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元バイト先の40歳男性からのアプローチに、どう断れば失礼にならずに済むでしょうか?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室215】


✳️今週のお悩み✳️
いつも楽しく拝見しています! 私は今大学生で、去年の夏まで勤めていたバイト先にお世話になっていた男性(40歳過ぎ)がいました。その方の趣味の話を聞くうちに仲良くなり、以来私がバイトを辞めた今でも2ヶ月に1回くらいの頻度で食事に誘われます。その方はバイトリーダー的な人で、元バイト先ではとても親切にして頂いて感謝していました。最初に誘われた時は深く考えなかったのですが、食事に誘われると大抵食事以外にも街の散策やお店巡りなどデートっぽいコースに連れて行かれ、「これって単に食事じゃなくてデートに誘われてる……!?」と感じてからは誘いにも気乗りしなくなってきてしまいました。元バイト先で夜のあがり時間が被っていた時はほぼ必ず立ち飲みに誘われてましたが、バイト先のほかの女の子たちは食事にも呑みにも誘われていなかったみたいです。その人は私とのことをバイト先のほかの人に一切話していませんでした。去年の秋口に会って以降は就活を口実に誘いを断っていたのですが、断り続けるのも苦しくなり、つい先日久しぶりに食事をしました。そして、別れ際に「よかったらまた遊びに行かない……?」と遠慮がちに聞かれました。新しいカメラを買ったので、その写真撮影巡りに付き合ってほしい、と。しかもその写真スポットは私の地元近くなので、食事や撮影向きのコースなど考えてほしいとのことでした。そのときは「時間ができたら~」と流したのですが、正直行きたくありません。私はその人に恋愛感情は一切ありませんし、提案された食事や散策に付き合うだけならまだしも、それ以上の時間と体力コストは割きたくないです。あと地元に連れて行くのも最寄りの駅とか知られると思うと正直少し怖いです。一方で、感謝もしているのでお誘いを無下にはできないし、失礼な態度は取りたくありません。ちなみにその人から彼氏の有無とか、恋愛について聞かれたことは一度もありません。会っているときも、ベタベタされたりとかはありません。向こうとしては本当に恋愛とかじゃなくてさびしさを紛らわしたいだけなのかな、と考えたりもします。それでも私が行きたくないのは事実ですし、これから誘われるたびに断ったり、たまに他愛のないSNSのやり取りが来るのも精神的に疲れます……。どのように断れば今後誘われなくなり、相手にも失礼な態度をとらずに済むでしょうか? アドバイスを頂きたいです。
(きよどう・21歳・東京都)


宇多丸:
きよどうさんの相談が今までとちょっと違うのはさ、その40歳過ぎ男性も、アプローチそのものは決して礼を失していないんだけど……っていうあたりだよね。
これまではさ、相手側の言い寄り方がもう、すでにキモい!みたいなのばっかだったからさ(笑)。

要は、相手に非は別にない、距離の詰め方もいたってまっとうかつ慎重なんだけど、それでもこっちは根本的に乗り気じゃないから、どこかでやっぱり歯止めをかけないと、っていうときに、どう対応すべきかっていう話なわけだけど。

こばなみ:
いい人ではあるんですよね。

宇多丸:
まぁ、必要以上に傷つけたりしたくはない、くらいの。

要は、「人として嫌なわけじゃないけど男女の線はないです!」っていうのを、明快かつ失礼でないかたちで伝えることができればいいわけですよね。
たぶんだけど、それがはっきりわかった時点で、この40歳男性は、少なくともそっち方向のアプローチとか期待は、しないようになるんじゃないかと思う。ここまで慎重に慎重に、相手の出方を探ってきたような人だもん。

ただ、あまりに慎重すぎて、こっちも明白なノーサインを出すタイミングがない、って問題が生じちゃってるわけだけど(笑)。
礼儀正しすぎても、逆に相手を困らせるってこともあるんですねっていう。ホント難しいなぁ、人付き合いって……。

まぁやっぱり一番話が早いのは、「彼氏いますけど」ってことですよね。ホントにいるかどうかにかかわらず、それでひとまずは「事前警告はしましたからね?」っていうことにはなる。

