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もう一生恋愛はできないのか。不倫中の友だちがキラキラしていて羨ましい……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室447】


✳️今週のお悩み✳️
もう人生で恋をすることはないのか……?
最近そればかり考えてしまっています。私には夫と娘がおり、多少の問題はありつつも、概ね順調に暮らしております。家族は大事ですし、仕事も総じて言えば楽しい。お気楽ものなのかもしれませんが、わりとのほほんと生きています。
ところが先日、大学時代の友だち(既婚・子ども1人)と飲んでいて、彼女が若い男性と恋をしていることを知りました。一般論的には、してはいけないことだとは思うのですが、彼女の話を聴きながら、私は「羨ましい」と思ってしまったのです。うっとりと語る彼女がキラキラしていて綺麗で……。私にはもうこんな経験、もう一生できないのかもしれない、と思ったら、なんだか虚しくもなってきてしまいました。
焦りや嫉妬、そんなよくわからない感情が渦巻いてしまっております。ただの欲求不満なのでしょうか。この気持ちを落ち着けるためには、どうしたらいいでしょうか。
(グルー・40歳・会社員・東京都)


俗っぽい言い方をすれば不倫願望!?なんだけども……本質的にはこれ、いわゆる「ミドルエイジ・クライシス」的なモヤモヤ、ってことですよね、きっと。
要は「人生の有限性」がそろそろ本気で実感でき始める年ごろゆえの、このままずっと行くのでホントに良いのかしら?な焦りやら何やら、そしてそこから来るジタバタ、みたいな。
その意味ではまぁかたちこそ違え、多くの人が味わうものではあるわけですけど。

なので、そういう気持ちを抱いてしまうこと自体はわからないじゃないけども……。
たださ、僕がこういう話題のときいつも思うのは、「こんな経験、もう一生できないのかも」って、べつにそれ、恋愛とかに限らなくない?って。
ほっといたら一生できないまま終わること、ほかにもいっぱいあるんですけど!って思うんですけど。

スカイダイビングもやってなきゃ、エベレスト登頂もしてないし、F1カーに乗ったこともない。

たいていのことはやれずに終わるんだよ!
そこまで大げさなもんじゃなくたって、とにかく今後経験できないのが惜しまれることって、恋愛以外にも山ほどあるわけじゃん。
あの土地に行く、あの作品に触れる、あのメシを食う……。

身近な話でもさ、たとえば現在劇場でかかってる映画の大半は、よく考えるともう二度とスクリーンでは観られない可能性が大なんですよ。
演劇なんかもっと「今、やってるうちに観とく以外にない」ものですよね。音楽ライブもしかり。
あとは、現在近場でやっている美術展に展示されてる名画のうち、今後の人生で直接鑑賞する機会があるものがどんだけあるのか?とか……。
そう考えだすと、僕はもう、いても立ってもいられなくなるんですけど。

ならば、今んとこ縁も脈もない上に間違いなくリスクも大な色恋沙汰なんかより、普通にそっちから手をつければ?って、個人的には考えますけどね。


たしかに~。

でもなんか、恋愛って過去にはしたことがあるし、いい思い出みたいな感じだから、人の話を聴いて、きゅーんときちゃった、その気持ちはわかりますよ!


単純にその友だちの、ノロケがすごかったんじゃないですか?
おそらくフェロモン出まくりで、たしかに輝いて見えてはいたんだろうけど……。
ただそれだって、ずっと続くってもんでもないだろうからねぇ。
もうちょっと様子見てりゃあ、だいぶテンションも変わってくるはずですから。


経過観察ですね。


なんらかの理由で、いきなりげっそりやつれきって現れたりして……。
そんなこんなを見て、「恋ってやっぱそんないいことばっかじゃないな」という真実を密かに噛みしめる、というのはどうですか?
人の不幸待ちみたいでちょっとアレではありますけども(笑)。

どうしても自分自身でもう一度色っぽいことになってみたい、というのであれば……夜の街でもフラフラしてみれば?(笑)
それは冗談にしても、今どきマッチングアプリ始め、本気で相手を探したいなら手段も豊富なわけだしね。
まぁそっちにグイグイ行くという選択も、もちろんありうるはありうる。

