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職場の先輩に振られたし、そもそも仕事も向いてないし、辞めようか悩み中。でも地元では給料もいいし……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室117】


✳️今週のお悩み✳️
入社2年目の会社員です。職場の先輩に処女を捧げ、セフレにされ、エッチする前から好きでしたと告げたら振られました。こんなに好きになれる相手が今後現れるとは到底思えないほど、洗脳レベルで先輩のことが好きです。未練がましく飲みのお誘いをしたら「最近彼女できて泊まりに行くからムリだわ!」と断られてしまい、転職するか悩んでいます。今の勤め先は、漫画家になる夢を諦めて適当に選んだ仕事です。男だらけの職場で、体育会系で、職人がやる感じの仕事です。以前からこの仕事向いてないのでは?と感じており、先輩とのことを抜きにしても辞めたいと思っていました。ですが、地元では給与などで待遇がいい方なため、辞めても大丈夫なのか不安です。人見知りが酷過ぎて学生時代に恋愛と就活から逃げてきましたが、そのツケが回ってきたので自業自得だとは思います。会社で毎日一日中、死ぬほど怒られまくってもなんとか続けてきたのにこんなことで辞めるのは悔しいです。しかし、このままでは精神的に壊れてしまいそうです。辞めるべきですか? ずっと実家暮らしなので、転職を機に地元を離れて一人暮らしを始めて自立するべきですか?
(えりぽん・24歳・岐阜県)


こばなみ:
前回のお悩みに続き、会社の先輩との恋愛シリーズですが、今回はセフレ? 「好き」ってコクったら振られたということですが、ちょっと酷い気も……。

宇多丸:
そう? 
そりゃ、特にいい人とも言わないけど……、だって、この先輩の立場なら、えりぽんさん側の気持ちを利用して、自分に都合のいい搾取的な関係をズルズル続けたりすることだって、ぶっちゃけいくらでもできたろうにさ。少なくともそうはしてないわけだから。
逆に、両者の感情的なバランスが一致してないことが判明した時点で、「だったらここで止めておきましょう」と、お互い傷を深める前にスパッと決断してるわけでしょ。できるだけフェアであろうとしてるという点で、僕はそんなに嫌な感じはしないんですけど。
その後の「彼女できたからムリ」だって、気のないお誘いを断る理由として、これ以上ないほど率直だってだけで、別になんの問題もないでしょ。

こばなみ:
なるほど。そういう見方もあるのか。私はついつい、ひっどー! じゃぁヤるなよー!とか思っちゃいましたけど。

ただ、どうにもならないけど好きな人が職場ですぐそばにいるって環境は、辛いですよね。

オフィス・ラブが終わったときに困ったこと、経験者の女子部員さんからも届いております。

「職場ではないのですが、頻繁に会う取引先の人と付き合っており、振られた後も仕事で会うので辛かった。打ち合わせで妙に敬語を使われたり。顔を見るのも辛かったので、担当を外れられるように、社内調整をしました。とはいえ人づてに彼の話を聞くので、気にはなってしまいます……。なのでお気持ち、お察しします!」(みーちゃん)

「周りの人全員が同棲していたことを知っていたので、新しい彼氏を作れなかった」(白雪姫^ – ^)

「妻子持ちの上司と付き合っていたのですが、このままでいてもなんもない……、と思い別れました。嫌いになったわけではなかったので、同じ職場にいても、ついつい目で追ってしまいました。辛かったです。結局、悶々としていたのと、次へステップアップもしたいと思い、私は転職しました。今はその判断でよかったと 思っていますよ。思い切って環境を変えるのもいいかもしれません」(marry)

宇多丸:
僕が気になるのはむしろ、えりぽんさんの「処女を捧げ、セフレにされ」って言い回しのほうですね。

まず、いまどき処女を「捧げる」って……、生贄じゃないんだからさ。
はっきり言って、重いし、なんだか恩着せがましいよ!
 そういうのって、「婚前交渉した女=傷もの」みたいな、旧態依然とした、思いっきり性差別的なセックス観の名残りだからさぁ。今さら女の人がわざわざそんなイズムに乗っかってったり、あんまりしないほうがいいと思いますよ。

こばなみ:
彼側もまさか「捧げられてる」とは思ってなかったでしょうね。

宇多丸:
同じように、「セフレにされ」なんて言い方してるけど、彼にしてみりゃ、何も強制的にセックスの相手させたわけじゃないんだけど……って感じだと思いますよ。

前も言ったけど、そういう風にセックスというものを男から一方的に「ヤられるもの」として捉える考え方って、気持ちとしてはわかるんだけど結局のところ女の人をあんまり幸福にはしないんじゃないかと思うので、えりぽんさんも、早めの脱却をおすすめします……。

ただ、それでも彼のことが忘れられなくて同じ職場にいるのが辛い!という悩みかと思いきや、この相談文、中盤からまた論旨がどんどん変わっていくんだよね。
転職のことは「先輩とのことを抜きにしても」考えていたなんてことを言い出すし、最終的にはそれが親元や地元を離れるべきかどうか、という話にまで飛躍していく。

つまり、先輩の件はあくまできっかけで、要は、「自分の人生には、ここらで根本的な心機一転が必要なのではないか?」っていう自問こそが、実はここでの、一番の本質の部分なんじゃないかな、たぶん。

