初めてのご飯の後ラブホに誘われ、断ったら傷ついたようで電話しても無言な会社の先輩……。遊びだったんでしょうか?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室116】
✳️今週のお悩み✳️
職場で出会った違う部署の先輩から連絡先を渡されました。先輩は今は会社にいません。知り合ってから3か月後ようやく日にちが合ったので、ご飯に行きました。まともに話したことは、ありませんが、親身に仕事の話を聞いてくれ、ずっと笑ってばかりいました。ご飯を食べ終えてカフェに入ろうと言っても、彼は乗り気じゃありませんでした。私が次の日昼から仕事だったので、彼は今日は遊ぼうか!と私に言ってきました。遊ぶってなんですか?と聞いてもこたえてくれません。ドライブしたいと私が言ったので、車を目指して2人で歩いていたら、ラブホが近くにありました。私は嫌な予感がしましたが、知らないふりをしました。すると彼が、こーゆーとこ行ったことある?と聞いてきました。ないと正直にこたえたら、意外だね。今から行かない?と聞かれました。行かないと即答したら、理由を聞かれ、好きな人とじゃないとできないし、付きあってないと無理ですと言いました。彼は、じゃあ、付き合えばいいわけ?と聞いてきて、私はそうです!!と言いました。彼に私が好きか、付き合えるか聞いたら、嫌いじゃないとしか言いません。私は、付きあってと言ってほしかったです。しまいには、カレーが食べたくなったら、カレーを食べることと一緒。俺そんなに魅力ない? 断れたの傷ついた。何回会えばしていいの?と言われてしまいました。帰り、また遊んでくださいと言い、私は先輩のこと素敵だなと感じていたので、少し悲しかったです。とLINEしましたが、一週間既読になりません。こないだ電話を私がかけました。私の電話番号は教えていなかったので、電話に出てもらえず、非通知設定でかけ直してきたので、怒ってますか?と聞いても、ずっと無言で切られてしまいました。傷つけてしまったのかなあと感じています。元々LINEでは中々盛り上がらなくて、変なやつと思いました。一回り年上で、10年くらい彼女がいなかったそうです。デートに行くことになったとき、LINEでずっと服装何を着るか、靴かサンダルかを聞いてきたので、デートをあまりしたことないのかなと思いました。彼が連絡先を渡してきたので、うぬぼれていました。やっぱり遊びだったんでしょうか? 私はまた会いたいです。
(さっちゃん・22歳・宮城県)
宇多丸:
なんつーか、いろいろと突っ込みどころが多過ぎて、どこから話し始めれば良いものやら……。
まず、このラブホの誘い方、なに? とりあえずキスはしたとか、せめてドライブしてるうちになんとなくお互いイイ雰囲気になってきてとか、とにかくそういう方向での盛り上がりがまだいっさいない段階で、突然こんなこと言い出されたら、誰だって引くわ!
しかも、「とりあえず“場所としてのホテル”に行こう」的な、ちょーっとだけ遠回しな言い回ししてたりするあたりがまた……、80年代のヘタクソなナンパか! 五億歩譲ってさ、どうしてもそういうセコい手で行きたいのだとしたら、最初は「何もしないから~」とか猫なで声で無害アピールし続けないと、意味ないから!
でもコイツはそこで、いきなり露骨にヤるヤらないの話を始めちゃってるばかりか、大して好意はないことまでダダ漏れさせて、当然のごとくさっちゃんさんの態度を決定的に硬化させてしまってる。 その上、よくわかんない理屈までこね出して……。 これをキモいと呼ばずして、なんと呼ぶ!?
さっちゃんさんもさ、「私は、付きあってと言ってほしかったです」なんてのんきなこと言ってるけど、じゃあそこで仮に「じゃあ、付き合おう!」って即答してくれさえいれば、そのままラブホ行っちゃってたわけ? 「スタンプカード制」反対論者な僕も、さすがにそれは「ちょっと待て!」と言いたくもなりますよ。
ひとつはっきり言えるのは、コイツ、女慣れとか全然してないですよね。 ヘタすりゃ、誰かと付き合ったり、もっと言えばセックスまで行った経験さえ、実はあんまりないんじゃないかって感じがするくらい。 にしても、この言動は普通じゃないけど……。 なんにしたって、「遊びだったんしょうか」も何も、結局別になんもできてないわけですしね、この人。
こばなみ:
一回り年上で10年くらい彼女がいなくて、デートに行くのに服装や、靴かサンダルかって聞いてくるくらいの人ですからね……。
宇多丸:
カレーのたとえも酷いよね。
欲求を感じたらそれを満たすのは当然だ、って言いたいのかもしれないけど、それ、100パーお前の都合だから!
カレー側は食べられるかどうかを選択できないって時点で、そもそもこの比喩、全然適切じゃないんだよ。
またまた五億歩譲ってこのたとえに乗っかってくとしても、じゃあ、女性側がお前というカレーを食いたくないって可能性は考えないのかよ?ってことになるわけで、結局同じことですよ。全っ然ダメ!
