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映画鑑賞、読書……etc.楽しいことすら習慣化できません。コツコツ続けるヒントをください。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室469】


✳️今週のお悩み✳️
私は「コツコツと続けること」が苦手です。たとえばダイエット。最初の2週間くらいはがんばってやるのですが、そこからダレてしまいます。どうしたら続けられるのでしょうか。1日5分の筋トレも続きません。毎週映画を観ようとか、本を読もうとか(積ん読になっています)、楽しいことも続かない。とにかく「定期的にやる」「習慣化」ということが苦手なのです。そしてまとめてやろうと思っているのですが、そんな日は来ない。だからどうしても習慣化できる力をつけたいなと思っています。こんな私ですが、続けるヒントをいただけたら助かります。
(グーパー・41歳・会社員・神奈川県)



私も特にダイエットなんか、ほぼ続けられたことないので、なんも言えないっす。


というか逆にさ、なんにつけてもコツコツ続けられる人というのは実際のところ希少だからこそ、すごいですね尊いですねできるならああなりたいですね、という話にもなっているわけでさ。
つまり大抵の人は、グーバーさんやこばなみや僕と同じく、コツコツできないできてない、むしろそれがデフォ、ってことでしょう、明らかに。


宇多丸さんもコツコツ続けられない派ですか?


られてないねぇ、大半のことは。

習慣的に続いてることがあるとすれば、定期的に締め切りがやってきて、やらないと誰かに迷惑がかかるような……要は仕事関係、ってことになっちゃいますよね、やっぱり。

たとえば毎週の映画評とか、『BUBKA』の連載とか、もちろんこの企画もそうだけど、気づけば結構クラっとするような回数とか年数やってたりするわけだけど、それはやっぱ……。


とりあえず、やらざるを得ない?


まぁそういうことかな。
とにかく次から次へとやってくるタスクを必死でクリアしてくうちに、結果的に「コツコツ続けた」ことになっちゃってた、ってだけで……。
逆に最初から「コツコツやる」ことを意識なんかしてたら、きっとすぐ疲れちゃって、速攻投げ出してたんじゃないかと思いますよ(笑)。

これ、なんだってそうなんじゃない?
たとえば犬の散歩とかさ、やらないとぎゃんぎゃんうるさいから結局毎日行くしかない、っていう(笑)。
そういう半強制的なサイクルのなかに自らを放り込むとかじゃないと、なんもないところでただコツコツがんばるとかは、そもそも無理なんじゃね?


21日続けると習慣化できるって聞いたことありますけど……。


そこまで持ってくのが大変だって話をしてんだろ、って気もするけど(笑)。

まぁとにかく、なんらかの責任がすでに生じているとか、「自分の外側」に何か強めな要因がないと……。
めんどくさくなって投げ出して、何か不利益があるにしたってあくまで自分のなかの問題、ってだけなら、じゃあまぁいいかぁ、ってなっちゃいますよ、僕らみたいのは(笑)。

体作りとかもさ、漠然ともうちょいカッコよくなりたいなぁくらいじゃ、まぁでもそんなのどうでもいいかぁ、って一瞬でも思ってしまえば、終わりじゃん。
でも、たとえばボクサーとかなら、この日までにここまで体重絞っておかないと、大恥かくとかみんなをがっかりさせてしまうとか、あるわけじゃん?


迷惑かけますね。ボクシングだったら失格したりして。


いっそもう、なんかしら試合を組むってのはどうですか?(笑)
でも、それが終わったら単にリバウンドしまくるだけだったりして……。


そうですね。
永遠に続けることなんてできないから……。

走ってる人はよく、走らないと気持ちが悪いっていうけど。


マラソンとかはホント、脳内麻薬だって言いますよね。
ある一線を超えて走り続けるとアドレナリンがドバドバ出るから、その強烈な快感を脳が覚えちゃって習慣的に走りたくなるんだ、みたいな。
感覚としては、なんかわかる気もする。

この、「脳が欲してクセになる」方向は、当然きっと、かなり強いでしょうね。
「コツコツ毎日パチンコ通い」とかならできちゃってる、という人はたくさんいるんだろうし……。
そういう人間の習性をうまく利用していく、みたいなことも、まぁもちろん可能ではあるんでしょうけど。

ただその、「コツコツ・アディクト」な状態に持ってくまでが、特にポジティブな効果が期待されるものほど、まず大変なんだよなぁ……。
「毎日5分でOK!」みたいなのだって、実際にやってみると、「5分、長っ!」だったりするじゃん?(笑)

だからやっぱ、外的な力学がなんも働いてないところでただ自分だけのためにやる「素の継続」は、難しいですよ、少なくとも僕らみたいな人たちには。


RHYMESTERとしての音楽活動はどうなんですか?


