会社の変革を待っているだけ!? 千夏さんに聞く、中小企業の女性活躍を進めるために管理職の私たちができること 【後編】
大企業を中心に女性活躍やダイバーシティの推進が徐々に浸透してきている今日この頃。しかし、日本の99%以上を占める中小企業では、未だ6割以上がアンケートで女性管理職比率は「5%以下」と回答するなど、まだまだ進んでいるとは言えないのが現実です。(※1)
中小企業に向けた経営支援を行いながら、「ふらの女性サミット」の運営やキャリアコンサルタントとしても活動される千夏さんに、「中小企業ってなんで女性活躍が進まないの!?」と率直に質問をぶつけた【前編】。後編では、中小企業で働く管理職やチームリーダーが、今できることをお伺いしました。
(聞き手:F30プロジェクト 小林奈巳)
(※1)出典:中小企業350社に聞いた「企業の女性活躍推進」実態調査2023
管理職は“翻訳者”。さらにトップの“右腕”になれば、会社は変わる!
前編では、企業が変わるには長い時間がかかるということがよ〜くわかりました。そんななか、自分自身のキャリアのために動くというのもひとつの解ですが、管理職やリーダー職が、中小企業で変革をしていく際に、できることはないのでしょうか。
管理職をよく「翻訳者」と呼んでいるのですが、とくにミドルマネジメントは組織のなかでとても重要なポジションを担っています。まずは上層部の考えを自分のなかで腹落ちさせてから、部署のみんなに伝える、そして部下たちの考えも上層部に伝えていく。また、経営者の「右腕」となる幹部がいなくて苦労されている経営者の方も多いんですよ! だから、右腕がいる企業は強いです。
たしかに中小企業だからこそ、トップとの距離も近いし、部下との距離も近い。意見を言おうと思えば言える立場であることも多いですよね。うまく翻訳しながら、会社の意思と社員たちの気持ちをすり合わせたりもできる。そういう動きを経営者の「右腕」としてできれば、会社がダイレクトに変わっていきそうですね。
中小企業の社員だからこそ、将来的に経営者の「右腕」としての存在になる可能性は大いにあると思います。
たとえば女性活躍を進めるときも、女性ならではの視点は大切だと思います。ご自身のライフイベントの経験、友人の経験などから身近に感じることも多いでしょうしね。だからこそ本当に必要なことがわかるはず。そのために制度を変える働きかけをしたり、経営的な目線も持ってトップと話したりすることで、いずれは自分自身が「制度を作る側」にいくことも可能なポジションだと思います。
女性はある意味横並びになりがちなところがありますが、自分で自分に制限をつけずにチャレンジしてほしいですね。
ライフ・キャリアは虹のように多角的。自分が「ありたい姿」を想像して!
仕事と子育てなど、プライベートとの両立は、やっぱり女性活躍の壁になっているのかなと思います。中小企業で制度もしっかりしていない場合、管理職やリーダーを担ううえで、部下のことも自分のことも、いろいろと考えこんでしまうことも多いのでは?
私たちは「職業人」であるだけでなく、市民であり、家庭人でもあります。年齢によってその割合も変わってきます。このように多様なキャリアが積み重なっていく様子を虹にたとえたもので、「ライフキャリア・レインボー」というものがあるんですね。
会社はもちろん、管理職やチームリーダーのみなさんも、部署のメンバーには仕事以外の側面があることを配慮して、多角的な視点を持ちながら仕事をしていくことが求められています。
虹の色が多いですね! 私が仕事を始めた20年前くらいのことを思い出すと、自分も周りも仕事と仕事と仕事……だったけど、今はみんな「家庭人」「労働者」「市民」「余暇人」など、さまざまなチャネルで生きていますよね。
そしてリモートワーク化が進んだことで、仕事以外の部分をお互い見せる機会も減っている気がするので、こうやって可視化すると、改めていろんな人のいろんなライフがあるんだなぁと思いました。
コロナ禍で、飲み会が減ったことも大きな変化ですよね。お互いが何を思っていて、何をしているかわからない。だから、1on1の時間をリーダーが設けたり、話しやすい空気をつくるなど、勤務時間のなかでコミュニケーションをとるための工夫が必要になっているのだと思います。
ちなみに、メンバーが仕事に比重を置きたくない人ばかり、という場合、リーダーはどうしたらいいのでしょう。
プライベートばかりを重視して遅刻や早退ばかりだと困りますが、基本的な考え方として、仕事の時間に仕事をちゃんとやってもらえばプライベートは自由!のはず。環境にもよるとは思いますが、今その会社で働いているということは、少なからず会社の理念やパーパスに共感して働いているのだと思います。会社が何を大事にしているのか、そのうえで各従業員がどうありたいかを考え、会社のしくみ・評価制度を整えて、多様な価値観の人が活躍できるようにしたいですよね。管理職のみなさんにおいても感情論ではなく、「働くうえで、誰がどんな価値観を持っていてもいい」ということを前提に、そのためにどのような環境やしくみが自分の会社・部署に必要なのかを考え、仕事をしていくことが大切だと思います。
私たち管理側も、どんどんアップデートしていかなければなりませんね。
それには、従業員一人ひとりが自分がどんな虹を描きたいか、理想のライフ・キャリアを考える必要があります。「どうなりたいか」という問いを難しく感じる人も多いので、自分自身が「どうありたいか」、「組織のなかでどういう存在でありたいか」、といったように「ありたい姿」を考えていくといいですよ。
私の場合は、自分が楽しいと思うことを周りの人に紹介して楽しんでもらっている姿を見るのがすごく好きで、「楽しむ・楽しませる存在でありたい」、と考えながら仕事をしています。プライベートもですが。
今ががんばりどき。小さな変化から大きな変革へ!
中小企業の女性活躍にはまだまだ伸び代があるとはいえ、私たちを取り巻く環境は、どんどんよい方向に変化してきているのですかね?
今がまさに、激動の時代です。今の40代くらいから、学校では男女一緒に技術・家庭科を受けています。そういった流れもありますし、ようやく性別で判断されずにがんばってきた人が認められるケースが増えてきて、中小企業もだんだんと変わってきています。中小企業には、少ない人数でやっていかなきゃいけない大変さがありますが、会社がどうありたいか、という理想の姿が決まれば、浸透は大企業より早いです!
だからこそ、身近なところから小さな一歩を踏み出すことが本当に大切。たとえば、言いにくいことを伝えられるコミュニケーション力や心理的安全性を高めたり、周りの人々を助け合う環境やマインドを醸成したり……。小さな変化の積み重ねが、大きな変革をつくっていきます!
その変革は、働きやすく、やりがいを持って働ける環境につながっていると思います。変革の過程では大変なこともありますが、よい未来に向けて進んでいると確信が持てた瞬間、みなさんいい笑顔になるのです。変化をしていくのは「楽しいこと」であると私は思います。
私自身も「楽しむ・楽しませる存在でありたい」と考えながら、中小企業の組織変革から、女性活躍の推進に至るまで、サポートしていきたいと思っています。
<前回はこちら → 中小企業の女性活躍のリアルとは? 経営支援で組織変革をサポートする、千夏さんに聞きました【前編】>