今まで付き合ったことがなく、男女関係になるのが怖い……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室168】
✳️今週のお悩み-1✳️
今まで彼氏ができたことがなく、デートも1回きりで終わるパターンばかりでした。1回も付き合ったことがないのは年齢的にだんだん笑えないなと感じ、ここ2年いろいろイベントに参加したり、出会いは絶やさないように頑張ってきました。最近やっと感覚が合うなと思う相手が現れて、デートも重ねて珍しく順調だなと思っているのですが……、ぶっちゃけ男女の関係になるのが怖いです。拒絶反応が出そうな気がしています。おそらく自分のコンプレックスが強いからだと思うのですが、自分に女性を求められたりすると怖いと思って逃げてしまうのです。男性恐怖症なんでしょうか。今までいつもここの一線を越えることができなくて、さらに付き合ったことがないコンプレックスもふくらみ続けて、いつもモヤモヤしてしまいます。勉強と思って、日本のリアルな恋愛事情系の映画を観たりして感覚を慣らしていこうとしているのですが、頭でっかちになるばかりです。今いい感じの人には、今までいたことないことは知られてません。その話題は濁してきたので、そろそろ言った方がいいかもと思ってます。中学生みたいな悩みですみません。何かアドバイスがあれば聞きたいです。よろしくお願いします。
(高さ156cm・26歳・神奈川県)
宇多丸:
この連載、けっこうな割合で、「当事者同士でもっとちゃんと話そうよ」っていう、当たり前っちゃ当たり前の結論に落ち着くことが多いんですけど(笑)、高さ156cmさんもさ、今お付き合いしてるその感じのいい人に、これまで経験ほぼゼロだってことくらい、普通に話せばいいじゃんって思うんだけど。
そんなに恥ずかしいことかな?
こばなみ:
私は大学生になって初めて彼氏ができたんですけど、それってちょっと遅いじゃないですか。
なので、そういう経験がないのってちょっと恥ずかしいなと思っちゃう気持ちはわかります。でもどっちかっていうと、同性に対してだったかなぁ。
いまとなっても、恋愛経験が乏しいのですが(笑)、それはまぁこの連載でぶっちゃけて書いちゃってますけども、恥ずかしくて言いにくいってのはすごくわかる。
宇多丸:
まぁたしかに僕だって、童貞の頃を振り返ってみれば、自分が性的に奥手であるということのコンプレックスが強すぎて、とてもそれを素直に白状するどころじゃなかったもんな。
「童貞の特徴=自分が童貞であることを隠す」ですからねぇ。
こばなみ:
『40歳の童貞男』の紹介も前にしてくれましたよね!
宇多丸:
そうそう。
もちろん、実際にコトに及ぶのも怖かったし。もろもろを首尾よく運んで、女の人を満足させられる自信も当然まったくないから……、後から思えば、最初からそんな、全部を上手くやってやろうってほうが図々しいんだけどさ。
でもホント、結局みんなそうやって、背伸びしたり知ったかぶりをしながら、当然のごとく痛い目にもさんざん遭ったりしつつ、自分なりの経験値というのを積み重ねていく以外に、性的に成熟していく方法なんか、なくない?
