彼氏には私以外の女性と関わらないでほしい。嫉妬深い自分、どうすればいい?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室182】
✳️今週のお悩み✳️
自分の嫉妬深さについて相談があります。初めて恋人が出来るまで、まわりのカップルの彼女に「彼が~~してて、凄く嫉妬してしまう」といった類の相談を受けることがあり、その都度「相手のことを信用するのが大切だよ」なんて返事をしながらやれやれと思っていました。しかしいざ自分がお付き合いを始めると、そういったアドバイスと矛盾するような激しい嫉妬の念を抱くようになりました。当時付き合っていた彼が女性と一対一で話していたり(自分がその場にいれば大丈夫)、携帯で業務上のやりとりをしているだけでも不安になります。というか不安を通り越して怒りを覚えてしまいます。それが態度に出てしまい何度か喧嘩してしまいましたが、自分が上記のような理由で怒っていると知られるのが嫌で別の原因をでっち上げて怒りをぶつけていました。彼は特別に異性と親しくするとかはなくて、ほんとに普通の会話をしていただけなので、本当のことを伝える勇気はありませんでした。引かれると思いますが、付き合っている男性には私以外の女性と関わらないでほしいと思うのが本心なんです。付き合っているときならまだしも、最近は気になる男性が楽しそうに女性と話しているのを見るだけで辛く落ち込んでしまいます。この性分を治す自信がありません。助けてください。
(こだま・23歳・埼玉県)
宇多丸:
「嫉妬」ってさ、ひとつの言葉にざっくりくくられてるけど、改めて考えてみると、好きな人が自分以外の対象に好意を寄せているのを見てキーッ!みたいなのと、「うらやましい」がちょっとネガティヴに発展してしまった感じのアレと(笑)、それから今回の相談のような、実際には存在しないかもしれない裏切り行為とかを勝手に想像してはヤキモキするっていう、要は「疑心暗鬼」って言ったほうが早いようなやつと……、とにかく実は、それぞれ結構違うじゃん!って感情が、いくつか混ざったまま使われてるよね。
ま、どれも、根っ子のところは「なんで自分“だけ”をチヤホヤしてくれないんだ~!」っていう、まぁ幼児的な欲求不満から来てるっていうのは同じなんだろうけど……。
こだまさんみたいな「疑心暗鬼型ジェラス」の場合はやっぱり、そもそも実体がほぼほぼないところに生じてしまうものなだけに、具体的に「これをクリアすれば解決」というようなラインが見えづらい、いつも言ってるように本質的にキリがない、終わりがない病であるっていう厄介さですよね。
こばなみ:
こだまさん、「自分が上記のような理由で怒っていると知られるのが嫌で別の原因をでっち上げて怒りをぶつけていました」ってありましたけど、それでまた負のループに入っちゃったんですかね。
宇多丸:
実は、いまプンプンしてみせてることよりもっと手前に、「真の怒りの原因」がある、っていうやつね。まぁ女の人がやりがちな……、いや、性別は関係ないか。男も普通にやるね。
とにかく、「そんなこと、言わずともわかれよ!」ってイライラが加味されてるのもわかるんだけどさ、やっぱそれはダメですよね。絶対こじれる一方。
こばなみ:
彼にしたら、わけわかんないことで怒られてる状況ですもんね。
宇多丸:
そもそもなんも悪いことしてないんだもんね。かわいそう(笑)。
結局その彼とは別れちゃったわけですよね。きっといまも、「オレのなにが悪かったんだろう」ってモヤモヤしてるんじゃない?
こばなみ:
ただ、最後のフレーズの「最近は気になる男性が楽しそうに女性と話しているのを見るだけで辛く落ち込んでしまいます」というのは、別に普通の感情じゃないですか?
