40代に入ってから、やる気がおきません。体力もなくなり、働くのも疲れる……!【ライムスター宇多丸のお悩み相談室241】
✳️今週のお悩み✳️
こんにちは! 私の相談を聞いてください。といっても、もやもやとしていることなのですが、40代に入ってから、やる気がおきないといいますか、落ち込むと立ち直りも遅くなり……。20~30代の頃は仕事で一旗揚げるぞ!と忙しくてもがんばれたのですが(広告中心のデザインの仕事をしています)、40代に入り、「ちょっとは向上するかもしれないけど、このままの生活があと20年続くのだな」とちょっと諦めも入っているといいますか。相手に頼って生きていこうとは思っていませんが、現在独身なので漠然とした孤独・不安もあります。体力も確実になくなっているので、働くのに疲れるときもあります。趣味はハンドメイドなのですが、ここ最近は忙しくてそれもできません(やる気が起こらないのと、疲れているので)。宇多丸さん、こばなみさんは40代初めの頃、不安はありましたか? 四十にして惑わずって嘘ですね……。アドバイスいただけるとうれしいです!
(子牛・41歳・東京都)
宇多丸:
これはまぁ、けっこうわかりやすく、いわゆるミドルエイジ・クライシスってやつだよね。
子牛さんに限らず、多くの人がどこかのタイミングで大なり小なり感じるはずのことではあると思いますが。
こばなみは同年代としてどう?
こばなみ:
わかりますよ~。本当に疲れやすくなりましたし~。
で、このままずっと働くのか~、体力もつのかな~とか、漠然と不安になるんですけど、いかんいかん、楽しいことを考えようって切りかえたりとか、よくある。
宇多丸:
大前提として、ひとつだけ間違いのないことを言っとくけど……、僕たち全員、これからひとり残らず確実に、衰えていって死にますから!(笑)
それはもう、絶対に逃れようのない現実ですからね。
そこで僕らにできるのは、いかにそれを緩やかなカーブにしてくか、不快度を減らしてゆくか、ということだけじゃないですか。
ということでまず、さしあたって打てる手として、フィジカルのメインテナンスから始めてみるのはどうですかね。 疲れやすい、やる気が出ないとかいうのも、端的に加齢による体力の衰えが元だったりしますから。
僕も、ジムとかわざわざ行ったりは相変わらずしてないんだけど、そもそもライブ稼業自体が相当な運動量で自動的に鍛えられちゃってるというのもあるし(笑)、日常生活のなかでも、できるだけ歩くようにしたり、エスカレーターやエレベーターを使わずに階段で上り下りしたり、軽くスクワットしたりはしてますね。 そんな感じで、血のめぐりがちょっと良くなるだけでも、気分的にはだいぶ違うと思いますけどね。
あと、はっきりいってこの年齢だと、ホルモンバランスも関係してきてるかも、だよね。
こばなみ:
それはありますね。ぜひ女子部で取材してきた女性ホルモンとの付き合い方の記事とか読んでほしいです!
宇多丸:
とりあえずつまんない結論だけど、体がすべてですからね。
健康じゃなければなにを持ってても意味ないし、逆に健康ならもうそれでよくない?っていう気すらする。
お金とかもさ、健康をどれだけ保つか、歳をとっても可能な限り健康でいるためにこそ必要なんであって。
こばなみ:
私も思ったんですよ。貯金より健康だって。
いつまでも働ける体と頭があればいいんじゃないかって。
宇多丸:
まぁ、老後の健康のために、やっぱある程度の蓄えや備えはあったほうがいいんじゃないの、とは思うけど(笑)。
とにかくまずは、体のメンテ。
じゃあ心のメンテはというと……。 「なにか新しいこと」をやったらいいんじゃない? もともとの趣味とかじゃなくて、まったく違うこと。 なんなら仕事も、いままでとまったく違う方向を開拓してみるとか。
僕はいま49歳ですけど、ラジオを始めたのが30代後半なんですね。 やっぱりそれが、とってもラッキーだったと思うんです。 あるジャンルでそれなりのキャリアを確立したそのあとに、まったく違う畑で、またイチから新米として、全然できてねーよっていう段階からやり直す機会を得たわけでさ。 僕、間違いなく若返ったもん(笑)。
アラフィフでぺーぺー、まさに五十の手習いで、何事も勉強させていただきます!という立場なので、退屈してるヒマがない。
そんな感じで、実はこれも「まずフィジカルを鍛え直そう」と同じことなんだけど、自分の外の、「ガワ」から強制的に刷新してゆくっていうのは、ひとつ有効な手じゃないかと思いますね。
自分のなかだけで特に精神面を変えようとしても、40代ってやっぱり考え方自体がだいぶ固まってきちゃってるから、難しいと思うんですよ。 だからたとえば、自分をそれまでとは全然違う環境にあえておいてみたりして、意識的に負荷をかけてゆく。
それすら億劫だったら……。 あとはもうだんだんと衰えてくしかないんだから、諦めてそれを粛々と受けとめてゆきましょう……。
でもホント、わかんないよ? 子牛さんみたいな人に限って、1年後、「フルマラソンに挑戦します!」とか、言ってかねない(笑)。意外とよくあるパターンですよ。
こばなみ:
いますよね、いきなりマラソンにハマるひと!
