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好きなお店の味や態度がイマイチで……。好きだからこそ直してほしいけど、クレーマーとは思われたくない……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室464】


✳️今週のお悩み✳️
細かい相談ですみません。私は大手チェーン回転寿司が好きで、よく行くのですが、塩が振ってあるイカのにぎりが、だいぶしょっぱい! 味噌汁もかなりしょっぱい! いくらなんでもしょっぱすぎました。ほかにも、たまに行くマッサージ屋さんがあるのですが、この前いつものようにリラックスしていたら、店員さん同士の話し声がぺちゃくちゃと聞こえてきまして、うるっさいなぁと。そんなこと今までなかったのに心ゆくまでリラックスできませんでした。
ともに好きな店なので、クレーマーと思われたくないのですが、でも良くないところは直して欲しい。この場合、意見を言ったほうがいいと思いますか? 大手チェーンには言っても、どうせ「すみません」などのおきまりのやりとりしかないんだろうなとも思いますし、マッサージ店はそれを言ったら次に行きにくくなるのではないかと思い、勇気が出ません。宇多丸さんだったら、どうしますか。
(ユミ・42歳・会社員・東京都)


ユミさんの気持ちは、よ~くわかります。
僕も基本、いっつもそういうことが気になってしょうがない派ではあるので。

ただ同時に、そこでいちいちイライラしてるのもやっぱり、自分にも周囲にもよくないよなぁ、とも考えるようにはしていて。
よほど必要を感じない限り表には出さないよう……努力はしています!という感じですかね。あくまで努力目標(笑)。

たとえば今回のユミさんみたいなケースで、僕ならどうするか?ということなら、やはり直接お店に文句を言ったりは、あんまりしないかなぁ、たぶん。
寿司チェーンと行きつけのマッサージ、それぞれけっこう、話が違うとも思うんだけど。

まず、そのお店に何か思うところがあるとしても、単に行かなくなるだけでいいじゃん?というのが僕の基本的な考え方ですね。


好きだからこそ直してほしい、よかれと思って言いたいという話なのかなと思いました。だけどそれはやりすぎ?みたいなところにモヤモヤしているのかなって。


うーん……でもその「好きだからこそ」「よかれと思って」って、よっぽど近しくて信頼関係がしっかり出来上がってるような人同士じゃないと、向こうにとってはそれこそ速攻で『余計なお世話だバカヤロウ』なおせっかいということにもなりかねない、実はなかなか取り扱い注意な理屈じゃないか、と僕は考えてますけど。

だいたい、親切心からだろうとなんだろうと、そういうのって、言って心が晴れるってこと、まずないと思うんですよね。
逆に、言いすぎちゃったかな~、気を悪くしてないかな~って、モヤモヤが増すばかりのことが多いんじゃないかと思うんですけど。


たしかにー。


だからって、なんでもかんでも我慢すればいいって言ってるわけじゃもちろんなくて……。
要はもろもろのバランスを天秤にかけて、その都度ジャッジしてゆくしかない、という当たり前の話になるわけだけど。

たとえば、その料理では都内でもトップ級に美味いと僕は思っているお店があるんだけど、そこ、働いてる人たちの雰囲気は、正直言って、最悪なのよ!(笑) なんかいつもギスギスしてて……。
実際、あそこ感じ悪いから美味いは美味いけど二度と行かねぇ!ってなった店だってほかにはたくさんあるんだけど……ところがいま言ったそこだけは、「そこでしか食べられない美味さ」が、そのただごとじゃないバイブスの悪さに、どーしても勝っちゃうんですよね(笑)。
当然、文句なんか言いません! 怖いし! 美味いし!
ま、そんな例外中の例外も、あると言えばある。

とは言えたいていは、それまでまぁまぁ行きつけだったようなところでも、味や接客などで不快に思うようなことがだんだん増えてきたら、何回かの猶予は与えたうえで、しばらくあそこはいいや、となるだけですね、僕は。

実は最近も、誇張でなく小さい頃から家族で通ってきた贔屓の店が、観光客向けに特化しすぎてすっかり変質してしまったのをこのところあまりに何度も痛感させられたので、ついに! そのジャンルの料理は、近くの別の店に完全に乗り換えることにしました!という、少なくとも我が家的にはそこそこデカいシフトチェンジが起きたばかりでして。
またその近くの店が、「なんで最初からこっちにしとかなかったんだ!」というくらい、すべてにおいてばっちりだったりしてね。

そんな感じで、特に東京なら選択肢はめちゃくちゃあるはずなんだから、頼まれてもないのにわざわざ直接苦言など呈して、その後は気まずさに耐えながら改善を待つ、なんてコストを払うくらいなら、間違いなくほかにも山ほどあるもっといい店を探したほうがよくない?と、僕自身は基本的には考えるかなぁ。


回転寿司もマッサージ店も、可変な気はしますけどね。


特に寿司のほうは、そのときたまたま事故的にそうだっただけなのかもしれないし、そのメニューだけがハズレ、というパターンなのかもしれないし、もちろんほかの店にするという選択肢も無限にあるだろうしで……少なくとも僕なら、いきなりクレーム入れるなんてことはせず、ちょっと時間を置いてから、気が向いたときにまた様子を見る、くらいにしとくと思います。

一方で、大手チェーンほどむしろ、不満を含めて「カスタマー」の意見を吸い上げる、マーケティング的なシステムを常に用意しているところもあると思うので、「とりあえず言ってみる」ハードルは、比較的低くもあるんでしょうけどね。
良くも悪くも「文句をぶつけられ慣れてる」というか。
だからまぁ、どうしても気が済まないようなら、言うだけ言ってみれば?

