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男性が女性におごるのはマナーとして当たり前? それとも脈アリのサイン?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室183】


✳️今週のお悩み✳️
ずばり、女友達との飲み代をおごる男性の心理ってなんですか? 私は大学生の女です。この間たまたまばったりバンドで一緒の友達(男)と出くわして、流れでサシ飲みになったのですが、なぜかおごってくれました。そんなに安い額でもなかったので自分で払うと言ったのですが、がんとして譲ってくれません。彼のほうが年上とかそういうのでもまったくなく、完全に同期です。また、飲みのあいだも肩を組まれたり、鼻をつままれたり、かわいいと言われたり、彼氏いない歴=年齢の私は勘違いしてしまうようなことがたくさんありました。終電ぎりぎりで帰宅した後も、ちゃんと帰れた?と連絡をくれ、かなり好きになりかけています。これって彼に好かれてると考えていいんでしょうか? 男友達が少ないのでよくわからないです……。ただ、この人は普段からオープンな性格でかなりフレンドリーなタイプではあるので、友達の範囲内なのかもしれないです。ちなみに彼女はいます。女性におごるのは、マナーとして当たり前なのでしょうか!? 私が過剰反応しすぎですか? もやもやを晴らして欲しいです、宇多丸さん、よろしくお願いします!
(猫美・20歳・東京都)


宇多丸:
これ、最初のほうを読んでる段階では、「対等な立場のはずなのに意地でもおごろうとしてくる男」の、要は無自覚なマチズモというか性差別意識にイラっと来る、っていうような、そういう方向の話かと思ってたんですけど……、よくよく読み進めてみると、なんのこたぁない、好きになっちまったんか~い!っていうね(笑)。

つまり、おごってくれたこと含めて、自分への特別な好意の証と考えていいのか?と。

ま、可愛らしいと言えば可愛らしい相談ですけども。

それにしても、サシ飲み中の、この彼の行動……。

「かわいいと言われた」は、そりゃ嫌な気はしない。「肩を組まれた」も、普段からそんくらい仲良しでこっちも不快じゃないなら、まぁいいでしょう。

でもさ!

「鼻をつままれた」って、なに?(笑) まぁ、「こいつぅ~!」みたいなことでしょうけど……。

人によっては、即時ブチ切れしててもおかしくない、通常の人間関係であれば相当失礼なアクションだと思いますけどね。

こばなみ:
ちょっとペット的に可愛がられている感じですかね。

宇多丸:
もしくは、妹的なというか。

いずれにせよ、当然のような上から目線で、「可愛がってやる」「庇護してやる」、それがお前も嬉しいんだろ?感、ビンビンですよね。

ま、実際猫美さんはそれでまんまとゴロニャーンとなりかけてるわけだから、需要と供給はしっかり一致してるってことなんだけど……。

ちょっと、例の「頭ポンポン」問題にも近い話ですよね。

その回を猫美さんが読んでるかわかんないけど、僕もこばなみも、申し訳ないんですが、そういう「ポンポン」型コミュニケーション、けっこうな剣幕で、全否定派なんすわ!(笑)

僕らに限らず、要は「偉そうな男」がウザいキモい大嫌い!って人、全然いっぱいいますんで。

とにかくその彼は、まぁ悪気なくというか、本人的にはごくごく自然な振る舞いでもあるんでしょうが、わりとマッチョ志向が強いタイプの男性であるのは、まずやっぱり間違いない。

ちなみにその、おごり問題についてですけど、女性のなかにはでも、立場とか収入とか関係なく、「男のくせに」女に金出させるなんてあり得ない、っていうようなことをおっしゃる方も、やはりバカにならない割合でいらっしゃったりするじゃないですか。

男としては、なにが正解なのかよくわからなくなるところも、正直ちょっとあったりするんですが……。

こばなみ:
私の友だちでその思いが激しい人がいて、「男がおごってくれない=男としてありえない」みたいな人もたしかにいます。だけど今やそれって少数なんじゃないですか。まして友だち同士の飲みならなおさら、男も女もないでしょう。歳とか職業にもよるかもしれないですけど。

宇多丸:
逆に、前の相談であったけど、人によっては「やたらとおごってくる=下心?」的に、警戒されたり不快に思われたりする可能性だってあるもんね。

じゃあとりあえずやっぱり、「女性におごるのは、マナーとして当たり前」なんてことは、現代社会の常識としては別にない、どころか、それが無条件の前提のように振る舞うと、いまどきはむしろマイナスに響くこともある、ってことでいいんだよね?

そうじゃなきゃダメという人もいるにはいるけど、それはどっちかと言えば旧態依然とした「男は女を庇護するもの」論者なので、無理して合わせる必要はない、と。改めてスッキリしました(笑)。

ま、普通に考えて、会食などした同士がどれだけお金を出し合うかって、収入とか年齢とか、先輩後輩といった力関係など、もろもろのファクターがあってのことなんで……、たとえば、どっちが誘った件なのか、というのも当然あるよね。

猫美さんのケースでも、もし、最初に彼のほうから「これからちょっと飲み行かない?」的なひと言があったんだったら、「今日のところはオレが誘ったんだから、とりあえず出させてよ」というような理屈でのおごりは、まぁまぁ、そこまで変というわけでもないかもしれない。

あと、僕は完全にそういうタイプですけど、たいていの相手よりは明らかに僕だけがたくさん、それもちょい高めのお酒を頼みがちなため……、そこに、こっちのが年上とか目上とか、とにかくもういっこでも要素が加われば、きっちりめにワリカンするのもめんどくさいからここはもう僕にまとめて出させてください!みたいになるパターンは、まぁわりとあるかも。