宇多丸:
まーね。最初に言ったカテゴライズで言えば、まさしく「好きな人が自分以外の対象に好意を寄せているのを見てキーッ!」だよね。まぁ、そういう気持ちについなってしまったりすることは、たしかに誰にでもあり得る。
ただ、問題はそれをどの程度実際の態度や行動に出してしまうか、ということだから……、胸にしまっておけるなら、別にいいんですけどね。
ちなみにこだまさんは、付き合ってもいない段階でもうそういう嫉妬心がわいてきちゃうほうが、付き合ってからのそれよりも異常だって思ってるっぽいけど、そうとも限んないんじゃないかな。 むしろ、相手がこっちに気持ちを向けてくれるかどうかさえまだ定かじゃないわけだから、「好きな人が自分以外の対象に(中略)キーッ!」となる可能性は、ちゃんと付き合ってる状態より、断然高くて当たり前なんじゃない? こばなみがさっき「別に普通の感情じゃないですか」って言ったのもそういうことでしょ。それこそ、片想いしてる人なんか全員そうなんだしさ(笑)。
それよりやっぱり、仮にもちゃんと付き合っている、つまり、本来他の誰よりも気持ちが通じ合っているはずの相手のことを、それでもどうしても信じきれない、というほうが、より深刻な話ですよ。 自分以外の異性と関わってほしくないって、気持ちとしてまったく理解できないわけじゃないけど、現実的じゃないのは明らかだし、仮にホントにそこまでガードを徹底させたとしても、本質的に疑心暗鬼の根を絶ったことには、やっぱならないから。最初から実体なんてないところから生まれたモヤモヤなんだから、いつ、どんなきっかけででも、またすぐムクムクと頭をもたげてきちゃいますよ。 だからやっぱ、こだまさん側が心底「彼との関係はちょっとやそっとのことじゃ揺るがない、大丈夫!」と確信できるようにならないと、心の平穏は訪れないんじゃないかな。
はっきりしてるのは、前回の相談と同じで、こだまさんひとりでいくらジタバタしても、ここまで進行しちゃった「疑いという病」は、原理的に治んないと思いますよ。 だって、こだまさんも頭ではわかってるように、「相手のことを信用するのが大切」というのはまさにその通りなんだけども、それって、片側だけが頑張ってどうにかなることじゃないじゃん。 信頼「関係」なんだからさ。言うまでもなく、双方向的なものでしかありえないわけで。パートナーの協力はもう、絶対不可欠!と思ったほうがいい。
わかりやすいことを言えば、いくら「愛とは信じることだ」っつったって、そもそも信用できないようなことばっかりするようなヤツのことは、信じろったって信じきれないのも当然なわけじゃん? つまり、相手が不安や疑念、まして悲しみなどを抱かないで済むように、自らの言動でちゃんと「心から信じられる」ようにしてあげる、というのは、お互いにパートナーとして果たすべき、「責任」のうちだと思うんですよね。
だから、こだまさんが不安だと訴えているのなら、まずはその不安を解くべく、彼側が全力で誠意ある対応をすべき、だとは思う。 つっても僕も、「たとえいっとき親しげに話していたとしても、他の女性など、こだまさんとは比較にもならない、まったく眼中にない」「実際自分が、どれだけこだまさんのことが好きで好きで仕方ないか」といったようなことを、しつこくしつこく、こだまさんがうんざりして「もうわかったから!」と根を上げるほどに(笑)、繰り返し繰り返し、切々と訴え続ける、くらいしか思いつかないけど……。
ともあれ、もしそうやって、なにかしら彼なりに精一杯の頑張りを見せてくれたのだとしたら、こだまさん側も、それで疑心暗鬼が完全に解消されるわけではなかったとしても、その全力の誠意そのものを、「信頼に足る言動」として受け取るよう努力して、少しずつでもスタンスを軟化させてゆくべきだろう、とも思うし。
逆に、こだまさんが辛いと言ってるのに、「はぁ? オレのこと信用できないわけ?」的な逆ギレ反応しか返ってこなかったとしたら、それは、さっき言ったような、関係を維持するための「信じさせる」努力を放棄しているという点で、はっきり彼側の問題、落ち度でもあるわけで。 そうなったらもう、少なくともこだまさんだけが責任を感じる必要はない、ということですよね。じゃあ良かった!とも思えないだろうけど……。
ただ、それ以前にこだまさんは、そうやって自分の気持ちをちゃんと伝えること自体ができてなかったわけで。それじゃ彼だって、誠意の見せようもない。 せめて、関係ない理由で言い合った後にでも、「ごめん……、ホントは、こういうことで悩んでて、ついあんな態度を取ってしまい……」とでも切り出せれば良かったのにね。そしたら彼だって、「な~んだ、そんなことで心配することないのに、バカだなぁ~♡」とか、意外とライトかつソフトに対処してくれたかも。
毎度の繰り返しになりますが、どのような人間関係であれ、円滑に保つためには、基本「素直に」「優しく」、これ以上の方法はありませんよ! そこ行くとこだまさんは、「本当のことを伝える勇気はありませんでした」ってとこで「素直に」が外れちゃったし、怒りとしてぶつけてしまったことで「優しく」も外れてしまったという。 まぁ、そこはもう、反省は反省として、今後に活かしていけばいいですよ……。
こばなみ:
「素直に」「優しく」、ホント立ち返るところですね。
宇多丸:
とにかくさ、彼側に「“疑い”という終わりのない病」の重大さをしっかり理解させたうえで、何回も何回も「大丈夫だよ」「大丈夫だよ」って言ってもらい続けて、こちら側も少しずつ、「これだけ言ってくれてるのだから、本当にそうなのかも」って確信を固めてゆくっていう、そういう両面からのコツコツした努力の積み重ね以外に、この件、解決法なんかなくない?
