既婚ですが、酔って同僚にキスをされ……。「どうしてキスしたの?」と理由を聞いてもいい?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室226】
✳️今週のお悩み✳️
宇多丸さん、こばなみさん、はじめまして。チャコと申します。夫と子どもがいる身でありながら、職場の忘年会の帰り道で割と仲の良い同僚(年上、離婚歴あり、今は独身)にキスをされてしまいました。とはいえシラフの頭で思い返すと、私にも油断があったのだと思います。三次会にしてかなり酔っていましたし、駅までの道のりで介抱される形で手をつなぎました。なので、彼からするとそれは「OK」の合図だったのかもしれません。私は彼をただの同僚だと思っており、これからもどうこうするつもりは毛頭ないので、夫には今回の事件は話すつもりはありません。ただ、彼には今後どういう態度で接すれば良いのでしょう? 何かの折に「どうしてキスしたの?」と聞いてみてもいいものでしょうか? でもそれって薮蛇? やっぱり「お互い酔っていたからね、事故!」で無かったことにするのがベストでしょうか……。夫はもちろん、友達にもほかの同僚にも相談できず、モヤモヤしています。現状は理由を聞きたいが9割、なかったことにしたいが1割です。
(チャコ・32歳・東京都)
宇多丸:
これ、念のためまずちょっと確認しておきたいことが……、文面からは正直、そこまでの重大性や切迫感みたいなものはあんまり伝わってこないけど、ひょーっとしたら、前にあった「尊敬していた年配男性に強引にキスされた」って相談みたく、セクハラ被害的なニュアンスがあったりする可能性も、なくはないのかな?と。
こばなみ:
文脈からは考えにくいですけど、ゼロとは言えませんね。
宇多丸:
要は、「酔いにつけこんで不快な行為をしてきた相手を、糾弾すべきかどうかでモヤモヤしてる」って話なのか、そうじゃなくて、「酔いにまかせてものすごーくライトな不倫的行為をしでかしてしまった、自分の浮つき加減含めてモヤモヤしてる」って話なのか。
文章のテンションから判断する限りは普通に後者なのかなって思うけど、万が一でも実は前者的な意味合いが強いんだったら、そう軽々しいことは言えないから。
その場合は、さっき言った前の相談の回答を、ぜひ参考にしていただきたいですが。
いっぽう、あくまで後者的な、「酔っていたとは言え、夫以外の男性とキスなんかしちゃって、どうしましょ!」っていうような、ぶっちゃけ自分側にも共犯者性がなくはない話なのだとしたら、ですけど……。
まずさ、ベロベロになるまで飲んで、シラフだったらありえない相手とうっかりチューしちゃったなんて、そっこらじゅうで毎晩毎夜、普通にみなさんが繰り広げてることでしょ(笑)。
決してほめられたことじゃないにせよ、それ自体はそんなに騒ぐようなことじゃないと思う。
それをまたいちいち「どうしてキスしたの?」って……、そんなもんはだから、前からちょっとは気があったのか、そのときたまたま調子に乗ってしまったのかはわからないけど、とにかく少なくともその時点では「チャコさんとイイ雰囲気になってる気がしたから」っていう、それ以外になんかあるんですか?
なので、特に「これからもどうこうするつもりは毛頭ない」のならもちろん、ご自身でもおっしゃってる通り、「『お互い酔っていたからね、事故!』で無かったことにする」のが、まぁ明らかに妥当な線なわけですけど……、チャコさんはなぜか、わざわざ彼に「真相」を問いただしてみたがったり、要はなんだかんだでこの件を引っ張りたいという気持ちを、捨てられないでいるっぽいじゃない?
こばなみ:
間違っていたら申し訳ないんですが、私はチャコさん、とはいえなにか期待しているのでは!?と思ってしまいました。
宇多丸:
そうなんだよね。
ここから積極的かつ具体的に行動を起こすというところまで行かなくとも、現状やっぱり、ちょっとだけ浮ついた気持ちが抑えきれてないというか、ほんの少しときめいちゃってる感も、この文面には漂ってる気がするよね、正直言って。
「理由を聞きたいが9割、なかったことにしたいが1割」って、すでにかなりやる気満々やないか!って感じがぶっちゃけしちゃう(笑)。「なかったことにしたい9割」ならともかく。
こばなみ:
そうなんですよ、どうしてもそう受け取れてしまうというか。
宇多丸:
言うまでもなくだけど、つい不埒な方向にヨロめいてしまったこと、それ自体がダメとかって言ってるんじゃなくて……。
これは今回のチャコさんに限らずだけど、男女の一線を越えてしまいました的なお悩みのときに、「自分側の欲望」を棚に上げて話をしようとする傾向が、投稿を読む限り一部に根強くある気がするんですよね。
今回の相談文もさ、「されてしまいました」っていう受動的な書き方しかしていなくて、そこでチャコさんはどう感じたのか、本当にはどうしたくてこの件を引っ張ろうとしてるのか、ってあたりには触れずじまいだから、それこそ最初に言ったようなセクハラ被害的な方向にも読めるわけだけど……、もし、実はそんなんじゃ全然なくて、僕らがまずは文面から受けとった通り、ご自身でも内心ホントは若干まんざらでもない感がある、みたいなパターンなのだとしたら、そもそもそういう自らの「共犯者性」からチャコさん自身が目をそらそうとしているからこそ、相談文ではことの本質が見えづらくなっている、という面は確実にある気がしますね。
いずれにしても、これ以上どうこうするつもりはないと言いつつ、蒸し返したい気持ちはパンパンに膨らみきってる、という今の矛盾した状態を解消するには、自分が本当にはどうしたいのか?ということを、真正面から自問し直すしかない。
だってね、今から彼に直接「どうしてキスしたの?」なんてことを問いただすとしたら、大きく言って二通りの結果しか考えられないと思うんですよ。
まず、彼側にチャコさんに対する積極的な感情が大なり小なりあったというケース……、「どうしてキスしたの?」「前から好きだったから……(顔真っ赤)」みたいな。
でも、そんなこと言われちゃったらさ、チャコさん、ちょっとキスしただけですでに現状ここまでグラついちゃってるんだから、いったいどういうことになっちゃうわけ?
