昔の友達の結婚式に遠くからかけつけたもののリアクションは微妙。お足代も出ないし……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室65】
✳️今週のお悩み✳️
先日、友達が結婚して、披露宴に呼ばれました。その友達は高校の時に1年間だけ同じクラスで仲良くしていて、卒業後すぐは何度か遊びましたが数えるほど。結婚の知らせと招待が来たときは心からおめでとう!と思えたのですが結婚式に行ってみると、十何年会ってないブランクがあるため、彼女が最近仲良くしている子たちと比べるとなんだかあっさりとした扱い。しかも、わたしは転勤して今県外にいるので、飛行機代など交通費もそれなりにかかったのですがお足代が出なかったことで、こころの中は少しもやもや。行かない方が単純に祝福できたな~と思ってしまいます。このもやもやを昇華する方法はありますか? またお足代のことを本人に伝えてしまうと、がめついでしょうか?
(さわこ・三重県)
宇多丸:
まずさぁ!
高校の頃に1年間仲良くしてただけ、卒業後も数回会って以降は十何年もご無沙汰、今は遠いところに住んでいる……なんていう、はっきり言ってもう「友達」って表現していいかすら微妙な、ものすごく薄~いつながりの同級生を、わざわざ結婚式に呼び寄せるかね?
こばなみ:
数合わせでは? 誰かが来れなくなっちゃって、繰り上げ当選みたいに呼ばれるってこともありますよね。
宇多丸:
そうなの!? ひどくないそれ?
なんにせよ僕の感覚ではこれ、そもそも招待が来ること自体、かなり不自然に思える距離感なんですけど。
その意味では、呼ぶほうも呼ぶほうだけど行くほうも行くほうって感じも、悪いけどちょっとしちゃうんだけど。
こばなみ:
結婚式のお呼ばれを断るのってなかなか難しくないですか?
宇多丸:
別にそんなことないと思うけど……。
普通に予定が合わない場合もあるし、まさに今回のケースみたく、実際のとこそんなに親しい間柄ってわけでもないから、出席してもきっと居心地悪いだろうし、正直お金ももったいないしめんどくさい……的な判断することだってあるしさ。
で、そういう距離感の人のためにこそ、「祝電」っていう素晴らしいしきたりがあるわけじゃないですか!
こばなみ:
あ、思い出しましたけど、私も小学校の時の友達の結婚式に呼ばれたことがありました。小学校のときは確かに仲良かったけど、彼女はヤンキーになって会ってなかったんだけど。
でも、そうだ。行かなかった。式だけだったから、いまそんなに親しくないし、そんな状態で式に行くのもなんだかなぁとか思って。
宇多丸:
前も話に出たけど、それこそ小学校の友達なんて、定期的に会ってなかったら、見た目はもちろん、人格的な連続性もほとんど感じられないだろうからね。事実上、ただの知らないおじさんやおばさん!
だから、そのこばなみの判断は正しいと思うよ。
こばなみ:
あと、もういっこ思い出したんですが、大学のときの友達に卒業後に10年以上してから結婚式に呼ばれたんですね。で、結局地方だったのと、フジロックに行く予定の日だったのと、何がなんでも行かねば!という仲では今はないかな、と欠席しちゃったんです。で、その時はそういえば、友達グループの女子5~6人、みんな呼ばれてた。
だから、同じグループの子、みんなに声をかけた、ってのはあるかもしれないなって。
宇多丸:
なるほど!
