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結婚せずとも子どもを持つには? 世間体は無視してシングルマザーを突き進む、それしか今はない?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室465】


✳️今週のお悩み✳️
32歳、独身、彼氏なし。稼ぎも少なくはない。彼氏がほしいとは今そこまで思わないが子どもが産める年齢が生物学的に限度があるので、彼氏を作らなければと思っている程度。30歳まで7年付き合った彼氏がいましたが、この人の考え方が昔から好きじゃなくて結婚はしたくないと思い別れました。寂しがり屋なので別れた直後は死にそうなくらい寂しかったですが、アプリで数人と付き合いすぐ別れ、時を経て、2年彼氏がいない状態。寂しさを感じなくなりました。ひとりで何でも出来るようになりました。
結婚は良い人がいれば程度ですが、ただ子どもはほしいです。でも今の制度だと結婚せず子どもを持つのは難しい? あまりよく思われないと感じています。子どもはほしいけど、煩わしい思いをして無理に誰かと結婚をして、というのは耐えられないです。結婚はどうでもいいけど、子どもはほしい。この考えの独身はいま結構いるんじゃないかと思いますが、これって世間体は無視してシングルマザーを突き進むしか今はないですよね? シングルマザーを進んでしたいつもりはないのですが、でも体外受精するほどそこまでの思いもないし……。
彼氏もいないので、相手もいないですが……。結婚せずとも子どもが持てるなにかの制度、この独身の思いを少子化問題に貢献できないですかね。長々とまとまりがなく、すみません。
(アナコンダ・32歳・会社員・東京都)



もちろん言うまでもなくと言うべきか、アナコンダさんがおっしゃっているような「生き方の選択の幅」が、当たり前のように広く取られている社会こそが本当は望ましい、と僕自身も考えるところではありますが。


選択的シングルマザーという道ですね。
調べたところによると、実現する方法としては

① 交際相手との間に子どもをもうけ、結婚はしない
② 海外の精子バンクを利用する
③ 国内で有志による精子提供を受ける

が挙げられるようです。

②は未婚女性が精子提供を受けるための法整備が整ってなかったり、③は提供する側の病歴や性感染症の有無などが確認できずトラブルが起きていたりするそうです。

あとは、アナコンダさんは大丈夫そうですけど、支援や手当はあるにせよ経済的な自立が必要だったり、精神的な自立に加え、子どもが出自を知りたいと言ったときにどうするか、父親の認知はどうするか、アナコンダさんも書いてある通り、周りからの偏見もまだまだあるのは否めないかもしれません。



そうだねぇ……。
日本はまだまだ、こないだ決まった共同親権の導入とかもそうだけど、なんであれやっぱり親は父母の「対(つい)」であるべき、というような守旧的な考えが、一部先進国などとくらべるとどうしてもより根強い感じはあるかもしれない。
制度のほうも、それに合わせてわりとガッチガチに出来上がっていっちゃってる感じで。


国よりも、都とか区とかからのが変わっていってる雰囲気ありません?
東京都が卵子凍結に係る費用のサポートを始めたり。
子育てサポートのほうがやっぱり多いけど、やっとその手前のところにも手を打つようになってきているのかなって思いました。

あと、「シングルママ・シングルパパ くらし応援ナビ(https://www.single-ouen-navi.metro.tokyo.lg.jp/
)」なんていうのもありました。けっこう丁寧でわかりやすいサイトでした!

非選択のシングルマザーがまだまだ多いみたいですが、でもアナコンダさんみたいな考えの人って増えているのでしょうね。芸能人とかも、近年ちらほら話題になるじゃないですか。


要は、国政よりもそういう地域ごとの行政のほうが、国民の中に当然ながら実はいろいろある潜在的要請みたいなものが、より直接的に反映されやすい、ということなのかもしれないですよね。

「多様性」って言葉は、近年あまりにも表面的な濫用も目立ったせいで、響きとしてはすでにちょっと陳腐化してしまったような感じもあるかもしれないけど、だからと言って、この世には事実としてカテゴライズ不能なほどさまざまな人たちがいて、それぞれ切実な事情をかかえながら生きているんだ、という向き合うべき現実が、なくなったわけでもなんでもないですからね。

そうした「多様性という現実」から目をそらさず、それぞれに適切に対応できるような社会を作ってゆければ……たとえば、さまざまな生き方に応じてそれぞれ産みやすい、育てやすい環境が整っていれば、じゃあそっちを選んでみようかな、という人も、必然的に増えるわけじゃない?


そういうふうに、子どもがほしい人のことをサポートして実現していったら、少子化だって少しずつでもいい方向にいくかもしれないわけだし。


だよねぇ。

でもじゃあ逆に、なんで国政だとそうならないんだ、って話にもまたなってしまうわけですけど……。
実態を見てみれば、「昔ながらの家父長制を守らなければ、この国のイエの在り方が壊れる!」みたいなことを本気で唱えて信じているような人が、政権与党の多数を占めてたりするわけですから。
彼らが、ネットなどではちょこちょこいろいろ言われつつも選挙ではなんだかんだ勝ち続けてるってことは、日本全体ではやっぱり、それでいいやという国民が多いってことなんですかね?