だとしたら……、とりあえず、本当に「このままでは精神的に壊れてしまいそう」なんだったら、それは当然、今の職場は辞めるべきでしょう。
でも、それだけでは足りないということを、えりぽんさん自身がすでに、ちょっと気づいているっぽくもあるんですよね。

今の仕事を続けている唯一の理由は、「地元では」上位の職場だからだと。
で、「こんなに好きになれる相手が今後現れるとは到底思えないほど」だという先輩も、そこで出会った人。
つまるところ、すべてが「地元」の、限られた選択肢のなかの話でしかないんだよね。

で、えりぽんさんも、それが内心わかっているからこそ、単に転職するだけではなく、生活環境そのものを完全に変えてしまうところまで行かないとダメなんじゃないか……みたいな思案を、最後の最後にわざわざ付け足したりしてるわけでしょ。

ひとことで言えば、「自分の生きてきた世界が、狭すぎるのが問題なんじゃないか」と、えりぽんさんも薄々思い始めてる、ってことじゃないですか?
 僕も、まさしくそうなんじゃないかと思います!

そこで、あえて乱暴な提案をさせていただきますけど、まだぜ~んぜん若いんだし、ここらで思いきって、どこぞの大都会にでも出てってみちゃうってのはどうですか?
 都会っていうのはつまり、とにかくなんにつけても選択肢が多くて、そこから何をどう選び取ろうと、基本的には他人からあれこれ干渉されたりしない場所、ってことですけど。

こばなみ:
そしたら、職場以外でもいろんな人と出会うチャンスもありますよね。

宇多丸:
もちろんそれゆえのリスクや孤独も比例して大きくなってはいくわけだけど……。
少なくとも、この人しか好きになれないとか、この職場しか選べないとか、あるいは一生こんな連中と一緒に生きていくしかないとか、とにかくそういう、「選択肢が少ない状態しか知らないがゆえの視野狭窄」からは、だいぶ自由になれる可能性が高くなるんじゃないでしょうか。

ちなみに、僕のラジオの初代プロデューサーの橋下吉史という人は、富山県出身で、長年、お隣の石川県金沢市の洗練された都会っぷりにコンプレックスを抱いて いたそうなんですが、そんな彼が東京に出てきて一番良かったことは、「ここにくらべりゃ、金沢、大したことなかったな!」と、いきなり上から目線になれたことだそうですよ!

その意味では、近場の地方都市とかじゃなくて、やっぱり一気に東京……、いや、いっそニューヨーク行っちゃうとかどう?
 東京ですら瞬時に見下せるよ!

こばなみ:
ニューヨーク、いい!

宇多丸:
摩天楼で「やっぱ日本ってダメなのよね~」なんて溜め息ついてるうちに、先輩のこととか、マジでどうでもよくなってるはず!

あと、もうひとつだけ、これはやや余計なお世話に属することかもしれないけど、ちょっと気になることがあって。
「漫画家になる夢を諦めて」投げやりに仕事を選んでしまった、って部分なんだけど……。

これはあくまで一般論として聞いていただきたいんですが、エンターテインメントのどのジャンルでも、一応金も取れるしキャリアも積んでるプロだけど、それとは別の仕事でも手堅い収入を確保してたり、なんならそれなりの地位に就いちゃってもいる、みたいなスタンスって、世間の皆さんが思ってるより、ずっとよくあることですから。
Charisma.comだって、まだ普通にOLやりながら活動してるってよ!

特にいまどきは、ネットの発展のおかげで、作品を世に問うってこと自体のハードルも、かつてとは比べものにならないくらい、劇的に下がったわけでしょ。
趣味的スタンスと「プロ」の境目が、昔よりだいぶ曖昧になってきてる。

だから、こういう話になるたびに、真面目な人ほど「夢を追い続けるか、堅実な職に就くか」みたいな二者択一に自分を追い込んでいってしまいがちなんだけど、まさにそれこそ「選択肢が少ない状態しか知らないがゆえの視野狭窄」に陥ってるだけなんじゃないかな~、とは常々思うあたりでして。

こばなみ:
女子部の部員さんでも、働きながらハンドメイド作家をやっていて、自分でネットショップをつくってたりする人もいますよ。

宇多丸:
何が言いたいかっていうとね、僕は、えりぽんさんの書き口から、漫画を描くことへの未練を、ちょっぴり感じてしまったんですよ。
あのときあんな選択をしたからこんなことになっちゃった……という後悔の念が、文面からにじみ出てる気がするというか。

もし、的外れだったらごめんなさい! このパートは笑ってスルーしてくださいませ。

でも、万が一、ちょっとでもまだ漫画への情熱がくすぶっているのなら……、それもやればいいじゃん、普通に!って意見は、一応お伝えしておきたくて。

もちろん、目指す作品のスタイルにもよるだろうけど、逆に、「仕事が終わった後とかでも、無理せず一人でコツコツ描きためていくことができる」形式から逆算して、じゃあ今の自分には何ができるのか、改めて考えてみるっていうのもアリだろうしさ。

なんにせよ、まだ24歳、自分の可能性を決めつけるのは50年早いわ、ってことですよ!

こばなみ:
まだ徹夜もできるし、体力ももりっとある年齢ですし、がんばー!! そして漫画ができたら、女子部JAPAN(・v・)サイトで紹介するので、ぜひ送ってくださいね!


【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2015年10月17日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
こちら
※シングル「世界、西原商会の世界! Part 2 逆featuring CRAZY KEN BAND」が配信中! Victorサイト限定CD盤もリリース!
詳しくは
こちら


女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。



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