7割が50代男性社員というチームのマネージャーに。こんなとき、どうする? 《チームマネジメント編-11》
リーダーとして働く女性たちが
実際に体験した、
コミュニケーションや人間関係の課題と
それに対するアクションの
ケーススタディ。
同じような課題を抱える人のヒントになれば、
という思いで届けていきます。
部下の7割が50代の男性社員。自分より10歳以上年上の男性社員たちのマネジメントに奮闘するカヨさんは、どのような工夫をしてきたのでしょうか。年齢を重ねた社員に対してどうアプローチすればいいのか? 人間関係で問題が起こったときの対処法は? カヨさんの経験談を紹介します。
50代の男性社員も「褒めてほしい」と思っている
ある日の会議中、とある50代の男性社員がはっきりと言いました。「もっと褒めてほしい」と。その瞬間、一瞬耳を疑いました。私自身、50代ともなると「できて当然だろう」と思い、褒めることをしていなかったからです。
でも、それは私の勝手な思い込みでした。しかも、年齢を重ねると褒められる機会が減るもの。余計にそう思っていたのかもしれません。基本に立ち返れば「褒めること」や「承認すること」は、部下に対して「あなたにちゃんと興味を持っています」と示すこと。信頼関係を築く上では大切な要素だと再認識しました。
部下にとって、上司が「自分を理解し、頼れる存在である」と感じてもらえなければ、認めてもらえません。私の場合、部下の7割が自分より10歳以上年上の男性社員です。過去に50代の部下をマネジメントした経験があったものの、まだまだ学ぶべき点がたくさんありました。
誰が正しいかではなく、何が正しいか。物事を俯瞰するように
そんな私が着任当初、最初に行ったのは彼らの「見極め」です。
具体的には「この人は相談に乗ってくれそう」「この人は厳しく管理した方が良さそう」という人物像や、「AさんはBさんの言うことなら素直に聞く」といった力関係などを把握。そして、まずは味方になってくれそうな人を引き込むことから始めました。
そのために、着任早々実施したのは1対1の面談。性格診断を活用してパーソナリティを理解したり、将来の希望を確認したりしました。時にはその希望を叶えるために私にできることを提案しながら、「役に立つ人間だ」ということをアピール。これも私なりのマネジメント術のひとつです。面談は今でも月に1回、1時間程度、全メンバーと行っています。
ただ、どんなに信頼関係を築こうとしても、問題は必ず出てきます。マネジメントの悩みの中心にあるのは、常に人間関係です。私自身、感情的になってしまうことがあり、「この人の言っていることを受け入れられない」とイライラしたり、「どうしようもない」と呆れたり、その人に引きずられることもよくあります。そんなとき、必ず思い出すのが、過去に上司からもらったアドバイスです。
「誰が正しいのかではなく、何が正しいのかを一歩引いて見ろ」
その人が気に障るとか、なぜこんなことを言うんだろう?と考えるのではなく、発言の内容が正しいかどうかを冷静に判断すること。部下とのやり取りで感情的になりそうなときは、一度立ち止まって、全体を見渡すようにしています。もちろん簡単ではありませんが、感情が高ぶったときは、トレーニングをしたり、趣味の写経や英会話レッスンを通じて、強制的に気持ちをリセットしています。
私が目指すのはカリスマ型ではなく、伴走型リーダー
ちなみに、私はもともと「論理的な思考の持ち主」だと思われがちですが、実は真逆です。現場で年上の部下を動かすためには「なぜそれをやる必要があるのか」を論理的に説明しなければ納得してもらえないことが多く、意識的に身につけたものです。しかも現場で学ぶのでは追いつかず、ビジネススクールに2年間通い徹底的に学びました。
その裏返しなのか「根拠を説明しなくとも人が動く」、そんなカリスマ性を持つリーダーには憧れます。前任のマネージャーはそんなタイプで、みんなを引っ張っていく人でした。
ただ、私は部下たちと一緒に走りながら、彼らが自ら成長する姿を見守りサポートする方が得意です。振り返ると、自分が目指すべきは「カリスマ型リーダー」というより、「伴走型リーダー」だと考えるようになりました。
50代のベテラン社員が「なるほど」と気づきを得たり、ネガティブだった若手社員が前向きに変わっていく姿を見るとリーダーとしてのやりがいを感じます。憧れと自分に合ったリーダー像は別。まだまだ学ぶことは多いですが、自分なりのやり方で部下たちをサポートし続けたいと考えています。
イラストレーション:高橋由季