「女性だから優遇された?」と信頼していた先輩から嫌味を言われ……。こんなとき、どうする?《ジェンダーギャップ編-12》
リーダーとして働く女性たちが
実際に体験した、
コミュニケーションや人間関係の課題と
それに対するアクションの
ケーススタディ。
同じような課題を抱える人のヒントになれば、
という思いで届けていきます。
キャリアを積み重ねるなか、しばしば直面する「女性だから」という言葉。昇進に関する嫌味や陰口を誰もが経験するわけではないけれど、それを信頼していた先輩から言われたカヨさん。どうモヤモヤの解決策を見出したのか、そのプロセスを語ってもらいました。
信頼していた先輩からの残念な電話
ある日、二つ上の先輩から突然電話がかかってきました。内容はその年の昇進試験の話について。
「俺が受ける予定だった昇進試験、お前が受けるの?」
私の会社の昇進試験対象者は、受験資格を満たした上で上長が推薦し、さらに本社が最終的に決定します。そして対象者は昇進が決まるまで非公開。本社から対象外となった先輩は、その受験枠が私に決まったのではないかと疑って電話をかけてきたんです。
実際には、その年の昇進試験対象者に選ばれたのは私ではなかったのですが、そのとき何気なく言われた一言にショックを受けました。
「いや、その、お前がやっぱり女だから優遇されたんじゃないかと思ってさ」
空いた口が塞がらないとはまさにこのこと。「そんなことはないですよ」と軽く流して電話を切りましたが、信頼していた先輩だっただけに、とてもガッカリしました。
上司からの激励で気づいた「陰口に気を取られる時間は無駄」
気持ちを切り替えるきっかけになったのは、当時の上司の言葉でした。
その年、昇進試験資格はまだなかったものの、元上司には「来年はそろそろ昇進試験も受けられるだろう」と期待されていました。正直、私は乗り気ではなかったのですが、「会社も馬鹿じゃない。能力のないやつに役職はつけない」と励まされたことで、考えが少しずつ変わり始めていたところでした。
そんな矢先にかかってきた先輩からの電話。同じ会社でも、真正面から応援してくれる人がいる一方で、陰で嫌味を言う先輩もいる……。こんな人が出世できるわけがない。器の差を感じながら、自分がこれから関わり、影響を受けたいのは元上司のように誰かをエンパワーメントできる人だと確信しました。
陰口を言う人やネガティブな人に気を取られても損するだけ。先輩のように嫌味を言ったり、陰口を言う人は存在すると思いますが、一切相手にしないと決めてからは不思議と気にならなくなりました。
翌年、私は昇進試験を受けることになり無事に昇進。先輩は残念ながらその年も受けられなかったのです。
女性管理職にまつわる新たなモヤモヤ……でも前に進むしかない
女性管理職にまつわるモヤモヤがスカッと解決したと思いきや、今新たな葛藤と向き合っています。
会社は私にマネージャーの次のステップを期待しているものの、私自身、実はまったく違う仕事に興味が出てきてしまったのです。一度管理職を降り、別の部署でゼロから再スタートを切りたいという希望を会社には既に伝えています。しかし、会社側は女性の管理職比率を上げていく方針なので「できれば同じ職位でスライドしてほしい」という意向です。
新しい部署へ管理職として異動できるなら理想的ですが、それはかなり困難な道。自分の希望と会社の期待、そのズレが今新たな葛藤を生んでいます。
それでも何もしないわけにはいきません。現在、希望部署に私を欲しいと思ってもらえるようツテを使い、自分をアピール中です。もちろん、今の部署で結果を出すことも大前提。ただ、いくら頑張っても会社の意向がある以上、希望通りになるかどうかはわからない……。本当に悩ましいですが、ご覧の通り女性管理職にまつわる葛藤は終わりがないもの。歩みを止めず、今やれることをやりながら、少しずつでも前に進もうと思っています。
イラストレーション:高橋由季