しかしそこには、おわかりと思うけど相応のリスクも当然伴うわけで。
いつも言ってますけど、「普通じゃできないような最高の体験」は、「普通じゃ遭わないような最悪の体験」と常に背中合わせなもので、そういう振れ幅が続いたりすると疲れちゃうから、普段はできるだけ穏やかに暮らそうとしてるわけですよね、我々の大半は。
かといって、完全に「凪」な状態にも退屈や欠乏感を感じだしてしまうんだから、人間というのはつくづく厄介なもので……。

ちなみにそのお友だちもさ、別にそうなろうと思ってなったというよりは、気づいたらそうなっちゃってた、ってだけだろうと思うんですよね。
そもそも恋ってそういうことなわけだし。事故に遭ったようなもんですよ。

それに対してグルーさんは、目下そういう具体的な対象がいるってわけでも、べつにないんだよね?
だったらやっぱり今は、ほかのもっと手軽かつ有意義なことに時間やエネルギーを使いつつ、内心密かにときめくご縁も期待してます、くらいの感じでいればいいんじゃないの?って気がしますけどねぇ。

手っ取り早くドキドキしたきゃ、やっぱ差し当たってスカイダイビングでもしてみりゃいいよ!(笑)
下手な恋愛よりよっぽどアドレナリンがどばどば分泌されて、若返るんじゃない?


この連載でもおなじみの提案ですね(笑)。


もっと歳をとったら、なかなかできないでしょうしねぇ。
僕なんかも、だいぶリミットが迫ってきましたよ。

ただねぇ、最近、改めて確信したんですよね……スカイダイビング、僕はやりたくない(笑)。


あんなに人に勧めていたのに!


やりたくない(笑)。ぜんぜんやりたくない!

要はやっぱりさ、なんでもかんでも経験すりゃいいってもんでもないんですよ。当たり前だけどさ(笑)。

その意味では不倫だって、パラシュートだけ着けてわざわざ高いところから飛び降りたりするのと、変わんないっちゃ変わんないんですよ、きっと。
よっぽど積極的にやりたいか、不可抗力的にやらざるを得ないことになっちゃったかでない限り、無理してやんなきゃいけないようなもんじゃまったくないでしょ、っていうね。

あとさ、グルーさん、つってもあなたまだ、40歳だよ!
たぶん、さっき言った「人生の有限性」に気づきたてで、だからこそ「クライシス」になりがちな年ごろなんだろうと思うけど、実際には、そっからが長いのよ!

人生すでに後半戦……みたいな気分かもしれないけど、今の平均寿命からしたら、まだ真ん中まで行ってないかもしれないです。
今までの倍以上ありますよ!

それに、今の40代、50代、60代、なんなら70代、80代、ぜんっぜん、ギラギラしてるよ!
どいつもこいつもまだまだやらかしまくってますよ。
なので、ご安心あれ!

グルーさんの人生もこっから先、イヤでも山あり谷あり、いろんなことが、絶対起こりますから。
「私にはもうこんな経験、もう一生できない」なんて決めつけるには、最低でも50年ほど早すぎるし……。
そのなかで、できるだけオープンマインドにフットワーク軽く、色恋だけにとらわれず人生や世界を味わい尽くしてやる!ってスタンスを心がけてる人こそ、まさに「キラキラして」くるもんじゃないの?と僕は思いますけどね。


最低でも50年ほど早すぎるってのに吹き出しましたが(笑)、人生は長い!と思いながらも、今日からでも気になることはやろう!って気分になりました。元気出た! ま、だから、健康にはくれぐれも気をつけたいっすね。



【今週のお絵描き】

画・宇多丸





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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション2」(毎週月曜日から木曜日22:00-23:30の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

10月から「アフター6ジャンクション2」に!
ライムスター宇多丸の聴くカルチャー・プログラムは、あなたの"好き"が否定されない、あなたの"好き"が見つかる場所。大人気週刊映画時評「ムービーウォッチメン」は毎週木曜日22時20分頃~にお引越しです。

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現在、King of Stage Vol. 15
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こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。



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