【福島】福島県への転入者と地元とをつなぐ「ベルフォンテ」
日本全国でがんばっている女性を紹介する「のぼり坂47」プロジェクト。今回は、福島県へ転入してきた女性と地元をつなぐ活動をしている「ベルフォンテ」代表の藤本菜月さんに活動について聞きました。
福島に移り住んできた女性に、毎日をより楽しんでもらうために
私たち「ベルフォンテ」では、2つのプロジェクトを柱に活動しています。
1つは、「結婚やパートナーの転勤で福島県に転入した女性が暮らしやすい福島をつくるためのプロジェクト(以下「tentenプロジェクト」)」。もう1つは、「地域資源を活用した雑貨づくりプロジェクト(以下「ものづくりプロジェクト」)」です。
「tentenプロジェクト」では、転入後、知り合いがいないため孤独を感じている女性たち、地域の情報が入手しづらい環境にいる女性たち、そして転勤族のため定職につきにくく社会とつながりにくい女性たちに対して、仲間作りや地域のことを知る「WELCOMEワークショップ」や、気軽に集まって情報交換をする「tenten cafe」を開催しています。
昨年度は、「tenten café」を福島県内で4カ所、さらに東京で実施した福島県主催の移住フェア内でも開催させていただきました。
また、独自のWEBサイト「tenten fukushima」を立ち上げ、福島の暮らしが楽しくなる情報を発信しています。発信するのも転入女性たちです。さらに、仕事作りの一環として「WEBライター講座」をひらき、受講後のライターの卵の方たちに、「tenten fukushima」で記事を執筆してもらう‟オンザジョブトレーニング”もおこなっています。
※tenten fukushima: https://tenten-f.info/
「ものづくりプロジェクト」では、会津地方で400年の歴史がある「会津木綿」や、尾瀬で駆除されてている「鹿の革」、そして東北の手仕事「刺し子」を使ったアイテムの企画・製造・販売をしています。
お土産品としてだけではなく、福島に住んでいる私たちも日常使いしたくなるような、ヘアゴム、ピアス・イヤリング・ブローチなどのアクセサリー類、子ども用のスタイやTシャツなど、多数のアイテムを販売。商品を作るのは、転入してきた女性や子育て中のお母さんなど、働きたくても働きにくい立場の女性たちです。現在は8名の作り手さんが活躍してくれています。
あるご夫婦につないでもらったご縁から始まった活動
実は私も石川県出身で、福島への転入組です。東京で公務員をしていたのですが、福島県出身の夫との結婚を機に、14年前、仕事を辞めて福島県に引っ越してきました。
夫が県内で転勤のある仕事に就いていたため、私もこれまで福島県内4カ所を転々としてきましたが、最初に住んだのが南会津町でした。南会津町は自然が豊かである反面、ショッピングを楽しむところがあまりなく、人口も少ないことから、当初誰一人として友だちや知り合いがいませんでした。また、南会津町にいるのは3年と告げられていたため、定職に就くこともあきらめていました。
家に引きこもってひたすらネットサーフィンをする毎日。そんなとき、南会津町の古民家で「2地域居住」をしている素敵なご夫婦の存在を知りました。そのご夫婦が出店するイベントに出向き、知り合いになったことがきっかけで、私の南会津町での生活は一転! 町の魅力やコアなお店などを教えてもらい、何よりたくさんの素敵な人たちとの縁をつなげてもらいました。
その方々と始めたのが「ベルフォンテ」です。
スタートしたのは「ものづくりプロジェクト」。「一緒に南会津の魅力を発信するお土産物を作ろう!」という想いから始まり、主人の転勤により私が南会津を離れた後も、私が活動を受け継ぎ、今の形に発展させています。
「ベルフォンテ」とは、イタリア語の「ベル(美しい)、と「フォンテ(水源)」を意味し、雪解け水の美しい南会津にピッタリの言葉だと思い、名付けました。
「tentenプロジェクト」をはじめたのは、2年前。「ものづくりプロジェクト」の作り手さん(全国転勤族の方)の言葉がきっかけです。「これまで7年間福島に住んできたけれど、何も感じていなかった。でもベルフォンテの作り手になって、会津木綿という福島の素敵な地域資源を知って、福島のことに興味を持つようになった」と。
この言葉を聞いたとき、福島に住む転勤族の方たちの多くは、他の地と同様に、福島をただ短期間住む場所として、何気なく過ごしているのではないかと思ったのです。その方々に、福島の良さを知ってもらうきっかけを作ることができたら、福島のファンがたくさんできる! たとえ転出してしまっても、福島とずっと関係を持ってくれるはず!
