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モテすぎて困っています。メールが死ぬほど来たり、肩をいきなり掴まれたり、怖くて大学に行けません。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室166】


✳️今週のお悩み✳️
現実で誰に言ってもわかってもらえないのでここで相談させてください。端的に言えばモテすぎて困るという相談です。小学生(共学)の頃から、今思えば結構モテていたのですが、その頃はみんなと仲が良かったのでなんとも思っていませんでした。中学(女子校)に入ってしばらくすると、小学生のときに仲の良かったいろいろな人から連絡が来ました。小学生の頃は携帯を持っていなかったので、誰にも連絡先は教えていなかったのですが、小学校からエスカレーター式で男子校と女子校に分かれるので、他の女の子に聞いたのだと思います。連絡が来たときは久しぶりだな~また鬼ごっことかしたいな~ぐらいに思ってたのに、みんな途中から、なんか変というか、写真送ってとか、2人で会おうとか、そういう話になり、気持ち悪くて端から順に受信拒否にしました。高校生(女子校)になり、今までの経験から背筋を伸ばして隙を見せないように歩いたり、声をかけられても愛想笑いをしないように気をつけました。これでかなり男子校から文化祭などで会いに来る人(もはや小学校の友達ではなく噂で来る知らない人)から声をかけられることを防げました。本当に友達だと思っていた(2年近く)唯一の男友達から告白されましたが、とても仲良くしていたので私が親しくしすぎたのかなと思い反省して次から気をつけようと思いました。そして現在、理系の大学の1年生です。今までの経験からこれだけいろいろ気をつけていて、だいたいまともな人からは声をかけられなくなったのですが、理系だからか本当に空気が読めず、人との距離感のわからない童貞どもが山ほどいて困っています。実験の班(先生がランダムに決める)でデータ共有のために連絡先を教えたらとにかくメールが返信しなくても死ぬほど来る。授業終わりにいきなり自己紹介をされ「夕飯食べに行きませんか?」。帰り道に後ろから肩を掴まれ「同じ授業とってるんですけど僕のこと覚えてますか?」など。怖くて気持ち悪いです。私は本当に物理が好きで大学に入り、授業にも出たいのに、大学に行くのが怖くて喫茶店で帰るまでの時間を潰してたりして親にも申し訳ないです。理系のみの学校なので、そもそも女子は少ないですし、女子の群れなきゃいけない感じが苦手で話しかけても結局仲良くなりきれなかったりして、女の子と一緒にはいれないですし、面倒くさいのでいたくもないです。もうどうしたらいいかわかりません。長くてすみません。助けてください。
(佐藤・20歳・東京都)


宇多丸:
ずいぶん前の、「美人と言われることもあり、人に妬まれることに異常に怯えています」っていう相談にも通じるところがある悩みですけど。

この方なんか、噂を嗅ぎつけて、佐藤さんのことを直接知らない連中まで群がってきてたわけだから、純粋にもう、ルックスがムチャクチャいいってことなんでしょうね。
どういう感じの美しさ可愛さなのかわからないので、ここではとりあえず「広瀬すずレベル」ってことにしておきますが(笑)。

で、そう考えてみると、本人は真剣に悩んでるところホント申し訳ないけど、ただでさえ奥手な男子だらけのところに、そんな広瀬すず級の女子がいきなり登場したりしたら、そりゃみんなひとしきりザワッ!としちゃうだろうなとは思いますよ。マンガやドラマのなかだけの話じゃなかったんだ!?って。

こばなみ:
こんな方、私も今まで出会ったことないですよ!

ちなみに宇多丸さん、女子が少ない環境だからモテるってのは間違いですよ。私、理系の学科で50人中女子が5人しかいなかったんですけど、全然モテませんでした~! その定説はないと実証してやりましたよ(笑)。

宇多丸:
ううっ、厳しい現実を……。

まぁ、こばなみの場合は、例の「あひゃひゃひゃ~」キャラだってのが大きいんじゃないですか?

