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「かわいいけど顔がでかい」と言われ過ぎてコンプレックスに。人目が怖い……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室87】


✳️今週のお悩み✳️

顔がでかいと言われることが悩みです。学校でも電車で通学中にも他人から「かわいいけど顔がでかい。顔がでかければどんなにかわいくても無理」と言われているのを何度も聞きました。いちいち聞こえるように言ってきます。もちろんかわいいと言われることは嬉しいですが顔がでかいことが気になります。学校でも顔がでかいとわざわざ聞こえるように言ってくることに対しイライラします。おまえらの顔はどーなんだよと思います。身長もある程度あり頭身を測ったら8頭身以上あります。ただ、顔がのっぺりして面長なせいか顔がでかく見えるのかなと思ってます。多少自分でも感じてます。以前は自分の顔に誇りを感じていました。しかし中学生の頃から顔に文句を言われてたせいか、もしくはあまりにも顔に自信があってからの自信喪失のせいか、今は顔に非常に強いコンプレックスを感じてます。1つのコンプレックスに執着してしまうのは大袈裟だと思われるかもしれませんが……、やっぱり学校、しかも他人にまで言われるとかなり気になり、最近は人目が怖いです。また意識しすぎて周囲の声が「あいつ顔がでかい」に聞こえます。別に1つくらいのコンプレックスで悩むことはないとは思いますが、なぜか非常に気にするようになりました。最近は本当に洗脳されてしまったように気にするようになりました。完璧を求めすぎているのかもしれません。完璧な人はいない……、そう自分に言い聞かせてますが克服できません。なにかアドバイスを頂けたら幸いです。

(かなこ・16歳)


宇多丸:
前にも顔でかい問題があったけど、よく読むと今回のこれは、またちょっと事情が違うっぽいよね。

だって、大前提としてかなこさんは、少なくとも顔の中身に関しては、文字通り自他ともに認めるレベルで「かわいい」ことは間違いないわけでしょ?

悪口めいたことを聞こえよがしに言ってくる連中でさえ、顔がかわいいということだけはどうしても認めざるを得ないほどに……、ていうか、自分で「あまりにも顔に自信があって」って、なかなかこんなこと言える人いないよ!
 だからホント、よっぽどはっきりかわいいんだろうなぁ、というのはこの文からも伝わってくる。

その上で、身長も低くなくて8頭身以上あるって言うんだからさ……、これはもう、なんで陰口叩かれるかって理由は、ほぼ明らかなんじゃないですか?

まず、それを言ってるのが同世代の女の子たちならさ、こんなわかりやすい話はないですよ。
誰が聞いたってそんなの、ただの「ひがみ」だよ!
 女の子ってさ、特に自分よりちょっとだけかわいいかも?くらいの同性に対して、たぶんリアルに脅威を感じるからなんだろうけど、すっごく意地悪に欠点をあげつらおうとする傾向、ない?

こばなみ:
たしかに。「かわいいけど、足短いよね~」とか、会話によく出てくる。

宇多丸:
正面から戦っても勝ち目のなさそうな相手に、なんとか「勝機」を見出そうとしてる感じっつーかね。
涙ぐましいっちゃ涙ぐましいけど、ま、見苦しい。

あと、「男はあーゆータイプ、好きよね」とかもあるよね! 
素直に「モテそうで羨ましい」とは死んでも言いたくなくて、暗に「男どもは見る目がないから、騙されてるだけ」的なニュアンスを込めずにはいられないっていう。

その手のとげとげしい発言を耳にするにつけね、なにもいちいちそんな言い方しなくても……とはもちろん思うんだけど、ただ最近は同時に、「女の人はやっぱり、みんな乙女なんだなぁ」ともなんとなく感じるようにはなりましたね。
結局、「私をちゃんと“お姫様”として扱ってほしい」っていう気持ちがみんなどこかにあるから、自分を差し置いて他の誰かがチヤホヤされてるのを、黙って見てられないんでしょ?

こばなみ:
それ、図星!

宇多丸:
しかも、そういうかまってちゃん欲求を隠そうともしないあたり、むしろかわいらしいような気もしてきましたよ。僕も歳を取ってそういう風に感じる余裕が出てきたのか……。

もちろん男だって、同性に嫉妬は全然するんだけど、ていうかひょっとしたら実は女の人以上にいつもモヤモヤしてるかもってくらいなんだけど、たぶんみんな、それだけに簡単には表に出せないっていうか、必死に平静を装うほうに集中しようとしちゃう感じなんじゃないかなー。

一方、もし仮に男の子がその悪口を言ってるんだとしたら、わざわざ「かわいいけど」なんて付けてる時点で、ベースに好意があるのはほぼ確実でしょう。
おおかたそれが、「好きな子に限って意地悪しちゃう」的な照れ隠し、もしくは「高嶺の花に対する負け惜しみ」にねじ曲がっちゃっただけでしょ。なんにしてもガキっぽいにも程があるけど。

