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人に助けを求めるのが下手……、心理的なハードルを乗り越えるには? ヘルプシーキングの専門家・小田木朝子さんに聞きました【後編】

仕事をひとりで抱え込まず、周りに助けを求めるビジネススキル「ヘルプシーキング」について、NOKIOO取締役の小田木朝子さんにお聞きした【前編】。後編では、「みんな忙しそうだから助けを求めづらい」、「自分でなんとかしなきゃ」といった心理的ハードルの乗り越え方について、引き続き小田木さんにお伺いします。
(聞き手:F30プロジェクト 小林奈巳)


その仕事、あと10年がんばれる? 「今日より明日」の精神でがんばり方を見直そう


前編では、ヘルプシーキングの考え方に則って、私たちがそれぞれ抱える助けを求めることが難しいと思う感覚、すなわち心のブレーキと、それを開示して連携することの重要性についてお伺いしました。ただ、頭では分かっていても、「心理的ハードル」ってなかなか越えられないですよね。助けを求められず自分を追い詰めてしまうといった話をよく耳にします。


きっとそういう人って、自分自身のキャパシティが仕事のパフォーマンスの限界になっている状態ですよね。今日を乗り切ることはできるかもしれないけれど、その状態であと10年がんばれますか?

人が仕事を辞めたくなるのは、ハードな問題を抱えている現状そのものよりも、その中で「自分でなんとかするしかない」「頼れる人がいない」「相談できる相手がいない」という状況に追い込まれたときです。転職もひとつの手ですが、仕事そのものの前にがんばり方を見直してみてほしいなって思います。

また、自分が「やばい」と思っている場合、大抵まわりの人も同じように感じているので、案外利害は一致しているケースが多いです。まずは仲間をひとりでも見つけて悩みを共有したり助け合ったりすることができたら、今日より明日はよくなるかもと気力が湧いてくるのではないでしょうか。


ついつい「一気にハードルを乗り越えたい!」って思いがちですけど、長期的な視点をもって、小さな変化を積み重ねていくことが大事なんですね。ただ個人的には、「自分なんかダメちんだからチームでやるしかない!」と思っちゃうタイプなので、ひとりで全部やろうとする人は本来「できる」人で、その真面目さゆえの悩みなんだろうなと思いました。


誰も自分のがんばりを見てくれない……。 そんな状況を改善する、枕詞は「チームとして」!


仕事を抱え込むということは、それだけたくさんの仕事を自分でこなしているわけですよね。それなのに誰も自分のがんばりを知らない、便宜上チームはあるけど機能していない、という状況のときにも辞めたくなりますよね。


だから、リーダーがメンバー一人ひとりを見ていくのですかね?


もちろんそうなのですが、それはリーダーを疲弊させる原因にもなりかねません。困ったときには一人ひとりの業務範囲を越えて「チームで考える」ことが理想なのではないでしょうか。それはリーダーが困ったときも同じです。たとえば、まわりに伝えることが苦手なリーダーがいたとしたら、どうすればチームに伝わるか、というところからみんなで考えちゃえばいいと思うんです。「チームとして」を枕詞にしましょう。自分ごと化じゃなくて、「チームごと化」していく!


何かあるたびに「『チームとして』どうしましょうか?」とか、主語を変えていきたいですね。


「ママは頼るのが上手」なんて、そんなわけがない。ジェンダーより、ジェネレーションより、個体差!


少し気になったのですが、「周りの人に頼れるかどうか」に性差ってあるのでしょうか?


確かに、周りの環境や社会から与えられてきた影響による傾向はあるかもしれませんが、根本的には性別は関係ないと私は思っています。

たとえば、「ママは頼るのが上手」と聞くことがありますが、あれは、個人的には「そんなわけない!」と思うんです。育児中は人に頼らざるを得ない状況になるというだけで、実際は助けられることが増えることで罪悪感を募らせる人も多いです。

逆に男性の場合、「やりきってナンボ!」という文化に浸かっていたり、特に年配の世代だと家のことは妻に任せていたからこそやりきってきた、という背景があって、今更まわりに頼りづらくなっているということはあるかもしれません。でもそれは育ってきた環境や社会のなかで形成された価値観があってのことで、「男性であればこうなる」ということではないですよね。

結局のところ、性別やライフステージや属性で「こういう人はこう」というのはなくて、個体差だと思います。心理的なハードルが元々低かったり、早い段階で成功体験を積んだりして上手に助けを求められる人もいれば、罪悪感を募らせて負のスパイラルにハマる人もいます。


仕事ができる人こそ、ひとりで抱え込まない。ヘルプシーキングのスキルがこれからのスタンダードに


ここまで「ヘルプシーキング」についてお聞きしてきて、このビジネススキルが世の中にいち早く広まってほしいと思いました。浸透するまでにはまだ時間がかかりそうですか?


個人的には追い風だと思っています。今、多くの企業は「今までのやり方だともう勝てない」という状況にありますよね。正解も分からないなかで「新しい正解を探せ」と言われて追い込まれています。そんななかで、ひとりでできることには限界がある。そこで「困っているから助け合おう」ではなく「成果を上げるために連携しあおう」という考え方に世の中がシフトしてきているのを感じるんです。これはチャンスだと思っています!


超いいトレンドですね!


ビジネススキルとして、女性だけでなく、立場や性別にかかわらず、みんなが頼り合って成果を上げていくことが、これからのスタンダードになるといいなと願っています。


<前回はこちら → 自分ひとりで仕事を抱えてしまう人へ! 小田木朝子さんに聞く、周りに助けを求めるビジネススキル「ヘルプシーキング」の考え方【前編】


株式会社NOKIOO 取締役
小田木 朝子

ウェブマーケティングの法人営業などを経て、株式会社NOKIOOの創業メンバーとして参画。組織と個人の持続的な発展を実現する”これからのチームワーキング(=パフォーマンスワーク)”を体系化し、企業の組織開発・人材育成を支援。2020年より、組織で働く女性がチームで成果を上げるためのスキルを体系的に学ぶオンラインスクール『スクラ』を事業化。「仕事が好きだし、楽しい」と言い合える女性が増えることが喜び! 著書に、ヘルプシーキングの入門書『仕事は自分ひとりでやらない』など。
株式会社NOKIOO
スクラ
◆Voicy
『今日のワタシに効く両立サプリ』
◆note
『WOMANLifeStyle&CarrerInterview』
◆著書
『仕事は自分ひとりでやらない』(フォレスト出版)
◆著書
『人生の武器を手に入れよう!働く私たちの育休戦略』(Book Trip)


F30プロジェクト 代表
小林 奈巳

2010年、iPhoneの使い方が分からなかった自身と女性に向けた簡単解読本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは『F30プロジェクト』と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。”女性”という枕詞がなくなる世の中を目指している。自身も2021年に株式会社都恋堂の代表を継承し、現在絶賛奮闘中。
F30プロジェクト
ライムスター宇多丸のお悩み相談室







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