あえて言えば、風俗的ではあるかもね。欲求を感じたら即、一方的にそれを解消できて当然と思ってる感じが。
どっちにしろ、初デートでご飯食べ終えた直後にこんなこと言われて、「そっか! じゃあ、ヤっていいとも~!」って納得する人、いるとでも思ってるのか? バカなんじゃないのかな、ホントに。
で、その次は逆ギレでしょ? 俺に魅力ないのかだの、断られて傷ついただの……、お前、どの立場からモノ言ってんだよ? 10年彼女いなかったって人が、なんでこんな上から目線にいられるのか、ホント不思議なんですけど。
前の「男友達だと思っていた人に告白されて戸惑っています」って相談のときにも言ったけど、たとえフラれたり断られたりしても、そこで「断った側の気持ち」まで慮った言動をちゃんと取れるかどうかって、人としてとても大事な部分だと思うんですよ。 フラれ際、断られ際にこそ人間性が出るっていうかさ。
その意味で今回のこの男は、さんざん言ってきたように口説き方も最低なら、当然のように少なくともその場では拒絶された後の対応も、考える限り下の下ですよ!
とにかくひたすら、自分の気持ちやメンツのことしか頭にないっぽいし。 だから、さっちゃんさん側から再度歩み寄ってくれるっていう、僕らからすればそれ自体ちょっと信じ難い寛容さに対しても、わかりやすい「俺もう完全に、ヘソ曲げました~!」アピールでしか返せない。 それも非通知で電話かけてきて無言で切るとか、マジで怖いんですけど! ガキっぽいっていうのも、ここまで来ると、立派に下劣、もしくはサイコパスの領域だと思いますよ。
と・こ・ろ・が……。 さっちゃんさんも、文の終わりのほうでは、変なやつとは思ってたとか、実は女性経験少ないのかもとか書いてて、さすがにこいつヤバいかも、と気づいたのかと思いきや……。 最後の最後で、「私はまた会いたいです」って!
こばなみ:
ズコーッ!ですよね。
女子部員さんからも、キモー!って声や、目を覚ませ!という意見がずらり。
宇多丸:
ちなみに僕は今回の相談で、例のスタンプカード反対論に、ちょっとだけ修正を加えようかな、という気がしてきましたよ。
さっき言った「断られ際にこそ出る人間性」をチェックするという意味で、少なくとも一回は「待て」をかけて様子を見る、ワンスタンプ押させてみるのも無駄じゃないのかも、と……。 要は、常識と優しさと想像力っていう、付き合っていく上で絶対必要な資質をちゃんと備えてる人なのか、ある程度見極めるための試験というか。
もちろんその一方で、「男の本性は“ヤった後”に初めて出ると心得よ!」っていうのもやはり、真実ですからね。 一次試験を無事通っても、二次で落ちちゃうこともあり得る、みたいなもんで。
そこで、「二次試験だけ受けさせても意外と結果は同じだったりする」「やたらと一次試験を引き延ばして足切りばっかりしてると、本来なら合格させるべき優秀な人材も取り逃してしまいかねない」「特に、会っていきなりビビビッと来たような相手は、“特待生”扱いで一次免除、一気に二次に進ませるのも全然アリでしょ」というのが、僕のスタンプカード反対論なわけですが。
ただ、この「二次試験」にはたしかに、それなりのリスクが伴いますからね……、その意味で、スタンプ制にもやはり、一定の効用があるということは認めないといけないかもしれない。
に、してもだよ……。 それもこれも、その過程でちゃんと相手の真価を見極めるってことができれば、っていう話であってさ。
今回の問題は、相手がこれだけ馬脚を現しまくってるっていうのに、肝心のさっちゃんさんが、それをまったく見極められてないことだよ! いくらスタンプ押させようが、それじゃ意味ないよ!
誰がどう見たって明らかなヤバ男なのに……。
こばなみ:
連載始まって以来のサイテー男ですよね。
宇多丸:
全員一致でサイテーだよ!
こばなみ:
さっちゃんもおそらく恋愛経験があまりないのかもしれませんね。連絡先を渡されちゃったから、「私のこと好きなのかも~」ってちょっと舞い上がっちゃったことを反省もしてますもん。
宇多丸:
そうだね。もしかして好かれてるのかも?と思ううちに、どんどんこっちの好意が高まってっちゃうって心理はわかる。
ただなぁ……。 せめてモノホンのプレイボーイに遊ばれるんなら、さっちゃんさんの恋愛経験的にも、今後のプラスになる部分があるかもしれないけどさぁ。 今回のコイツから学ぶことなんて、一個もねぇじゃん! ただのモテない、自分勝手な野郎ですよ。
それとも、これほど明白にキモい言動の連発を、それでもチャラにしてしまうくらい、超絶的に素晴らしいルックスの持ち主だとか?
こばなみ:
え~!?
デートに靴かサンダルかを聞いてきたりする男が?
宇多丸:
そんな調子でも問題ないくらい、ほっといても女が寄ってくる人生だったとか? ま、そりゃないか……。
いずれにしたって、ロクなもんじゃないことに変わりはないよ。
さっちゃんさんもさ、曲がりなりにも自分にアプローチかけてきてくれた彼のことを忘れられないっていう気持ちも、まぁわからないじゃないけど、率直に申し上げてこれ、どんな男であれそいつ以下ってことはまずないと考えたほうがいいくらいの、一大事故物件だと思いますよ! 次はもうちょっと、人を見る目を養いましょうね……。
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2015年10月10日に公開したものを再編集し、掲載しています。