いずれにしたって、かなこさんが同級生のなかでは目立ってかわいいことに対する、ブサイクどものせめてもの遠吠え、という以上の意味なんかないと思いますよ、間違いなく。

でも、そのせいで本当に「自分、顔でかいのかも」がコンプレックスになっちゃったんだから、話は深刻だよね。

こばなみ:
そういえば以前「美人と言われることもあり、人に妬まれることに異常に怯えています」というお悩みもありましたね。美人すぎるのも、いろいろあるんですね……。

宇多丸:
そういうので悩んでる人、結構多いのかもしれないよね。
あとかなこさんの場合、まだ高校生っていう部分も大きいんだと思いますけどね。

通学電車含めた「学校空間」がこの世のすべてであるような気がしちゃう時期というかさ。
端的に言えば、まだ世界が狭いんですよ。
だから、周囲の発言の影響を過剰に強く受けやすいってのはあるんじゃないかなと。 前に言った「クラスなんて単位にこだわることない」みたいなことだよね。

たぶんだけどかなこさん、もうちょい大人になってくると、「とはいえ現に私モテるし」と思えるような場面もちょいちょい増えてくると思うんですよ。

要はその恵まれたルックスのもたらすメリットのほうが、より大きくなってくるはず、というか。
そうなればもう、「顔がでかいから無理」なんて言いがかりも大して説得力なくなって、いつの間にかあんまり気にならなくなったりもするんじゃないか。
ただまぁ、そのぶん同性のやっかみもさらに増える可能性もあるわけだけども……。

ともかくさ、前に「人間誰でも手持ちのカードで勝負するしかないんだから……」って話をしたけど、そのたとえで言えばかなこさんは、とりあえず一枚は、「顔がかわいい」っていう、相当強いカードを前からすでに持ってるわけですよ。

でもそこで、今のかなこさんの本当の強みっていうのは、「そのカードを持ってるからといってすべてが上手く行くわけじゃない」というのを、この年齢でしっかり認識できたってことなんじゃないですかね。

ルックスの良さにあぐらをかかない、いい意味での臆病さ、謙虚さが身に付いたというか。
「コンプレックス」という一見マイナスなカードがさらに加わったことで、全体の手としてはむしろ強くなった、みたいな感じ。

少なくとも、いつまでたっても「かわいい」カード一点張りで勝負してくよりは、ずっと豊かで魅力的なゲームの進め方ができるようになった、とも言えるんじゃないですかね。

今回みたいなルックスの件に限らず、一般論として、もともと人よりちょっとばかし恵まれたものを持ってるような人はさ、そのまんま大人になってただただ傲慢なお山の大将になっちゃったりするより、若いうちにどっかで一回くらいは凹まされて、自力でそれを乗り越える、みたいな段階を経といたほうが、やっぱいいんじゃないかな~って気はしますけどね。

こばなみ:
辛いこともあるかもしれないけど、プラス思考でいくと、この時点で気づいてよかったのかもしれないですね。

宇多丸:
ただ、あまりにコンプレックスのほうばっかり肥大化させてしまうのもね、根っから卑屈に振る舞うクセがついてしまったりして、せっかくの「かわいい」カードの効力を損なってしまいかねないから……。 事実かなこさんは、「人目が怖い」とか、周囲がいつも悪口言ってるように聞こえるとか、軽く強迫観念にとらわれるようにもなっちゃってるんだもんね。 さすがにもうちょっとくらいは、自信を回復しておいてもいい気がします。

たとえば、ご自分で分析されている通り「のっぺりして面長なせいか顔がでかく見える」のだとしたら、ひょっとするとだけど、単純に、髪型を改善することでだいぶ印象が変わる可能性もありますよ。

もしかしたら、見る人が見れば、「あなたの顔のかたちで、その髪型だけはしちゃダメ!」っていうのを、今まさにやっちゃってるのかもしれないよ?

なので、それこそカリスマ美容師じゃないですけど、確実に腕のいい、名のある人に一回完全におまかせしてみたりするのはひとつの手じゃないかと思います。
素人考えで判断するんじゃなくて、トップクラスのプロの客観的な目で、自分の顔かたちに本当に合うヘアスタイルを「プロデュース」してもらうっていうね。

「顔の大きさにコンプレックスがあるとついついロングでバサーッと重たく顔を隠そうとしてしまいがちだけど、意外と顎のラインとかで短めに切りそろえたほうが、全然小顔に見えたりするんですよぉ……」みたいなの、ありそうじゃね?

そうやって思いきってイメチェンすることで、これまでのウジウジ感にもひと区切りつけられるかもしれないしさ。オススメですね!

あとはもう、さっさと恋人でも作るのが一番!
 日頃からちゃんと面と向かって、「やっぱかわいい!」とか「顔も別にでかくないし……ってかむしろスタイルいいじゃん!」とか言ってくれる人がひとりでもいるなら、ましてそれが好きな人なんだったら、周囲のアホどもの雑音なんか、だいぶどうでも良くなるでしょ。
しかしホント、そもそも「おまえらの顔はどーなんだよ」って話だよな……。

こばなみ:
それ言われると弱いですわ……。


【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2015年3月14日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。



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