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元々住んでいた街に比べて、彼と同棲している街に愛着が湧きません。街に優劣をつけてしまう自分がしんどい……。【ライムスター宇多丸のお悩み相談室474】


✳️今週のお悩み✳️
住んでいる街についてご相談です。

2年程前に彼氏と同棲するため、彼氏のマンションに引っ越してきました。元々住んでいた街は私の地元の近くなのですが好きな街で、住みたい街ランキングにも選ばれるような人気の街でした。今の街は前に比べると交通の便はぐっと良くなったのですが、治安があまり良くなく街並みが古めで正直綺麗ではないです。

比較的新しい街だった地元の雰囲気とかなり違うので最初は戸惑い、まぁ住んだら慣れるかなと思っていたのですが、街のお店などを調べるときにサジェストで「汚い」とか「住みたくない」が出てきたり、美容院に行ったときに地元を教えると冗談混じりですが「よくこんなところに来ましたね!」的なことを言われたこともあり、今の街への愛着が湧きません。元々住んでいた街は、そもそも街の雰囲気が好きで住んだのですが、住んでいる場所を言うと羨ましがられたりもしたのでバカバカしいとは思いつつどうしても比べてしまいます。

彼氏のマンションにはまだローンもありますし、隣人トラブルも無いので引っ越すまではしたくないと思っています。治安についても夜遅ければ彼氏に迎えに来てもらうなど相談しました。自分の親にいわゆる山手線の内側、良いところに住むべし的な考え方があってそれが刷り込まれているのか、街の優劣みたいなものを気にしてしまうのをやめたいです。街自体が嫌いなのではなく街への評価がしんどいのだと思います。どうすればよいでしょうか?
(とも・27歳・パートアルバイト・東京都)


文から察するに、前に住んでたのはニュータウン的なところで、いま住んでるのは下町、って感じですかね?
まぁ、それぞれどんな雰囲気の土地なのは、なんとなくわかりますよ。

なんにしても、ちょっと前に「家を買ったはいいがそこのコミュニティとソリがまったく合わないことが後から判明して……」という相談がありましたけど、そのときも言ったように、毎日ちょっとずつでも嫌だなぁと感じるような場所で暮らしてゆくのって、いくらお金をもらったって合わないくらい、めちゃくちゃマイナスなことだと僕は思うんですよね。

もちろん、特定の地域に一方的にネガティブな印象を抱いているということ自体は褒められた話ではないかもだし、声高に公言するものでもないと思いますけど、同時に、大なり小なり誰にだって、場所によって合うところ合わないところがはっきりある、というのも、これはもうちょっと、仕方のないことだろうと思うんですよね。

それこそ逆に、開発されたてのピカピカした街並みにはどうにも馴染めない、昔からある店が雑に並んでるようなところじゃないと落ち着かない、という人だって、ぜんぜん普通にたくさんいるわけですから。
さらに比較の範囲を広げれば、「私はここ、無理!」なカテゴリーも、絶対どんどん増えてくはずですよね。

そりゃあ「住めば都」というのも、それはそれで間違いなくひとつの真実だろうし、できればその境地を目指すのが望ましくはあるんでしょうけど……要は対人関係とか食べ物とかとも同じで、どうしたって好き嫌いが出てきてしまうのも、人間だもの、当たり前だと思うんですよね。
たとえそれが「住みたい街ランキング」的な外ヅラのイメージに基づくものだったとしても、同じこと。
どんな理由であれ、ある人の中に苦手なものと好きなものがあるのは、しょうがないよ!

だから、今の街を好きになれない自分が悪いのかな、みたいに、あんまり思い悩まないでいいと思いますよ。
ともさんはきっと、とても倫理的にまっとうな方だからこそ、ご自身の中のそういう偏りにも、すごく正直に向き合われているんだと思うんです。
無論それは文句なしに素敵な心がけだし、ぜひ今後も大事にしていってほしいあたりだけども……かと言って、辛くなってしまうまでそういうところを突き詰めすぎてしまうのも、それはそれでよろしくないことですからね。
それはそれ! これはこれ!

とにかく彼に一回、本気で相談してみていいんじゃないかなぁ。


ローンはあるかもしれないけど、今は都内ならマンションは高く売れそうですから、買い替えができないわけでもない気もしますが……!?


ただまぁ、まだ結婚してるわけでもないからね。
マンション購入を始めとして彼なりにあるのだろう人生設計に、とは言えともさんが現時点でそこまで全面的に関与していいのかどうか、ということもまず、ご自身の気持ち含めて、改めて確認しなきゃいけないあたりだろうけども。

逆に言うと、ともさんがどうしてもそこに縛られなきゃいけないような義理、そこまであるかな?とも、どうしても思っちゃう。

なんなら、籍を入れている場合まで含め、「パートナー同士たるもの一緒に住まなきゃいけない」みたいなの自体、単なる思い込みに過ぎないと僕は考えてるくらいですからね。
それこそ別居さえすればまだうまく行くカップル、世の中にはいっぱいいると思いますよ。

少なくとも、彼に合わせてともさんだけが我慢しなきゃならない筋合いはないでしょ、と思う。


なんか嫌だとか理由なく嫌とか、やっぱりありますよね。


そりゃあるよ!
場所も人も、バイブス合う合わないはやっぱ大きいよ。
そういうところで無理をするとマジで心身に悪影響が出たりするから、そこはむしろ敏感であるべき!なくらいだと思いますよ。


私、引っ越し先を探しているときに、この沿線はなんか嫌だとかいろいろ言ってたら、なんでだ? 理由は?ってオットに詰められましたよ!

