もうすぐ結婚する元カレとキス! 未練があるから拒否したくない!! これからどうすればいい?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室57】
✳️今週のお悩み✳️
元カレと変な関係です。彼には現在彼女がいて、あと少しで結婚するそうなのですがこの間会った時にキスをされました。私と別れてからも彼女が何人かいたのですが、このようなことが数回ありました。私はまだ彼に未練があるのでこういうことをされると拒否出来ません(というか、拒否したくありません)。彼は何を考えているのでしょうか? それから、私はどうするべきなのでしょうか?
(Chacha・26歳)
宇多丸:
まぁ、ひと言でいえば、惚れた弱みに付け込まれてる、ってことだよね。
キスされそうになった時点で、「アンタ、こんなことしてどういうつもりなの?」とか聞くこともできないまま、ズルズル行っちゃってんだもんね。メロメロじゃん!
この連載でもたまに出てくる話だけど、色恋って、とかく支配関係にもなっていきやすいものじゃないですか。 意識的にせよ無意識的にせよ、優位な立場にいるほうが、不均衡な関係性を「利用」してるようなパターンっていうか。
で、このケースで彼が何を考えてるか?って言えば、そりゃあ、「コイツは何があっても俺のことは嫌いになれないはずだ」っていう確信があった上で、できればずっとこんな感じで、付かず離れずの色っぽい関係をキープしたいと思ってるんでしょうよ。
だからもし、「あの人、ホントは今の彼女と別れて私のところに戻ってきたいと思ってるんじゃないかしら……」なんて淡い希望を抱いてるんだとしたら、それは少なくとも今のところはまずないだろう、とははっきり言っておきます。 いつかChachaさんのところに「やっぱり俺にはお前しかいない!」的に戻ってくることがあるとしたら、それはきっと彼が年老いて、他の可能性が全部ポシャったときじゃないですかね。
こばなみ:
うえーん。
宇多丸:
それを世の中では「都合のいい女」と言うのかもしれないけどさ。
僕はでも、だからダメだ、と自動的に決めつけることもあんまりしたくないんですよね。
「そんな関係、未来がないからさっさと切っちゃいなさい」っていうのが、とりあえずの正論なのは間違いないんでしょうけども。 だけど僕は、Chachaさんがそれでいいって思えてるうちは、別にそのまんまでいいんじゃん?とも思うんですよ。
こばなみ:
「というか、拒否したくありません」とキッパリ言ってますしね。
宇多丸:
そこに関しては迷いがないもんね。
そこまで好きだったらもう、今のうちは仕方ないよ。
むしろさ、他に彼女がいたり、結婚までしちゃったりもするけれども、Chachaさんだけは別個にキープしておきたい、っていう彼の「都合のいい」スタンスを、プラスに考える余地もあるんじゃないですかね。
こういう風に、「正式な」パートナーはいろいろ入れ替わったりもするんだけど、それとは別に、実は特定の相手との関係が細く長く密かに続いちゃってる、みたいなのってよくある話で。 腐れ縁っていうかさ。
そういうのって、一般的には「常に2番手に甘んじてる」ってことにされちゃうのかもしれないけど、逆の見方をすれば、「常に特別」「常に1番」とも言えるわけじゃん。 だって、奥さんとか彼女とかのほうが、ずっと騙され続けてるっていうか、彼の真実の顔を知らずにきちゃってるわけだからさ。
こばなみ:
前もそんな相談がありましたね。週4で彼の家に通ってるのに他に彼女もいるって話。
宇多丸:
今回の場合は、Chachaさんの言葉を信じるなら一応キスしかしてないってことなんで、もうちょいライトな火遊びって感じではあるけれども。どうせやるならしっかりヤッちまえよ!
