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【ライムスター宇多丸のお悩み相談室91】元彼から復縁を迫られ……。結婚ってどんな人を選んでどこを妥協するのが正解?


✳️今週のお悩み✳️
最近2年ほど付き合っていた30代後半の彼氏と別れました。彼は本当に誠実で真面目な方で、結婚しようと言われていました。その時はタイプではないし刺激もないけど、安定した結婚をするにはそういう人となのかなと思っていました。しかし段々と生活の上で許せないことが多くなり、食と金銭感覚が合わず、友達からはそんなことで!と言われましたが、別れを決めました。その後すぐ、とてもタイプの30代前半の男性に誘われ、今ほとんど付き合っているような状態です。その彼は一緒にいてとても楽しいのですが、仕事も忙しく、趣味や友達を優先するタイプのため、月1回ほどしか会っていません。それでもいいのです が、わりと周囲に女の子が多くそれなりにモテるので少し心配で す。そのことを友達に相談すると、チャラい安心できない彼氏より、前の誠実な彼氏のほうが合ってたと言われました。そんな所に元彼から、よりを戻したいと連絡が来て、私も年齢的にいろいろ考えてしまい、どうしたらいいかわかりません。職業的には2人とも不安定な職業でお金があるタイプではありませんが、私は自分で稼げるので気にしません。しかしその点も周りからとやかく言われて、気が滅入ってきました。私だって、お金があって仕事ができてかっこよくて、でも誠実な人がいるなら、そんな人と結婚したいです! でもそんなの難しいことはわかってます。どんな人を選んで、どこは妥協するのが正解なのでしょうか?
(りんご。・27歳・東京都)


宇多丸:
これ、ぼんやり読んでると、「身持ちは堅いけど面白みに欠ける男か、それとも魅力的だけどチャラさが心配な男か」っていう、わりと古典的な二択問題みたく思えちゃうけど、「2人とも不安定な職業でお金があるタイプではありません」ってとこで、正直ちょっとあれっ?となっちゃうところはあるよね。

だって、前の彼、「本当に誠実で真面目な方」とまで言われてるくらいだから、当然のようにさぞかし堅めのご職業なんだろうと思いきや……、お前のほうも収入は不安定なのかよ!っていう。
じゃあ、「安定した結婚をするにはそういう人となのかな」って、全然そういう話じゃないんじゃん!

しかし、「誠実で真面目」だけど職種は不安定って、ホントどういうことなんだろうね。
毎日欠かさず駅前に立ってストリートミュージシャンやってますとか? あ、ひょっとしたらボランティア活動に身を捧げてる、的なことかな。だとしたら頭が下がりますけど。

いずれにしても、りんご。さんやそのお友達がここで言ってる「誠実」って、「浮気しなさそう」、もっと言えば「モテなそうだからその方面では安心できそう」っていう、ただ単にそういうことを指してるんじゃないの?って感じはする。

こばなみ:
今の彼のこと、「ほとんど付き合ってる状態」というのも気になるところではありますが……。

宇多丸:
味わい深い表現だよねぇ。
月1でしか会ってないってことだから、前に来た相談で言えばそれこそ「いわゆるセフレの関係」ってことになっちゃうあたりじゃないの?

まず確かなのは、そっちのほうの彼は、間違いなくバリバリ遊んでますよね!
 りんご。さんが「とてもタイプ」というくらいで、まぁ普通にかっこいいんだろうしさ。
そのうえ30代前半。男にとって、真のモテキが始まる季節ですもん!
 「仕事も忙しく」ってわりに、「不安定な職業でお金があるタイプではありません」ってあたり、やはり一抹の「大丈夫ですかその人?」感は漂っておりますが……。
とにかくたぶん、彼は今、人生で一番自由を謳歌してる時期なんだと思いますよ。

なので、少なくとも今のところは、りんご。さんが結婚に向けてがっついてるように感じたとたん、彼が逃げ態勢に入ってしまう可能性はぶっちゃけ大きいという気がします。
だからってねぇ……、じゃあ前の彼に戻ればいいのかっていうと、そういう問題?って感じはどうしてもしちゃう。

だってさ、「生活の上で許せないことが多くなり」「食と金銭感覚が合わず」って、ここまで別れた理由がはっきりしてるのに、別にそこは頑張って直してきました!ってわけでもない相手とよりなんか戻して、上手くいくわけなくない?

こばなみ:
食とお金って、そんなことで!って言ってる場合じゃないくらい重要じゃないですか?

宇多丸:
その「そんなことで!」って言ってる友達のほうがとんちんかん
なんだよな。
「そんなこと」が「許せない」と感じるくらいになっちゃってるからこそ、ダメなんじゃん!