こばなみ:
あひゃひゃ~が出せるほど、クラスメイトと接触がなかったんですけど、でも、勉強できない/しない、バカっぽさを出すと理系では特にモテないと思いますよ。

他の女子はちゃんと勉強していて、容姿に関係なくなんだかんだチヤホヤされていましたし。

でも佐藤さん、物理が好きで大学を選んでるわけだし、そのためにおバカキャラになるのもねぇ……。

宇多丸:
そうだよねぇ。

佐藤さんの場合、元々の容姿に加え、それで調子に乗って浮ついたりもしていない、むしろ人を遠ざけているような感じが、はたからはちょっとミステリアスにも見えちゃったりして、余計にまたモテ要素がプラスされちゃってるところはあるかもしれないけど。
じゃあどうすればいいんだよ!って話だよな。

佐藤さん自身、ご自分のそういう、異性を強力に惹きつける力、我々から見れば一種の超能力を、重々自覚した上で慎重に扱ってもいるのに……。
第一、そもそも佐藤さん、恋愛に対する欲求や願望自体、たいしてなさそうだもんね。それだけの能力を持ってても、有効な使い道がない。

こばなみ:
むしろ、超能力なんていらないと思ってるんでしょうね。
モテて羨ましいと思っちゃうけど、佐藤さんにしてみたら、怖くて授業に出られないくらいだから、深刻……。

宇多丸:
ですね。
じゃあさしあたって、その現状に対する対処法を考えてみようかね。

なんか、広瀬すずを思い浮かべてるのがいけないのか、どうしても発想がラブコメみたいになっちゃうんだけど(笑)、たとえば、実際には付き合ってなくていいから、佐藤さん級のスーパー美男子を、なんかのタイミングで、彼氏として連れてくる! そんで、周りの冴えない男子たちに、「そりゃそうだよな、オレたちみたいなブサイクが佐藤さんと付き合えるわけないじゃん……、どんだけ思い上がっていたんだ!」と、身のほどを思い知らせてやる、っていうのはどう?(笑) 
要は、強力な「盾」を立てて防衛するって考え方ですね。

ただ、そのダミー彼氏が、やっぱり佐藤さんに本気で惚れだしちゃって、結局めんどくささが増しちゃうだけ、的な可能性も考えられるけど……。

でもまぁ、とにかく「お似合いの彼氏、いるし」っていうのは、手っ取り早くザコを追っ払うには、ひとつの有効な手ではあるんじゃないですか? 
校門の前に、オープンカーで颯爽と乗りつけてもらってさ!

こばなみ:
イメージふるっ!

宇多丸:
ちなみにさ、「帰り道に肩を掴まれ~」はもちろん怖いけど、「授業終わりに自己紹介をされ~」は、よく考えたら別に、そこまでおかしなアプローチでもないよね。一応、普通っちゃ普通の距離の詰め方ではあるんじゃないかな。無論、その上でお断りするのもこっちの勝手なんだけど。
ま、それ以前に、佐藤さんにとっては、距離を詰めようとしてくること自体がキモいんだろうけども……。

こばなみ:
ツンとしたり愛想のない態度を取ってたら、ほとぼり冷める感じもするけども……。

宇多丸:
ただ、佐藤さんもおっしゃってるけど、そこで相手の態度から何事かを察して一歩引けるような人は、そもそもまともなんだからあんまり問題ないんですよ。
でも、いくらコミュニケーションのハードルを上げても、そこを平然と飛び越えてきちゃう無神経なヤツっていうのは、どうしてもいるわけじゃん。逆にツワモノだけが残っちゃうってところもあるかもしれない。
前に話した「片想いが多い人」と同じで、基本手前勝手な考え方をしがちなタイプっていう。

そういう人は、なんでも自分に都合よく解釈しちゃったりするからさ。
ツンとしてみせるくらいじゃ、下手すりゃ、「オレのこと、意識しちゃって……」くらいに取りかねない!

だから、誰かから迷惑な接近のされ方したら、やっぱりその都度その都度、よっぽどはっきり意思表示をしてかないと、っていうのは間違いないんじゃないかな。

そう考えると、自分で言っといて申し訳ないけど、ダミー男をチラつかせるなんて小細工に走る前に(笑)、まずは、佐藤さんがどう考えているのかをきっちり相手に理解させて、それを尊重してもらうっていう、要は「正攻法のコミュニケーションを試みる」ほうが先なんじゃないかって気がしてきました。このケースの場合は特に。

っていうのはさ、もちろん佐藤さん側に非があるわけじゃまったくないけど、これまでみたいに、なんかあるたびに人間関係をシャットアウトしてくだけだと、どんどん佐藤さんの居場所が狭まって、なくなっていくいっぽうになっちゃうんじゃないかって気がするんですよ。

それも悔しいし、バカバカしくないですか? 連中が勝手に惚れてきてるだけなのに、なんでこっちだけが際限なく引いてかなきゃなんないの!