こばなみ:
そしたらまぁ、ふつうは引きますよね。

そして、この40歳男性、奥手な人なんじゃないかな~。
彼氏いるかどうかも聞かれないわけですから。

宇多丸:
そうだね。
何度も会ってるんだからそれくらい普通に聞けよって話だけど……、『赤いスイートピー』かよ!っていう(笑)。
そこにあえて触れないようにしたままここまで来てるっていうのが逆に、彼のきよどうさんに対するガチの好意をうかがわせるなぁと僕は思いますけど。
きよどうさんは「向こうとしてはさびしさを紛らわしたいだけなのかな」っておっしゃってますけど、僕が見るにそこまでこなれた男じゃないですね、その人は。

それでも『赤いスイートピー』はさ、そのどうしようもなく奥手な男を女性側が好きで好きでしょうがない、っていう話だからまだいいけど、それで女性側に脈がなかったら、ただ単に永久に何も起こらないだけ、っていう(笑)。

あと、たぶんその男性にしてみたらさ、40歳過ぎの中年男が、しかもバイト後輩の21歳を誘ってるっていう構図に対する、それ自体はしごくまっとうな引け目もあると思うんですよ。
別にいくつの人が誰を好きになろうと勝手なんだけど、若干人目が気になってしまう、というのはまぁ、理解できる感覚ですよね。だからこそ他の人には内緒にしたりもしてたんだろうし。
立場上、自分からそこまで積極的に迫るわけにもゆかない! でも、もしできることなら、なんとかうまく転がってってほしい……、おおむねそんな思いだったんじゃないですかね。

こばなみ:
本当にまじめですよね。誘い方だって、「新しいカメラを買ったので、その写真撮影巡りに付き合ってほしい」とか。すごい考えたうえで、こういう誘い方なら、チャラくないし自然かなと思って、接近戦を申し込んだのだと思います。

宇多丸:
もはや若干自然ではないけどね(笑)。

それに対してきよどうさん、「時間ができたら~」と流したってあるけど、普通にそうやって断り続けてればいいんじゃないの?とはちょっと思うけど。

「たまに他愛のないSNSのやり取りが来るのも精神的に疲れます」っていうのもねぇ……、「今ここにいます~」とか、「今からこれ食べます~」とかですかね。
ひょっとしたら、そういうあたりさわりのないトピックを投げかけることで、きよどうさんのテンションを探ってるのかもしれないけどね、向こうとしては。
でも、そういう日常報告的な連絡って、好きな人からだったら嬉しいけど、なんとも思ってない相手からだと、「知らねぇよ! 」ってだけだよね(笑)。なんて返しゃいいんだよ?って。
かと言って、積極的に無下にするほど、はっきり悪いことされてるわけでもないからねぇ……とか思われてる可能性が僕らだってあるんだから、コミュニケーションって怖い!(笑)

いずれにしても、きよどうさんがここから取るべきリアクションとして、「時間ができたら」で断り続ける、ってことでいいんじゃないかなぁ。

こばなみ:
だいたい普通の人なら、多くても3~4回、「時間ができたら~」とスルーされたら、伝わりますよ。
そしてこの対応、別に失礼じゃない気がしますけど。

宇多丸:
むしろ、そこでの引き際次第で、向こうの人間性がはかられるところですよね。

あえて言えば、彼の特別な好意にうすうす勘づきだして、気乗りしなくなってきた時点で、もうちょっと早くやんわりお断りモードに移行していれば、気まずさとかももう少し軽くて済んだのかな、という気もしますが。

ちなみに、同じ40代の中年男として言わせてもらうと、彼氏いる宣言しなくてもおっさんに一歩退かせる手として、「同年代の男友達とかと遊ぶのが超楽しくって~!」的な、どうにもならないジェネレーションギャップを突きつけてシャットダウン!っていう、容赦ない作戦もあるはありますけど(笑)。
これはさすがにしょんぼり退却せざるを得ないですよ。「そりゃそうだよね、オレとは住んでる世界が違うんだやっぱり……(泣)」って。

なんにしてもさ、これはきよどうさんに限らず、そして恋愛に限らずのことかもしれないけど、ホントはあんまり気乗りしないお誘いを、断るのがめんどくさいからとか気まずいからとか言ってつい受けちゃってると、たいていは、結局さらにめんどくささや気まずさを増すことにしかならないわけでしょ。