その人と同一人物かわかんないけど、「前の誠実な彼氏のほうが合ってた」っていうのもいいかげんな回答だよな。もろもろ「合わない」から別れたんだ、っつってんだろ!

ということで、いくら今の男がチャラくて安心できないからって、安易に前の彼とよりを戻しても、なんにもいいことにはならないと思います。たぶん、前とまったく同じところにイライラしてきて、「あぁ、やっぱこの人ダメだわ」と再確認するだけですよ。
そこで、「年齢的にいろいろ考えてしまい」うっかり結婚でもしちゃってた日にゃ、目も当てられないでしょ。
なので、元彼との復縁は論外だと思うけど。

でもさ……、なんでそうなっちゃうかと言うと、そりゃあそもそもりんご。さんが、特に好きでもない人と、言っちゃえば打算だけで付き合っちゃったからだろうよ、と僕には思えるんですけどね。

誰とだって、付き合ってしばらく経てば、いつも言ってるように「他者性」が際立ってきて、無条件で「合う」ところばっかりじゃないということがわかってくる。
そこでね、もともと大して好きでもないような相手だったら余計、「段々と生活の上で許せないことが多く」なるいっぽうなのも、当然だろうと思うんですよ。
だって、その溝をなんとか乗り越えていこうとするそもそものモチベーション、つまり相手に対する思い入れが、ハナから薄いんだもん。

ちなみに、お見合い結婚で上手くいくケースとかは、逆に最初から「他者性」が自明なぶん、相性次第では「合う」ところを見つけていく喜びがより大きくなる、言ってみれば「加点方式」的な面があったりするのかな、とは今ちょっと思いましたけど。

そう考えると、前の彼も可哀想な人ですよ。
りんご。さんは内心、「私も年齢的にいろいろ考えてしまい」「タイプではないし刺激もないけど、安定した結婚をするにはそういう人となのかな」っていう、実はもっぱら自分の損得を天秤にかけて彼と付き合ってただけなのにさ。
そこで自分が、「減点方式」で一方的に失格食らったってこともまだちゃんとわかってないから、懲りもせずによりなんか戻そうとして……。
さっきは「うっかり結婚でもしちゃってた日にゃ、目も当てられない」っていうのをりんご。さんの立場から言ったけど、よく考えてみると、彼にとってのほうがもっと大災難だよ!
 彼だって、りんご。さんと同じように、たった一回の人生を大切に生きてるのにさ……、せっかく結婚相手として見初めた人が、実はそんな風にしか自分のことを見ていなかったなんて!

こばなみ:
そういう意味では、最後の一文も気になるところですね。「どんな人を選んで、どこは妥協するのが正解なのでしょうか?」って。恋愛や結婚に「正解」なんてないんじゃないのかな……。

宇多丸:
ホントなら、他の条件はどうあれ「好き」な人を選ぶ、っていうのが唯一の「正解」でしょ!
 なんであれそこだけは一番妥協しちゃいけないとこのはずだよね。
でも、この場合の「何が正解なのでしょうか?」は、ミもフタもなく言い換えると、「何が一番“得”なのでしょうか?」ってことだろうからね……。
ただ、限りある人生のなかで、本当の意味でそれは「得」ってことになるの?って思いは、僕にはどうしても残っちゃうなぁ。

たぶんりんご。さんはまだ、そこまで心底「好き」と思えるような人には、今のところ出会えてないわけですよね。
今の彼は、確かにかっこよくて「一緒にいてとても楽しい」相手ではあるんだろうけど、まぁそこ止まりの人でもあるからこそ、いったん無理!ってなったはずの元彼のアプローチにすら、グラグラしちゃったりもしてるんだろうし。
だったら、本当に夢中になれる人が出てくるまで、今のうちはそのチャラい彼と適当に楽しくやってればいいんじゃないの?って思いますけど。しょせんやっぱり「自分の損得と天秤にかける」程度の好意しか持ってないんだからさ!

とにかく、そこまで慌てて、えらく手近なところから結婚相手を見つくろおうとする必要、特にりんご。さんにありますかね?ってことなんですよ。
貧弱な選択肢のなかからチョイスするしかないんなら、そりゃあもろもろ大幅に妥協しないとならなくなるのも、当然っちゃ当然ですけど……、たとえば、自分で は生活力がなくて、男に食わせてもらうしか生きてく方法がないから、愛情は別にしても安定した収入がある人をなる早でゲットしたい!みたいな人ならばまぁ、500歩譲って急ぐのもわからないじゃないけども、りんご。さんはそうじゃないわけじゃん。
稼ぎは十分ある。言い寄ってくる男も後を絶たない。相当イケてる女と見ましたけどね。
なのに、せっかくの売り手市場で、なぜそう自分を安売りする?

