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【浜田敬子さんに聞く女性活躍の捉え方の整理】 日本は今後労働力が不足するから、女性がかり出された?

「女性活躍推進」という言葉がなくなるような、本当に女性が活躍する2030年を迎えるためには、どうすればよいのでしょう? AERA編集長時代から女性の働き方を発信し、現在はダイバーシティや働き方について広い知見をもとに活動されている浜田敬子さんに聞く連載企画

今回は、日本、企業、個人の目線からの女性活躍の目的や捉え方の違いについて伺いました。


女性活躍とは、女性を一人前の人間として扱うこと。その延長線上に管理職の女性比率向上がある。


——前回、企業は経営危機がきっかけで、女性活躍やダイバーシティに取り組む場合も多いということを伺い、いち女性から見たジェンダー平等とは違った視点だと思いました。日本にとって、企業にとって、個人にとって、女性活躍の目的についてどのように整理して捉えておくとよいでしょうか?


例えば、大きな視点で捉えると、日本は人口減少社会になっていくので、労働力が減っていきます。2010年ぐらいからこの人口減少モデル、労働力不足問題は深刻な課題だとして政府は捉えていました。そして、労働力不足解消のカギは「シニア」と「女性」だとされ、定年も延長され、2015年に女性活躍推進法が成立したんです。しかし、結局ただの労働力としてしか見ていないため、本当に女性たちが「働きやすく」「能力を発揮しやすい」社会になっていったかは疑問です。そして、女活法ができる一方で、女性の正社員はほとんど増えておらず、非正規雇用が伸びているのが現実です。


※厚生労働省「令和3年版働く女性の実情」より


非正規雇用の人たちがもっと正当に評価され、昇給や昇進があればまだいいです。希望する人は正社員に登用するような道があればさらによいのですが、使い捨ての労働力だとみなしている企業が多いのが現状です。そのため女性の賃金がなかなか伸びないという課題があります。

私は、中小企業の経営層の方に、こんなお話をします。

「皆さんが非正規雇用で女性の賃金を低く抑えると、女性の貧困問題につながります。わかりやすい例として、コロナ禍で特に打撃を受けた産業は、観光、飲食、小売でしたが、そこで働いている女性の多くが非正規雇用です。そのため、コロナ禍は『女性不況』と言われました。2020年3月に比べて、4月の女性就業者数は63万人減少。男性と比べて大きな減少幅でした。

■コロナ下の女性の就業への影響

※内閣府「男女共同参画白書 令和4年版」より

そのなかにはいろいろな女性がいますが、最も深刻な影響を受けたのはシングルマザーではないでしょうか。いきなり雇用止めをされ、経済的な苦境に陥ってしまうと、当然子どもの貧困につながります。中小企業の経営者の皆さんの経営が厳しいのはわかります。でも、その雇用状況によって、貧困状況を作っているんです。

そして、子どもたちは、企業にとっては将来のお客さまになる人たちです。地域の子どもたちが貧困状態であることは、地域がどんどん貧しくなっていくということです。」


これは、国全体に置き換えても同じだと思います。働いている人たちがきちんとした処遇と賃金を得ることは非常に大事なことですが、これまで比較的女性が虐げられてきました。

私は、女性活躍という言葉があまり好きではありません。女性活躍=管理職を増やすことだと思われていますが、それだけではありません。女性を一人前の人間として扱うことの延長線として、管理職もあるわけです。まずは、きちんとした賃金を払う、正社員にするといったことが大事ではないでしょうか。そのなかで管理職にふさわしい人は、管理職にしていくということです。

「女性活躍はいつまでやればいいんですか?」とよく聞かれますが、私は、性別による賃金ギャップがなくなり、ジェンダーギャップ指数が世界で30位ぐらいになるまで、と答えています。



女性が働き続け、昇進・昇格ができる環境をつくること。


——日本のジェンダーギャップ指数が世界で30位になるには、どのようなことが必要なのでしょうか。

ジェンダーギャップ指数における「教育」の分野では、日本は1位で中等教育までは男女格差はありません。「健康」の分野は63位で注意は必要です。足を引っ張っているのは、「政治」分野、「経済」分野。それぞれ139位と121位なので、ここを改善するしかないわけですよね。