あと登山もおすすめです。私も30代後半に、誘われたから行ったんですよ。けっこうイヤイヤ行ったんですけど、じわりとハマりまして、そのあと2年くらいはせっせと登ってました。体力もついたし、痩せて体も軽くなったし、そのときは調子良かったですよ。あと、精神的にも「登れば終わる」という達成感があって、調子良かった。
自分では考えつかないものだったので、人に誘われたものってやってみるものだなぁ~と思いました。
宇多丸:
あとさ、広告デザイン業界のことはわからないけど、たぶん音楽とかと同じで、トレンドの変化なり技術革新なり、なんかしら常にアップデートされてる部分はある世界だったりするんじゃないの?
だとしたら、わりと気を抜いてる暇もないはずというか、少なくとも「このままがずっと続く」なんてのんきなこと言ってられる感じでもホントはないんじゃないの、という気もちょっとしちゃうけど……。
ただまぁ、そうやって自分をアップデートし続ける精神的スタミナ自体が、歳とるとだんだんなくなってくる、というのはわかる気がするけど。
こばなみ:
仕事だと、全方向365日全力でがんばらなくっていいや、と思うようにはなりましたけどね。
今日は疲れてるからいいや、とか。もっと得意な人にやってもらおうとか、そういうペース配分をおぼえたというか、そうじゃないと追っつかないっていう。
宇多丸:
適度な力の抜き方をおぼえる、っていうのは悪いことじゃないよね。
僕も、若いころより長いライブとかむしろ平気でできるようになってるのは、そういう部分が大きいと思うし。
ちなみに孔子の言ってる「四十にして惑わず」って、平均寿命が今とはくらべものにならないくらい短い時代の話だし、それにしたって、「できれば人間、そうありたいものですね」ってことだからさ。 そう言う孔子自身が、「今の世の中」に対してひたすらグチグチグチグチ言い続けてる、まったく悟りきれてないジジイなんだし(笑)。
四十で惑うの当たり前! でも、惑うってことは、まだ若い証拠だよね。
こばなみ:
たしかに、惑わなくなったらもう人生も終盤ですよね。
宇多丸:
実際にはその段階になったって、ジタバタしないか怪しいもんだし、オレたち。
あとはもう……、単純に寝具をいいのに変えて毎日の睡眠のクオリティを上げるとか、そういうレベルで人生を充実させてく方向はどう?
歳をとるほどに、自分の暮らしを心地よくしてゆく心がけって大事になってくると思うんですよ。
たとえば、若いやつの汚部屋は愛嬌だけど、中年以上があまりにもだらしなく暮らしてるのは、単に哀しさが漂うだけじゃん(笑)。 金かけてるかどうかじゃなくてね。きちんと生活してるかどうか。 服装とかも、若いやつのだらしない格好は愛嬌だけど、いい歳した人のはただ見すぼらしくなっちゃいがちなわけじゃん。
つまり、なんにしてもやっぱり、まだまだしょぼくれてたまるか!っていう意志は、ベースには必要だと思いますよ。
こばなみ:
汚部屋……、ドッキリしますね。でもたしかにもう愛嬌じゃ済まされない。
宇多丸:
悪循環に入らないように、特に歳をとったら、自分で自分をきちんとメインテインすることを心がけないと。
体を含めた「自分」って、言わば人生の受像機じゃん。 受像機が調子が悪いと、なにを受信してもうすぼんやりしてたり、ノイズが入っちゃったりして、なにも楽しめなくなっちゃう。 それじゃしょうがないじゃん。
なので、まずは受像機側というか、やっぱりガワのほうから刷新をはかってみるってことですよね。 髪型や洋服のトーンをガラッと変えてみるとか、引っ越すでもいいし、行ったことないところに行ってみるとか……、とにかくエイヤっと、環境を変えてみる。
面倒くさいんだけど、そういうのをこまめにやってる人、やってない人とでは、やはり時間が経つほどに差が出てくると思いますよ。
逆に、受像機の感度がいい状態なら、どこでなにやってても、それこそ自宅周りでなんかやってるだけでも、楽しいことはガンガン見つけられるはずだし。 僕はどっちかっていうと、そういう境地で常にいたいと思ってるんですけどね。
こばなみ:
まだ大丈夫、まだ大丈夫って思ってるところもあったけど、今までどおりではうまくいかないって本当に自覚しないとダメですね。
宇多丸:
要ははっきり、「老い」とどう付き合ってゆくか、いう話をしてるんだよね。
まずは、人間ドックとか改めてちゃんと行ってさ(笑)。
四十越えて大病してない、いや死んでない!ってことのありがたさをしっかり噛みしめつつ、なんとか生を謳歌していきましょうよ……!
【今週のお絵描き】
*** *** *** *** *** ***
この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2018年6月30日に公開したものを再編集し、掲載しています。