髪はロング! バッグはトート! あと3kgダイエット! など要求が多い彼氏。結婚を考えると……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室103】
✳️今週のお悩み✳️
何かと要求の多い彼氏に悩んでいます。私の彼氏はパートナーに求める理想が細かく、体型は痩せていて、髪の毛は女の子らしくロングで、服装はスカートで有彩色のコーデ、バッグはショルダーでなくトートで!等。。。 でも彼女の私は髪の毛はショートでショートパンツが多く、服の色も無彩色ばかり。彼好みの服も買ったことはありません。体型はモデルとまではいかないですが標準くらいです。もっとこういう服を着て! 髪の毛はもっと伸ばした方が似合う! あと3kgダイエットして!と言われたのですが全然実行できていません。彼からの要求が割としつこいので「太っているわけではないのでダイエットをする必要性はない、そういう言葉は傷つく、これ以上言うなら続けることは難しい」とLINEで伝えました。すると彼は「確かにあれこれMINAに要求をしてるのに自分は何もしてない、今まで傷つけてごめん」と反省してきました。ですが人はすぐには変わらないと思っているので信用なりません。年齢的に結婚を考える年頃なので、他の人の方がいいのでは?と思ってしまいます。
(MINA・28歳・東京都)
宇多丸:
「バッグはショルダーでなくトートで」って……、ここまで細かい人も珍しいよ!
こばなみ:
「3kgダイエットして」など、たしかに細かすぎるお願いですね。そこまで言う人、あんまり会ったことがないけど、言われたらちょっとカチンとは来るかも。
宇多丸:
でもこの彼、もちろんお前何様なんだって話なのは当然としても、意外とMINAさんのことは本当に好きなんじゃないかな、とも思いますけどね。
ガキじゃあるまいし見た目のことばっかり言ってて、ホントどうしようもないのは間違いないんだけどさ。 ただ、逆に言えば、見た目のことしか言ってないのがまだマシというか。これだけ細かく好みを伝えてるけど、MINAさんはそれに合致してもいなきゃ、無理して合わせようともしてないわけでしょ。 なのにそれでも付き合ってるってことは、それもこれも別に絶対条件ってわけじゃなくて、そのままのMINAさんでも十分大好きっていうのが、一応ちんと前提としてあるからなんじゃないの。
前に「アイドル好きの彼に嫉妬してしまう」っていう相談があったけど、あのときの回答にも似ててさ。好みとか理想とかって公言してるタイプと現実に付き合ってる相手がばっちり合致してるって人のほうが、僕はむしろヤバいと思うけどなぁ。
だって、マジでそれが相手に求める一番の条件なんだ!ってことでしょ。 ってことは、ちょっと体型が変わったりしてそこに合わなくなってきたら、即フラれちゃうかもしれないし、他にその条件をもっと高いレベルで満たすような人が現れれば、速攻そっちになびいてもいきかねないじゃん。 要は「その人自身」が好きなわけじゃなくて、自分が抱いているある固定的なイメージにより合う人を追い求めてるだけなんだから、全然代替可能なんじゃん!って感じがしちゃうわけ。
仮にね、これまでMINAさんが、彼のうるさい要求にいちいちきっちり応えてきたとして、「じゃあ、これをやめたら途端にフラれるわけ? ってことは、彼はいったい私の何が好きなのかな?」って、逆に不安になってきちゃうと思うんですよね。
でも、実際にはMINAさんは、彼の指図に全然従ってないどころか、「勝手なこと言ってんじゃねぇよ」って抗議までしてて、それに対して彼も、まぁ言い方が かなり微妙ではあるんだけど、一応自らの非を認めてまで、とりあえずそれでもいいからお付き合いを継続したい、と思ってるのは間違いないわけで。
こばなみ:
見た目の好みっていろいろ言ってても、理想通りのビジュアルの人と付き合ってる例なんて、あまりないですよね。
宇多丸:
そうそう。
「私、長髪の男ってイヤなんだよね~」とか言ってる女の人の彼氏が、思いっきりロックミュージシャン風のロン毛だったりね。ホントよくあることですよ。
たいていのカップルってでも、そんなもんなんじゃないの? 好みがああだ、理想はああだ、それにひきかえ隣のコイツはどうだとかなんとか、いつもブツクサ言ってたとしてもさ。 そんなのは本当は、さっき言ったみたいに単なる幻想にすぎなくて、現実に目の前にいる相手を愛するってこととは別物なんだってことを、こうやって言語的に意識はしなくとも、意外とみんなちゃんとわかってお付き合いとか結婚生活とかしてるんじゃないかと思いますけどね。
さっき例に挙げた、言ってることと実際に付き合ってる相手が真逆!なパターンとか、それでもわかりきった文句タレてみせるのは、実は一種のノロケだったりするんですよ、きっと。 だから、妥協してるっていうのともまた違うんだよね。やっぱりホントに好きなのは、「条件」なんていう記号的なものじゃなくて、あくまで「その人自身」なんだ、ってことの証なんだと思いますよ、意外と。
ただね、この彼の場合、謝り方がまだちょっと……、「お前ホントにわかってんのか?」ってとこもありますけど。
「相手にあれこれ要求をしてるのに、自分は何もしてない」からすみませんでしたって、そういう話か? 逆に言えば、「自分からも何かしてさえいれば、要求する権利がある」って考えてるように聞こえちゃうんですけど。
こばなみ:
客観的にみると、そこちょっと笑っちゃうところですよね。
宇多丸:
まぁ、彼に自分がどれだけアホなこと言ってたか思い知らせる意味で、今度はMINAさんから、超~ハードル高い要求を突きつけていくのもアリかもしれませんけどね。
それも、いきなり実現不可能級のやつ。 「まず、顔は松潤! これ最低条件!」とかね。 で、彼が「それ、オレじゃねーじゃん!」とかって突っ込んできたら、すかさず、「アンタの要求だって、“私じゃない”んですけど!」と返す。
こばなみ:
いいアイデア!
宇多丸:
あとは、彼よりずっと低い身長を設定するとかね。背丈って、高くするのはまだなんとかできても、低くは絶対できないからさ(笑)。
こばなみ:
無理そうなやつをお互い言い合ってるうちに、バカバカしくなって、仲良くなっちゃいそうな気もしますけどね。
宇多丸:
で、そこを見計らって、「私はあなたが言う好みのタイプとは全然違うと思うんだけど、じゃあなんで付き合ってんの?」って、思いきって単刀直入に切り込んでみてもいいかもしれない。
そしたら、彼も案外素直な人っぽいから、一生懸命、単なる「条件」ではない、MINAさんそのものの好きなところを挙げてくれるんじゃないですかね。 それを彼の口から直接聞ければ、MINAさんもだいぶ心穏やかになれるだろうし、何より彼自身が、自分の真意を必死で言葉にしていく過程で、「本当に大事なのは何か」に、改めて気づいてくれたりするかもしれないし。
いずれにせよ、結婚相手として相応しいかどうかのジャッジは、彼がそこまでたどりつける人なのかどうか、見定めてからでも遅くはないんじゃないでしょうか。
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2015年7月4日に公開したものを再編集し、掲載しています。