「前の上司はこうだった」、着任早々50代の男性部下と衝突。こんなとき、どうする? 《チームマネジメント編-12》
リーダーとして働く女性たちが
実際に体験した、
コミュニケーションや人間関係の課題と
それに対するアクションの
ケーススタディ。
同じような課題を抱える人のヒントになれば、
という思いで届けていきます。
マネージャーになって2年目のカヨさん。そこで直面したのは、50代男性社員Aさんとの軋轢です。Aさんはマネージャー候補だったということもあり、10歳以上年下のカヨさんに敵意剥き出し。指示を無視したり、あからさまに避けたり……カヨさんはどう対応したのでしょうか。
マネージャー候補50代の男性社員を差し置いて就任
マネージャー候補として期待されていた50代男性社員のAさん。前のマネージャーにも推薦されていたらしく、当人はその気満々でした。ところが、そこに突然現れたのが、他部署からやってきた私です。
10歳以上も年下の女性上司。最初から気に入らないことばかりだったはずです。
幸い、こんなやりにくい状況でも私には耐性がありました。過去に50代前後の男性部下をマネジメントした経験があったからです。そして迎合せず、自分の芯を曲げないという決意もありました。
「この環境が自分にとって成長できない場所なら、辞めればいい」。その覚悟を胸に怯まずAさんと対峙していましたが……、それでも大きな衝突が起きるのは時間の問題でした。
上司である私の指示を無視して勝手に動いていた
火種となったのは、Aさんが上司である私の指示を無視して勝手に仕事を進めていたこと。女性だから、年下だからとなめられていたのかもしれません。
そもそも彼は前のマネージャーから権限の一部を与えられていたこともあり、「これまでのやり方でやらせてもらうよ」という態度でした。そして、どちらかというと「前はこれでうまくいったから」と突っ走るタイプ。営業成績が落ち込んだときに、ある案件で私の「待った」の指示を無視して勝手に動いていたことが発覚して大問題となったのです。
「いくら前の上司から権限委譲されているからといって、何の相談もなしに勝手に行動することはやめて欲しいです」
そう彼にはっきりと伝えました。そして、今後は報告や相談をちゃんとして欲しいという話も。しかし、それに対するAさんの言い分は「前のマネージャーなら、やりたいようにやらせてくれた」というもの。さらにはマネージャーとしての経験の浅さを指摘され、いっこうに話を受け入れてくれる気配がありません。
困り果てた私は、上位職の人に相談して客観的な判断をしてもらうことに。結果的に、再度私の方針に従ってもらう形で話がまとまりましたが、感情的な対立は残ったまま。Aさんは私を避けるようになりました。
彼の態度に思うところはありますが、部下がついてこないのであれば、それはマネジメントにおいてのマイナス点。私はそこから彼との関係を修復しようとしました。
冷静に話し合ったものの、飲み会で本音炸裂! それが解決の糸口に
まずAさんに「不満に思っていることを全部話して欲しい」と伝え、話し合いの場を設けました。
お互いどう思っていて、どこが足りなかったのか。そのひとつひとつを言葉にして、同じことを繰り返さないために、お互いに努力していこうというところまで話を詰めました。
「じゃあ、この件はこれで終わりにしましょう」、そう言って事態は収束されたかのように見えたのですが、ここで終わりではありませんでした。数日後、Aさんが飲みの席で話を蒸し返してきたのです。
酔いが回っていたせいもあり、「前のマネージャーはそうじゃなかった」と同じ話を延々と……。最初は冷静に対応していた私もいつまで経っても同じ話が繰り返されるので、ついに怒りが沸点に到達し、「もういい加減、前のマネージャーの話を持ち出すのはやめてもらえますか!」と応戦。そっちが感情的なら、こっちも感情的に対応してやれと、そこからお互い言いたいことを感情に任せて言い合いました。
こういうことが起こるから、飲み会は嫌いだと心底思います。でも皮肉なことに、これでもかと言い合ったことで本当の意味でわだかまりが消えたのでしょうか。最後には「もうこれで本当に終わりにしましょう」と、やっと関係修復の握手が交わされたのです。お互いスッキリしていたことは言うまでもありません。
上司という立場上、感情的になってはいけないとばかり思っていました。もちろん、それはそれで正しいのですが、今回のように感情でぶつかる方が良いケースもあるんだなと学びました。ビジネスといえども人間同士。論理より感情で動くこともあるということですね。
イラストレーション:高橋由季