その代わり、前も言ったけど「二軒目はよろしく」でバランス取ったりとか。

それと、こういうのもある。男性なんですけど、以前、すごく尊敬する人に、けっこう高い店に連れて行ってもらって。

で、ひととおり飲み食いし終わったあとに、その人がサラッと「ワリカンな!」って。

それが逆に、「あ、オレごときを対等に扱ってくださってる」って感じられて、嬉しかったの。ま、仮におごってもらってもやっぱり嬉しかったろうけど(笑)。

こばなみ:
私の先輩は、年下の彼氏がいた頃、自分のほうが収入があるから払うのはいいんだけど、そればっかりも嫌だから、彼に格好だけでも払いに行ってこいってことで、会計前にお金を渡したりしてました。その感じもわかるんですよね。

宇多丸:
要はだからやっぱり、ケースバイケース、いろんなパターンがある。当たり前だけど。

こばなみ:
でも、そもそも20歳の学生同士でおごったりします?

宇多丸:
そうね。今まで言ってきたようなのは、どちらかと言えばやっぱり、とは言えお互いそこまで金に困ってるわけじゃないんだし、その場その場で別にどっちが出したっていいんだけど、っていう、社会人同士のノリかもね。

ハタチやそこらで、いくらバイトやなんだしてるっつっても、基本常にからっけつな奴らばっかりのとこで、一方的におごるっていうのは、やっぱちょっと珍しい感じもあるかもね。

ただ、それが猫美さんに対する、特別な好意からのものかっていうと……、ぶっちゃけそれは、これだけの情報じゃちょっとまだ、よくわからないよね。

たしかに、飲んでる最中の態度はむちゃくちゃ親しげ、というか、特にやっぱり「鼻つまみ」は、いくらなんでもカジュアル越えて無礼だろ!って感じだけど、猫美さんも懸念してるように、その程度は彼にとってはあくまで友愛の念を示すスキンシップなのかもしれないし、そうじゃなくて、猫美さんがうっかり期待してしまってる通りの、下心マンマンな距離詰めだったのかもしれないし……、なんにしても今の時点では、どうとでも取れすぎて断言はできないっす。

あ、「ちゃんと帰れた?」の確認連絡も、まぁそれなりに親切で、猫美さんのことを気づかっていることの表れなのは間違いないだろうけど、ただ単に、酔った女の子の夜道ひとり歩きは危ないから……っていう、「知人への心配」レベルでも普通にやることだと思うんで。

だって、その方向でさらに、「心配だから送ってくよ」っていう、より脈アリ感が強い言動だって、全然あり得たわけだからさ。それですらまだ、好意確定!って領域とは言いがたいのに……。

つまりね、はっきり申し上げて、猫美さんは現状、チョロすぎです(笑)。

コロッと好きになりすぎ!

前も危険な考え方だって釘を刺したけど、「彼が◯◯してきたということは、こうであるはず」みたいに、勝手に因果関係を決めつけているところもあるのかもしれないですね。

もちろん、人を好きになるというのは基本的には素敵なことなんだけど、猫美さんと彼はまず、バンドメンバー同士でもあるわけでしょ?

色恋沙汰をそこに持ち込むと、成り行き次第によっては、バンド活動のほうが気まずくなるリスクもある、というのは、他のメンバーのためにも、一応頭の隅に置いといたほうがいいと思います。

あと、僕ら的にはやっぱり、「ポンポン」コミュニケーションの変種としての「鼻つまみ」を得意げにしてくるような輩なんでしょ、っていうところが、どうしてもね……(笑)。

こばなみ:
私はけっこうカチンときちゃうかも。

宇多丸:
メイクとかしてんのに顔触んじゃねぇよバカ!ってなるよねそりゃ(笑)。

でもまぁ、猫美さん側もそれで喜んでるんだから、外野がとやかく言うのも余計なお世話なのかなって気もしなくはないけど……。

ただとにかく、その彼は、今はその年齢だからまだ、そういう振る舞いが「男らしく」、頼もしく見えたりもするのかもしれないけど、歳を重ねてこっちもだんだん成熟してくると、まさにその部分こそが、幼稚で無神経で疎ましく感じられるようになってきたりするのは、よくある話なんで。

その調子のまんま歳だけ食って、ま~だ「鼻つまみ」を必殺技だと思い込んで、酒の場となると連発してるようなおっさんに成り果てちゃったら、それこそ周囲からは密かに、「鼻つまみ者」扱いですよ! って、上手いこと言ってしまいましたが(笑)

こばなみ:
「頭ポンポン」「壁ドン」「床ドン」、これからは「鼻つまみ」が流行るのかしら!?

その後どうなったかがかなり気になるので、よかったらぜひ事後報告をお願いします!

宇多丸:
現時点までにあったことだけじゃなにも判断できないって言ってるだけで、逆に言えば、脈アリともナシとも、まだまったく決まってはいないわけだからね。

その意味では、最低限猫美さんのことを、人としても、それだけスキンシップを取ってくるくらいだから生理的にも、まぁ嫌いじゃないのは確かでしょうから。さっき言ったようなリスクをわかったうえでなら、もうちょい歩を進めるのも全然ナシじゃないと思います!

それにしても、「床ドン」って……。



【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2017年3月11日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
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※シングル「世界、西原商会の世界! Part 2 逆featuring CRAZY KEN BAND」が配信中! Victorサイト限定CD盤もリリース!
詳しくは
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。




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