そして、私も南会津町に転入したばかりのことを思い出し、「私に南会津町を楽しむきっかけをくれたあのご夫婦のような存在になれれば、転入後に辛い思いをしている女性たちを救うことができるんじゃないか」と思ったのです。
活動の第一歩として、まずは、「転入当時の私に、こんな場や情報があったらよかったな」と思うことを書き出しました。次に、始めたのは、同様の取り組みを行っている団体や市町村がないか調べること。するとヒットした数少ないなかに、同じ県内の郡山市公民館といわき市の団体(「いわき転入女性の会」)を発見。すぐにいわきの団体に電話をして、活動日に参加させてもらいました。そこで座談会の運営などについて教えてもらったことが、今の「tenten cafe」の礎になっています。
それから、一緒に活動してくれる仲間を探しました。「いわき転入女性の会」の元会長が福島市の隣の市に住んでいると紹介していただき、すぐに連絡。「いわきのような活動を福島市でもやりたい」と相談すると、二つ返事で快諾してくれました。そうして2人で活動を開始。補助金申請をおこない、申請が通ったことで活動を実現させることができました。
活動を実施して2年。今は、SNSでつながっているコミュニティメンバーが270名までになりました。tentenライターも14名まで増え、ライター集団としてライティングのお仕事はもちろん、ライティング以外の特技や経験を活かしたお仕事も少しずついただけるようになってきています。
特に印象に残っているのは、昨年10月の台風19号で福島県が大きな被害を受けたときのこと。福島県から数年前に転出したメンバーが、私たちに募金を届けてくれたのです。その募金は、床上浸水の被害に遭った保育園に責任をもって寄付をさせていただきました。転出した方の福島に対する思いをつなぐ役割ができたことが、とても嬉しかったです。
また、tentenのイベントに参加してくれた方が、ものづくりプロジェクトの作り手さんになったり、マルシェなどのイベント出店時にお客さんで転入女性がいたらtentenの活動を紹介したりと、二つのプロジェクトが相乗効果を生みだしています。
転入女性たちの‟駆け込み寺”的存在を目指して
まずは、‟転入女性の駆け込み寺”のような存在になることです。
自己都合ではなく、たまたま福島に引越してきた女性が、いち早く福島に慣れ、自分らしくいきいきと生活できるよう、人と人とをつなげたり、情報を伝えられるようになること。そして、地域とのつながりを作り、地域の方からも歓迎される存在になれるといいなと思っています。転入女性からは「福島に来てよかった」、地元の方からは「あの人が福島に来てくれてよかった」、そんな声が聞こえる環境にしていきたいです。
また活動を続けていくためには、補助金に頼らず、ファンドレイジング(資金調達)していく必要があります。このコミュニティが福島に、そして社会に何を還元できるのかを考えて、寄付や協賛を募っていきたいです。また正式に「tentenお仕事部」を立ち上げ、転入女性でチームを組んで仕事を受託することで、ファンドレイジングしたいと思っています。
2020年に入ってご縁があり、全国の転勤族の奥さんの暮らしと仕事を支援する「転勤ノオト」の活動にも参画することになりました。そちらの活動とも歩調を合わせて、福島の活動をさらに発展させていきたいです。
転勤ノオト:https://tenkin-note.com/
また「ものづくりプロジェクト」の方では、売上を拡大・安定させ、作り手さんの数を増やしていきたいですね。一人でも多くの女性が社会とつなががれる状況に! そしてよそ者目線や女性目線、母親目線を活かした商品を開発し、福島から多くの素敵な商品を生みだしていきたいと思っています。
全国の女性へメッセージ
「出会いを大切に」
今の自分があるのも、すべては人との出会いからです。自分一人ではできないことも、出会いによって実現できるかもしれません。出会いをこれからも大切にしていきたいです。
★好きな言葉★
亡くなる直前まで美容師としてお店に出ていた私の祖母がとても謙虚な人でした。自分のことよりも人のこと。人に愛され、亡くなった後も祖母のことを思い出して泣いてくれるお客さんがいるのを見て、私も祖母のような人間になりたいと思いました。
福島の転入女性たちを支援する
「ベルフォンテ」
ベルフォンテ
福島の地域資源にちょっとしたデザインや使いやすさを加えて、普段の生活に取り入れてもらえる商品を作っています。また、福島に移住・転入した女性のコミュニティ作り・仕事作りの活動も行っています。
ものづくりPJ:http://belfonte.info/
TentenPJ: https://tenten-f.info/
belfonte.fukushima@gmail.com
福島県福島市大町2-18石屋小路ビル2F