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服に対して多幸感を感じることができない……。でもダサい格好を卒業したい!【ライムスター宇多丸のお悩み相談室130】


✳️今週のお悩み✳️
こんにちは。私の悩みは、見た目(特に服)にお金をかけることができないことです。 毎月、自由に使えるお金をいつも映画や本に使ってしまい、服を買うお金が残りません。別に不潔な格好をしてるわけじゃないんですが、高校時代からずっと冬 はセーターにジーンズ、夏はTシャツにジーンズという格好をしていて、自分でもダサいと思います。でも同じくお金を払うとなると、本や映画(にお金を払うこと)から得られるような多幸感を、服に対して感じることができず、ユニクロでも出ししぶってしまいます。 来年から社会人になることもあり、いい加減ダサい格好も卒業したいと思ってるので、是非多趣味でありながらおしゃれな宇多丸さんのご意見をお聞かせください。

(あやこ・22歳・東京都)


宇多丸:
僕はあやこさん、素敵だなと思いましたけどね。

服なんかより自分の教養や情操を養うものに投資したいって、特に学生時代の過ごし方として、ある種理想的じゃない?

って言うかむしろ、そのほうが今っぽい「おしゃれ」観に近い気がする。
目の色変えて服服服!みたいのはカッコ悪いよね、って感じに、今はイケてる人ほどだんだんなってきてるんじゃないかな~。

逆を考えてみればわかりやすいよね。
若いうちから身分不相応なブランドもんとかばっかにお金使って、ロクに本も読んでなきゃ映画も知らない、要は基礎教養がなってない、みたいな人と比べてみれば、どっちが望ましいかは明らかでしょう。
その点では僕も、あんまり人に偉そうなことは言えないんだけど……。

なんにしても服なんて、ある程度の年齢になっていっちょまえの仕事をするようになれば、可処分所得が増えて、いくらでも……は言いすぎでも、学生時代からしたら考えられないようなハードルの低さで、あれこれ買えちゃうようになりますから!

学生の間は、あやこさんのスタンスで全然オッケーなんじゃないかなぁ。

こばなみ:
今のところ、問題なし!

宇多丸:
自分の若い頃と比べると、恥ずかしくなっちゃうくらいですよ。

それこそ僕が中高のころは、いわゆるデザイナーズブランドブームで、まさしく服服服!の極致みたいな時代だったからさ。
もちろんお金なんかないからそんなにバカスカ買えるわけじゃないんだけど、古着や安い服と組み合わせたりして、なんとかそれ風に見せようと躍起になったりしてましたよねぇ。

で、 母親からはいつも「ジーパンにトレーナーやパーカーだけでもサマになるのが若い人の特権なのに、無理してそんな似合わないカッコしちゃって……」「奇抜な格好したりするのは田舎っぺのやることよ!」とか言われ続けてて、そのたびに「ったく、なんにもわかってねぇんだから年寄りは!」って舌打ちしてたんだけど……。
この歳になって思うのは、たしかに、あなたのおっしゃる通りでした!

まぁそうやって、着るものひとつとってみても背伸びしようとしてジタバタしちゃうのがまた、青春ってもんではあるんだけどさ。
だから、自分が当事者のうちは、なかなかそんな風には悟りきれないんだけども……、どんだけビンボーくさいカッコしてても、哀れに見えない、どころか輝いてる!なんてのは、まさしく若いうちだけの特権だったんだってことは、歳をとってからようやくわかってきた真実ですよね。

こばなみ:
逆に歳をとると、ジーパンとトレーナーだけじゃいられないというか、似合わなくなってきません?

宇多丸:
って言うか、いい歳こいていっつもそんな風だと、どうしても一種のうら悲しさが漂ってきちゃうんだよね。
「生活、苦しいんでしょうね……」的な。
おじさんなんか特に!ですよ。

まぁ、ボディがビッキビキに出来あがってたりすれば話はまた違うんだろうけど、それはそれで「お年なのに頑張られて……」みたいな、別のニュアンスは出ちゃうからね。
ナチュラルなカッコしてるはずなのに、全然自然じゃない!っていう(笑)。

