部下が失敗したことをカバーするために動いたらさらに事態が悪化……。悪いこと続きでモチベーションが上がりません。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室417】
✳️今週のお悩み✳️
最近ものすごく疲れています。原因は仕事で大スランプ中だからです。私は営業で部下が3人いるのですが、部下が失敗したことをカバーするために自分が動いたけれど、それがもとでさらに悪い方へいくのようなことが起こり、悪いことが続きモチベーションがダウンしてしまいました。自分の責任もありますが、自分の力がおよばないことでそうなってしまったこともあります。ただ、人のせいにはしたくない(しても解決しない)ので、飲み込んではいるのですが、だんだん自分の心のコップの水もいっぱいいっぱいになってきました。宇多丸さんは仕事でスランプな時期ってありましたか? あった場合、どう乗り越えましたか?
(ruru・43歳・東京都)
宇多丸:
生きてりゃこういうときも、そりゃたまにあるよなぁ。
とくに、よかれと思ってしたことが裏目に出てしまった感じは、かなりツラいよね。
こばなみ:
たとえば、相談されて指示したことが余計に事態を悪くさせたとか?
謝りに行ったら、なんか言い方とか間違えちゃって、余計に怒らせたとか?
そういうこと、ありますよね……。
しかし、心のコップの水もいっぱいになってきたっていうのは、心配ですね。
宇多丸さんは仕事でスランプの時期は……?ということですが。
宇多丸:
まぁ、なかなか思ったようにうまく歌詞が書けねぇなぁ、とかはあるけど、言っちゃえばそれは、常にずっとそうなんで(笑)。
そこを抜け出すには……、まぁやっぱり、ひたすらトライ&エラーを繰り返すしかない、って感じかなぁ? 超つまんない答えになっちゃうけど。
僕の仕事の場合、良くも悪くもまさしく自己責任としか言いようがない局面が多い、というのもあると思いますが。
あとは、とはいえたしかにダメなときはダメ!でもあるので、その日はさっさと見切りをつけて、寝るなり飲んじゃうなり(笑)、要は時間の使い方にメリハリをつけるようにしてる、というのはあるかもしれない。
とにかくそういう、理由も原因もはっきりしないなんとなくの不調を「スランプ」と言うわけで、そもそも今回のケースのように、第三者も絡んできたりして一種不可抗力的に陥ったネガティブな状態のことは、本来あんまりそこにカテゴライズしないのかもしれないですよね。
こばなみ:
今回のは「トラブル」ですかね?
トラブルとツイてないが重なって、スランプにもなってしまった、全体的に悪循環、みたいな。
宇多丸:
ああ、なるほど。その悪循環感もよくわかる。
こないだのアトロクでもまさにそういう話をしたんだけど、一個一個は小さな悪いことがたまたまいくつも続いて、しまいには何やってもダメだぁ、としか思えなくなってくる日というのは、たしかにある。
要は確率上、複数の不運が重なってしまうときもある、というだけのことなんだけど。
ということはすなわち、同じく確率的に、その状態がいつまでも続くこともありえない、という言い方もとりあえずはできるわけだけど……。
ただやっぱ、この時点で未来の可能性の話をされても、あんまり気は晴れないかもしれないてすよね。
思うに今回の件、仮にいずれ完全解決!となるときが来るとしたら、おそらくそれは、「あれもまた無駄ではなかったんだ」的に、過去にさかのぼって意味合いが書き変わるようなところまで行く、ってことしかないんじゃないかって気がするんですよね。
たとえば、お得意さんに迷惑かけちゃったような件だとするならば、その当人が、「いろいろあったけど、おたくと仕事できてやっぱりよかったよ」みたいなことをいつか言ってくれる、みたいなさ。
部下に関しても、いまはまだやらかしてくれたなこの野郎!としか思えなかったとしても(笑)、いずれしっかりと頼もしい成長ぶりを見せてくれたあげく、「あのときはruruさんに本当にご迷惑おかけしてしまったんで、いつか仕事でお返ししなきゃと思ってたんです!」とか言われたりしたらもう、全部チャラじゃない?
こばなみ:
そうやって上書きができたら、救われますね。
宇多丸:
無論、そんなに都合よく事が運ぶなんていう保証も、どこにもないんだけど……。
少なくとも、それでも腐らずに努力を重ねてゆけばそうなる確率は上がるだろうし、逆にいっときの不運続きにかまけて根本のやる気までなくしてしまったら、何をやっても「ホラやっぱダメなんだ……」と、むしろ失敗経験のほうを裏付けていってしまいかねない、というのは間違いない。
だからまぁ端的に言えばもう、ツイてない!としか思えないときはどうしたって来るものとして、それでも「明けない夜はない」とちょっと踏ん張ってでも考えて、できるだけ余計なダメージを増やさないように、腐りきってしまわないようにしつつ、その時期はなんとかやり過ごすしかない、ってことに尽きるだろうけど。
ruruさんも言ってますけど、人のせいにしてもしょうがないけど、だからって自分だけのせいでもないんだしさ。
できることと言えば、二度と同じようなことが起きないように、心がまえにしろシステム的な整備の問題にしろ、改善策を考え抜いて可能な限り実行してゆくくらい……、てか、それをしないとただ損しただけになっちゃうから、できればそこはちょっと頑張ったほうがいいわけだけど。
で、それでもなお「ここはしかし事前には防ぎようがなかったな」ってところが出てくるはずだから。
突き詰めて考えたあげく、これ以上考えてもしょうがない、というような領域が見えてきたとしたら、僕がいつも言ってるように、それ以上は考えるのをやめる!