ホント、そういう意味でも前回のお悩みにちょっと近いんだけど。
要は、呪いにかかっちゃってるようなもんなんだからさ。そしたら、また別の魔法をかけてもらうしかないじゃん。 洗脳を解くには、逆洗脳だ!みたいな(笑)。 もしくは、前のデータの痕跡が見えなくなるまで、根気よく「上書き」してゆくというかね。
だから今回の回答は、こだまさん自身というより、彼女と今後付き合う相手含め、嫉妬される側の人にこそ読んでほしいんですよね。 ホントにね、ちょっと極端なくらい、「他の女は全員クソだ」くらい言ってもいいくらいだよ。言われたほうも、「まーた調子のいいことばっか言って!」とか言いつつ、なんだかんだで言ってもらったら絶対ちょっとは嬉しいはず!
こばなみ:
盛る!
宇多丸:
でもそれ、曲がりなりにも付き合ってる相手なんだし、本当に思ってることでもあるんだよ。「君だけは特別なんだ」っていうのは。
僕だって、もし疑心暗鬼の呪いに取り憑かれたら、そのときはやっぱり、パートナーには全力で「他の男はクズだと思っている」くらいのこと、言ってほしいですもん。 盛りでもいいから! それこそが愛の証だと思えるから!って。
そのくらい不安という病の根は深いから、解こうとする側はもう、本当の本気で取り組まないと。
つまりこだまさんの場合、そこまでやってくれる人に当たるまで探す、というのがまず第一歩かもしれませんね(笑)。 でもまぁ、恋愛ってもともとそういうもんでしょう? ある程度トライ&エラーを重ねないとどうにもなんないっていうのは。
たぶん、自分もそういうことで一度でも辛い思いしたことあるような人なら、そういうときどう言ってほしいのかとか、こだまさんの立場にちゃんと寄り添って、考えてくれたりするんじゃないかと思いますけどね……。
そう考えると、辛い失恋経験とかも、やっぱ決して無駄にはならないってことだよね。 こういうことされると意外と悲しいんだよなぁとか、そこから学んで以降に活かしていけば、少なくとも、人として成長はできる。 モテずとも、「善き人間」にはなれる!……ってこれ、いい言葉じゃない?(笑) そうこうしていくうちに、たとえばこだまさんみたいに、同じようなことで傷ついてる人に出会って、その苦しみを、少しはやわらげることができたりもするかもしれない。
そういうときのためにも、常に「いい人」であろうとする努力は、無駄じゃないと思いますよ。 辛い思いするとつい、腐ってゆきがちだけども。それもわかるけど!
こばなみ:
失恋しても腐らず行くっきゃない!
宇多丸:
というわけで、すぐにこだまさんの苦悩を全解消するような答えではなくて申し訳ないけども、その完全自己完結型のネガティヴ思考サイクルから抜け出すためには、まずはやっぱり、パートナーなど外側の力が必要だということは、間違いない。
要はこの相談文の最後にある「助けてください」を、さしあたっては次に好きになった人に、「素直に」「優しく」言えるようになるといいですね、ということですね……。
こばなみ:
こういうことってわりと誰でもあることだと思うので、こだまさんもみなさんも私も、パートナーに素直に優しく言ってみて、うまくいって、プラスのループに入るといいなと思いました。呪いが早く解けますように!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2017年3月4日に公開したものを再編集し、掲載しています。