下の世代には、ハイパー女子でないと管理職になれないと思われている。こんなとき、どうする? 《ライフステージ編-7》
リーダーとして働く女性たちが
実際に体験した、
コミュニケーションや人間関係の課題と
それに対するアクションの
ケーススタディ。
同じような課題を抱える人のヒントになれば、
という思いで届けていきます。
産後に職場復帰してから、仕事の楽しさに目覚めたキョウコさん。乳幼児を抱えながらビジネススクールにも通い、大手企業ながらごくわずかな女性管理職の座へ昇進。でも、下の世代からは「キョウコさんのようにはできないから、管理職はムリ」と思われている気配が……。今この状況で女性管理職が増えるとは思えないけれど、数年後には状況が変わっているはず、と希望を持っています。
産後に復帰するのは、“生き残った女性”だけだった
本社の営業統括部に所属しているんですが、私と同じ階層に女性は私1人。大企業ですが、営業の女性マネージャー職はトータルで3人、事業部全体でも5人しかいません。会社自体の男女比はそんなに差がなくて、若干男性が多い程度なのですが……。
数年前、私が育休から戻ってきた頃は、復帰する女性がそもそも少数派。仕事に対してポジティブで、チャレンジ意欲があるタイプばかりが生き残ったような感じでした。
でも今はむしろ、産後に復帰するのはマジョリティー。サバイブしなくても席があるのが当たり前になってきています。社内の女性の年齢層も幅広くなり、キャリアに対する考えもさまざまになっているのですが、依然として上の層にいるのは、私のようなバリバリ働きたいタイプだけ。
だから多くの下の世代から、「そこまで頑張れないな」と思われてしまっているようなんです。
産前産後で、仕事への向き合い方に生まれた変化
そういう私だって、実は現場にいたころはダメダメ営業だったんですよ。自分の仕事でいっぱいいっぱいで自信もないし、時間の使い方も上手ではありませんでした。
一生懸命っていう軸だけは今も変わらないんですけど、一生懸命の方向がちょっとズレていたんですよね。優先順位をつけずに、やみくもに純粋に、目の前のお客さんのためだけに時間と労力を割いていて。それはそれで数を打っているから、当たることもありました。
産前はたっぷり時間があるからそのやり方を続けてこられたんですが、産後になると時間が限られてしまいますよね。勤務時間が3時間くらい減り、みんなよりも働けないのに、目標金額は同じ。無茶だ!と思っていたんですけど、裏を返せば、達成さえすれば稼働時間はどれだけ短縮してもいいんだと気がついたんです。
優先順位をつけて、誰を押さえるべきか、どういうプロセスがいいか。なまじ場数は踏んでいたので、そこを掛け合わせたら、答えが出てきて。
“一生懸命営業”のスタンスは変えずに、攻め方を変えていったら、時短でも目標を達成できるようになりました。
すると、仕事そのものがすごく楽しく思えてきて。
子どもと過ごす時間も楽しいし幸せだけど、大人同士で「どうしたらもっとうまくできるか?」と議論したり、お客さんに面と向かって「ありがとう」と言われたり、そういうことが純粋に楽しくなってきたんです。
営業だから成績にもなるし、お給料というリターンも入るし、いいこといっぱい! 大変だけど楽しい!って。
そんな経験があったからこそ今の私があるわけなんですが、下の世代はそれを知る由もないので、なんだか“ハイパーな人”扱いされちゃっていて。
仕事、育児に加えてビジネススクールにも通っていたということも相まって、ますます「真似できない」と思われてしまっているようなんです。
女性の働き方も、リーダーシップの取り方も、多様であれ
私は、私のようながんばり方をしないと上には上がれないんだぞ、とはまったく思っていません。生活のために仕事を続けたいという人もいれば、キャリアアップの機会を狙ってがんばる人もいるし、プライベート最優先の人もいる。女性の活躍の仕方もそれぞれだと思うから、私は一つのサンプルとして、役に立てればいいなと思っています。
リーダーの仕事に対するイメージも、変えていきたい。今までの男性に多かったリーダーシップとは違う、いろいろなリーダーシップの取り方を社内に見せていけたらいいですね。
個人的には、メンバーの見えていない部分まで可能性を探って、統合し、チームの底力を上げるような取り組みは、女性の方が得意なんじゃないかと思っているんです。女性もいろいろなので一概には言えませんけれど。
自分のペースで長く働いている女性というのもあまりいないので、そういうタイプの方も出てきてくれるといいですね。あと5年くらいでしょうか。もっとロールモデルのバラエティが増えて、女性の働き方に多様性が生まれていることに期待しています。
イラストレーション:高橋由季