こばなみ:
後々、もっと苦しくなるっていう話ですよね。

宇多丸:
きよどうさんもさ、その40代先輩、単純にたまに会って食事する対象としても、そこまでモチベーションがあるってわけじゃなさそうじゃん。
仮に色恋ニュアンスを持ち込まれてなかったとしても、そもそもこんなペースで、しかも二人っきりで会うような相手じゃなかった、ってことですよ。かったるくなってきて当然だよ。

そういうときに、なにも「断る」ということ自体が失礼ってわけじゃないはずなのに……。

こばなみ:
……断らずに、嫌々行ってるほうが、結果失礼ですよね。

宇多丸:
そういうことだよ。

きよどうさんも、現にこの40代男性に対して、当初は持ってなかったネガティブな感情までつのらせ始めちゃってるわけじゃん。
あっちは、まさにそう思われたら嫌だからこそ、慎重に慎重を重ねて距離を縮めてきたつもりだったろうに……、誰も得してない!

だったらやっぱり、もうちょっと手前の段階、「あれ、この人ひょっとして……」とか「なんかちょっと、会うのめんどくさくなってきたなぁ」って感じた時点で、別にいきなり完全拒絶!ってことじゃなくても、たとえば必ず共通の知人も交えた三人以上の集まりになるようにするとか、とにかく二人きりで会うのを避け続けることで、あくまで穏便に適切な距離感を保つってようなこともできたんじゃないか、そのほうが結果的にはあちらにも親切だったんじゃないか、って気がしちゃうんですよね。
そこからさらにしつこく迫ってくるような人だったら、そのときこそ明快なNOを突きつけるチャンス、とも言えるわけだし。

こばなみ:
恋愛でも友だちとの約束でも、日本人って、断ること自体が悪いと思い込み過ぎる習性があるんだと思う。

宇多丸:
まさしくNOと言えない日本人!(笑)

こばなみ:
きよどうさんもこの文のなかではけっこうはっきり言っていて、「それ以上の時間と体力コストは割きたくないです」ってありますけど……。

私も、前に話しましたけど、気になる相手に振られて、忌憚なきご意見を聞こうとしたら、当日ドタキャンされたことがあって。
つまり、おめぇには時間も体力も、そしてお金というコストも割きなくない、ってことだったんだなぁって(苦笑)。
その時は痛ーッ!って感じですけど、結果的にはそれでスパッと諦められましたから!

宇多丸:
そこまで明白に脈がないことをわからせてくれると、むしろスッキリするという(笑)。

ということでね、きよどうさんも、今からでも遅くないから……、まずはやっぱり「時間ができたら」とかでいいので、のらりくらりと約束を先送りして、自然に疎遠化してくのを狙っていくべきでしょうね。
それでもまだ向こうが食い下がってくるようなら、そこで初めて、もうちょっとだけ直接的な拒絶感を出してってもいいかもしれない。

少なくとも絶対に二人きりでは会いたがらない、とか。たとえば、バイト時代のほかの人も呼びませんか?っていうのは比較的自然にできる提案じゃない?
 それを向こうが渋るようなら、いよいよ……って感じだよね。
きよどうさんが断りづらい立場だっていうのもたしかなのに、結果としてそこにつけ込むことにもなっちゃってるんだから、やっぱあんま健全な構図とは言えなくなっちゃいますよね、そうなると。

ただまぁなんにせよ、彼をまったく傷つけずにきよどうさんの意思を通すのは、もはや難しいところに来てるかも、という覚悟はしといたほうがいいですね。
でも、いつまでもそれを避けてると、やっぱりきよどうさんが一方的に我慢を続ける以外になくなっちゃうからさ。

さらに言えば、ぶっちゃけおそらく、今後も似たようなことは、ちょいちょいあると思うんですよ、ほかの人で。
そのときこそ今回の教訓を生かして、お互い傷を深めないよう、早めに危険性を見切って、やんわりご遠慮いただく、みたいなワザが身につけられてるといいですけどね……。


【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2017年11月11日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。




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