前任のようにうまくこなせず、焦る気持ちが募るばかり。こんなとき、どうする? 《リーダーの在り方編-8》
リーダーとして仕事をしていれば、必ずぶつかる
コミュニケーションや人間関係の問題。
相対する人も違えば、状況もさまざまで、
「こうすれば正解」がないのが
難しいところです。
そこで、
リーダーとして働く女性が実際に体験した
コミュニケーションの課題と
それに対するアクションを
ケーススタディとして紹介。
同じような課題を抱える人のヒントになれば、
という思いで届けていきます。
上司が優秀で尊敬できる人だった。とても恵まれていることですが、逆にその後任となったミナトさんはプレッシャーが大き過ぎて、自分を追い込むことに。張本人である元上司に直接相談し、突破口を見つけたミナトさん。どう解決したのでしょうか。
できる上司の存在が大き過ぎて、無意識に自分を追い詰めてしまった
ビジネスマンとして尊敬できる人は?と聞かれたら、4年間一緒に働いた元上司の顔が思い浮かびます。発想力の豊かさや判断の速さなど、いわゆる“デキる上司”。当時からとても頼りにしていました。
年齢も年次も上ですが、歳はたった3歳差。出会った当初は「こんなに優秀な人がいるのか!」と、焦りを感じました。焦りといってもライバル心ではなく、同じステージにいきたいけれど遠過ぎるという気持ちです。
彼の仕事ぶりを見て心に火が付き、追いつこうと必死に勉強しました。こんな気持ちになったのは入社して初めてのこと。今やその方の後釜としてリーダーに就任したわけですが、まるで大谷翔平選手の後にバッターボックスに立っているような気分。プレッシャーしかありません。
……そして、そんな憧れの元上司の存在が大き過ぎたのか、知らず知らずのうちに自分を追い詰めてしまったんです。
張本人に直接相談。「1人」ではなく「2人」の部下に仕事を任せることに
限界はすぐに訪れました。一番の元凶は部下に仕事をふれなかったこと。自分でやった方が早いと仕事を抱えがちになっていました。頭では部下に仕事を任せないと回らないことはわかっていたんです。でも、それができない。どんどん業務量が増えていきました。
それでも、頭の中では「●●さん(元上司)なら、うまくこなしたはず」「このままだと、リーダーを任せたのが間違いだったと思われてしまう」と、自分を責めてばかり。結局、悩んだ末に「もう、どうしたらいいかわからないです。助けてください」と、張本人に相談することにしました。
思いの丈を伝えると、元上司の口から出てきたのは「俺だって、100%完璧にやってたわけじゃない」という言葉。「完璧に見えていたのかもしれないけれど、最初から何でもうまくこなしていたわけではない」という話をされ、張り詰めていた気持ちが一気に緩んだのを覚えています。心に余裕もできました。
そして、いただいた「もっと部下に頼った方がいい」というアドバイス。変に追い込まず、自分のペースでがんばろうと思えたことで、やっと部下へ仕事を任せることに取り組み始めました。しかも「1人ではなく2人の部下に任せる」という、自分なりの方法を考案。今のところ、うまくいっています。
業務量を分散させることで、一人あたりの負担を軽減、そしてチーム内で私以外の2人がその業務を把握しておく状態を作り、誰かが欠けても業務がスムーズに回るようにしました。さらに最近では、自動化できるところはAIにやってもらうことも模索中です。
リーダーになったばかりの頃は、この元上司の方と同じようにマネジメントしないといけないと強く思っていました。でも、今は私には私のやり方があるという考えです。
もちろん、元上司の存在が大きいことは変わりません。そのうえで、彼から学んだことは今の部下たちに継承しつつも、自分なりのリーダー像と仕事のやり方を模索しています。
イラストレーション:高橋由季