会社の風土も文化も、上司の人格も変えることはできない。こんなとき、どうする? 《キャリア形成編-2》
リーダーとして仕事をしていれば、必ずぶつかる
コミュニケーションや人間関係の問題。
相対する人も違えば、状況もさまざまで、
「こうすれば正解」がないのが
難しいところです。
そこで、
女性リーダーたちが実際に体験した
コミュニケーションの課題と
それに対するアクションを
ケーススタディとして紹介。
同じような課題を抱える人のヒントになれば、
という思いで届けていきます。
今回は、医療・衛生系サービス企業の企画マーケティング部のマネージャーであるみゆきさんの体験談。古い企業体質でイラつくことは多いけれど、頭の固い世代は数年後にはリタイヤだからと割り切って、若い世代が気持ちよく働ける場になれるよう画策中とのこと。そのために、実践していることなどを語ってくれました。
古い企業体質ゆえ、女性の管理職はゼロ。当然、ロールモデルも存在しない。
うちの会社は昭和に創業して以来、社長がワンマンで導いてきました。いわゆるカリスマ社長で、社員はみんな社長を見て動いてしまっています。営業が主体で、基本は男性社会。考え方も古いのが当社の特徴です。
私も最初は、東京近郊の支社に配属され、営業を3年担当しました。営業スタイルも体育会系で、入社当時は退社が22時くらいは当たり前。同期の半分は女性でしたが、みんな辞めてしまいました。私も長く働く環境でないと感じ、退職する予定だったんです。
ところが、いろんな偶然が重なって本社へ異動、ブランドのプロダクトマネージャーになることに。本社で驚いたことは、平均年齢が55才! しかも、社長がすべて決めるため、どこか人任せな人たちばかりだったのです。当然、女性の管理職はゼロで、ロールモデルになる人もいません。女性に機会を与えてこなかったので、管理職になれるほどの能力も育まれていないのです。
こんな会社でも、私が辞めずにいられるのは、タイミングよく異動が命じられて、新たに学ぶ機会を与えられているからかもしれません。古い企業なのでマーケティングに関する考え方も浅く、ようやく立ち上がった企画マーケティング部に異動になったので、もう少しがんばろうと思えたのです。
「雑でOK」&「自分優先」で、長期戦でゆるやかに野望を温め続ける。
これまでは古くて男性優位のマッチョなスタイルで、企業として成長してきた面もあるのですが、これからの時代はそうはいきません。とはいえ、長年培ってきた風土や文化は簡単に変えられないでしょう。
「たいして働いていない人にそんな高給を払うなら、社員にもっと払え」と思うこともありますが(笑)、現時点ではどうにもならないので上手く立ち回るしかありません。
結局は、目の前の仕事に真剣に向き合い、求められた以上の答えを出し続けることが、一番の近道だと考えています。どんなお願いも基本は引き受けて、他部署からの信頼を獲得していくこと、後輩の能力を伸ばし、人を育てられる社員だと認識してもらうこと。人としての信用がなければ、権力を持ってもよい影響は生み出せないですからね。
また、「誰かが私を見つけてくれる」的スタイルでは、声の大きい方々に埋もれてしまうので、「こんなことに興味がある」「こんなことを変えたい」など、積極的に人に話すようにしています。そうすると不思議とおもしろい仕事が回ってくるんですよね。アピールしすぎはウザいですが、ある程度の自己プレゼンは、生き残る上では必要かなと思います。
「リーダーは責任が重いので嫌だ」という、女性が昇格を断るセリフをよく聞きますが、責任ってすごく、曖昧だと思っていて。責任って実は、取ろうと思っても取り切れず、最終的に責任を取る立場は社長なんですよね。だから任命された側は難しく考えすぎず、「できることをがんばる」ことだけを考えておけばいいのかな、と。
「役職が付けば、働く時間は同じなのに、お給料は多くもらえる、お得!」くらいの雑さでいいのだと思います。法律もどんどん変わり、仕事とプライベートを両立する制度もあるし、会社を上手く使って、自分を成長させていこうという捉え方です。そういう考え方を下の世代に伝えていきたいですね。
先日、女性が集まる研修があったのですが、やはり女性がたくさんいてこそ出る意見などがバンバン見られ、とてもおもしろかったです。改めて、シスターフッド的な、女性の横連携も大事だなぁと感じました。
私が何か行動したことで、何かが少し良くなったということをしたいと思っていて、部下や社内に良い波及効果が生まれることを願っています。だから、もう上の世代のことは、あまり考えていないです。それよりも、横のつながり、女性同士のつながり、より下の世代とのつながりを大事にして、新しい世代の足場固めを進めていきたいですね!
これからは、ひとりのスーパーマンより、みんなでシェアしてがんばる方がうまくいくと信じているんです。部下たちにもその思いを伝えて、行動しています。
イラストレーション:高橋由季