でも逆にさ、Chachaさん側にしたって、彼が「完全には手に入らない男」であり続けているからこそ、ここまで気持ちを引きずっちゃってるっていう面も、確実にあるんじゃないの? 仮にずっと平穏無事なお付き合いを続けていたとしたら、今頃は、ふつうにこっちが飽きちゃってたり、完全に愛想を尽かしてた可能性だって全然あるわけですよ。
もちろん、腐れ縁なりに、というよりなんなら「正室」以上に、ちゃんと大事にされているというか、自分だけは彼にとって特別なんだ、と実感できるような扱いをちゃんとしてくれてるかどうか、は大事だろうけど。 あんまりいっつもオモチャみたいに弄ばれてるだけって感じなら……、いや、それだって、当人がそれでいいって言うんならしょうがねぇもんな。
個人的にはその上で、もうちょっと両者の力関係がイーブンになるといいなとは思うけど。 要は、Chachaさんにも別の「正式な」相手がちゃんといて、彼もそれを知っているっていう。 それでもなお、両者ともに今のような関係性を保ちたいと思うんだったら、あとは他人がどうこう言う問題じゃないですよ。 無論、お互いの「正式な」パートナーに対する最低限の敬意、つまり絶対に、死んでもバレないよう細心の注意を払うっていうのは大前提としてね。
こばなみ:
それ、いいですね。でももしChachaさんに彼氏ができたら、彼は絶対に嫉妬しますね。
宇多丸:
そうかもしれないね。
彼はこれまで、Chachaさんに対して、気持ち的には圧倒的な優位にあるということを、明らかに自分でも意識してたと思うからさ。
Chachaさん側に別の「1番」が出来ちゃうっていうのは、ひょっとしたら相当なショックかもしれない。
そして、そこでおそらく、彼の本当の器が問われるはずですよ。 Chachaさんの幸せや気持ちを本当に尊重しようとしてくれる人なのか。 それとも、その場その場で「コイツは俺のオンナ」っていう支配欲を満たしたいだけの人なのか。 後者だったら、逆ギレしてくる可能性もあるけど、そうなったらマジで、客観的に見たら完全にクソ野郎認定だから! そこで改めて「あ、こいつダメだ」って気づいたっていいんだしさ。
まぁそれ以前に、そもそもこれからChachaさんがちゃんと好きになれる人を他で見つけられるのか、いざそうなったらなったで、そのときまだ元彼とも関係を続けたいと思えているのか、まだなんにもわかんないんだけどね。
その意味では、さんざん焚きつけといてなんですが、元彼を嫉妬させるためにとか、対等な関係になるためにとか、とにかく元彼ありきでとりあえず誰かと付き合ったりするのは、何よりその人に失礼だし、Chachaさんのためにも間違いなくならないので、絶対にやめてくださいね~! だいたい恋愛に限らず、「人を試す」ようなことをするのって、僕はあんま好きじゃないです。
とにかく、彼に無駄な期待だけはしちゃダメだし、Chachaさんがやっぱりちゃんとしたお付き合いじゃないと辛いって感じだったら、それは当然、なるべく早くきっぱり諦めたほうがいいよ!って言うしかないんだけど……、でももし、そこまで切羽詰まってるわけじゃないならさ。 今のうちはそう堅く考えず、「好きな人とまたちょいちょいイチャイチャできてラッキー♥︎」くらいのテンションでいてもいいんじゃないですかね。
そうこうするうちに、いきなり彼が色褪せて見えちゃうような誰かと出会えたならば、それに越したことはないしさ。 そうじゃなかったとしても、大して好きでもない相手と時間つぶしするよりは、どうしても離れられない人に振り回され続けるほうが、ひょっとしたらやっぱりずっと楽しい、有意義な人生の過ごし方なのかもしれないし……。
いずれにしてもChachaさん側が、彼のしょせんは軽はずみな言動を、ことさら重く受け取らないようにする、ということが大事だと思いますよ。 遊ばれるんじゃなく、遊んでやれ!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2014年8月16日に公開したものを再編集し、掲載しています。