義母と合わず家を出た私と娘を放置する夫。もう3人では頑張れない?【ライムスター宇多丸のお悩み相談室99】
✳️今週のお悩み✳️
宇多丸さんの結婚観にとても共感しており毎週楽しみに拝見しています。そんな宇多丸さんにずーっと相談させて頂きたいと思っておりました。 私は主人と別居し10ヶ月が経ちます。主人とは4年付き合い子を授かり1年半前に結婚しました。結婚生活は娘を出産した2ケ月後から主人と主人の母との同居から始まりました。
主人は長い間、母息子での生活をしており、義母を放って置けないという主人の気持ちが強いのも感じていましたので結婚が決まった時から義母との同居はわかっていましたし、私自身、父方の祖母と一緒の生活の中で育ったため同居にあまり抵抗を感じていませんでした。
しかし実際に生活をしてみると嫁という立場での同居というのは全く別物でした。想像以上に姑という立場の女性に気を使い、産後の生活の中で色々と葛藤することが多々ありました。同居後1ヶ月の時、義母に私が家のことを何もしないと言われ、それから私は完璧に家事をこなそうというプレッシャーと育児の大変さの中で、なんでこんなに気を使う生活をしなきゃいけないんだろうと思う反面、自分の我慢が足りないだけなんだろうかという思いで、どうしたらいいかわからず日々涙が止まりませんでした。しかし主人が助けてくれるような態度もみられず、同居をやめて3人で暮らしたいとも言いましたが、一緒に住むのは初めからわかっていたことだった、私が娘と出て別に暮らしたいなら離婚だ!と怒鳴られ、それ以上話し合いができるような状態でなくしばらく実家に帰るからと言って私は娘と家を出ましたが戻るつもりはありませんでした。
しかしまだ現役で働いている自分の母にも頼ってばかりいられず、主人と娘と3人の生活をしたいという思いもあり、今は実家を出てアパートを借りて生活する日々が5ヶ月になります。その間、主人が会いに来たのは3回ほどです。私が家を出てからも4ヶ月間連絡がなく、私が勝手にアパートを借りて戸惑っていたものの、まずは週末婚の様に義母との家と私と娘との家を行き来してくれればと思ってました。しかし行き来どころか電話しても出ず、折り電もなくメールもほとんど返信がありません。
まだ籍が入っているため娘の公的な手続きに主人の証明書類等が必要になることも多く、その手続きにも協力的ではありません。保育料だけでも助けて欲しいとお願いしてますがお金もくれません。このままであれば離婚した方が楽なのではと思い始めましたが、ただまだ家族だけの生活をしてはいないので3人で頑張れないのかと思うところもあります。どうするべきか考える毎日が続いています。
(悩める子ヒツジ年女・35歳・岐阜県)
こばなみ:
義母問題は最近もうっすらありましたね。
宇多丸:
これはもう、結論ははっきりしてますよ。
こいつとやり直すなんてことはもう、考えないほうがいい。ひどすぎる!
てめえのマザコンを嫁にも押しつけて当たり前のような顔してる、味方にも親身にもなってくれないってだけでも、まぁありがちな話だけど大問題なのに、別居されたからってロクに連絡もよこさないとか、養育に協力的じゃないとか、要は子供含めた「こっちの家族」より、ホントに圧倒的に「母ちゃんとオレ」優先な人、ってことでしょ。
で、間違いなく向こうは、悩める子ヒツジ年女さんに裏切られたとか傷つけられたとか、逆に被害者意識ビンビンになってると思いますよ。だからこそ、今のところまだ夫であり父でもある身として最低限の責任さえ投げ出してしまうような、そういう子供じみたふてくされ方が、平気でできる。 盗人猛々しいとはこのことですよ!
こばなみ:
姑さんも裏で糸を引いてそう……。
宇多丸:
「◯◯ちゃんをこんなに傷つけて、ひどい女ね!」とかなんとか、改めて甘やかしてもらってるんでしょ。一生やってろ!
