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成長を見込んで部下にいろいろと提案を促していたら、「パワハラですよ」……!? こんなとき、どうする?

リーダーとして仕事をしていれば、必ずぶつかる
コミュニケーションや人間関係の問題。
相対する人も違えば、状況もさまざまで、
「こうすれば正解」がないのが
難しいところです。

そこで、
リーダーとして働く女性が実際に体験した
コミュニケーションの課題と
それに対するアクションを
ケーススタディとして紹介。
同じような課題を抱える人のヒントになれば、
という思いで届けていきます。

3人の部下を抱えているチサコさんは、チームのみんなが楽しみながら能動的に働けるようにと、それぞれに考えてもらう仕事を頼みました。でも、そのうちの1人に「そのやり方はパワハラだ!」と言われてしまい……。予想だにしない展開にとまどうチサコさん。無事、切り抜けられたのでしょうか?

ニックネーム:チサコ(50代)
◆職種:サービス企業 営業本部
◆部下の人数:3人
腰掛けのつもりで新卒入社したものの、部署異動をしつつ勤続30年以上。40代半ばで管理職となり、現在は教育研修の部門でリーダーシップをとる。さっぱりとした性格だが、仕事にはひたむき。後悔のないように、今できること、今やりたいことに突き進む毎日。


新しいことを続々と任せたら、部下は「自分はやりたくないのに、丸投げされて困る」……


あるミーティングで、テーマを一つ渡して、自分で内容を考えて進めてほしいと部下に頼んだんです。そのとき、ちょっと嫌々な感じを醸し出していたような気はしていましたが、「やります」と言うので、やってもらいました。その後もいろいろと新しいことを頼んだら、突然、それに「プレッシャーを感じる」と言われたんです。

「自分はやりたくないのに」と。さらには、「丸投げされて困っている。一つずつ、これはこうやりなさいと指示してもらわないと、僕はできない」と。リーダーが事細かな指示を出すべきだと言うのです。

それを聞いて私は、なぜすべてのお膳立てをしないのか、なぜいろいろ頼んでいるのか、一生懸命説明しました。
でも……、全然、かみ合いませんでした。


仕事は自分で考えて形にしていくことが面白い!と、思っていたけど、そうじゃない人もいるんだ


そもそも私は、積極的に自分で考えて形にしていくことが仕事の醍醐味だと、そして誰もがそういう思いで仕事をしていると、思い込んでいたんですよね。彼のこともそうだと思っていたから、すれ違いが生まれてしまっていたんです。

一つ一つ細かく指示されて……って、そんな仕事おもしろいか!?と私は思ってしまうんですけど、その方が働きやすい、という人もいると思い知らされました。

彼のスタンスを理解しようとしていなかった私は猛省しましたが、ちゃんと様子を見ながらやっていただけに「丸投げだ」と受け止められていることには、正直、驚きました

最終的に、彼は同じチームの別の部下に「チサコさんがパワハラをしてきているから、訴えようと思っている」と言ったらしいんです。

でも、その別の部下は「私はまったくそう思わないから、パワハラではないと思うけど」と言ってくれて。私の上司も「その内容でパワハラだなんて言うと、かえって君が不利になるぞ」とたしなめてくれました。

パワハラではなかったということを証明してもらえて、私はひと安心。結局、彼は訴えませんでしたが、自分自身のことも顧みてくれていることを願っています


リーダーとしてやりたいことを明示したときに、部下がどう思うか。時には割り切りも必要


もともと私は、部下に聞かれたことにはしっかり向き合って、真摯に対応したり、それぞれが仕事を楽しんでやれるように、ちょっとした工夫を提案したりすることは心がけていました。この件以降は、より一層丁寧に、部下の話に耳を傾けるようにしました。

そのようにしていると、だいたいの部下は「だんだん仕事がおもしろくなってきました。これもやってみたい」というようなことを言ってきてくれたりするんですけどね。
パワハラだと主張していた彼には、響くことはありませんでしたが……。

私は熱血タイプではないので、考えを変えてもらうためのアプローチをかけるのも無理があると思い、彼には同じ部署の隣のグループに移ってもらいました。そこでは機嫌よく働いているようなので、お互いそれでハッピーかな

ドライだと思われるかもしれませんが、気持ちを抑えてまで、関係を修復させようとする必要はない、もういい大人だし、そもそも仕事なんだから……と思ってしまいます。リーダーの立場では、そういった割り切りも時には必要だと思うんです。

ついていこうと思う人もいれば、違うなと思う人もいるかもしれないけれど、それぞれを受け止めて、目的のための道を探って進んでいく。その方が、部下もやりやすいしわかりやすいんだろうなと思います。



イラストレーション:高橋由季








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