子育てしながら仕事で結果を出したい……と、一人で突っ走ってもうまくいかない。こんなとき、どうする? 《ライフステージ編-1》
リーダーとして仕事をしていれば、必ずぶつかる
コミュニケーションや人間関係の問題。
相対する人も違えば、状況もさまざまで、
「こうすれば正解」がないのが
難しいところです。
そこで、
リーダーとして働く女性が実際に体験した
コミュニケーションの課題と
それに対するアクションを
ケーススタディとして紹介。
同じような課題を抱える人のヒントになれば、
という思いで届けていきます。
今回は、メーカーのマネージャー職であるケイさんが経験した、時短勤務の理解について。限られた時間の中で生産性を上げるために必死でがんばっても、評価は上がらないのっておかしくない? 子育てと仕事に忙殺されて、一時は働く意味がわからなくなったことも。それでも、キャリアも子育ても諦めたくなかった、ケイさんの考え方と行動を紹介します。
みんなが目指したくなるような上司になれている?
世間的には大企業勤務は恵まれている印象があると思うのですが、女性でリーダーという立場になるにはまだまだやりづらい環境だと感じてきました。私より少し上の世代の女性がリーダーになるためには、必死にがんばって、結婚や出産をしない選択をする人もいたように感じます。30代後半から40代前半の女性は子どもを持ちながらリーダーになっていますが、傍から見ても大変そう……。その様子を見ている20代女性は、キャリアアップと子どもの両方を手に入れることは無理だと感じているのではないかと心配です。
私自身、子育てしながら管理職も担い、ビジネススクールにも通っているため、いつも慌ただしいんですね。全て好きでやっているのですが、部下たちはきっと「ケイさん、いつもせかせかしているなぁ」と思っているはず。もっと余裕を持って、やりたいことを実現し、人生を満喫しているリーダーの姿を見せていきたいですね。
でも、そもそも、「女性活躍=リーダー」という流れにも違和感があります。リーダーにならずとも活躍できる、個々が求める働き方や働きやすさと、会社の方針のそれぞれがマッチングしたらよいのに、と悩ましく思います。
周囲から評価や理解がされにくい「時短勤務」
7年前の第1子出産後、時短勤務の評価基準にモヤモヤしました。働ける時間が短いので1時間当たりの生産性を上げようとどんなに必死に働いても、結局は勤務時間で給与が決まってしまうんですよね。ダラダラ働いていて残業している人のほうが評価されているような状況はおかしいと感じていました。
育休復帰直後は、短い時間でも成果を出したいと、がむしゃらに働き、無理をしすぎて体を壊してしまったことがあるんです。
時短で減ってしまった給与から保育園の利用料を5~6万円も支払って、いちばん大事な子どもを保育園にわざわざ預けて働く。会社に着いたと思ったら子どもが熱を出し、保育園から呼び出され、会社のいろんな人に申し訳ないなと思いながらすぐ帰る。
そんな日々のなかでさらに自分が体を壊したとき、「何のために働いているんだろう……」という気持ちになったこともあります。子どもの寝顔を見ながら、ポロポロ涙が出てきたときもありました。
それでも働きたいと思うなら、子どもには「お仕事、楽しかったよ」と笑顔で言いたい。無理をするのではなく、楽しく前向きに働こうと意識を変えました。全てが上手くいったわけではありませんけどね。
業務をお願いしていた相手に不満を持たれても、逃げずに信頼回復に奔走
時短勤務をしている当時、パートの方に色々と業務をお願いしていたら、「自分は先に帰るくせに……」とものすごく不満を持たれて、感情的な長文メールをもらったことがありました。当時はつらかったですが、振り返ると、そうやってはっきり伝えてくれるのはありがたいことだと思います。
感情をぶつけられたとしても、こちらとしては助けてもらわないわけにはいきません。まずはしっかり反省し、きちんと謝りました。そして、少しずつ信頼を回復できるように、こちらから積極的にコミュニケーションを取るようにしたり、みんなが嫌がる些細なことでも自ら率先してやるようにして「信頼貯金」を溜めていきました。今ではその人とは、何かあればすぐに私に相談してくれるくらい、深い信頼関係を築くことができました。
苦手だと思った人が自分のほうに振り向いてくれたのはとても嬉しく、その成功経験はリーダーとなった今、自信へとつながっています。改善点を言ってくれる人こそ大切にして、諦めずにコミュニケーションを取り続けることが肝心だと、改めて感じました。
自分らしく生きるために、周囲の協力は必須
仕事、子育て、キャリアアップのための勉強など、自分のやりたいことができているのは、夫の存在も大きいです。我が家は「産むのは私しかできないから、育てるのは旦那ね」と役割分担をしています。一般的には、夫が「子育てを手伝う」程度で、結局は女性のワンオペという家庭が多いと思いますが、我が家は私が「子育てを手伝う」というスタンスです(笑)。
キャリアを形成したい、子どもも欲しい、どちらも諦めなくていいと思います。そのためにも、パートナーとは絶対にしっかりと話し合いをした方がいいと思っています。ここ数年で、男性育休が浸透するなど、ずいぶん環境は変わってきていますが、まだまだ働く女性には厳しい環境です。やっぱり身近な人の協力を得たり、国や会社の制度を理解してフル活用することは大切だと思います。
イラストレーション:高橋由季