なので、来年から本格的にオトナになるんだしちょっとは格好にも気を使おうかしら、っていう心がけも、タイミングとしては間違ってないと思いますよ。

ただやっぱり、物質的な贅沢より心を豊かにするものにお金をかけたいっていう、ベースの考え方は素晴らしいんだから、そこはブレないで行ってほしいという気持ちもある。

まずさ、「冬はセーターにジーンズ、夏はTシャツにジーンズ」って、要は飾らない、無造作な格好ということだろうけども、「だから」ダサい、ということにはならないと思うんですよね、別に。
そういうシンプルな着こなしがサマになってるんだったら、それが一番カッコいいくらいでしょ。

それよりキツいのは、いかにも金がかかってそうだったり、凝った格好してたりするのに、そもそもセンスに問題があるのか、それでも結局ダサい!って人ですよ。

わかりやすい例で言うと、誰とは言わないけど、いい歳して全身ピンクハウスな上にヴィトンのバッグ持っちゃってるようなおばさんとかさ。たしかに金はかかってるかもしれないけど、どっちも台無しだよ!(笑) 
そもそもピンクハウスなんか、美少女しか似合わないんだからさ。上から下まで揃えるほど好きなのに、ブランドの解釈ができてないじゃん!っていう話でしょ。

つまり、前も言ったと思うけど、おしゃれってやっぱり、一種の「知性」なんだと思うんですよ。
自分がどう見られてるか、どう見せたいかの計算や演出が正確にできてるかどうかっていうのもあるし、いま言ったみたいに、その服をどう着れば一番映えるのかっていう、解釈の仕方の問題もある。
それって、広義の「頭の良さ」の話でしょう。

さらにこれがオトナだと、言ってみれば社会のなかでそれぞれの役割=ロールを演じる立場だから、どういう服装をするか、ということの意味も、当然より重みを持ってくるわけですよ。

もちろん、一番大事なのは「自分が好きな自分」でいられるってことなんだから、誰がどんな服着てようとその人の勝手ではあるんだけど、あまりにも年齢やTPOにそぐわない格好をしていると、他人からは社会性とか知性まで疑われかねない、というリスクが、オトナになるとより増すっていうのも間違いないことですから。
さっき挙げた「ピンクハウスにヴィトン」なんか、ギトギトした成金感と幼児性がゴッチャになってて自覚もない、っていう当人のパーソナリティが、そのちぐはぐなカッコに、モロに出ちゃってる感じじゃん?

まぁだから、「冬はセーターにジーンズ、夏はTシャツにジーンズ」路線で貧乏臭くなく品良くまとまってるなら、それに越したことないですよ、ホント。
そういうのが一番上級者向けだろ!って話もあるけど……。
とは言えあやこさん、映画はお好きだってことなんだから、美的センスがゼロってことはないと思うんですよね。

こばなみ:
女子部員さんからの意見にもありましたけど、若作りしすぎてるファッションとかも、ギョッとしますよね。

さてでは、あやこさんはまずはどうしましょ?

宇多丸:
これは完全に表面的なイメージで言ってることなんで申し訳ないですけど、あやこさんのライフスタイルって、なんとなーく、「無印良品」っぽい感じしない?

こばなみ:
たしかに、無印っぽい~!

宇多丸:
ねぇ? 
本とか映画に詳しくて、いつもシンプルでベーシックな服着てて……って。
いま僕、どんどん妄想が膨らんじゃってますもん。きっと黒髪のショートボブで、メガネも似合いそう、とか(笑)。

ということで、勝手に方向性を決めつけちゃってますけども、とりあえず、おしゃれ初心者として、無印的な枠組みのなかでレベルを上げていくことを考えてみるのはどうですかね?

それぞれのアイテム自体はまさしくシンプルでベーシックなんだから、そうそうおかしなことにもならないと思うし。
あとはサイズ感と組み合わせ次第で、いくらでも今っぽい感じにできたりもするでしょ。

最初はどうしても自分のチョイスに自信が持てないかもしれないけど、そういうときこそプロのスタイリングをちゃんと参考にする!
 無印で言えば、もう終わっちゃったようだけど、1週間コーディネートを考えてくれるスタイリング相談みたいなこともやってるらしいよ。

こばなみ:
調べたら、「衣料品 2015 秋冬 コーディネートカタログ」も参考になりそうでしたよ。あと無印ってアプリも出てて、ポイントが貯まったり、わりとよく10%オフとかにもなるんですよね。ぜひご活用を!

