ファッションもお金をかけ、ダイエットして二重にもしたけど、男性に惚れられたことがありません……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室106】
✳️今週のお悩み✳️
男性に惚れられたことが無く悩んでいます。わたしは学生時代はずっと共学、職業も一般的な事務員で、男性が身近にいる環境で28年間生きてきたにも関わらず彼氏が一度も出来たことがありません。選り好みしてきたわけではなく、単純に一度も男の人に好かれたことが無いのです。合コン、異業種交流会、婚活パーティー、出会い系、結婚相談所、ありとあらゆる手を尽くして男性とデートするようにはなったのですが、誰一人として私に惚れてくれません。ガードが固すぎるのか?と思い、体だけの関係というのにも応じてみましたが、彼氏になってくれる人はいませんでした。洋服も髪もお化粧も人並にお金をかけ、ダイエットをして標準体型になり、二重瞼に整形手術もしました。お友達も多くはないですが仲良しの子がいますし、家庭環境も悪くありません。性格の悪いブスという自覚はありますが、なぜここまで男性に好かれないのかわかりません。最近、婚活用のSNSで知り合った男性と4回目のデートをしました。デートの翌々日に、その男性から「もう4回もデートしたんだから付き合ってほしい」という主旨のことを言われました。『好きだから』付き合ってほしい、じゃなくて『他にこんなにデートしてる女性がいないから』付き合ってほしい、という気持ちが伝わってきて落ち込んでいます。どうしたら男性に好きになってもらえるのでしょうか?
(めりこ・28歳・千葉県)
宇多丸:
自分なりにできる限りことはしてるつもりなのに……か。
まぁ、持ってる資質の範囲でルックスを磨き上げていくってこと自体はさ、前も言ったけど、他人にモテるモテない以前に、何より「“自分の好きな自分”でいる」ために、やっぱりちゃんと意味がある、大事な努力なんじゃないかと僕は思いますけど。
こばなみのまわりで、こんな風に、相当がんばってる風なのになかなか彼氏ができないって人、いる?
こばなみ:
どう見られてるかわかりませんが、自分も一応普通にがんばってるつもりですが、全然モテません(苦笑)。色気がないってよく言われますけども。
宇多丸:
それを言ったら僕だってそうだしね。
でも、だからって僕らみたいなノーフェロモン体質の人間が、最低限の努力まであきらめてしまったら、単に「もっと目も当てられないことになる」ってだけだからねぇ。
でもさぁ、このめりこさんの場合、まがりなりにも男性のほうから付き合ってほしいとは言われてるわけでしょ? 全然結構な話じゃん! 少なくとももう、「誰一人として私に惚れてくれません」とは言えない状態なんじゃないの。
こばなみ:
もっと熱烈な告白をされたかったってことですかね?
宇多丸:
だって、「婚活用のSNS」で知り合ったんでしょ?
いきなりそんな「好きです!」テンションで来るわけないし、来たら逆にその人、ちょっとおかしいと思ったほうがいいよ!
それに、「もう4回もデートしたんだから付き合ってほしい」って言い回しがどこまで実際に近いのかわからないけどさ、いずれにしたってこれ、めりこさんの解釈みたく、ホントに「他に適当な女がいないから」ってニュアンスかな~? そうじゃなくて、めりこさんにもちゃんと好意があった上で、「もうこれ以上、気持ちを抑えたまま会うのは辛いから、正式に男女の仲になりたい」って言ってるようにも、普通に取れるんですけど。
「4回も」っていうのもさ、それこそスタンプカード的な意味で言ってるんじゃ別になくて、「今までこんなに何度も会いたいと思った相手はいなかった」みたいなことが伝えたかったのかもしれない……ってか、そう考えるほうが自然じゃね?
こばなみ:
それに、4回も会ってるんだから、めりこさんも、その人のことをそこそこ良くは思ってたんですよね?
宇多丸:
ただ、そのへんがこの文面からはまったく伝わってこないのが、今回のポイントかもしれないですね。
彼がどんな男性なのか、めりこさん自身は彼のことをどう思っているのかについては、ひと言も書いてない。 4回もデートを重ねてるのに、相手のことをちゃんと見てないのは、むしろめりこさんのほうなんじゃないの?って気もしてくるんですけど。
もしかしたら、今のところそんな積極的に好き!ってテンションでもないんだけど、向こうからぐいぐいアタックされでもしたら、少しは気持ちも動くかも、くらいの感じなのかもしれないけどさ……。
じゃあ、お互い様じゃん!って話だよね。 なんで向こうにばっかりアツい気持ちとか要求してんの?とは正直ちょっと思っちゃう。
念のため言っとくけど、見た目に関してできる限り努力したっていうのは素晴らしいことだと思うけど、だからって、放っておいても向こうからワラワラと好意を抱いた異性が寄ってきちゃうような、言ってみれば「元からモテる才能がある」みたいなタイプの人に都合よく生まれ変われるってわけじゃ、別にないですからね。 頑張って頑張って、なんとか人並みのスタートラインに立てれば御の字、くらいに考えておいてちょうどいいくらいの話ですよ、本来は。
しかもめりこさんの場合、しっかりその成果も出してる、つまり、男性のほうからお誘いが来るまでには一応なってるわけじゃん。努力した甲斐、ちゃんとあるじゃんよ! 実際にはなかなかそこまで到達できない人だって、世の中にはたくさんいるはずなのにさ。
なのにまだ、好かれない好かれないって……、いったいどのレベルのモテを期待してたんだよ!って感じがしますよ。
こばなみ:
この彼と付き合わないのかな?
