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彼はスマホ中毒。長く付き合いたいけど、あまりにも夢中なので無理かも……と思ったりも。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室96】


✳️今週のお悩み✳️

最近、付き合い始めた(付き合って1ヶ月)年下の彼氏について相談です。31才で無職の彼(人間関係でごちゃごちゃして最近クビになった)です。 彼はスマホが好きでいつもゲームをしたり、LINEをしています。仕事が辛かったみたいで、すぐに就職先を探して働こうとする気はなく、最近は一人暮らしの家でいつものんびりしています。なので一日中スマホばっかりなのです。私はガラケーでまったくスマホに興味がなく、メールと電話しか使いません。まあそれもダメだとは思っているのですが、彼の隙さえあらばスマホをするという行為になかなか慣れません。働いている時はそこまでスマホ中毒って感じではなかったのですが……。一緒にお酒を飲んだり、食事やビデオをみたり、読んだ本の話をしているときはとても気が合うし、長く付き合いたいと思っているのですが、彼があまりにもスマホに夢中で、やはり長く付き合うのは無理かも……という2つの気持ちをいつも巡らせています。 彼は以前は、スマホのゲーム等で知り合った人(その彼女はフリーター)と付き合って同棲してたらしく、私のようなスマホに興味のない会社員とつき合うのは初めてのようです。スマホにしたらいいのにと彼から言われますが、そんなに強く強制されませんし、持ってもやはり仕事が忙しいので、そんなに夢中になる気がしません。 家に遊びに行くと料理を作って待っていてくれていたり、優しいのですが……。別にスマホを止めて欲しいわけではないのですが、どうやったら受け入れられるか悩んでいます。宇多さん、何かアドバイスお願いします! 
(やっこ・38歳)


宇多丸:
前回ちょろっと話したことにも通じる、スマホに夢中な人がハタからはどう見えてるか問題、というか。
スマホってさ、まさにそここそが便利なところなんだから仕方ないんだけど、とにかくあれ一個で、いろんなことが全部済ませられちゃうじゃん?
 SNSやってゲームやって動画見て……。だから、事実上「スマホばっかりやってる」って絵ヅラになりやすくはあるんだよね。

特にこの彼の場合、「働いている時はそこまでスマホ中毒って感じではなかった」ってことだから、単純に無職で、金はないけどヒマはあるっていう状態なのも大きいんじゃない?
たしかに、三十路越した男が、一日中家でゴロゴロしてスマホばっかりいじってる……って光景は、もちろん決してみっともいいもんじゃないでしょうけども。

て言うかむしろこれ、どっちかって言うとその、「イイ歳した男が労働意欲も見せないまま毎日無為に過ごしてる」ってことのほうが本質で、スマホの件はあくまで、その状況を助長するような絶好のヒマつぶしアイテムになっちゃってて困ったもんだっていう、副次的な「問題」にすぎないんじゃないかって感じもちょっとするんですけど、どうでしょう。

こばなみ:
「クビ」っていうのも気になりますね……。
ただ、スマホっていじりはじめるとほーんと時間があっという間に過ぎていきますよね。私も休日にゴロゴロしながらネットみて、映画みて、Facebookのぞいて、「もう夕方じゃん!」なんてこと、ありますもん。あと、宇多丸さんに突っ込まれそうですけど、電車で夢中でやってて降りる駅を乗り過ごしたり。

宇多丸:
まぁ、夢中になってるものが僕の場合は本とかだってだけで、駅乗り過ごしとか逆方面行き乗っちゃったとか、僕も年中やってるからね。

いずれにしても、やっこさんの感覚からすると、今の彼の「スマホばっかり」は、ちょっと度を越してるのかもしれないですけどね。
たとえば食事中もずーっとスマホに目を落としてて、会話もないとか? 
実際そういう男、見かけたことがあるんですよ。

レストランでランチ食ってたら、隣の席が、明らかにファーストデート風の若いカップルだったんだけどさ。
話すことがなくなっちゃったのか、途中から男が、黙ってスマホいじり出したんですよ! 
その間、女の子のほうはずーっと、もうほとんど無くなっちゃったジュースをすすりながら、手持ち無沙汰そうにしてて。
内心「キミ、怒っていいよ!」と思いながら横目で見てましたけども。

こばなみ:
私も思い出したんですけど、同業の友達と飲んでた時に仕事のメールがきたのでスマホでチェックしてたら、「スマホばっかり見てさ!」って、キレられて……。

一応急ぎの仕事であなたもそういうときの状況わかってるはずなのに、そんなに一方的に怒らなくてもいいじゃん、ガーン……とは思っちゃいましたが。
そういう嫌悪感って、ガラケーだからってのも関係あるんですかね?