宇多丸:
俺ら無印の回し者かっていう(笑)。

まぁ、 どこでもいいんだけど、最初はまず、なんとなくでもいいから全体に自分とテイストが合いそうだな~ってブランドやセレクトショップを見つくろって、その縛りのなかでいろいろ試してみると、実際にはどんなのが似合うのかとか、いろいろわかってくることがあるんじゃないかな~。

僕も、一軒信頼できるお店とスタッフを見つけて、基本そこをベースに買うって感じでずっと来てますね。

こばなみ:
私は、前も言いましたけど、のだめ(カンタービレ)方式で、着る工数が少ないからワンピースを多くしてるんですけど、それでタイツを色ものとか柄物にするとか。アイテム数が少ないので、楽ですよ!

宇多丸:
わかる! 同じような理由で僕もセットアップは好んで買いますね。

なんにせよ、今はファストファッション花盛りだからさ、品質も流行感も申し分ない服が、昔からすると考えられないような、それこそゼロがひとつもふたつも違うくらいの値段で、そっこらじゅうで売ってるわけでしょう。

しかも、僕が若い頃のブランドショップとか、試着室入るのさえものすごいプレッシャーがあったんだけど、今のファストファッションはもう、気軽にバンバン、何着でも試着できるじゃん? 店員さんもほっといてくれるし。
あれ、すっごくいいことだと思うんだよね。
さっきも言ったように、おしゃれって基本「サイズ感と組み合わせ」がキモだからさ。納得できるのに出会うまで、気兼ねを感じることなく繰り返し試せるっていうのは大きいですよ。

あと、前にもファッションの話題の回のときに言ったけど、何を買ったらいいかわかんないっていう人は、お店のディスプレイまんまコピーしたセットとか、トライしてみればいいんですよ。

こばなみ:
安くいろいろあるからチャレンジもできますしね。

宇多丸:
アクセサリーとかだってバカ安なんだからさぁ。
曲がりなりにもプロのコーディネイトを完コピできるんだから、やらない手はないですよ!

あ、ただしそれやるときは、大都市のフラッグシップ店とかに行くように。
郊外のモール店だと、やっぱり「その土地での売れ筋」みたいなのしか置いてなかったりするから。
あやこさんなんかせっかく東京なんだから、どうせなら銀座店でも行って、目についたもの片っ端から着まくればいいんですよ。タダだよ、タダ!

あ と、基本的なことだけど、たまには立ち読みでいいからファッション雑誌をペラペラめくるとかして、なんとなーくの「今の感じ」、カラフルなのかモノトーン なのか、ゆったりめなのかタイトめなのか、みたいな全体の雰囲気をつかんでおくのも大事……って、どれだけ初心者に向けて言ってんだって話ですけど。

ちなみに僕、女子部のみなさんに激推ししたいのは、「手袋」ですね!
 ワンアイテム加えるだけで、断然おしゃれに見えるからさぁ。
はめてないときも、手に持ってたり、ジャケットやコートのポケットからちょろりと見せたりするだけで、ワンランクアップ感ハンパないですよ。
しかも、ここがすごいとこなんだけど……、その上、あったかいんだよ? 
こんないいものを、なんでみんなしないの?って、いつも心底思ってるんですけど。

こばなみ:
今すぐ手袋買いにいこう!

宇多丸:
とにかく、あやこさんに伝わるといいなぁと思うのは、たしかに本や映画に比べるとかなり割高に思えるかもしれないけど、でもやっぱ、服は服で楽しいよ!ってことなんですよ。

とっておきの新しい服を身につけて、初めて外に出かけるときとかさ……、それこそ本とか映画みたいなバーチャル体験では得られない多幸感、確実にあるよ! 
少なくとも、一番手っ取り早く気持ちを新たにしてくれるというか、さっきも言ったけど「自分が好きな自分になれる」手段ではあると思うんですよね。その意味では、安上がりですらあると思う。

あやこさんはきっと、感受性豊かな人だから、どこかのポイントで「あっ、この感覚か!」っていう“気づき”が訪れたら、そこからは一気に、おしゃれがすっごく楽しくなる可能性も大きいと思いますよ。


【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2016年1月23日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
こちら
※シングル「世界、西原商会の世界! Part 2 逆featuring CRAZY KEN BAND」が配信中! Victorサイト限定CD盤もリリース!
詳しくは
こちら


女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。




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