もちろん女性の場合は、出産含め、男とは比べものにならないくらいタイムリミット感覚が切実なのもわかるけどさ……、それにしたって皆さん、「結婚」というものを、あまりにも人生の決定的カード、絶対的ゴールとして考えすぎてやしないですか? それで逆に焦って選択を誤ってしまったりしがちじゃないですか?って疑問が、僕にはやっぱりあるんだよ。

こばなみ:
それわかる! 結婚しないの? 仕事ばっかりして!とかって、この年になるとすごく周りに言われるんですけど、別に好きでもない人と結婚しても、 楽しくない気がする。相手だってそう思うだろうし。どうしても他人から言われると焦っちゃったりするけど、最近は好きな人ができるまで待ったっていいじゃ ん!って思うようになりました。

宇多丸:
りんご。さんも、本来は「自分で稼げるので気にしません」って人なのに、付き合う相手の収入とかまで「周りからとやかく言われて」、気持ちが揺らいできちゃってるって言ってる。毎度おなじみ、『余計なお世話だバカヤロウ』って話だよ! さっきも文句言った相談の回答といい、彼氏以前に、周囲のお友達にもちょっと問題アリなんじゃないスか?

じゃあ、好きじゃなくていいからとにかくそこそこ条件が整った相手と結婚さえすりゃ、自動的に「幸せ」になれるかって言うと、そんなわけねぇだろ!としか言いようがないわけで。
それに、不本意な相手と付き合ったり、結婚しちゃったりしてるときに、後から「この人だーっ!」って人と出会っちゃったらどうするよ? 全然まだ可能性あるからね?

こばなみ:
まだ27歳ですし、焦り禁物!

宇多丸:
まぁ、20代後半は、何かと人生に迷いが生じやすい年頃ですからね……。
そのぶん、血迷った言動も多くなりがちな魔の季節ということで、僕は最近、「20代後半=第二思春期」説を唱えております。

それにしても、こんな相談を読むとつくづく、心から「好き」な人と出会えるってことは、それ自体が本当に素敵な、すごいことなんだなぁって改めて思うよね……。

こばなみ:
あぁ、なんだか個人的にいろいろ思い出してジーンとしてきちゃいました(回想中)。よく考えてみれば、「好き」って言い切れることって、なかなかないことかもしれないですね。目頭が……。

宇多丸:
ということで改めて、僕なりの結論。

今の彼も前の彼も、決定的な相手ではないのははっきりしてるんだから、焦って手を打ったりしちゃ絶対ダメ!
 最も妥協すべきでない点は、りんご。さんにとってその人が、「他者」だからこそいずれ必ず見えてくるであろう不快さや不可解さを超えてなお、限りある人生の残り時間を共に過ごすに値すると確信できるほど、「好き」な相手なのかどうかということ、それに尽きる。
で、そこがクリアできないうちは、経済力もあるんだから、イケてる「おひとり様」として、周囲の雑音に惑わされず、胸を張ってブイブイ言わせてればいいと思いまーす!

こばなみ:
「好き」かぁ……(遠い目)。

宇多丸:
りんご。さんに限らず、「もともとそんなに好きだったわけじゃないけど、いい人そうだし優しくしてくれるから、まぁここらで手を打っておくか……」 くらいのテンションで交際を始める女の人って、結構いるじゃないですか。男では、いろいろ事情の違いもあってあんまり聞かない考え方って気がするけど。
確かに、そんな熱烈に「好き!」ってなれるような人なんて、特に大人になるとそうそう出会えるもんでもないのかもしれないし、実際お付き合いから始めてだ んだんホントに好きになっていくっていう、さっき言ったお見合い成功ケース的なパターンだってもちろん十分考えられる。だから、いちがいにそういうやりか たを否定するつもりもないんだけど。

ただ、結果どうしてもそこまで好きにはなれなかった、むしろ嫌なところばっかり目につくようになってきちゃって辛い!ってことになった場合、皆さんどうするの?というのはやっぱり、事前にもうちょっとよく考えておいたほうがいいんじゃないでしょうか。

要は、楽しかったり、さびしさが解消されるっていうだけじゃなく、どっちも不幸になって終わるという可能性だってそれなりにあるということ。誰かと付き合うって、その責任を引き受けるということでもあると僕は思うんで。ナメてかかると痛い目見ますよそりゃ……。
「二人でいるのに、一人だけのときよりもっとさびしい!」っていう、言わば孤独より深い絶望、そこらじゅうに転がってますからね!


【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2015年4月11日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
こちら
※シングル「世界、西原商会の世界! Part 2 逆featuring CRAZY KEN BAND」が配信中! Victorサイト限定CD盤もリリース!
詳しくは
こちら


女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。



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