より難しいのは、マッサージ店のほうですよね。
直接対面してサービスを受ける時間が圧倒的に長く濃いぶん、まさしく「人間関係」的な気遣いを、客側も通常以上にする必要がある業種、というか。
内心イラっとしてんのかな……とか思いながら揉まれても、それこそリラックスどころじゃないよ!(笑)

まぁだから、いま言ったようにこれも「人間関係」であることには変わりないわけだから、なんか言うにしてもやっぱ言い方次第、表現やテンションは選びましょう、もちろん距離感は考えましょう、ということではあるかもしれませんよね。

ハナから怒気を含んでるとか、露骨に嫌味な調子でとかは、言うまでもなく論外として……。
たとえば飲食店なら、「いつもこのメニュー、美味しくいただいてるんですけど、これって味つけ、変わりました?」的に、要は「クレーム前提ではない」ような聞き方をする、とか。
マッサージなら、「今日はなんか、賑やかでしたね……?(ニコッ)」とやるとか(笑)。


いつもと違います?的な切り口はいいですね。メモメモ!


参考までに付け加えておくならば、僕の知人の超グルメ男性は、有名寿司店の大将にその「味、変わりました……?」をやって、大いにご機嫌を損ねてしまったそうですけども(笑)。

うまくいった例で言うと、いつも食べてるメニューがその日に限ってあまりにも水っぽすぎて、それこそ「これ、いつもとなんか変えました?」って聞いてみたら、「ああ~! すみませんすぐ作り直します!」となったことはある。
これは要は、何かミスがあったのを店側も認めたパターン、確実に言って良かったやつ、ってことですね。

ただ、そういうアクシデント的なことでなく、元からその店はそうなんだ、というような場合は……それこそ、現状がいいと思ってる人だって、いるかもしれないわけだからさ。


なるほど。


それも含めて僕は、特にやっぱりサービス業に関しては、「嫌なら黙って離れる」というのがまずは、客としての筋ではないか、と考えるわけです。

いやそりゃ、僕だってね、ひとこと言ってやりたいなって件は、たくさんあるんですよ!
たとえば、お気に入りの店のサラダの器が、ずいぶん前に、なぜか変わっちゃって。
そしたら、盛りに対して器のほうが明らかに小さすぎ、浅すぎるからだと思うんだけど、食べ始めるとほぼ確実に、ポロポロポロポロ、レタスやら何やらがこぼれることになっちゃってさ~。
周りのお客見てみたら、全員こぼしてる(笑)。
前はもうちょっと大きい木製ボウルでなんの問題もなかったのに、なんで変えた? 
でもひょっとしたら、この小さいガラス製のやつのほうが洗うのが楽とかあるのかなぁ、機会があれば問いただしてみたいなぁ、との思いを胸に秘めつつ……はや10年以上(笑)。


10年以上、こぼし続けてるんですか!?


こぼし続けてる(笑)。
でも、味は変わらず最高だし、なんにせよそんなことを言い出せるようなタイミングも普通あるわきゃないので、まぁ許容範囲かと思って、ポロポロポロポロ、やっとりますけども。

ということでね、とにかくこれ、場合によります!

特に対処が厄介なマッサージ店のほうは……次に行ってまたその調子なら、我慢して通い続けるのもバカバカしいから、なんらかの決断はしたほうがいいのかもしれないですよね。
わりとカジュアルに話せるような偉めの人がいるならば、さっきの「今日、賑やかでしたね(笑)」作戦で。
そんな距離感の人もいない感じなら、面倒だけどやはり、ほかのいいところを探ってみたほうがいいんじゃないかな、と僕は思います。
上手くて安くてマナーがちゃんとしてるところ、探せば絶対あるって、東京なんだから!


ちなみにマッサージ店ですが、最近私、ストレッチ店にハマっていまして……。代替店を探すにあたって、いろいろな方向性を探ってみる機会にしちゃうのも、手かなと思いました。
ユミさんのモヤモヤ、少しでも解消できることを祈っています!!



【今週のお絵描き】

画・宇多丸


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション2」(毎週月曜日から木曜日22:00-23:30の生放送)をはじめ、TOKYO MX「バラいろダンディ」(隔週金曜日21:00~21:55)など、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

※昨年10月からは「アフター6ジャンクション2」に!

ライムスター宇多丸の聴くカルチャー・プログラムは、あなたの"好き"が否定されない、あなたの"好き"が見つかる場所。大人気週刊映画時評「ムービーウォッチメン」は毎週木曜日22時20分頃~にお引越しです。

※ライブ情報はこちら


こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。



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