ただ道を歩いてただけで蛇に噛まれる人もいるくらいで(笑)、因果関係も何もないただの不条理にこの世はあふれてるんですよ!
こばなみ:
もらい事故みたいのが重なることもありますしね。
宇多丸:
もちろん人生には、わかりやすい出口や答えがなくても、考え続けたり悩み続けること自体に意味や本質がある、というような事柄もあるとは思いますが……。
今回のような仕事上のちょっとしたトラブルとかは、まぁたぶん、それほどのもんでもないのは明らかでしょうからね。
それに、さっきも言ったように「こういうことがあったので、今後はこの点により気をつけるようにしましょう」みたく適切な反省と改善をすることで、実際ミスが減りましたとか効率が上がりましたとか、ホントにあることなわけじゃん?
キレイごと言ってるわけじゃなく本当に、失敗からが一番学べるんだよね。
こばなみ:
それは本当にそうだと思う!
宇多丸:
失敗とか落ち込んだ状態からしか学べないことがあるんだとしたら、これはこれで無駄じゃないっていうのも、ただの気休めとかじゃなくて、ホントに事実なんだってことですよね。
さっき言ったようにそれが当事者の口から改めてしっかり確認できるようなときが来ればもちろんさらに最高だけど、仮にそうならなかったとしても、それ以前にまずは、自分で自分に納得できるようにアップデートをおこたらない、という姿勢が大事なのかもしれない。
あとはもう、風呂でも入ってよく寝るだけだよ!
僕の場合、季節問わず疲れてるときほど寝汗がひどいんだけど、そのぶんデトックスされたんだ、とか考えるようにしてますよ。
要は、寝てる間に心身が自動的に整えてくれている、みたいな。
もちろん、信頼できる誰かにグチでもなんでも聞いてもらって適度にガス抜きするのだって、立派なセラピーでしょうしね。
それと、これもメリハリ切り替え行動のうちでしょうけど、旅行もいいんじゃない?
こばなみ:
物理的な移動はいいって聞きますよね。
宇多丸:
で、最後はまぁやっぱり……、スカイダイビングですよね!
こばなみ:
出たーーーーー!
またここに来て、スカイダイビング!(※第280回、第262回、第178回を参照ください)
宇多丸:
悩んでたことがどうでもよくなるくらい、怖い!っていう(笑)。
いやいやいや、会社の失敗とかどうでもいいんだけど!?みたいな。
転じて、生きててよかったーっ!的な、大きく言って生の全肯定に向かう、という狙いですね。
「私、スランプになったらいつも、スカイダイビングに行くんだよね」「空飛ぶと、地上の嫌なことなんかぜんぶ、忘れちゃうんだよねぇ」……かっこよくない?(笑)
ま、僕は高いとこ怖いんで無理ですが!(キッパリ)
でもホント、ruruさんのこれ、僕もマジで他人事じゃないところあるかもしれないなと思いましたよ、改めて考えてみると。
いくら自分は日々それなりに努力してちゃんとしてるつもりでも、関係する第三者が起こすいろんなトラブルみたいなものは避けようもなく次々と襲いかかってくるし、そのたびに、なんで僕がこんなことで悩まなきゃならないのよ?みたいに思ったりすることもあるけどさ。
でも、社会の中で人と関わり合って生きてる以上、それはもうしょうがないことなんだよね、本当に。
逆にこちらが誰かに迷惑かけるような局面だって、絶対にあるわけだしね……。
こばなみ:
私も大なり小なり、そういうことがありますけど、その都度いまより悪いことはないと思いながらやっていますが。
まぁ、また同じようなことがあったりしますけどね。
宇多丸:
で、そのたびに「ぐぬぬ……」とはなるんでしょうけどね。
それでも、最低限やるべきことやったらあとはもう、「これ以上は知らんがな!」「ま、なるようになるでしょ」精神でモードをちゃっかり切り替えて、切り抜けてゆきましょうよ、って感じですかね。
こばなみ:
事態がなんとかなり、ruruさんのモチベーションが少しずつ上がってくることを本当に祈っています! じつは私も8月くらいまでけっこう落ちてて、最近やっと少し浮上してきました。でも、明けない夜はないなと改めて感じております。美味しいものでも食べつつ、ともにがんばっていきましょう!!