好き嫌いが多いとか、食わず嫌いじゃないのかとか言われる(怒)。


「この沿線はなんか嫌だ」って、よくある感覚だと思うけどなぁ。
単純に土地勘がなさすぎて居心地悪いなぁとか、たとえ一般には人気あるっぽい街であっても、僕はよく感じたりしますけど。

そしてそもそも、そこでなんで「食わず嫌い」を克服しなきゃいけないのかが、わかんないよね。
住むところは栄養じゃねぇし!(笑)

何よりも、嫌だっつってるのを無理強いして、何かいいことあんの?
一見正論風だけど、ぜんぜん正論じゃないと思いますよ。


そんなの主観でいいってことですよね。利便性とかいろいろ言われてもさー!


僕がいつも言ってるのは、たとえば納豆が嫌いだって言ってる人に、「なんで? 美味しいのに~!」とか言う人、いるじゃん?
バカじゃねぇの?っていつも思うんだよ。
だ~か~ら~! 「それを私は美味しく感じない」って話をしてんだろ!(笑)

それに、納豆なんか、僕はもちろん好き側ですけども、苦手だって人の気持ちも、正直ぜんぜん想像つくタイプの食いもんなわけじゃん?
なのに「なんで?」とか言って……わざとらしい!(笑)


その例、すごいわかりやすいっすね。


場所に関しても同じだよ。
さっき言ったように、地域差別を露骨にするもんじゃないというのは良識としてあるにしても、とは言え景観や空気、そしてもちろん治安など、ともさんみたいに内心ちょっと引いちゃう人がいるのも、地元民でさえまぁわかる、というくらいの土地柄では、間違いなくあるわけでしょ?
それに対して、ともさんがもろもろの不満や懸念を意識して「直して」まで、そこに住まなきゃならない義務や必要、ありますかね?

納豆食べなくたって死なないし、ほかで栄養取れるし!

ということで、とにかくともさんは、ご自分が抱いているモヤモヤに、そこまで引け目や罪悪感を感じることないし……。
まして、それをただ一方的に我慢して飲み込んでしまったりすると、何しろ毎日そこで暮らしてるだけでどんどん蓄積してゆくことですから、心と体に、とても悪い影響を及ぼしかねない。

また、彼ともしこれからも共に生きてゆく前提でお付き合いしているなら、なおさら、一生に関わることなんだから、今のうちに嫌なものは嫌なんだってはっきり伝えなきゃいけないだろう、とも思います。
仮に万が一、「申し訳ないけど、毎日暮らしてて、実はホントにしんどいんだけど……」って真剣に相談してるのに、ローンがあるからとかを優先して親身に対応してくれないようなら、それこそその後の付き合い方を、考え直したほうがいいかもですよ、マジで。

あ、ちなみに、彼自身はその土地にはっきり愛着があったりするのかもしれないんだから、くれぐれも失礼な言い方にはならないよう、ちゃんと配慮すべきなのは言うまでもないことですけども。

いずれにせよ、今とは逆に、心底気に入ってるところに住めていれば、毎日暮らしてるだけで、ちょっとずつ「幸せ!」が積み重なってゆくわけですから。
前も言ったけど、たとえば僕は自宅と駅の行き帰り、いっつもそれを実感しながら歩いてますよ。
一刻も早く、ともさんもそちらに向けて舵を切り直すべきだと思う……人生は有限ですからね!


年末ですし、来年どうする~なんつって、今年のうちに彼と話せるといいですね。
あ、もしかしてこの連載も今年最後の更新では!?

今年もご愛読、誠にありがとうございました。
年末年始、お時間ある方はバックナンバーの一気読みがマジでおすすめです(毎年この時期にハマる方、けっこういますw)。

みなさま、よいお年をお迎えください~!
(新年は1月4日より更新いたします。お楽しみに)



【今週のお絵描き】

画・宇多丸


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<プロフィール>

ライムスター・宇多丸
日本を代表するヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」のラッパー。TBSラジオ「アフター6ジャンクション2」(毎週月曜日から木曜日22:00-23:55の生放送)をはじめ、さまざまなメディアで切れたトークとマルチな知識で活躍中。

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こばなみ
2010年、iPhoneの使い方がわからなかった自身と世の中の女子に向けた簡単解説本「はじめまして。iPhone」を発行し、「iPhone女子部」を結成。2015年からは「女子部JAPAN」として、Webでのコンテンツ発信とイベントを企画・実施。2022年からは「F30プロジェクト」と題して、リーダーとして働く女性の生声を取材し、noteで発信。女性活躍推進など、"女性"という枕詞がなくなる世の中を目指している。



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