こばなみ:
……ラブアフェアー、一直線かもしれませんね!
宇多丸:
そこで「ああそう、私のほうはなんとも思ってないけども!」つってモヤモヤを引きずらずにいられるようなら、そもそもここまで悩んでないだろ、って話だし。
だから、理性とは裏腹に、関係がどんどん発展していってしまう可能性も大ってことですよ。
そのリスクを承知のうえでなら、やっぱりそっちに突き進みたい!という選択だって、もちろんあり得るだろうしね。自己責任でやるぶんには、僕もそれは別に止めませんよ。
いっぽう、彼側もチャコさんにそれほど特別な感情は抱いてなくて、やっぱり単に酔いすぎてノリでチューしちゃいました、的なことだったという場合ですけども。
たとえばだけど、アルコールが抜けてみたら向こうも「やっちまった!」って感じで、翌日から職場でもいつ怒られるかと戦々恐々としてたんだけど、チャコさんもどうやら周りに話したりしてないみたいだし、これはセーフか?と思ってたら……。
「ねぇ、あのとき、どうしてキスしたの?」
ギャーッ!ってことになりますよね(笑)。
まぁ、彼に対して報復感情があるならそれもありだろうけども。
どっちにしても、直接問いつめるってことは、「酔った勢いでうっかりキス」という行為に、ある種決定的な「意味付け」をすることになるのは間違いない。
だからこそ、チャコさんご自身が何を望んでいるのかというのを、しっかり見極めたうえでないと。
当然だけど、「夫には今回の事件は話すつもりはありません」っていうのも、チャコさん側の意志がよっぽど固まってない限りは、そりゃそうしといたほうがいいですよね、としか言いようがない。
「私、飲み会の3次会で同僚にチューされちゃったんだ……」とか言われたらさ、ダンナさんも、そいつを殴ってほしいとか、社会的制裁を加えるのを手伝ってほしいとか、とにかく嫌な目に遭ったから仕返ししたいってことなのか、それとも、そういう自分のあやまちを許してほしいってことなのか、なんにせよまずはチャコさん側の真意を確認するしかなくなるわけだから。
こばなみ:
隠さず正直に話すことが一番!とかって、世の中にはなんでも言っちゃってる人もいると思うんですよ。
でも、たしかに自分が逆の立場に立ってみると、言われた側が否応なく負わされるものも間違いなくあるわけですもんね。
宇多丸:
「友達にも他の同僚にも相談できず」っていうのもさ、もちろん、こんなことがあったというのを話すだけでいくらか気が晴れるっていうのはあるだろうけど、結局はやっぱり、「で、あんたはどうしたいわけ?」ってところに行き着かざるを得ないと思いますよ。
それに、言うまでもなく、その結果どこかから噂が広まっちゃったりするリスクだって、それなりに覚悟しないといけないわけだし。慎重になっとくのに越したことはない。
あ、そうか。彼側が誰かにペラペラ話しちゃわないか不安だから、念のため改めて口止めしておきたい、っていう動機はあり得るか……、ま、そのくらい目的がはっきりしてるなら話は早いんだけどね。
とにかくチャコさんは、自分の気持ちともう一度ちゃんと相談してみて!
それでさ、たとえば「そうか、私は今ちょっとドキドキしちゃってるんだ」って自覚できれば、「とはいえ本気で浮気したいわけじゃないし、このまま思い出箱に入れてたまにこっそりネブネブするくらいでいいや」とかって、冷静な判断も下せるようになったりするじゃん?
僕のラジオで昔やってたコーナーで、『あれ、行ってたら行けたぜ?』っていうのがあるんだけど、女の人もそういうの、当たり前にあるでしょ?
こばなみ:
ありますよ、そりゃ!
それにしても、やっちまった後なので今さらですが、ホント酒には注意!
宇多丸:
基本的にまず、介抱が必要なとこまで飲むなよって話だよな。
これは酒飲みのマナーとして言いたい。大人なんだから、そんなになるまで飲んじゃダメ!
でもまぁ、さっきも言ったけど、酔っぱらった勢いでわけわかんないチューしちゃったとか、それ自体はホントありふれたアクシデントで、笑い話で済む場合も全然あるから。
こばなみ:
思い出した、あった! 学生時代の友達ですけど、恥ずかしくて口にも出さなかった。
宇多丸:
パッと目が覚めたら、友達のとなりで裸で寝てて、とかね(笑)。
いや~恐ろしい! ホラーだね~。
こばなみ:
恐ろしや~!
そして恐ろしいと言えば、同僚とか職場関係、仕事関係の相手とは本当に気をつけたほうがいいと思いますよ。どこで誰に見られているか、わからないですからね。変な噂が立ったらチャコさんの不利益になりかねないし、見ちゃったほうも困るし、モヤモヤしちゃうので、ご注意を!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2018年2月17日に公開したものを再編集し、掲載しています。