これは音楽で食ってる人の大半に共感してもらえることだと思うけど、プロの活動というのはですね、「予算と締め切り」があるからこそ、次から次へと回ってゆくんです!(キッパリ)。
つまりやっぱり、外的な力学が必要だという話。

もちろんその根本に「やりたいから、やる」という内的な動機があるのは言うまでもないことですけど、それを継続的かつ定期的に駆動させていってこそプロだとするならば、「予算と締め切り」の存在は絶対必須……というかそもそも、その仕事に「需要と経済的価値、それに確実に応え続ける責任能力」があるのが「プロ」なんだから、当たり前っちゃ当たり前の話なんですけど。

だからたぶんこれ、どの分野の職業人にも通じることなんだと思いますよ、「予算と締め切り」こそが大事って。


そう思うと仕事じゃない習慣化って超難しいですね。


まぁだから、個人的な目標にもそういう「外的な力学」構造を取り入れてみる、とかはできるんじゃないですか。
人と約束しちゃうとか、高額契約しちゃうとか(笑)。

あと、いまさらのように身もフタもないことを言うようだけども、グーパーさんも我々も、毎日やっても苦じゃないようなこと、もしくは今すぐやらなきゃ本気でマズい!みたいなことが現状ないってだけで、だったらそこに焦りや引け目を感じてもあんま仕方ないんじゃない?とは正直ちょっと思わなくもないが。
なんらかの具体的な目標があったり、医者に「このままだとマジで数年後知らないよ」的に厳しく忠告されてるとかなら、そりゃまだがんばりようもあるけども、そうじゃないなら、ねぇ?


たしかにー。


相談文に書いてあるどれも、やんなくたって別に、少なくともすぐ死ぬってわけじゃない。

極端な話、みんながみんな毎日習慣づけてやらなきゃいけないことなんか、そもそもそんなにあるか?って気もしてくる。


歯磨きぐらい?


いや、歯磨きはさ、ある種「他者」もかかわってくる問題じゃん。
口臭いと思われたくないとか、実際そうなら迷惑だとか。
なのでそれは当然、できればやりましょう!(笑)

そう考えると、やっぱ社会のなかで生きてく上で最低限必要なことは、すでに当たり前に「毎日コツコツ」やってんだよね、誰だって。
風呂入って歯磨いて掃除洗濯炊事して……まぁどれだけちゃんとやるかは個人差があるにしても(笑)。
仕事ももちろんそうだよね。

逆に、さっき言ったようなアディクト系習慣のなかには、人生に有害な影響を与える可能性があるものも少なくない。
スポーツだって、健康増進の域を超えて、ケガしたりなんだりでむしろ身体壊すところまで入れ込んじゃうなんてこと、意外とザラにある話でしょ。

ちなみに私、つい先日見事な最終回を迎えました『虎に翼』で、人生で初めて「朝の連続テレビ小説を、ほぼリアルタイムで全部観る」ってことをやりました。
期間中はだから、毎日15分、コツコツでしたよね。


それは意欲ですか?


もちろん根本は意欲、純粋におもしろいから観てるわけだけど、ちょっと忙しくて数日観ない日が続いちゃったりすると、「このまま未鑑賞回を溜め込んじゃうとすぐ追いつけなくなって、俺などはすぐリタイアしかねん!」ということで、少しだけ気合いを入れてその週のぶんを「消化」したりすることもありましたよ、言葉は悪いけど。
もちろん、『虎に翼』がそれに値する素晴らしいドラマだった、ということが何より大きいのは言うまでもなくですが。

だからまぁ、何ごともきっかけ次第、ではある。
それだってある意味「外的な力学」のうちですしね。

そういうのがなんにもない平場で、自分のなかだけでなんとなくモヤモヤしてる程度の「やんなきゃな」がまず続かないというのも、だからまぁ仕方ないことなんですよ、たぶん。


コツコツしなきゃとか、コツコツやればできるはずとか、そっちが幻想ってことですかね。


そういうことなんじゃないかと思います。

とりあえず、毎日コツコツご飯食べてうんち出してんなら大丈夫!
あとはコツコツ寝て……。


私も続けられないことが多く、「そんなことすらできない自分が情けない」って思っちゃってたけど、気が楽になりました! ダイエットとかも、意欲が湧ききってからでいっかー、と。
やるもやらないもグーパーさん次第だとは思うのですが、”やらなきゃ思考”が先行するあまり、あんまりモヤモヤしないといいですね。でもホント、気持ちはわかります!!




【今週のお絵描き】

画・宇多丸


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション2」(毎週月曜日から木曜日22:00-23:55の生放送)をはじめ、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

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こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。



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