仲間全員に一応声だけはかけとかないと悪い、みたいなことか。
それならちょっとわからないでもないな。
その上で、ひょっとしたらお友達も、とは言えさわこさんが遠いところに住んでるのもわかってるから、一応声だけはかけたけど、たぶん来ないだろう、と踏んでたのかもしれないよね。 そしたら、まさかの出席! そこで、遠方からわざわざ来てくれたのはもちろん嬉しいけど、今となっては実はそんなに話すこともないし、お足代を出す経済的余裕もないし、正直ちょっと気まずい……とか内心は思ってて、その後ろめたさゆえに余計に態度もギクシャクして、結果として「あっさりした扱い」になってしまった、みたいな可能性も、ゼロではない。
こばなみ:
グループで呼ぶ呼ばないでモメたりすることは、結婚式に限らずありますからね。
宇多丸:
ただまぁ、仮にそうだったとしても、やっぱちょっと無神経は無神経だよな。
ホントに相手がさわこさんのことを考えてくれてたんならさ、長いこと会ってもいないのに誘うんだから、いきなり招待状だけ寄越すんじゃなくて、たとえば電話なり手紙なりで別個にちゃんと連絡して、近況報告くらいはしてくれたって良かったはずじゃん。
そのやりとりのなかで、「わざわざ来てもらうのも悪いし、正直お足代とかを出す余裕もないので……」みたいなすり合わせもできたはずだしさ。
でも、その一方で、さわこさんの読みが甘かったのも事実だと思うんですよ。 だって、現実問題としてずっと疎遠だった相手なのに、勝手に「ちょっとはお金も出すだろう」みたいに思い込んでたってことでしょ。 それはそれで、その友人と同じようにとは言わないけど、やっぱりちょっぴり図々しくはあるわけですよ。
そもそも、十何年間会ってもいなかったのに、再会していきなり「最近仲良くしている子たち」と同等もしくはそれ以上の盛り上がりを期待してるっていうのも、明らかに多くを求めすぎって感じがするし。
まして、後からお友達にその不満を伝えるなんて、絶対にやめたほうがいい! 仮にそれでなんぼか金銭的な見返りをもらったとしても、どっちにとってもすごく後味の悪いことにしかならないと思いますよ。
だからまずは、相手も相手だけど、自分も少し迂闊だった!ってことをちゃんと認めることじゃない? もやもやという名の、このどこにぶつけていいかわからない怒りを鎮めるにはさ。
その上で、使っちゃったお金のことはご祝儀のうちだと思って、プラスに考えるようにしたほうがいいよ。 だって、そもそもの大目的が「お祝い」であることには変わりないんだからさ。 で、少なくともそこが達成できたのも確かなんだから、せっかくの善行をイライラで台無しにするのはもったいないよ。 「ずっと会ってなかったお友達のためにわざわざ自腹でお祝いに駆けつけたアタシって、なんて太っ腹なイイ人なの!」って、いい気持ちになってたほうがずっと得だって!
ちなみに、これは一般論ですけど、奥ゆかしい国民性ゆえか、僕らって、オープンにお金の交渉をするのが全般に苦手な傾向はありますよね。 たとえば、こないだもラジオで話題になったんだけど、ライター仕事の依頼とかで、ギャラがいくらかっていう本来一番最初にクリアにするべき件をはっきりさせないまま、頼むほうも受けるほうもファジーに話を進めてしまうパターンが多々あるっていう……。
こばなみ:
たしかにたしかに! 私も今はズカズカ聞いちゃいますけど、それこそ若造のときはギャラの話って聞きづらかったし、逆にライターさんにお願いするときも、なんだか言いづらかったな……。
宇多丸:
そんなの、もちろん褒められた慣習じゃないんですけどね。それで後から揉めたりもちょいちょい聞くし。
今回の相談も、最初の時点で「ぶっちゃけ、お足代出る?」「ぶっちゃけ、難しいかも」みたいな話が忌憚なくできるくらいの関係なら、いろんな意味でなんの問題もなかったはずだもんね……。
お金の件はまさにそうだけど、ホントは一番話しておかなきゃいけないはずの大事なことほど、恥ずかしいのかめんどくさいのか、とにかく話題として持ち出すのをついつい避けちゃう、結論出すのを先延ばしにしちゃう、ってことは往々にしてあるよね。そして、そのせいで今回のようにしこりを残しちゃったり、より深刻なトラブルを招いてしまうケースも出てきがちだと。
ポイントは、なんであれ「独り合点しないようにする」ってことなんじゃないかって気がします。 特に、「友達だから」「家族だから」自動的に気心が通じてる、みたいに思い込むのは要注意! こまめにコミュニケーションを取り合ってないと、人というのはすぐに理解し難い「他者」になってしまうものなんだ、というのは、我々みんなが日頃から肝に命じておいたほうがいいことかもしれませんね。
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2014年10月11日に公開したものを再編集し、掲載しています。