おそらく佐藤さんは、これからも、どれだけ気をつけていても、思わぬ人から思わぬタイミングで好意を示されちゃって困惑、みたいなことは、また必ずあると思うんです。少なくともその覚悟はしといたほうがいい。
それは、佐藤さんにとってはほとんど呪いのようなものかもしれないけど、ともあれ持って生まれたパワーであることは間違いないんだから、……そりゃホントは、恵みの力としてコントロールして使いこなすのが一番だろうけど、今さらそこまでポジティブにとらえ直すのは難しくとも、せめて、だましだまし共存してくようにはしてかないとさ。
いずれ働きだしたりして、もっといろんなテンションの男の人とも出会ってゆかなきゃならなくなったら、いよいよ今みたく避けてるだけじゃ済まなくなるわけじゃん?

たとえば、さっきもちょろっと言ったけど、佐藤さんが異性を遠ざければ遠ざけるほど、彼ら側の美女幻想を余計に強化してしまっている面というのも、少なからずあるかもしれないわけですよ。
彼らだって大学に入りたて、異性とどう接していいかまだよくわかってないというのも、中高一貫男子校出身者として、そりゃ無理からぬ話だろうとも思うし(笑)。

ただ、その意味ではさ、佐藤さんだって、ここまでほぼ女子校育ちで来てるわけで、異性というものに対して、「よくわかってない対象だから、“普通”に接することができない」という点では、実は奥手男子たちと軽く相似形なところもあったりするんじゃないか。

それこそ、高校のときのその男友達だって、その後どういう関係性になったのかは書いてないけど、たぶん「告ってきたから即アウト」にカテゴライズしちゃったわけでしょ? 
でもさ、そうやって極端な結論を出す前に、「悪いけどあなたのことはそういうふうには見られない、でも、私はできれば今まで通りいい友達でいたい」とかちゃんと答えて、まさに「正攻法のコミュニケーションを試み」れば、その彼が真に友人に値する人間なら、必ずそれには誠実に応えてくれたはずなんじゃないか……とも僕は思うんですよね。

前もなんかのタイミングで言ったかもだけど、友人として付き合っている相手に、つい異性としても魅力を感じてしまうって、全然ちょいちょいありうる、まさに「普通」のことでしょ。
それより問題は、そこでどう行動するか、しないのかとか、たとえそれが表面化してしまったとしても、それに対してお互いどう対応するのかっていう、そういう部分じゃんよ。そこでこそ、真の人間性が問われるわけじゃん。

だから、もちろん誰とも仲良くしろなんてことを言ってるんじゃないけど、少なくとも今いるべき場所、物理の教室とかではさ、迷惑な行為に対してははっきり拒絶する、抗議するということ含めて、クラスメイトと「正攻法のコミュニケーションを試みる」ということを、はなからあきらめないほうがいいんじゃないかなぁ。

そうやって、佐藤さんの、文字通り「ひとりの人間としての」パーソナリティが周りにもちゃんと理解されてゆけば、勝手な思い込みが薄れてくぶん、少なくともそのなかでは一方的にグイグイ迫ってくるような人は減ってくる、かもしれない……、上手く行けば。

引き続き広瀬すず連想で行けば(笑)、『ちはやふる』の主人公・千早とかさ、とんでもない美少女っていう設定ではあるけど、彼女のかるたバカっぷりをよく知っている同じ部の男子たちからしてみると、まったくモテ感ゼロだったりするわけですよ。
そんなふうに、実際に知り合ってみると、遠くから眺めてるだけだと抱きがちな、言ってみれば「魔法」が解ける、というようなことって、現実でもよくあることだと思うんですよね。

まぁ逆に、そしたらそしたで、人柄まで全部ひっくるめて、改めて本気で好きになっちゃう人が出てくるかもしれないけど……、そんなときこそ、アプローチが失礼だったり怖かったりしない限りは、断るにせよなんにせよ、一律でむげに扱うんじゃなくて、こちらも相手を尊重しながら応対すべきなわけじゃない?

