なぜ男性が生理を語る? フェムテックやフェムケアの大切さをイベントやセミナーを通して広げているFemtech Japan代表の野口さんに聞きました。
リーダーとして働く女性を応援したいという思いではじまった、F30プロジェクト。女性のWell-Workingを考えるにあたって、生理やPMS、妊娠や出産、更年期などの女性特有の健康課題は切り離せないテーマです。これまでたくさんの女性ミドルマネジメントやリーダーの声をアンケートや取材を通して聞くなかで、フェム系の課題へのモヤモヤについて、女性側からのたくさんの視点を得てきました。では、男性からはどんな風に見えているのだろう。そんな疑問を抱いているときに出会ったのが、フェムテック*やフェムケアの啓発に取り組む、Femtech Japan代表の野口 俊英さんでした。前編では、野口さんがどのようなきっかけでこの分野に興味を持ち、活動をスタートさせたのか、また、現在の活動を通じて見えてきたことや想いについても伺います。
(聞き手:F30プロジェクト 武田明子)
*Female(女性)とTechnology(テクノロジー)を掛け合わせた造語、Femtech (フェムテック)
生理ナプキンが、人生を変えることもある! その体験が今の活動に。
まず、そもそも野口さんがフェムテックやフェムケアの啓発活動に取り組みはじめたきっかけや、経緯を簡単に教えていただけますでしょうか?
実は、私の会社が取り扱う商品の1つにノンポリマー(高分子吸収材を使わない)の生理ナプキンがありまして、私は10年ほど責任者をしていたんです。で、この商品が世の中に出たときに、すごく反響があったんですね。「このナプキンを使ってから、生理が快適になった!」といった愛用者の方から感謝の声がたくさん届いた。なかには「感動して、この会社で働きたい!」と履歴書もけっこう届いて。実際に過去に数名の採用もしているんです。
それほど生理って、女性の快適さを大きく左右する存在なんですよね。
こんなふうに人の人生を変えられるような商品って、そうはないって思って。「ずっとこの仕事をしたい!」と思っていたときに、人事異動の話がありまして。だったら「会社を辞めて自分でやりたいことをやります!」と宣言したんです。
潔いですね。
そうしたら、会社から「じゃあ、それを会社の中でやってほしい」と。そのとき、私がやりたいと宣言したのが、「フェムテック」だったんです。2020年の10月頃ですね。
ちょうど「フェムテック」という言葉が、日本のこの業界で少しずつ知られはじめたくらいですかね。
ええ。それまで「なんで男が、生理用品のことをやってるんだ?」ってよく言われてきたのですが、「フェムテック」という言葉を使うことで、周りの人も話を聞いてくれるような実感がありました。その後、メーカーとユーザーの接点となる場として、2021年10月に最初のイベント「Femtech Japan Femcare Japan」を開催したんです。
なるほど。誰かの人生をよりよくできるという喜びが、野口さんが新しい挑戦に踏み込むきっかけになり、それがフェムテックやフェムケアの啓発活動につながったということですね。
そうなんです。言い方が悪いのですが、「何かをやりたい」というより、目の前にあるものが楽しいと、どんどん広めていきたいと思う性分で。それがたまたまたノンポリマーの生理ナプキンやフェムテック・フェムケアだったんです。
先日、ある高校で2時間の授業の枠をいただいて生理やフェムテック・フェムケアの話をしたんですけど、「なんで野口さんは、男なのにこの活動をやってるんですか?」っていう質問が結構あったんですよ。そこでも同じように答えました。
フェムテック? フェムケア? 呼び名は違えど、目指す先は同じはず
イベントを最初に開催された2021年10月、フェムケアやフェムテックはかなり耕しがいのある分野だったと思います。そのなかで、Femtech Japanさんは “日本の風土に合った日本らしいフェムテックを広める”という目標を掲げていらっしゃいました。具体的なイメージしているものがあったのでしょうか?
フェムテックという言葉ができたときの定義と、いま世の中の人が想像するフェムテックとはズレがあると思っています。そもそもフェムテックは、市場からお金を集めるために作られた言葉だと思うんですね。だから、女性の健康課題を解決するために使うなら、“フェムケア”という言葉のほうが合っています。でも、それも含めてフェムテックと呼んでもいいんじゃないかな、というのが私の考え。それを“日本の風土に合った日本らしいフェムテック”と表現したんです。
ユーザーとしては、テクノロジーを駆使しているかどうかに関わらず、いろんなケアが増えるのはむしろうれしいです。そういった考えが、「Femtech Japan Femcare Japan」のイベントの特徴にもなっているんでしょうか。
できる限りみんなが参加しやすくて、どこよりも熱量が一番高いという場を作れば、おのずとメーカーさん、ユーザーの皆さん両方からのファンができると信じています。次回の2024年12月4日の開催が7回目になりますが、同じ思いで毎年2回、積み重ねている感じです。
私も前回のイベントを見に行きましたが、出展者と来場者の距離が近く、出展者の方にいろいろなお話が聞けて楽しかったです。
敷居が低いっていうのは、僕のテーマでもあるんです。すごくうれしかったのが「いろんなイベントに参加したけど、一番よかったです!」って言ってくれる方がいて。そして、男性の来場者が結構いらっしゃるのも特徴のひとつだと思います。
「女性のために、世の中を変えたい!」と大きなことを語るのではなく、誰から喜んでくれることを、少しずつ広げていくという発想で活動されている野口さん。「なぜ、男性がフェムテックを?」という声に対しても、「喜んでくれる人がいるから。そしてそれを広げていくことが楽しいから」と答えはシンプルでした。そしてその想いは、イベントの敷居を低さや親しみやすさにもあらわれています。
後編では、男性とのフェムテックやフェムケアについてのコミュニケーションについて伺います。
<F30プロジェクトも出展します!>
「Femtech Japan 2024 Femcare Japan 2024」
日時:2024年12月4日(水) 10時〜18時
会場:ザ ストリングス 表参道
〒107-0061 東京都港区北青山3-6-8
女性特有の健康課題解決へ向けた幅広いブランドやサービス提供企業・団体が出展するイベントを開催。そしてF30プロジェクトもブースにて出展します! 当日は女性ミドルマネジメントのモヤモヤをよりよく消化するためのツールなどをご案内する予定です。そのほかにも、この場が初のお披露目となるようなフェムテック/フェムケアブランドも多数出展予定とのこと。師走のお忙しい時期ですが、ぜひ、お越しください!!
<お話を伺った人>
■Femtech Japan 代表
野口 俊英さん
<聞き手>
■F30プロジェクト 企画・運営
武田 明子