年齢的に職場の女子の間で浮いてしまっています。どうすれば楽しくなる?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室40】
✳️今週のお悩み✳️
年齢的に職場の女子の間で浮いてしまっています。 恋バナやオシャレ話をするような年齢でもないし、無理して合わせるのも疲れるだけですが、仕事上まったくコミュニケーションゼロという訳にはいきません。
(つる姫・神奈川県)
宇多丸:
若い女の子だからって話題が「恋バナやオシャレ話」ばっかりって決めつけは普通どうかと思うけど、つる姫さんは現実に、そういう環境のただなかにいるってことだもんね……。こばなみのとこの職場はどうなの?
こばなみ:
私の場合は職場は「企画どうなってる?」とか「締切やばいー!」とかって仕事の話が多いですね。あとはそれこそ新宿三丁目の◯◯◯のランチのカレーがヤバい!とかのご近所ネタ。でもiPhone女子部のイベントも含め、女子会なるものを開くと恋バナは確かに多いですよね。ちなみに男性は恋バナってあんまりしないですよね?
宇多丸:
いや、若い頃は結構してた気もするけど。
まず、中学高校の頃はさ、男子校だったし、「女の子と付き合う」ってこと自体が僕らにとっては「魔界村に行って生還してきた!」ってくらいの貴重な体験だからさ。目ぇキラキラさせて人の恋バナ(=冒険談)聞いたり、逆にささやかすぎる自慢話したり、ってのはあったと思う。
あと、大学の頃も、サークル内での恋愛関係とか、まぁゴシップ的にだけど、わりと頻繁に話題にはしてたかな。
それが、いつ頃からだろうね……少なくとも30代に入っちゃうと、仮に恋愛はしてても、あんまりそれを人に話すって感じじゃなくなってくるよね。なんでだろう? 単純に、他に盛り上がる話題なんていくらでもあるし、って感じはあるよな。恋愛というもののプライオリティが、相対的に低くなってくるのは間違いない。
あと、プライベートな領域にそうそう土足で踏み込むのは失礼だっていう、まさしくオトナな距離感にお互いなってくるから、ってのは大きいんじゃないかな。 逆にさ、自分が付き合ってる相手のことを、それこそ性的な部分まで含めてこと細かに話してきて、こっちにもそういうレベルの「告白」を要求してくる人ってたまにいるじゃん。あれ、苦手なんだよな~。
自分の私生活のことなんて言いたくないってのもあるけど、なんかルール違反じゃない?って感じがしちゃうんだよな、その付き合ってる相手に対して。 二人の間だからこそ見せているような、それこそ一番プライベートな、デリケートな部分をさ、よそで勝手に人に言いふらしていいわけ?って思うんだよ、いつも。 この間の相談にあった不倫の話じゃないけど、皆さん、恋バナという名のもとに、相手の信頼を裏切るようなことを安易にやっちゃってませんか?とは改めて言っておきたいですね。 ま、これはつる姫さんには関係ないことだけども……。
こばなみ:
あと、恋バナで困るのは、ネタがない場合。で、「好きなタイプは?」と聞かれるんだけど、答えていながら、これ話がすべて妄想だから、結局は盛り上がらないっていうか……。
宇多丸:
抽象的な「好きなタイプ」話はホント意味ないしつまんない! みんな気をつけよう!
一方の「オシャレ話」のほうもねぇ。年齢が違えば、例えばブランドとか読む雑誌とかも全然違ってくるんだろうしねぇ。難しいなぁ。
なんとか解きほぐしてゆくなら、要はこれ、「共通の話題がない集団とどう付き合うか?」って話だよね。男女限らず、普遍的にある問題だよ。 年齢や性別、生まれ育った環境や趣味の傾向などなど、とにかく自分一人だけが周りと違うっていうグループに放り込まれたらどうするか……。
もちろん、無理して周囲と付き合わないでも済むならそれが一番かもしれないけど、つる姫さんはそうもいかないみたいだしねぇ。 例えばだけど、その「違い」を、無関心とか疎外感に落とし込むんじゃなくて、「好奇心」の動力にするような方向へなんとか発想の転換を図ってみる、というのはどうですかね。
言ってみれば、民俗学者が離れ小島にフィールドワークしに来たような感覚というかさ。 これまで自分が接したことのない部族、例えば「若い女子」族と、その習俗である「KOI-BANA」なる口頭伝承を、「調査」するような視点で接してみれば、意外とすべてが新鮮に感じられたり……しませんかね?