いずれにしても、佐藤さんに惚れてくる童貞どものなかにも、お互い人間として向き合えば、いい友達になれる可能性があるヤツ、全然いるかもしれないじゃんってことですよ。
たとえ、内心では佐藤さんに対する恋心を密かに抱き続けていたとしても……、そいつがホントにいいヤツなら、そこと友情は、余裕で両立するはずだと思いますけどね、僕は。

こばなみ:
にしても、いろんな悩みがありますね……、美人っていいな、モテていいなって最初に相談文を読んだときは思ってしまったけど、手放しに喜べないこともあるんだな。勉強になりました。

宇多丸:
佐藤さんはホント、ほとんどタレントレベルのモテ方してると思うからさ。そりゃ日常生活にも支障きたすよなって。
それこそアイドルとかが、寄ってくるファンを、傷つけず調子にも乗らせず、絶妙にあしらうような術を身につけられればいいのかな?
 「好きです!」「ありがとね~!」「デートしてください!」「夢でね~!」みたいな(笑)。心底どうでもいいと思ってるのが見え見えっていう(笑)。

でも、マジな話、今後も誰かから不意の好意を寄せられるたびに、いちいち佐藤さん側が身を引いてたら、キリがなくなっちゃいますよ。佐藤さんが嫌だっていうなら、速攻でしりぞくべきはあくまで向こうであって。
だから、「ハイまた出た、シッシッ」くらいの、比較的軽いテンションでことに当たれるようになれれば、だーいぶ気が楽になるのは間違いないだろうけども。

とにかくはっきりしてるのは、ブサイクな人はブサイクな自分と、あひゃひゃな人はあひゃひゃな自分と、それぞれうまく折り合いをつけて人生を歩んでゆかねばならないのと同じように、美人は美人として生きていくしかない、ってことだからさ。
前から言ってるように、誰だって結局、さしあたって持ってる手札で勝負してくしかないんだから。

蛇足ながら付け加えておけば、佐藤さんが持ってるそれは、使いようによってはあらゆる場面で役立ちうる、持ってない人にしてみれば喉から手が出るほど欲しい、ある種のオールマイティカードなんだけどね、ホントは……、でもまぁ、んなこたぁ百も承知の上での悩みだもんな。やっぱ蛇足でした、すみません!

どっちにしたって、こっちになんの落ち度もないのにババ引かされる、なんてのも、人間全員が毎日味わってることだろうしさ。でも、そのクソみたいな現実にいちいち凹んで、自分の運命を呪ってるいっぽうじゃ、生きてけなくなっちゃうし。
どこかでそれらと折り合いをつけて、自分なりの立つ場所というのを切り拓いていかなきゃならないんだと思いますよ、誰だって。

佐藤さんも、言ってみればもともとフォースの強い体質、みたいなことだと思うからさ。
そのせいで、いろいろ大変な目にも遭うかもしれないけど、そこでアナキンみたいに、力を持てあましてむざむざダークサイドに堕ちてしまうよりは、やっぱルークやレイのように、己の真の姿と向き合って、できるだけポジティブな方向に転化していってほしいものですよね……。

こばなみ:
最後になんで急に『スター・ウォーズ』たとえ!?(笑)

ちなみに理系男子って、距離感つかめなかったり、変わった人が多いかもしれないけど、逆に言えばすごくピュアだしまじめな人も多いので、ちゃんと話したらわかってくれたり、面白さを発見できたりする気がします。物理の話でめちゃくちゃ気が合う人がいる可能性も大いにあると思う。

佐藤さんが、一歩ずつでもコミュニケーションをとって、早く好きな物理を心ゆくまで勉強できる環境になれることを応援しています!


【今週のお絵描き】


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この記事は、女子部JAPAN公式WEBで2016年10月29日に公開したものを再編集し、掲載しています。


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(毎週月曜日から金曜日18:00-21:00の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。
※ワンマンライブの新シリーズ
「ライムスターインザハウス」や
その他のライブ情報は
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※シングル「世界、西原商会の世界! Part 2 逆featuring CRAZY KEN BAND」が配信中! Victorサイト限定CD盤もリリース!
詳しくは
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女子部JAPAN(・v・)こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。現在はコミュニティ&メディア「女子部JAPAN(・v・)」として、スマホに限らず、知りたいけど難しくて挑戦できないコトやモノをみんなで一緒に体感する企画を実施。最近はフェムテックなど、女性ならではのコンテンツを発信中。




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