少数派とされていますが、「どっちでもいいじゃん」と思ってる人もいっぱいいると思いますけど。


たとえば夫婦別姓にしても、「どっち選んでもいいですよってことなら、別に問題ないんじゃない?」ってくらいのテンションの人は、実際多そうだよね。

しかしやはり、じゃあなんでそれが国政レベルとなると途端にあんまり伝わらない感じになってしまうのか?ということは、曲がりなりにもこの国の主権者たちであるはずの身として、一度改めて真剣に考えてみたほうがいいあたりかもしれません。
ま、僕個人は、先日の都知事選の結果にも、同じようなことはぜんぜん感じましたけども(笑)。

さてさて、ともあれそんななかで、アナコンダさんはどうしてゆくべきか。

たぶん、今のところ結局一番ラク、というか話が早いのは、さっきの三択で言う①の方向……若干の本末転倒感はあるにせよ、アナコンダさん側のそういう条件をあらかじめオープンにした上で、いままで通りお付き合いする人を見つくろう、っていうことじゃないですかね。
ぜんぜんいると思いますけどね、それでもいいよって人。


アナコンダさん個別の相談の解決の糸口として、オープンにするのはいいかもしれない!


たとえば、一緒には暮らさなくていいけど育児は無論イーブンに分担しましょうとか、アナコンダさんが望むならこっちは外側からのサポートにとどめますとか、とにかくいろんなパートナーシップの在り方というのが考えられるわけだし、そこに関してしっかりコンセンサスが取れるような人も、きっとそこそこいますよ、いまどきは。
てか、そうやって人生のビジョンをちゃんと共有できる人をこそ「パートナー」にすべき、ってよく考えたら本来当たり前の話なんですけどね。

まぁでも、そうやってまたイチから手順を踏んでふさわしい相手を探すのって、もちろんとてつもなく面倒なことだし、途中まで気づかずハズレを引いてしまうリスクも当然山ほどあるしで、そもそもそれ自体が「目的」じゃないのになぁ……感があるのは、たしかにちょっと否めなくはある。
現実として条件も、より狭くはなっているわけだしね。

ちょうどいい人、サクッと見つかるといいけど……いまの状況で言えるのはやっぱ、そこまでなんですよね。
根本的な解決にはなってなくて、申し訳ないんですけども。
これが現状の社会の限界、ということですね。


この前、少子化のことを調べていたんですけど、やっぱり今の社会においては結婚しないと子どもは増えないということがわかって。
でも結婚するのが難しい、その前の交際が難しい、という人が多く、どんどん少子化が進む、だから異性とのコミュニケーションを強化しようという結論を出したんですが、ただ成果が出るのはめちゃくちゃ遠い。

だから、繰り返しになりますけど、こういうアナコンダさんみたいな人、子どもが明確にほしいという人がいるなら、そういう人の願いをまずは叶えてあげたら、少しずつかもしれないけど、より確実により早く、変わるのではないかと感じました。


本当にそうだね。
こうして子どもがほしいって言ってる人が現にいるのに、制度の不備や社会通念のために、現実として産みづらい、ということになってしまっている。
ここをサクッとキャッチしてあげられなくて、何が少子化対策か!ってことだよね、ホントに。

実際アナコンダさんの相談も、現状では結婚や交際にはもろもろの問題がまとわりつきすぎるから、なんとかそこはすっ飛ばせませんか?って話をしてるわけだもんね。
それがコミュニケーション強化で解決することなのかどうかはわからないけど、少なくとも、「昔ながら」のやり方を押し通すのは絶対に逆効果、というのだけははっきりしてる。

その意味では、こういうモードの人も実はけっこういるんですよ、っていうことを、たとえばこういう場で可視化したりすることも、ひとつ大事なことかもしれませんよね。
ずっと「私の考え方、おかしいのかな……」とか思っちゃってた女性が、「同じようなこと考えてる人、いるじゃん!」となるかもしれないしさ。
で、そういう声が次々に上がって、どんどんつながってゆけば、それこそ行政だって、動かしうるわけだから。


アナコンダさん、投稿してくれてありがとうございました。
顕在化することしか私たちにはできないけど、意味があることだと信じて、掲載させていただきました!!

アナコンダさんも承知のことだと思いますし、私は子どもを産んだことも育てたこともないのでなんとも言えないところもあるのですが、とはいえ子どもを産む・育てるというのは大変であり、責任のあることではあると思うので、本当にご自身の納得のいく選択・実行ができるといいですね。応援しています。




【今週のお絵描き】

画・宇多丸


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション2」(毎週月曜日から木曜日22:00-23:30の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

※昨年10月からは「アフター6ジャンクション2」に!

ライムスター宇多丸の聴くカルチャー・プログラムは、あなたの"好き"が否定されない、あなたの"好き"が見つかる場所。大人気週刊映画時評「ムービーウォッチメン」は毎週木曜日22時20分頃~にお引越しです。

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こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。



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