「政治」分野はどうでしょう。衆議院における女性の数は、9.7%。女性の政治家を増やすには、クオータ制と言われる、候補者に一定割合の女性を入れ制度の導入も義務付けるべきです。実際、クオータ制を取り入れている国は、女性の政治家が増えてきています。韓国も性別役割分業意識が根強く、なかなか女性が上位職に行けず男女格差が大きい国ですが、やはり女性が増えてきています。


■女性議員の比率(第26回参議院通常選挙後)

※内閣府「男女共同参画白書 令和4年版」より


経済においては、順位を下げている大きな二つの要素があります。管理職・経営層に女性が少ないという問題と、男女の賃金ギャップが大きいという問題です。

管理職については、リーダーの要件を見直し、女性たちに「あなたたちができるんだよ」をわかってもらい、さらに教育をする。一方でリモートワークを取り入れるなど、働きやすい環境の見直しも必要です。


■諸外国の女性役員割合

※内閣府「男女共同参画白書 令和4年版」より


そして、賃金ギャップについては、非正規雇用から正規雇用への動きのほか、最低賃金の見直しも必要です。さらに言えば、男性が管理職に選ばれやすい状況では、いわゆるマミートラック※の状況に陥る人が増え、女性の上位職が少なく、退職にもつながるのでそれが賃金格差にもつながるわけです。

育休・育休から仕事復帰した女性が、出世コースからはずれた働き方をさせられること。


※内閣府「男女共同参画白書 令和4年版」より



賃金ギャップ解消のためにも女性が働き続け、その人のペースで少しずつスキルをつけ、経験値を上げ、管理職に就かないまでも、まずは昇進・昇格をできるようになること。その先にリーダーをやってみたいという意欲があれば、チャレンジできる。そういったことがジェンダーギャップ解消には必要です。これは、人としての尊厳という視点からも大事だと思います。「この組織にいても、期待もされてない」「私なんて、いてもいなくてもいい存在」というのは、本当に辛いと思うので。



男性も支援制度を使って家事や育児を分担することで、ようやく真の公平性につながる。


少し古いですが、2010年代初め頃の調査で、アメリカとドイツと日本の大卒の女性に離職をした理由を聞くと、アメリカとドイツは「子育てのため」と回答した人が一番多かったんです。でも、日本は違いました。「やりがいがないから」という回答が一番多いという結果でした。

※2011年のアメリカのシンクタンクCenter for Work-lifePolicyによる高学歴女性の離職に関する調査『日本における女性の休職・離職と職場復帰―企業 が有能な女性の成功をサポートするためには』

これまで家庭との両立の負担を減らすことを重視して、育休制度や短時間勤務の制度など、両立支援制度を拡充してきました。でも、本来は、こういった支援を受けるべきなのは、女性だけでないはずです。

女性だけが育休や短時間勤務の支援制度を使えば、当然キャリアに影響してマミートラックとなるわけです。

ようやく近年は、丸井グループの事例で紹介したように、男性も育休や短時間勤務を活用してもらい、共働きをする夫婦が多くなりました。週に5日の勤務日があれば、2日と3日で分担できます。男性も家事や育児をすることで、ようやく真の公平となるわけです。



*****

【浜田敬子さんに聞く女性活躍とアンコンシャスバイアス】目に見えないジェンダー差別の積み重ねが、女性の自信を奪っている。
に続きます。



<お話を伺った人>

ジャーナリスト
浜田 敬子(はまだ けいこ)さん

前Business Insider Japan統括編集長。元AERA編集長。 1989年に朝日新聞社に入社。前橋、仙台支局、週刊朝日編集部を経て、99年からAERA編集部。副編集長などを経て、2014年からAERA編集長。 編集長時代はネットメディアとのコラボレーションや1号限り外部の人に編集長を担ってもらう「特別編集長号」など新機軸に挑戦。 2017年3月末で朝日新聞社を退社し、世界12カ国で展開するアメリカの経済オンラインメディアBusiness Insiderの日本版を統括編集長として立ち上げる。 2020年末に退任し、フリーランスのジャーナリストに。 2022年8月にリクルートワークス研究所が発行する『Works』編集長に就任。 「羽鳥慎一モーニングショー」「サンデーモーニング」のコメンテーターを務めるほか、ダイバーシティや働き方などについての講演多数。著書に『働く女子と罪悪感』『男性中心企業の終焉』


取材:F30プロジェクト 文:武田 明子




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