要は、自分があんまり知らない人たちのことを、「知らない=興味ない」で切り捨てないで、「知らない=知りたい」っていう考え方をしてみたらどうですか?っていうことですね。 あるいは、「自分と違う=嫌い」とか「自分と違う=関係ない」じゃなくて、「自分と違う=面白い」という風に考えてみる。 これ、対象が若い女の子じゃなくたって、例えば逆にすげー歳上のおっさん軍団とか、それこそ外国人とか、なんにでも当てはまる話だと思うんですけどね。
こばなみ:
その子たちに興味をもって取材するってことでしょうかね。「何が好きなの?」「ふーん、ポルノグラフティが好きなんだぁ。どこが好きなの?」とか。そうすると逆にこっちも質問されたりして、コミュニケーションとれますよね。
宇多丸:
そうだね。ひょっとするとつる姫さん、職場の若い子たちに対して「私はあなたたちに興味ない」と内心思っているだけでなく、無意識的にせよ、態度としてそういう雰囲気を発してしまってもいるのでは? で、その結果さらに浮いた感じになってしまっている、みたいな可能性もないですかね?
ま、職場で浮いていようがなんだろうが、本人が問題ないならそれでいいとも思うけどさ。僕も別に、愛想笑いしろってことが言いたいんじゃない。 ただ、どうせ職場で同じ時間を過ごすんだったら、「つまんねーなー」ってずっと思ってるだけっていうのも、やっぱりちょっともったいないんじゃないかなって気がするんです。
この件に限らずだけど、「面白さ」って、どんな場所であれ、自分で見出してくもんだと思うんだよね。 ひたすら受動的に「面白さ待ち」ばっかりしてたら、そりゃあ人生どんどんつまらなくなっていきますよ。
例えばその若い女子たちにもね、ちゃんと観察して、対話して、理解を重ねていけば、「面白さ」は必ずある! 彼女たちをつまらなく感じるとしたら、こちらに面白さを見出す能力が欠けてるからだ、と考えたほうがいいかもしれないよ。 極端な話、「なんてつまらない話で盛り上がっているんだ!」っていう「面白さ」だってあるわけじゃん?……って、わかるかな?
こばなみ:
わかりますよ。おぼっちゃまくんの名言とかドラクエのどうしても思い出せない呪文とか、超どーでもいいことを見つけては話して笑い合う同僚、いますもん。まわりの目は冷ややかですがw。
宇多丸:
さっきは民俗学者のフィールドワークにたとえましたけど、要はこれ、よく言われる「旅人の視点」っていうのと同じ理屈なんですよね。
旅先って、何を見ても新鮮なわけじゃない? そこに住んでる人たちにとっては、すっかり飽き飽きした日常の光景であってもさ。
それと同じように、ともすれば退屈に感じられてしまう自分たちの日常も、あくまで一時的に立ち寄っただけの旅人、異邦人になったつもりで眺め直してみれば、すべてがものすごーく新鮮に思えてくるじゃん?っていう考え方。
こばなみ:
そういうつもりで毎日を過ごしたら、楽しくなるかもしれないですね。
宇多丸:
あとそうだ、もっかいフィールドワークの例えに戻して申し訳ないけど、そういう「調査」を年々続けてたらさ、次第に、「あれ? 3年前のあの子らと今年の新人、結構違うな~」みたいなことが見えてきたりして、またさらに面白みが増すかもしれない。定点観測的な意義も出てきちゃうっていうか。
そうなったらもう、毎年新しい子と接するのが、今度は楽しみで仕方なくなっちゃうかもしれない。「飽きないわ~」って。
そんでもって、それをホントにちゃんと記録しておけば、もう立派な「新人類研究」ですよ!
ということで、いずれ研究成果を本にして出すくらいのつもりで、頑張ってください!
【今週のお絵描き】
職場でフィールドワーク。
新人類研究に「面白さ」を見出してみては。
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2014年4月19日に公開したものを再編集し、掲載しています。