だから、はっきり言って、高さ156cmさんが、この段階でセックスに対してビビるのは、ごくごく当たり前のことなんじゃないかと思いますよ。 特に女の人は、初体験前は興味以上に恐怖が強くなっちゃうというのも、ある意味ごもっともなところもあるしさ。
「男性恐怖症なんでしょうか?」なんて言ってるけど、ホントにそうなのか判断できるほど、あなたまだ男性ってものを知らないでしょ!っていう。
そこで、「日本のリアルな恋愛映画」っていうのがどのへんの作品を指してるのかわからないけど、恋愛とか性のネガティブサイドばっかり事前にわかった気になってしまうというのは、たしかに「頭でっかちになるばかり」だろうから、絶対やめたほうがいいよ(笑)。 なるほどそういう作品がある種の真実を描いているのだとしても、当然デフォルメはしてますからね。普通の男女関係って、そこまで起伏ないから!(笑)
なんにせよ、なにもしてない段階で不安だけ募らせていてもさ……。 というか、なにもしてない段階だからこそ不安、ってことだと思うし。
こばなみ:
私、大学の頃に初めて人を好きになったときに、その人が好きで好きで仕方がなかったのですね。
なので、性的なこととか未体験でたしかに不安とかありましたけど、そのときは嬉しさのほうが上回ってしまって、あまり考えないできゃほーって感じでした。
宇多丸:
「ホントに好きな人」がいるかどうかってとこは大きいですよね、そりゃもちろん。
あと、前にも話したけど、コンプレックス強い派ほど、いったん誰かに全面的に受け入れてもらったという感覚を得ると、「こんな自分で、いいんだ?(嬉)」って、一気に不安と自信が逆転するみたいなこと、あったりするしね。
なので、なにはともあれとりあえず一度は、勇気を出してヤッてみる、というのも間違いなくひとつの手ではあるはずなんですけどね……。
ちなみにこういうときに男が陥りがちなのが、「実は初めてで、どうしたらいいかよくわかんなくて……」って素直に言えばいいのに、童貞じゃないフリをするとか、どうでもいいカッコつけのほうを優先しちゃって、最初の一歩がどうしても踏み出せないっていうパターン。
男あるあるで、「道に迷っても人に聞かない」みたいなの、あんじゃん? 何をカッコつけてんのか?
こばなみ:
あるある~!
宇多丸:
なんだろうね、あれ。
やっぱ「自力で解決する」ってことに対する美学が強いのかな。
それで余計にみっともないことになっちゃったりもするのに……。
とにかく、そういうのの延長線上の話ですよね、「ヤッたことないのがバレたくなくて、ヤれない」っていうのは。
そこへ行くとさ、逆にと言っていいかわかんないけど、この連載でも何度も言ってるように、女性の「こんなの初めて」は、男の大好物ですからね! 仮に高さ156cmさんが、実は今まで男性経験ゼロってことをカミングアウトしたとしても、まったくマイナスにはならない、どころか、人によってはむしろプラスに働くくらいなんじゃないかと思いますけどね。
あるいは、いざ話してみたら、意外や意外、向こうも「実は僕も初めてで……」ってなるかもしれないよ?
なんにしても、誰かと関係を深めて行きたいんだったら、いつまでも傷つくリスクを怖がって殻に閉じこもってばかりもいられないわけで、どこかのタイミングではやっぱり、相手を信じて「素直に」自分をさらけ出して、そこから先はもう、流れに身をまかせるしかないんだからさ。 ここまでもろもろ引っ張っちゃったぶん、引っ込み思案になりがちなのもわかるけど、実際のところたぶん、そこまで心配しなきゃなんないようなことはなにもないですよ。 なので、彼が信用できそうだと思うなら、一度思いきって話してみなよ、ってことですね。という、やっぱおなじみの結論(笑)。
こばなみ:
処女シリーズとして、こんなお悩みも届いていますよ。
✳️今週のお悩み-2✳️
私は女子校出身なんですが、大学に入り初めて彼氏ができたものの、いざ付き合うとなるとカップルらしいことをすることに抵抗があり、手を握ることさえ生理的に受け付けられません。今まで2人の方と付き合い、どちらも1カ月くらいで限界が訪れ別れてしまいました。何が原因なのでしょうか。わたしはこの先どうしたらいいのでしょうか……?
(マイナスイオン・19歳・東京都)
宇多丸:
女子校出身のこばなみは、こんな風に、最初は男の人と接触するのが怖かったですか?