宇多丸:
やっぱその、さっきも言ったようにスマホって、ちゃんとした用事も、ただの時間つぶしも、全部一緒くたにその一台でまかなえちゃう機械だからさ、ハタから見ると実情以上に「いっつもそればっかりやって!」みたく見えがちだってのはあると思いますよ。

だいたいその、「ガラケー」って呼び方が失礼なんだよな……、やっこさん自身も、ご自分が携帯電話を最低限の用途でしか使ってないことを、「まあそれもダメだとは思っているのですが」なんて、まるで悪いことのように書かれちゃってますけども。
スマホだろうがガラケーだろうが、どっちにしろそんなの、本来はしょせん、ただの「道具」の話でしょ!
 以前この連載で取り上げた「情報」問題と同じで、肝心なのは、それをどう使うか、ってことのはずなんだけどね。

スマホだって、要は単に「携帯用パソコン」なだけだからさ。
だから、この相談文読んでても、「スマホ一般」に興味があるとかないとか、そういうもんじゃなくない?って感じは、どうしても否めない。

でもさ、現実には、携帯をこうパカッと開くだけで、「ププッ、まだガラケーっすか?」とか半笑いで話かけてくるスマホ使用者が、後を絶たないわけ。
そういう風に、たかだか持ってるオモチャが新しいほうが偉いかのように思い込んでる時点で、オツムの「スマート」さも程度が知れるってもんだと思いますけど……。
まぁとにかくそんなこんなで、余計に「スマホばっかりいじってるヤツら」に対する嫌悪感が増してしまう、という面は、たしかにちょっとある気がします、非スマホユーザー的に。

どっちにしろさ、スマホ自体が悪いとか、逆にいまだにガラケーでSNSとかも一切やってないからダメだとか、そういう問題ではホントはもちろんないわけですよ。
なんだってそんなもん、使い方次第なんてのは当たり前の話で。

たとえばさっきの話みたく、誰かとご飯食べたりお酒飲んだりしてるときに、それでもすぐ確認しなきゃいけないような大事な連絡があるって場合は、くれぐれも 一緒にいる相手にきちんと謝って、いちいち許可を得てから初めて、メールなりなんなりをチェックするようにするべきで……ってこれ、スマホだろうとガラケーだろうと関係なく、もともと必要な配慮であり礼儀なんじゃないの、と僕は思うんですけど。

でも、そこで特にスマホ利用者はさ……、別にそこまでの切羽つまった用事とかがなくたって、ものすごーく当然のような顔で、断りもなくLINEとかを見始める率が高い感じ、やっぱり残念ながら、確実にある気がしますよ。
人としての繊細さがなぜかそこだけちょっと、麻痺しがちな感じというのかな。

そういう、前回出た「公共マナー違反、とまでは言えないかもしれないけど……」みたいな線で言うと、僕は正直、あれも気になるの。
食べ物屋さんで、InstagramやFacebookに上げる用なのか、とりあえず出て来た料理の写真を撮る人って今は本当に多くて、それはまぁ別にいいんだけど、そのなかの結構な割合が、お店の人になーんにも言わずに、いきなりカシャッ!ってシャッター切ってるんだよね。
もちろん、聞いてみたらみたで「どうぞどうぞ」って店が今は大半かもしれないけどさ……、それでも、一応了承取るのが礼儀ってもんじゃないの? まして後でネットにそれを上げようっていうんならさ。
そういう最低限のプロセスを、「今はみんなやってるし」程度のなぁなぁ気分で、勝手にすっ飛ばして平気でいられるガサツさが、実は本当にイヤ!