とにかく、あっち側に「3人で頑張る」なんて頭はまったくないと思うよ、明らかに。 「3人」って単位をそもそも考えてないと思う。 娘さんの父親であることに変わりはないからあんまり悪くは言いたくないけど、まぁ少なくとも結婚相手としては、はっきり最悪なヤツを選んじゃったってことですよね。
ということで、さっさと離婚して、慰謝料と養育費しっかり払わせるのが一番だと思うけど。 このケースなら全然もらえるよね?
こばなみ:
もらえると思いますけどね。ただ離婚調停したり、裁判になったり、相手が金額なりに合意しない場合は長引いたりと、けっこう大変らしいですね。
宇多丸:
でも、今にしたって、夫からはちゃんとお金をもらってなくて、悩める子ヒツジ年女さんが全額生活費を負担してる状態なのに変わりはないわけでしょ? まだ離婚してないから公的な補助金にも頼れないだろうし。
だからやっぱり、早めに正式なケジメをつけて、とっとと新しい人生を歩み始めたほうが絶対いいと思いますけどね。
それにしても……、こんな例を見るにつけつくづく、最近この連載でもちょいちょい言ってる、「皆さんあまりにも“結婚”というものを人生の絶対的カード、ゴールのように考えすぎじゃないですか? そこに焦るあまり、結果として逆に選択を誤ったりしがちじゃないですかね?」って話が、より説得力を持ってきますよね。
当たり前のことだけど、結婚によって不幸になることだってあり得る。それも結構な確率で。 今回の場合もさ、結婚するまではきっと、ホントに申し分ない彼だったんでしょうよ。4年も付き合ってたって言うんだから、彼の人柄も十分わかってるつもりだったんだろうしね。
でもでも! 文を読む限り、できちゃった婚ってことだよね、これ。まぁそれはいいんだけど、旦那とは、出産が終わった後に初めて一緒に住み始めたわけでしょ……、なんと、向こうのお母さんとセットで!
ただでさえ、他人同士が同居しだすとこれまで見えなかったような問題が噴出して揉めやすくなるってのに……、たぶんだけどこの旦那さん、一人暮らししたり誰かと同棲したりした経験がない、って言うか今まで母親と離れて暮らしたこともないでしょ? そんなの、2対1になって悩める子ヒツジ年女さんが孤立するのが目に見えてるじゃん! これで、せめて他の家族とかもいるなら、かばってくれたり間に入ってくれる人がいたりして、まだ別のパワーバランスもあり得たかもしれないけどさ。これだけ母子の絆ばっかり濃密化しちゃってる状態だと、もともと同棲してるカップルの家に後から入り込むようなもんですよ。
あるいは夫婦としての生活がしっかり軌道に乗ってから、つまりこっちはこっちで別個の家族として完全に安定してから、しかる後に改めて、向こうのお母さんを迎え入れるようなかたちだったなら、ひょっとしたら悩める子ヒツジ年女さんの立場もだいぶ強くなってたかもしれないし、旦那だってもう少しこっちにも気を使ってくれてたはず、なのかもしれないけど……。
いずれにしたって、実際にお姑さんと同居してるとこはどこも、基本やっぱり、結構な苦労してるっぽいですからね。それまでどれだけ上手くやってたとしても。
こばなみ:
うちの父は長男なんですけど、母は両親と一緒に住むなら結婚しないと言ったそうです。時は経ち、おじいちゃんが亡くなり、父方のおばあちゃんだけになったとき、父が「一緒に住むのはどう?」と言ったら、「では離婚します!」って。約束だからって。
おばあちゃんが意地悪とかそういうんじゃないんだけど、やっぱり一緒には住めないと思ったらしい。
私も同居は自信ないなぁ。夫婦2人でだって、他人同士が暮らすのだからいろいろありそうなのに。
宇多丸:
こばなみのお母様には、かなり明確に危機察知能力が働いてたわけだね。
それにしたって、そこまで確信を持って主張を押し通せる意思の強さも相当なもんだとは思うけど……、でもまぁ、他の誰でもない自分の人生を守るためだもんね、当然っちゃ当然のことですよ。
「結婚する前に決めたこと」を盾に取ってるという意味では、一見、悩める子ヒツジ年女さんのケースを裏返しただけのように思えるかもしれないけど、お母様側の提案はつまるところ夫婦間のパワーバランスをフェアに保とうとしてるんだから、実はやっぱり全然違いますよね。
つーことでね、読者の皆さんも、いざ結婚しようかって話になったときに、自分の親との同居を当然の条件として突きつけてくるような相手だったら、ちょっと考え直してみたほうがいいかもしれませんよね。
だったら、こっちの家族も全員連れてくんぞこのヤロー!って話だよ。 「二世帯住宅とかケチなことヌカしてんじゃねぇぞ、それを言うならこっちの家族も入れて三世帯住宅ってのがスジだろうが! お前にそんな甲斐性あんのかいゴルゥァ!」とか言い返したら、そういう人はどう答えてくるのかね?
