナルメニューを開発し、イベントに出店。魚の街・石巻を盛り上げる活動も行っています。
オリジナルメニューでは、ほやの中にシソご飯をつめて天ぷらにした「ほやなでしこ」が好評です。
このメニューは、仙台で開催された大規模イベント「ほや祭り2018」内での「ほやレシピグランプリ」(ほやを使ったオリジナルメニューを販売し、来場者の投票でグランプリが決まる)で、初出店ながら特別賞を受賞しました。
また夏には、石巻に新しくできた物産館「いしのまき元気いちば」にて、毎年ほやのイベントを開催。買い物に来たお客様たちに、ほやのおろし方やいろいろな食べ方などを伝授しています。
きっかけは「魚の街・石巻」なのに、自分で魚をおろさない人が多かったこと
東日本大震災後、私は石巻でボランティア活動をしていました。
最初のうちは、瓦礫や泥を取り除く肉体作業。のちに本職であるライターのスキルを活かして被災者の声を集めて残す冊子作りなどを行いました。
このボランティアをきっかけに、2015年の秋に、東京から石巻へ移住。
その時に気づいたのが、「魚の街・石巻」という割には、街なかに鮮魚店は少なく、自分で魚をおろせる人も少ないということ。
そこで、産業復興の一環として、「この街から魚食文化の復活を叫ぼう!」と、「石巻さかな女子部」を結成しました。
私は過去に2年ほど、小笠原諸島の父島に住んでいたことがあり、毎日釣り船のお手伝いをして、海や魚食文化の面白さを知ったのです。この父島での体験が、「石巻さかな女子部」の結成におおいに役立ってくれました。
活動を始めるにあたっては、老舗鮮魚店に協力を仰ぐと、すぐにOKをいただけました。そして、旬の魚のおろし方を大将や職人さんたちから学ぶ姿をブログなどで発信したところ、続々と参加希望の女性たちが集まってきました。
残念ながら、こちらの鮮魚店は2019年に閉店。しかし、1年を通して毎月ちがう旬の魚のおろし方を教えてもらったことで、代表的な魚はだいたいおろせるようになったのが、大きな財産です。
その経験を活かして最近は、部員だけではない、誰が来てもOKの一般向け「お魚おろし方教室」もはじめました。ほかにも、街を盛り上げるためのいろいろなイベントを継続して行っています。
魚の楽しみ方を伝え、日本の魚食文化を次世代に受け継いでいきたい!
魚を自分でおろしたことがないという人、パック入りの魚しか見たことがないという子どもも多いなか、「魚はまるごと1尾買って自分でおろせば、楽しい上に経済的」ということなどを広く伝えていきたいです。
魚は、パック詰めにされる際に廃棄されがちなアラも、自分でおろせばアラ汁などに利用でき、無駄がありません。
まるごと1尾は大きすぎると思うかもしれませんが、適切な保存方法を知れば、ひとり暮らしの人でも十分、食べ切ることができます。
消費者が自分で魚をおろせるようになると、パック入りではない、まるごと1尾の魚が売れるようになります。すると、加工する人手や手間が要らなくなるので、魚屋さんも大助かり。大手スーパーなどでも近海の新鮮な魚が並ぶようになり、次世代にも日本の魚食文化が受け継がれていきます。さらに、パックのプラスチックゴミも減少すると、良いことばかり。
そのためにまず「自分たちが変わろう!」と、世の女性陣に呼びかけていきます。
魚をおろせるようになると人生が変わりますよ♡
魚食文化復活のために活動している
「石巻さかな女子部」
水産の街・石巻から日本の魚食文化復活を叫び、まずは消費者である自分たちが変わらなくては! と日々、お魚修行に励む女性たちの姿を発信しています。