宇多丸:
普通に考えたらさ、生まれてから一度も彼氏できたことなくて、ようやく向こうからアプローチかけてくれる人が現れたんなら、そりゃあずっと夢見てき たロマンチックな告白とはまるで違ったかもしれないけど、それを言ったらこっちだってとても理想的な女とは言い難いんだから、嫌いってわけじゃないなら、 とりあえず試しに付き合ってみりゃいいじゃん!とは思うよね。
でももう、この相談文が送られてからそれなりに時間も経っちゃってるでしょうからね……。
こばなみ:
これまでそうやって何度もチャンスを逃していたのかもしれませんね。
宇多丸:
めりこさんに限らず、自分ではモテないモテない言ってる人に共通のファクターがひとつあるとしたら、それは「実は自分のことを高く置いている」、なにげにプライドが相当高いってことだと思うんですよ。
こばなみ:
ギクリ。それはなんだかんだ私もあるかも。
宇多丸:
めりこさんもさ、「性格の悪いブスという自覚はあります」とか書いてるけど、ホントに本気でそう考えてるんだったら、仮にもあっちから付き合おうって言ってくれてる人に、「言い方が本気っぽくないからイヤ!」みたいな文句は言い出さないと思うんですよね。
もちろん、その人のことが好きじゃないなら断ったっていいけど、せめて、「でも、こんな私に、ありがとうね」くらいの謙虚さは持てないのかって。
とにかく「好きになって“もらう”」っていう、言わばギブ&テイクの「テイク」に関してばっかり要求が高い感じですよね。 ひるがえって、自分はこれまで、それに値するほどの「ギブ」をどれだけしてきたのか?ってことは、一度胸に手を当てて考えてみたほうがいいかもしれない。
ま、そう思って前にいったんカラダだけ「ギブ」してみたってことなのかもしれないけど……、あの、いくら男だって、ヤれさえすればなんでもいいってわけじゃないから! どんだけ自分のボディやテクに自信があるんだよ!って話になっちゃいますよ。 結局、相手のことを実はあんまり考えてない、要はコミュニケーションがちゃんと取れてないという意味で、これもやはり、根っ子は同じ問題という気がします。
つまり、当然ながら恋愛だって、人間関係の一種なんだから……ってことですよ。 受動的かつ一方的な「愛され待ち」ばっかりしてたら、そりゃ誰とも上手く「関係」は築いていけないでしょうよ、と。
ある人を好きだと思うから優しくすると、その人からも好意が、優しさが返ってくる。で、こっちもますます好きになって、もっともっと優しくしてあげたくなる……、そういうポジティブなサイクルを、当人同士で作っていくしかないわけじゃん? これもホント、当たり前すぎる話だけどさぁ! さっき言ったみたいな先天性モテ・フェロモンの持ち主じゃないなら、なおさらですよ。
もっと言えば、そうやって相手のいいところを見出して好意に転化していくって、なんであれ継続的な人間関係を築いていく上で、けっこう重要な能力だと僕は思ってて。
たとえばこれが友達だったら、後から多少合わないところ、気に入らないところが見えてきたとしても、それは他人なんだからある程度仕方ないこととして受け容 れた上で、改めて「この人のこういうところ、やっぱ好きだなぁ」とか「尊敬できるなぁ」っていう美点のほうを見ようとする、関係を良好に保とうと努力するってことが、みんな普通にできてると思うんですよ。
でも、恋愛だけは特別で、感情や本能のおもむくまま、それこそ『Automatic』に回ってくもんだ、わざわざ努力とかするもんじゃない……とかって幻想をイイ歳こいてもまだ抱いちゃってる人が、多すぎるんじゃないかなぁ。
こばなみ:
たしかにそれはあるかも。
宇多丸:
でも本当は、たとえば一番『Automatic』な場面に見える性行為とかでさえ、お互いに対する思いやり、言わば他者性に対する配慮が、ある意味普段以上に大事だったりするわけでさ。
そういう、コミュニケーションを成立させる相互努力抜きに、一方的に「好きになって“もらう”」だけ、なんてのはなかなかありえないし、仮にあったとしても長続きはしないと思いますよ。
だからたぶん、今後はめりこさんこそが、「好きになって“もらえた”から」じゃなくて、「好きだから」付き合いたい、と思える相手を探すべきなんですよね。 絶対そのほうが、相手からも好意が返ってくる打率、上がると思うけどなぁ。 今までは、「あっちから好意が来る」というのを恋愛サイクルのスタート地点に想定していたのが、そもそもの間違いだったんだと思いますよ!
幸いにもめりこさんは、長年のルックス磨きの成果が、どうやらそれなりには出てるわけだからさぁ。 いったん上手くサイクルが回り出せば、あとは意外とトントン拍子なんじゃないか、って気もするんですけど。
こばなみ:
これをきっかけに好転するといいですね!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2015年7月25日に公開したものを再編集し、掲載しています。