こばなみ:
同年代男子とは6年間、接触がほぼ皆無だったので、大学に入った当初は、男子との距離感は当然つかめなかったですよね。意外としゃべってくるんだ!?とか、いちいち挙動不審なところはあったと思いますよ(笑)。
ただ、男兄弟がいたので、経験がないものの、生理的に無理!とかはなかったですけどね。
宇多丸:
なるほどね。異性の兄弟姉妹がいたりすると、良くも悪くも幻想を抱かないで済むっていうのはあるのかもね。
マイナスイオンさんの場合、手を握るのも生理的に無理だっていうんだからね。前に出た潔癖症でキスが嫌いな彼よりもハードルは高いってことだよな。
ちなみにマイナスイオンさんは、その彼らのこと、ちゃんと好きで付き合ったんですかね? ひょっとしたら、向こうから告られて、「そろそろ彼氏くらいいたほうがいいのかな」くらいの気持ちで了承しちゃったんだけど、実際んとこタイプでもなんでもなかったりで、いざそういうことしようとするとやっぱり生理的嫌悪感が出てきちゃうとか、そういう話だったりはしないのかね? もしそうなら、そもそも好きでもない相手と無理に付き合うことなんかないよ、ってことですよね、普通に。
マイナスイオンさんに限らず、恋もセックスも、したくないなら別に、それこそ一生しなくたってなんの問題もないことだよ! そりゃあ、やれ「まだ彼できないの」やれ「まだ結婚しないの」って、お節介焼きのバカどもがいろいろ言ってくるかもしれないけどさ。そいつらが、こっちの人生にホントの責任持ってくれるわけでもなんでもないから。
あと、ひょっとしたら、性的魅力を感じる対象が異性ではない、って可能性だって全然あるわけだし。 もしくは、そもそも他人と接触すること自体に嫌悪を感じるほどの潔癖性とか。 いずれにしたって、我慢してまで、今すぐ慌ててなにかやる必要なんか、まったくないですよ!
だから、「私はこの先どうすればいいんでしょうか?」という問いに直接答えておくならば、「そうしたいと思うまで、もしくはそうしたいと思える相手と出会えるまで、無理してなんかしなくていいですよ」ってことに尽きますよね。
そのうえで、まだ19歳で、たった2人としか付き合ってないんだから、なんにしても結論を出すのは早いよ!とは言っておきたいです。 単にそいつらのことがそんなに好きじゃなかっただけなのか、男全般が本気で苦手なのか、はたまたそもそもスキンシップ自体がどうにもこうにも嫌いなのか……、もうちょっといろんな人と会って、経験を積まないと、なんとも言いようがないよね。 要はマイナスイオンさん、まだ「自分自身のことがよくわかってない」状態ってことなんですよ。「自分探し」とはよく言ったもんで、まだまだその段階にいることは、年齢的に考えても全然正常なことだと思いますよ。
こばなみ:
処女シリーズ、ラストのお悩みです。こちら!
✳️今週のお悩み-3✳️
性的な欲求がひどくて、困っています。といっても性行為依存ではなく、むしろその逆で、いわゆるセフレどころか彼氏もできたことのない処女です。朝起きたときや就寝前、また学校帰りの夕方頃に性的欲求が高くなりがちで、何かすること(家事や勉強など)があっても後回しにしてその欲求の解消行為をしてしまいます。そしてその結果、終わった後に「またやってしまった」「女なのに、自分はおかしいんじゃないか」と後悔&不安になります。最近は本当に誰かとそういった行為をしてみたい、という願望もありますが、そう簡単にできるはずもなく、かといって、大学で彼氏をつくる気も起きません。最近、学外で知り合い、仲良くさせてもらっている年上の大人の男性がおり、一緒にいると「この人に処女を消してもらってしまいたい」などと失礼きわまりないことを時折思ってしまいます。自分は大して可愛くもないので絶対に行動には移しませんが……。少しでもそんなことを考えた自分に「最低だ」と落ち込みます。せめて映画『17歳』の主人公のように美人だったら、誰かに相手をしてもらえたかも……なんて考えてしまいます。ここにこんな内容の相談を送るのも不躾かと思いましたが、身近な相手に話せる内容でもないので、失礼します。長文読んでいただきありがとうございました。
(ゆり・19歳・神奈川県)
宇多丸:
これも、ぜーんぜん普通のことだよ!