前の「夫の実家に帰省するのが憂鬱」っ て相談のときも言いましたけど、妻だけが夫側のイエの一員として一方的に我慢させられるなんて、そんなザ・家父長制イズムをいまどきなんの疑問も抱かず押 しつけてくるような男は、本質的にあなたの「他者性」を尊重してくれない、つまり永続的なパートナーとしては大いに問題アリ!な人である可能性が、やっぱりどう考えても高いと思いますよ。
しっかし、一対一の異性としては間違いなくちゃんと「好き」になった人でさえ、家族とか生活力とか、他の社会的ファクターが入ってくると、後からそういう重大な問題がいくらでも浮上し得るわけだから、つくづくパートナー選びとその関係維持って、難しいもんだよねぇ。 だからこそ、「結婚相手に限っては、積極的な好意があるかどうかよりも、その手の周辺条件のほうを優先させて選ぶのが正解」って思い込んでるような女性も多いんだろうけども……、こと「幸せな人生を送る」って目的からすると、それはそれで思いっきり本末転倒な考え方だと思うけどね!
それよりもやっぱり、そりゃ完璧な人間なんていないんだから、当然もろもろの問題点は後から後から絶対に出てくるんだけども、それでも人として根本的な部分で信頼できる、「好き」でいられるような相手かどうか、ってことのほうが、もっとぜーんぜん大事なことでしょ! そのベースがあるからこそ、じゃあまぁ大変は大変だけれども、協力し合って一個一個問題を片付けていこうよ、ってことにもなっていくわけで。 そういう相手はさ、小手先の駆け引きで「釣れる」ようなもんじゃないでしょ?
こばなみ:
たーしーかーにー。
宇多丸:
その意味で言うと悩める子ヒツジ年女さんは、旦那のことを、まさにそういう「問題はあるけど根本的なところで信頼できる人」だとまだ思っていたい、ってことなのかもしれないけど……、相談文から判断する限り、どう考えても彼は、その信頼に値するような言動を取ってきてないし、今後も改善される兆し、ゼロでしょ。
そこに関してはいいかげん目を覚ませ!と言いたい。
改めて言っておけば、早めに弁護士にでも相談して、これまで寄越さなかった養育費含め取れるもんは取れるだけ取って、さっさと次のステージへ向かったほうがいい、というのが僕の意見です。 不安も感じるだろうけど、姑との同居時代や、宙ぶらりんなだけでなんの助けも得られない今の状態より、 もっと悪くなるってことはまずないから、大丈夫! 後はプラスしかないよ!
こばなみ:
35歳、まだまだ人生ほんとにこれから! 恋だってできるし、何だってできるって、この連載でいろんな女子のお悩みを読んで、宇多丸さんと話して、自分なりに考えて、心から思えるようになりました。
私自身も落ち込んだときに、「今より悪いことはないはず~!」って思って、奮い立たせてるところ、あります。
あとね、女子部でイベントに集まる女子たちからも、「あぁ、そんな大変なことがあったのに、今すっごく楽しそうじゃん!!」って、どん底からの仰天逆転エピソードとかよく聞くと、あぁ女ってわりと頑丈にできてるんだなって。
だから大丈夫。 ステキな未来を一緒に切り開いていくよー!!
【今週のお絵描き】
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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2015年6月6日に公開したものを再編集し、掲載しています。