こばなみ:
それはそうですけど……。私、この前、ちょっと酷いなって体験をしたんですよ。昔ながらのホルモン屋に行ったときのことなんですが、撮影禁止って書いてあったので、まぁ撮る気なんてなく、いつも通りポケットに入れてたスマホを机の上に置いといたんですよ。そしたらお店のおばさんが開口一番、「あんたたち撮ったら承知しないわよ」みたなことを怒りモードで言ってきて……。
いやいや、そんなふうにするつもりもないのに、なんでいきなり怒られなきゃいけないの?って、悲しいやら頭にくるやら、でした。

宇多丸:
それはさ、もちろんお店の人のその高圧的な態度は大問題で、僕でもそこは二度と行かねぇよ!ってなると思うけど、あっちはあっちで、さっき僕が言ったみたいな無遠慮な客の振る舞いに、これまでも散々ムカつかされてきたんじゃないの?

そうこうするうちに、それこそ前述したみたいな「スマホ使用者そのもの」への嫌悪が募ってきちゃって、たとえば「ご飯食べるときまで、テーブルの上にスマホ置いて!」ってことまで腹立ちの対象になりつつあった、みたいなさ。

こばなみ:
でも周りをみると、他のお客さんも机に携帯置いてるんですよ。普通に。

宇多丸:
まぁ、そのなかでも特に、「スマホ中毒」の代表格として女子の集団が槍玉に上げられたってことなんだろうけど。そういう偏見はあったんでしょう、間違いなく。

ただね……、僕はぶっちゃけ、さっき言った「ご飯食べるときまでスマホ置いて!」ってイライラ、ちょっとだけわかる気もするんですよ。
なんつーか、「四六時中、“つながり”とやらを気にしてやがる……、目の前にいる人間をないがしろにしてまで!」みたいな感じがするんですよ。本人にはそこまでのつもりはなかったとしてもね。

まぁ、それを言い出したら、僕もひとりでご飯食べるときは必ず本を読んでるんで、お行儀に関してはとても偉そうに何か言えた立場ではないんですが……。

とにかく、最初から繰り返してるように、スマホってとかく「いっつもそればっかりやってる」風に見られがちな機械だし、実際あまりにもそこ中心に生活のすべてが回ってるような人は、気づかないうちに「他者」に対する意識が低下してて、ハタから見たら無神経な行動をとっちゃったりしてることも、ままあるかもしれない。
少なくとも、そういう風に見てる人も一定数確実にいるよってことは、今後ちょっとだけ気にしておいていいことかもしれないです。

こばなみ:
そっか……。まわりにスマホユーザーばかりで、いつのまにかそれが「普通」になっちゃってるってのはあるんだな。私も、礼儀や配慮のことではちょっと反省です……。そういう見方もあるってことは、頭の角に入れておいたほうがいいですね。

宇多丸:
その意味ではさ、やっこさんが彼に「長く付き合うのは無理かも」と感じるっていうのも、他の部分に関してはなんの問題もない人なのに、ことスマホをいじってるときに限って、まさにそういうある種の配慮の無さというか、自分含めた「他者」に対する意識の低さみたいなものが見えてきてしまって、引いちゃう、ってことなんじゃないですかね。非スマホユーザーならではの客観的視点があるから、なおさら。

その上で、彼のスマホ好きを「どうやったら受け入れられるか」ってことですけど……、とりあえず、SNS上で彼がやってるやりとりを、たまに酒の肴がてら、一緒に見せてもらうとかってことはできませんかね? 
別にやっこさん自身が今からSNSをやったりしなくても、「最近なんか記事上げた~?」「つまんないことしか書いてないけど、見る~?」みたいに、あくまで二人の共通の話題のひとつとして彼のスマホ≒ネット活動もある、くらいに持っていければ、両者の距離感みたいなのは、だいぶ埋まっていくんじゃないですかね。
それとは別に、近いうちに「いいかげん職探せやボケ!」とケツを蹴り上げるのは必須としてね!

こばなみ:
(笑)。スマホ問題はいつも話が尽きないですね!


【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2015年5月20日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
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詳しくは
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。



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