ゆりさんは、いまどきの若者にしては、性的なことに関するタブー感がものすごく強いようだけど……、はっきり言って、性欲に「女なのに」もクソもないから! 男だろうが女だろうが、強い人は強いし、淡白な人は淡白。それだけのことだし、どっちがいいとか悪いとかいう話でもない。
ゆりさんのエピソードも、「19歳の男」に置き換えてみればわかりやすいけど、その年頃ならそういうこともあるでしょ、って程度の話でしょ。 なにかっていうとそういうことばっか考えて悶々としちゃって、暇があればまさしくサルのごとくそういう行為に走ってしまい、それこそ「終わった後に『またやってしまった』」と自己嫌悪に陥る、とか……、ただの青年期あるあるだよ! そのうえ、なまじ仲良くしてもらってる年上のお姉さんなんかいたら、あわよくば童貞捨てさせてくれないかな、などとつい妄想しては、そんな自分を「オレ、最低だーっ! こんなブサイクのくせに、失礼だよ!」と責め続ける日々……みたいなことも、余裕で想像つくし。
だから、「そういう悩みに関しては、男も女もやっぱり、それほど大差ないんだなぁ」ということが、ゆりさんの相談で、改めてよくわかったくらいですよ。
男だろうと女だろうと、雑な性欲を抱くことは誰でもある!
こばなみ:
女同士で飲みながら、最近ヤッてないっすね~とか話したりもしますからねぇ。
宇多丸:
むしろ女性同士のほうが、そういうのあけすけだったりしますよね。
まぁ、品のある/なしの問題はあるにせよ……、とにかく「女なのに」って考え方は、もうしなくていいですから!
こばなみ:
友達も先日、「ヤリモク(性行為が目的という意味)」で、合コンかなんかで出会った相手とその日に……!!って言ってましたよ。
だからって、その友達のことを「やだ~」とか、別に思わないですからね。
宇多丸:
どんなかたちであれ、自分で自分の欲望を肯定してコントロールできてるんなら、そっちのがいいに決まってますからね。
しかもゆりさんなんか、ヤッたことない人が、ヤッてみたいって言ってるだけなんだから、当たり前の話すぎるぐらいでしょ。
ちなみに、ゆりさんに言っておきたいのは、その「仲良くさせてもらっている年上の大人の男性」、ゆりさんのことを現状どう見てるのかはわからないけど、嫌だったらそこまで一緒にいないと思うし、仮にも19歳の女の子に「不躾なお願いで申し訳ないんですけど、処女、捨てさせてくれませんか?」なんて申し出られたら、容姿がどうこう関係なく、少なくともそんなに嫌な気持ちはしないんじゃないか、ホントに承諾するかどうかは別にしても、間違いなくまんざらでもないんじゃないか、って気がしますけどね。 もちろん、ルックスが『17歳』の主人公レベルである必要はまったくないよ!(笑) そんなこと言ったら、世のなか処女と童貞だらけになっちゃうよ……。
その人じゃなくても、19歳のおぼこというところに価値を見出す男なんて、そこらじゅうにウジャウジャいるんだからさ。ヤるだけだったら、ぶっちゃけいつでもできるはずでしょう。出会い系サイトなんて行ったら、いきなり引っ張りだこなんじゃん?
こばなみ:
選ばなければ、いくらでもいそうですよね。でも、相手選びはゆりさんが納得行くようにしたほうがいいと思いますけど。
宇多丸:
もちろんそれはそう。
その意味でも、人としてある程度信用が置ける、ゆりさん的にも初めての相手として不足はない年上男性というのがすでに身近にいるんだったら、とりあえずそこに行ってみるというのはやはり、そんなに悪くないチョイスなんじゃないかなぁって気が僕はします。
とにかくね、ゆりさんが思ってるほど、性って、やましいことでも、ハードルが高いものでもなくて、むしろ日常の営みなんだから、そんなに深刻に考えなくていいよ!ってことですよ。 あと、19歳という若さは、ゆりさんが思ってるよりずっとオールマイティな力を持ってるので、そこはやはり、もっと自信を持って利用してってもいいんじゃないかと思います。
とりあえずセルフプレジャー・アイテム「iroha」でも買って、ガンガン発散しとけばいいじゃん!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2016年11月12日に公開したものを再編集し、掲載しています。